猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです
第39話 わわ、わちきはこここんなことになるなんて聞いてないであります!
10時。クラスメート全員が体育館に集まっていた
「おっ、来たな澄海。待ってたぜ」
馴れ馴れしく僕を手招きする男子生徒。やっぱり名前を思い出せない。
「………それで、今日はなんで集まってるの。」
「相変わらずせっかちだな。今日は、肝試しだよ。肝試し。なんか時輝が、肝試ししたいって言い出してな。みんなそれに乗り気なんだ。」
意味が分からない。なんでわざわざ肝試しをするんだ。
………しかも、乗り気だってのもわからない。僕にもし霊感がなかったら、絶対に来たくない。
そんなアホなことをする時間があるのなら、麻雀の勉強をしているほうが有意義だ。
「なんでも、みんなこっくりさんをした時にまきこまれたからか、こわいもの見たさで、みんなオカルトにキョーミを持ち始めたみたいなんだ。かくいうおれっちも、その一人ってわけ。」
「…………………………。」
あー………くそっ! また時輝のせいか!
いつもいつも余計なことばかりしやがって………。
「えっと、それで………そこのおねーさんはいったい?」
男子生徒………名前忘れたから『ナナシ』くんでいっか。
ナナシが僕の後ろで三猫に抱き着かれていた優を見て疑問を口に出す。
「やは。ショタっ子ども。わちきは澄海ぼっちゃんの姉をしております、上段優であります。今日は監督として、キミタチが悪いことをしないか、ただただ監視にきただけだよ。特に口出ししたりはしないから、わちきのことは気にしないでね。」
おいこら、なにねつ造してんだよお前。
いや、仕方のないことだってのはわかってる。ここで水瀬なんて名前を出したら頭の弱い僕らクラスメートは混乱するだけだ。でもこんなのが姉なんて、僕は認めないぞ。
「うぅ、大人がいるのか………」
なにか気まずそうに一歩下がるナナシ。まぁ、家族には無断で家を出ている連中ばかりだろう。というか、許可をだす家などいるのだろうか。………ウチはいつでもフリーだけどさ。なんせ、幽霊退治してるわけだし。
優の姿を見たクラスメートはみな、身を固くした。大人から自分の親への伝達を危険視しているようだ
全員、親にばれないように、ここに来たってことは、相当の覚悟で怖いものを見たかったんだろう。
………………みんな馬鹿だ。
「大丈夫大丈夫。わちきは何も言わないよ。むしろ逆だよ。わちきに怯えるのではなく、わちきがいることに安堵しなさい。この場に子供がいるだけでは危なっかしいのです。少なくとも、『大人の目』が必要なのであります」
これは、タマからの受け売りだ。タマは、優を投入することにより、『大人の目』を入れて子供たちの行動に制限をかける。
さらに恐怖体験をするであろうこいつらに、『頼りにする』ことができる虚像の人物を作り出すことによって、精神面の負担を軽くしている
実は優の膝がものすごく笑っていることに、誰も気づいていない。
優だって幽霊は怖いんだ。人は見えないものにこそ、恐怖を覚える生き物だから。
超能力者であっても、それはしかりだ。
それに、優は見た目は17歳くらいでも精神的には普通の13歳。9歳か10歳そこそこの僕たちと、そんなに変わらない年齢なんだよ。
優は恨みがましく僕を睨んだ。アイコンタクトで何かを訴えてくる。
『楽しい事じゃなかったのでありますかっ! 肝試しとは聞いてないですよ!』
『……………優が要件も聞かずに快諾するのが悪い。』
『そりゃあんまりですよー!』
優は悟られぬよう虚勢を張って、『わちきを頼れ』と言っているが、霊感もないから、僕は絶対に頼らない。というか、本人が怖がっているし。
「……………それで、わざわざここに来て何するの。」
僕はため息を吐きながらナナシに聞いた。
「おうっ、今回はおれっちが仕切らせてもらうぜ! 今回は肝試しをするらしい。でだ。今回のメインは、なんといっても、澄海。おまえだ。」
「……………僕? なんでだよ。」
そんなん、みんなで勝手にやってろよ。僕や猫たちはみんなが怪我しないように監視しとくだけでいいし。そもそも、はっきり見えてるから怖くもなんともない。
「なんで? ははっ、おもしろいことを言うな。嫉妬だよこんにゃろう!」
「……………(こくり)」
そんなんだろうと思った。………はぁ、やっぱりバカばっかりだ。
つまりだ。三猫がウチに泊まるのが妬ましくて。時輝あたりが肝試しを提案し、おそらくだが、最初にタマあたりが悪乗りでもして、僕に痛い目(怖い目?)に合ってもらおう。
ってことなんだろうな。
