猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第49話 イスルギからの挑戦状



「それはそうと、もうすぐ2時だ。鬼門が開く。この敷地には誰もいないよな。」


「うん………結界の中には、わたしたちしか、いない、よ。」


 鏡を開いて、そこに映し出された結界内部の状況を確認するクロちゃん。
 そんなこともできるのか。便利な鏡だねー、それ。


「そうか、それは何よりだ。結界、解いていいぞ。」


 クロちゃんは鏡に一言二言話すと、学校の敷地内に張られていた結界が解けた。


 クロちゃんが直接張っているわけではなく、クロちゃんの霊力を使って、ミコトさんが結界を張っているんだよ。




「………………。(ムスッ)」




 私は、横目で澄海くんを見てみると、一目で不機嫌だということが分かった。
 まー、イスルギさんに負けたらしいからね。それはしかたないよ。
 なんせイスルギさんは化物だから。


「鬼門が開く場所は、どこなのー?」


「そうだな。………校舎の北東………校長室だ。」


 うわぉ、そんなところで暴れて大丈夫なんだろうか
 でも、イスルギさんは『バイト』って言ってるし、学校側からの依頼ってことなんだろうな。毎年やってるのかな


 時刻は午前2時前。もう、いつ鬼門が開いてもおかしくない。
 私はゆーの手をとって、イスルギさんについていった。


「………なんで、理科準備室にいたの。」


 イスルギさんの隣をあるいていた澄海くんが、疑問を口に出す。


 それは私も気になってたことだよー。


「あ? そこの巨乳ちゃんが『子供たちが肝試しをしている』っていうから、巨乳ちゃんは関係者だと判断して、肝試しっつったら定番ポジションの理科準備室には行くだろうから、そこで待ち伏せして、巨乳ちゃんのふりして、肝試しをお開きにしてもらおうと思ったんだよ。ま、テレポートした瞬間にお前が入ってきたんだけどさ。一瞬で見破られるし。」


 ふーん。つまり、偶然が重なって、澄海くんが理科準備室に行ったら、そのタイミングでイスルギさんが来てしまい、イスルギさんを危険視した澄海くんがイスルギさんに攻撃を仕掛け、ボコボコにされたってことかな。


 これは澄海くんが可哀想だ。


「………パパとの関係は。」


「高校の同級生だ。一緒に飯を食うくらいには仲良かったと思うぞ。宇宙人だってのも知ってる。」


 うっそ!? イスルギさん、澄海くんのパパさんとも知り合いだったの!?
 世の中って狭いなー。


「話はここまでだ。」


 イスルギさんは、唐突に話を打ち切った。


 校長室の前で立ち止まり、


「時間だ。」


 丑三つ時。時計の針は、午前二時を指した、と、同時に。




『『『ギシャァァァァァアアア!!!』』』


「クハハハハ! あいつら、時間だけはきっちり守るんだよな!」


 校長室から、化け物の叫び声が聞こえてきた。
 何を隠そう、最近のゴーストは、歯ごたえがなさ過ぎてマンネリしてたんだよねー。


 ここいらでいっちょ、ド派手に暴れてやりたかったのー。
 修行して、幽体離脱まで覚えて、クロちゃんは鏡を使って、ティモちゃんは簡単な結界も張れるようになった。


 豆腐を切るくらい感触がない相手ばかりだったから、フラストレーションもたまるよー。


 そろそろ、私の封印された右手が幽体を放つ時が来たんじゃないかなー!


「タマちゃん………ど、どうしたの………?」


「ううん、クロちゃん。なんでもないよー?」


 あれ、顔に出てたのかな。危ない危ない。
 右手の指を開いて爪を出す。イスルギさんは、そんな私を見て、苦笑していた


「己の力を過信すんなよ。ここを開けた瞬間に戦闘開始だ。最初は見学でもしてろ」


 イスルギさんは、そういって、校長室のドアを乱雑に開いた


「「「ギシャァアアアア!!」」」


 見たことのない生き物が、校長室の中で暴れていた。


 1mくらいの緑色をした体を持って、こん棒を振り回している。ただ、ゲームとか漫画とかで見たことがある。なんだっけ、こういうの。


「こいつらは、ゴブリンってとこかな。」


 あ、そうだよゴブリンだよ。ゲームだけの存在だと思ってた。


「へー。現実にもいるんだねー。」


「違う。現実じゃない、あの世だ。鬼とか妖怪とか。現実に干渉できるけど、こいつらもゴーストと似たようなもんさ。素手での接触はすり抜ける。」


 イスルギさんは、普通にゴブリンの頭を蹴り砕いているけどねー。ぐろい。


「ま、俺には関係ないけど。」


 自身が妖怪みたいな存在だからねー。身体能力も尋常じゃないくらい高いし、前に、オリンピック選手なんか鼻くそくっつけられるくらいの存在だって言ってたし。
 怒られてもしらないよー?


 イスルギさんは、鬼門から現れたのであろう、3体の子鬼を一瞬で片づけた。


「こいつらは、なんで現世に現れるのかはわからん。だけど、世界のいたるところで、鬼門が開けばそこから湧いて出る。それを防ぐために、俺みたいな掃除屋がいるんだ。」


 死体は、ゴーストと同じく、粒子となって消えた。


 鬼門を確認してみる


 窓際の空間に亀裂が入り、あかあらさまに『異次元だよ!』とばかりにぱっくり口を開けていた。




 次の化け物が鬼門から這い出ようとする。これは狐? あ、奥にいるのは土蜘蛛かな!


「いつまでつづくの?」


 ティモちゃんが、足首の調子を確かめながらこちらに歩いてくるイスルギさんの顔を覗き込み、そう聞いた。私が一発殴ったからか、すでにイスルギさんの警戒は解いている。


「そーだな。丑三つ時ってのはだいたい2時から2時半。だから後30分くらいで鬼門は閉じる。それから後は………掃除だ。」


 掃除、か。こんな凶悪な人間から、掃除なんて単語が出ると、ちょっと笑える。


 ちなみに、ゆーにはゴブリンたちは見えていない。終始疑問符を浮かべるだけだった。
 それなのに、破砕音が聞こえるもんだから、クロちゃんをギューッと抱きしめて震えているんだよー。たしかに、見えないと怖いもんねー。


 イスルギさんは、校長室のフカフカな椅子にどっかりと座ると、


「ついでだ。人猫になってから2か月たった。お前たちがどこまでできるようになったのか、俺に見せてくれ。簡単に点数をつけてやるよ」


「ふふっ、挑戦状だー。」


 いーよー。その挑戦、受けてあげるー。





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