猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです
第47話 ★お前らみたいな関係を、友達っていうんじゃないかな
おれっちが理科準備室から歩き出して、30秒くらいたった。時輝を抱えながらだからゆっくりになるのは仕方ない。しばらくすると、後ろから『タンッ』 という音が聞こえてきたので、ビクビクしながら振り返ると
「ここで、いい………の?」
クロが廊下に立っていた。あれ? どこから入ってきたんだ?
「たしかにー、ここになにかいるねー?」
と、思っていたら、今度はタマが、窓から入ってきた。タマは音を立てないで廊下に着地する。
「あいた! す、スカイくんがあぶないんだよ! はやくいこう!」
さらにはティモが窓に足が引っ掛かり、ガタゴトン! と転げ落ちながら二人をせかす
危ない、のだろうか。いや、そうかもしれないな。なんか破砕音が聞こえてくるし、
「―――ぐぎぇ!?」
おれっちは、気絶した時輝を掴んでいた手を離し、そっちに駆け寄る
「あ………」
ティモがおれっちの存在に気付いて声を上げると、クロとタマもこっちを見た
「あなたは………見ないほうが、いいよ」
クロが手で軽くおれっちを引き留める
「いやだ。気になる………知りたいんだ、澄海が、なにをしているのか。」
おれっちがそう言うと、クロは困ったように視線をタマへ向けた。
最終的な判断をするのは、いつもタマだ。それはいつも見てるから知っている。
「うーん………今は緊急時みたいだしー、しかたないかー。どーせもうすぐ、みんなも知ることになるだろうし………」
思案するようにぶつぶつと何かを呟いていた。
おれっちの予感が言っている。タマたちは澄海の秘密の何かを共有していると。
タマはおれっちの顔を見つめて―――
「今日はー、なにも起きなかったよねー?」
不安そうな顔で、何かを確認するように、そんなことを聞いた。どういう意味だろうか。
あ………そういうことか。もしかして、おれっちじゃ考え付かないような、なにかが起こっていても、おれっちは何も見ていない事にしろって言っているのか?
「………わかった。おれっちは、何も見ていない。」
そう答えると、タマが渋々頷いた。
「じゃあー、ついてきてねー。」
タマはそのまま体の向きを変え、思いっきり、理科準備室の扉を蹴破った!
えー!? 鍵かかってたはずじゃなかったっけ!?
………見なかったことにするのは、すでに始まっていたらしい
ひしゃげた扉の向こうへと足を踏み入れる
その先で見た光景は―――
ぐったりする澄海のお姉さん。
全身血まみれで倒れる澄海
その傍らで、澄海に話しかけている男の人
おれっちは思わず目をそらしてしまった
「スカイくん! みんなをつれてきたよわああああああああああああああああ!」
ティモがまっさきに澄海に駆け寄る
「うわ! 澄海くーん! 大丈夫―!?」
「ち、血まみれ、だよ! は、はやくてあて、しないと!」
それに続いて、おれっちたちも駆け寄る。隣の男はいったい、誰なんだ?
さっきはいなかったはずだけど、こいつが、澄海をこんなにしたのか? 1分足らずで、人間はこんなにボロボロになるものなのか………?
ふつふつと込み上げてくる怒りをなんとか飲み下し、澄海の顔を覗き込む
「っふ………おせぇよ」
ティモたちの姿を確認してから、力無く笑う澄海。
なんで………そんな状態で、笑うことができるんだよ………。
おかしいじゃないか、泣いたらいいじゃないか! おれっちなら絶対に絶叫する自信がある大けがだぞ!
それに………澄海のそんな表情を、おれっちは今までに見たことがない。その笑みには、信頼が込められていた。………なんだよ、信頼できる仲間がいるんじゃねぇか。
場違いだとはわかってる。お前は、孤独な奴じゃない。友達がいないようなそぶりを見せているけど、お前らみたいな関係を、充分友達っていうんじゃないかな。そう思った。
「澄海! おい澄海! しっかりしろ!」
おれっちも、今にも死にそうな澄海に声を掛けるが
「………………。」
澄海は気を失った。
一瞬、死んだかと思ったけど、ちゃんと息をしている。コレは………すぐに病院に連れて行った方がいいよな。転んだ程度じゃ付かない傷ばかりだぞ。ほっといていいはずがない
「ちっ、あー………なんかわらわらと来やがったな」
そばにいた男が、おれっちたちを見て、タバコを吹かしながらそう言い放った。
澄海をこんなにしたのは、こいつに間違いない。そう直感した。
「おい!おま―――え?」
おれっちが立ち上がって、男に文句を言ってやろうとしてたら、クロが手で制した
「こっちの、セリフ………だよ。なんで、石動さんが、いるの?」
男の元まで歩くクロ、その男は危ない! と、自分の中で警鐘がなるが、クロはどうやら、その男とは知り合いらしい。
どういう関係で、どういう状況なんだ………?