おそらくだけど、そこまで間違ってなさそうだ。
「というわけで、澄海。夜の学校の各所にもうけられたチェックポイントにある御札を一枚ずつ持って、ここまで戻ってくるように。」
「……………御札なんて、どうやって用意したんだよ。」
一般人が持ってるようなことはないはず。
「なんか知らないけど、ティモが持ってたみたいだから、使わせてもらったぜ」
ギロッとティモを睨むと、ティモはえへへ、と全く邪気のない顔で笑った。この野郎。
「まぁ、メインの澄海を最初にして、申し訳ないけど澄海には、もう何周か回ってほしいんだ。ここにいるみんなも、こわいもの見たさでここにいる。メインであるお前が終わったら、何組かで分かれてるみんなを、チェックポイントまで連れて行ってほしい。」
……………? なんか違和感のあるシステムだな。
みんなは、どこにチェックポイントがあるのか、把握していないのかな。ああ、そうか。
把握していたら自分たちも楽しむことはできないんだな。
あれ? だったらなんで僕が何周もする必要があるんだろう。教えたら意味ないじゃん。
……………まぁいいや、でも僕が一緒に回る方がこいつらに危険は少なくなるな。
少なくとも、僕がついていれば誰かが校舎内でゴーストに襲われることはないはずだ。
僕にメリットはないけど、それを拒否する必要もないなら、僕は首を縦に振った。
それをみたナナシは―――
(………よかった。実は澄海には、クラスのみんなと仲良くなってもらいたい。だからおれっちは、そういう場を作り出した。これで、澄海とクラスのみんなも、うまいことなかよくなってくれるといいんだけどな。)
―――なんか優しい目で僕を見ていた。キモイ。
「……………時輝とか、数人が僕を驚かす係りとして、すでに校舎に入ってるの。」
「ん。まー、そーゆーことだな。おれっちが今日の放課後に確認してみたけど、結構えげつなかったぜ」
そういうのをネタバレっていうんじゃないかな。
まぁ、何が起こるのかは教えないというのは、まぁ別にいい。
だいたい想像ができるし。
「スカイぼっちゃん。怖くなったらわちきのおっぱいを借りて泣いてもいいでありますぞ」
「……………借りない。そのへんに居ろ。」
「うう………ひとりにはしないでよぼっちゃん………」
優がウザいので、その辺に放置する。
「………最初は、僕一人で行けばいいの。」
「お? じゃあ行ってくれるのか?」
「………(こくり)」
正直面倒くさい。
でも、夜の学校はマズい。もしゴーストに襲われでもしたら、守ってやれない可能性がある。
すでに校舎内で何人かがスタンバイしているのであれば、すぐにでも安否を確認しないといけない。
悲鳴も何も聞こえないところを見ると、とくに何かが起こった様子はないみたいだ。
「………じゃあ、もう行くよ。チェックポイントはどこ。」
「ほ、本当に一人でいくのか!? おれっちが言うのはなんだけど、おれっちは一人じゃ絶対に行きなくないぞ」
「………いいから。はやく教えろ。」
催促すると、ナナシは一切れのメモを僕に渡した。
回るルートみたいだ。えっと、ふむ………。覚えた。ポケットに入れておこう。
「………じゃあ、行ってくる。」
気を付けてねー。とタマが僕に言う。気が抜けた返答を見ると、危険はなさそうだ。
こっちのことは三猫に任せておけば大丈夫か。
もし活発化したゴーストが生徒たちに襲いかかっても、今の猫たちなら、なんとかなるはずだ。
す、澄海くん、無事に帰ってきてね! とリズムも僕になんか言ってきた。本人はすごく怖がっている。目くばせでリズムのそばにクロと優が付くように指示を出す。
いや、僕は怖くないよ。だから気楽なもんだ。いちおう、警戒態勢はとっておく。
なんせ、夜だから。
こうして、僕の肝試しが始まった。
☆
「おっ、来たな澄海。待ってたぜ」
馴れ馴れしく僕を手招きする男子生徒。やっぱり名前を思い出せない。
「………それで、今日はなんで集まってるの。」
「相変わらずせっかちだな。今日は、肝試しだよ。肝試し。なんか時輝が、肝試ししたいって言い出してな。みんなそれに乗り気なんだ。」
意味が分からない。なんでわざわざ肝試しをするんだ。
………しかも、乗り気だってのもわからない。僕にもし霊感がなかったら、絶対に来たくない。
そんなアホなことをする時間があるのなら、麻雀の勉強をしているほうが有意義だ。
「なんでも、みんなこっくりさんをした時にまきこまれたからか、こわいもの見たさで、みんなオカルトにキョーミを持ち始めたみたいなんだ。かくいうおれっちも、その一人ってわけ。」
「…………………………。」
あー………くそっ! また時輝のせいか!
いつもいつも余計なことばかりしやがって………。
「えっと、それで………そこのおねーさんはいったい?」
男子生徒………名前忘れたから『ナナシ』くんでいっか。
ナナシが僕の後ろで三猫に抱き着かれていた優を見て疑問を口に出す。
「やは。ショタっ子ども。わちきは澄海ぼっちゃんの姉をしております、上段優であります。今日は監督として、キミタチが悪いことをしないか、ただただ監視にきただけだよ。特に口出ししたりはしないから、わちきのことは気にしないでね。」
おいこら、なにねつ造してんだよお前。
いや、仕方のないことだってのはわかってる。ここで水瀬なんて名前を出したら頭の弱い僕らクラスメートは混乱するだけだ。でもこんなのが姉なんて、僕は認めないぞ。
「うぅ、大人がいるのか………」
なにか気まずそうに一歩下がるナナシ。まぁ、家族には無断で家を出ている連中ばかりだろう。というか、許可をだす家などいるのだろうか。………ウチはいつでもフリーだけどさ。なんせ、幽霊退治してるわけだし。
優の姿を見たクラスメートはみな、身を固くした。大人から自分の親への伝達を危険視しているようだ
全員、親にばれないように、ここに来たってことは、相当の覚悟で怖いものを見たかったんだろう。
………………みんな馬鹿だ。
「大丈夫大丈夫。わちきは何も言わないよ。むしろ逆だよ。わちきに怯えるのではなく、わちきがいることに安堵しなさい。この場に子供がいるだけでは危なっかしいのです。少なくとも、『大人の目』が必要なのであります」
これは、タマからの受け売りだ。タマは、優を投入することにより、『大人の目』を入れて子供たちの行動に制限をかける。
さらに恐怖体験をするであろうこいつらに、『頼りにする』ことができる虚像の人物を作り出すことによって、精神面の負担を軽くしている
実は優の膝がものすごく笑っていることに、誰も気づいていない。
優だって幽霊は怖いんだ。人は見えないものにこそ、恐怖を覚える生き物だから。
超能力者であっても、それはしかりだ。
それに、優は見た目は17歳くらいでも精神的には普通の13歳。9歳か10歳そこそこの僕たちと、そんなに変わらない年齢なんだよ。
優は恨みがましく僕を睨んだ。アイコンタクトで何かを訴えてくる。
『楽しい事じゃなかったのでありますかっ! 肝試しとは聞いてないですよ!』
『……………優が要件も聞かずに快諾するのが悪い。』
『そりゃあんまりですよー!』
優は悟られぬよう虚勢を張って、『わちきを頼れ』と言っているが、霊感もないから、僕は絶対に頼らない。というか、本人が怖がっているし。
「……………それで、わざわざここに来て何するの。」
僕はため息を吐きながらナナシに聞いた。
「おうっ、今回はおれっちが仕切らせてもらうぜ! 今回は肝試しをするらしい。でだ。今回のメインは、なんといっても、澄海。おまえだ。」
「……………僕? なんでだよ。」
そんなん、みんなで勝手にやってろよ。僕や猫たちはみんなが怪我しないように監視しとくだけでいいし。そもそも、はっきり見えてるから怖くもなんともない。
「なんで? ははっ、おもしろいことを言うな。嫉妬だよこんにゃろう!」
「……………(こくり)」
そんなんだろうと思った。………はぁ、やっぱりバカばっかりだ。
つまりだ。三猫がウチに泊まるのが妬ましくて。時輝あたりが肝試しを提案し、おそらくだが、最初にタマあたりが悪乗りでもして、僕に痛い目(怖い目?)に合ってもらおう。
ってことなんだろうな。
おそらくだけど、そこまで間違ってなさそうだ。
「というわけで、澄海。夜の学校の各所にもうけられたチェックポイントにある御札を一枚ずつ持って、ここまで戻ってくるように。」