「その声………お前クロちゃんか? 暗くてよく見えないけど、クロちゃんだろ」
「うん………。ティモちゃんと、タマちゃんもいる、よ。」
「あっれー? おかしいな。まだ小学校のバイトは入れてなかったはずなのに………修のやつ、桜島から戻ってきたら一発殴っとくか。」
「イスルギさーん、クロちゃんの質問にー、ちゃーんと答えてねー? 」
タマは笑顔だけど、声には怒気が混じっていた。おれっちもすくみ上りそうな雰囲気に、イスルギという男は飄々と手を振って返す
「ああわかったわかった。わかったからそう構えるな。バイトだよ」
「バイトっていつもの?」
ティモがぐったりと横たわる澄海の手を握りながら、イスルギさんに聞いた。
ティモの声も、普段よりトーンが低い。髪の毛や尻尾の毛が逆立っていた。
「その通り。」
「それで、なんでスカイくんはこんなにボロボロになってるの?」
今度は、立ち上がると、睨みつけるようにイスルギさんを見上げる
「言っとくけど、最初に手を出したのはこいつの方だぜ?」
「だからって、ここまでするいみがあるの?」
「むぅ………そう言われるとな………。俺も楽しくなっちまったし、これはしょうがない」
「………………」
「うわ、睨むなって。………悪かったよ、ちゃんと治療してやっからギャンギャン喚くな。チー坊、スカイを支えてろ」
「………うん」
ティモが澄海に肩を貸して、上半身を起き上がらせる
「うぐっ………!?」
痛みに呻く澄海。左肩は何かに貫かれたような傷がついていた
よく見ると、左腕は、おかしな方向を向いている。完全に、折れていた。
イスルギさんは、わら人形を取り出して、澄海に押し付ける―――って、わら人形!?
なんでそんなもんが出てくるんだ!?
「―――ほら、これでいいだろ?」
さっきまでが嘘だったかのように、澄海の全身にあった怪我がどこにも存在しなくなっていた
代わりに、わら人形から血が流れ、ガラス片が突き刺さり、所々はじけ飛んでいた
「い、いったい、何が起きたんだ………?」
次々に起きる不思議なことに、おれっちは開いた口がふさがらなかった
「ところで、そこのボウズはなんだ? チー坊の知り合いか? 見たころ、霊感もなさそうだけど」
霊感? 幽霊を見ることができる力のことだっけ?
「えっと………」
視線をさまよわせるティモ。………なんかおれっち、ここにいちゃいけない人間だったらしいっす
「まぁいいや。チー坊、一応聞いておく。今日が何の日だか知ってるか?」
「………?」
ティモが首を捻る。だから―――
「―――開校記念日、ですか?」
おれっちが聞いてみた。澄海は、傷が消えても、なお苦しそうにして、目を覚まさない。
やっぱり、病院に連れて行ったほうがいいかもしれない
「そうだ。そういうことになってるが、実際は、ここの城が落とされた日だ。」
聞いた話によると、この学校がたっていた場所は、昔、小さい城が建っていたらしい。
たしか、火事で城がなくなったんだっけ?
「あー、なるほどねー。」
タマが何かを納得したみたいだ。だからといって、澄海を気絶するまでボコボコにしたイスルギさんを許そうとはしていないようだけど。
「ここの鬼門が開く日なんだねー? 校舎が半壊するから、休日になるっていう。今日がそーなんだー。」
「お、話が早いな。そう、今日はここに妖怪が湧く日だから―――」
「―――それでー、なんで、そこにゆーが転がってるのかなー?」
タマはイスルギさんを遮って、苦しそうに気を失う優さんを指差す。
「や………それについては、悪いとは思っているが………仕方なかったとしか」
「ふ~ん。じゃー、いーわけを聞きます」
「………その前に、俺からも質問がある。この学校に、強力な結界が張ってあって、ここに入れなかった。それについて、何か知ってるか。」
おれっちにとっては、もう何が何やらだよ。一応、会話に参加できそうにない今のうちに、クラスの今残っているみんなには、肝試し終了のメールを送信しておいた。
「そ、それは………わたしの結界、です」
「へ? あれクロちゃんが張ったの? 俺が入れないって相当だぞ。礼子並だ」
なにやら驚いた様子のイスルギさん。
どうしよう、おれっちにはこの人たちが何を言ってるのか、全然理解できない
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