「……………御札なんて、どうやって用意したんだよ。」
一般人が持ってるようなことはないはず。
「なんか知らないけど、ティモが持ってたみたいだから、使わせてもらったぜ」
ギロッとティモを睨むと、ティモはえへへ、と全く邪気のない顔で笑った。この野郎。
「まぁ、メインの澄海を最初にして、申し訳ないけど澄海には、もう何周か回ってほしいんだ。ここにいるみんなも、こわいもの見たさでここにいる。メインであるお前が終わったら、何組かで分かれてるみんなを、チェックポイントまで連れて行ってほしい。」
……………? なんか違和感のあるシステムだな。
みんなは、どこにチェックポイントがあるのか、把握していないのかな。ああ、そうか。
把握していたら自分たちも楽しむことはできないんだな。
あれ? だったらなんで僕が何周もする必要があるんだろう。教えたら意味ないじゃん。
……………まぁいいや、でも僕が一緒に回る方がこいつらに危険は少なくなるな。
少なくとも、僕がついていれば誰かが校舎内でゴーストに襲われることはないはずだ。
僕にメリットはないけど、それを拒否する必要もないなら、僕は首を縦に振った。
それをみたナナシは―――
(………よかった。実は澄海には、クラスのみんなと仲良くなってもらいたい。だからおれっちは、そういう場を作り出した。これで、澄海とクラスのみんなも、うまいことなかよくなってくれるといいんだけどな。)
―――なんか優しい目で僕を見ていた。キモイ。
「……………時輝とか、数人が僕を驚かす係りとして、すでに校舎に入ってるの。」
「ん。まー、そーゆーことだな。おれっちが今日の放課後に確認してみたけど、結構えげつなかったぜ」
そういうのをネタバレっていうんじゃないかな。
まぁ、何が起こるのかは教えないというのは、まぁ別にいい。
だいたい想像ができるし。
「スカイぼっちゃん。怖くなったらわちきのおっぱいを借りて泣いてもいいでありますぞ」
「……………借りない。そのへんに居ろ。」
「うう………ひとりにはしないでよぼっちゃん………」
優がウザいので、その辺に放置する。
「………最初は、僕一人で行けばいいの。」
「お? じゃあ行ってくれるのか?」
「………(こくり)」
正直面倒くさい。
でも、夜の学校はマズい。もしゴーストに襲われでもしたら、守ってやれない可能性がある。
すでに校舎内で何人かがスタンバイしているのであれば、すぐにでも安否を確認しないといけない。
悲鳴も何も聞こえないところを見ると、とくに何かが起こった様子はないみたいだ。
「………じゃあ、もう行くよ。チェックポイントはどこ。」
「ほ、本当に一人でいくのか!? おれっちが言うのはなんだけど、おれっちは一人じゃ絶対に行きなくないぞ」
「………いいから。はやく教えろ。」
催促すると、ナナシは一切れのメモを僕に渡した。
回るルートみたいだ。えっと、ふむ………。覚えた。ポケットに入れておこう。
「………じゃあ、行ってくる。」
気を付けてねー。とタマが僕に言う。気が抜けた返答を見ると、危険はなさそうだ。
こっちのことは三猫に任せておけば大丈夫か。
もし活発化したゴーストが生徒たちに襲いかかっても、今の猫たちなら、なんとかなるはずだ。
す、澄海くん、無事に帰ってきてね! とリズムも僕になんか言ってきた。本人はすごく怖がっている。目くばせでリズムのそばにクロと優が付くように指示を出す。
いや、僕は怖くないよ。だから気楽なもんだ。いちおう、警戒態勢はとっておく。
なんせ、夜だから。
こうして、僕の肝試しが始まった。
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