猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第17話 おっちゃんの秘密が知りたい? 実はおっちゃんかてようわかっとらんのよ。

平和夫を討伐して、猫たちとおっちゃん、僕とママとドラムさんは一か所に集まって小休憩していた。
今頃スタッフたちはゆっくりとこの手術室に向かっていることだろう。


「修ちゃん、今のは?」


ママが小型の懐中電灯のライトをおっちゃんの顔に直接当てる
おっちゃんは眩しそうに眼を細めたが、特に嫌がったりはせず、


「にゅ? あぁ、僕はいろいろ中途半端だからさ。藁人形=自分(相手)になんないんだって。藁人形≒自分(相手)。ほんとだいたいたいこんな感じ。」


「意味わかんないし。」


 ノシッとママが僕の肩に手を乗せて体重をかける。
 ウザい


「なんちゅーか‥‥‥僕もよく把握してないですけど・・・。僕が受けたダメージを藁人形に移すやないですか。だったらそのズタボロの藁人形で相手を呪ったら、僕の能力自体が中途半端だから、藁人形=相手にならないで、帳尻合わせのダメージ交代だけしちゃうの。藁人形が無傷になって、全てが平和夫さん怪我になったのだ。ドヤァ!」


「何言ってるか全然わかんねぇ。」


 がっくりと肩を落とすおっちゃん。


「二百聞は二見にしかず。二度目だからよく見ててください。クロー、おいで。」


 ドラムさんの服の裾を掴み、ドラムさんから離れようとしなかったクロを呼ぶ。
 猫耳だけをコチラに向けたクロが、ビッコビッコと右足を庇いながら歩いてきた


「‥‥‥どう、したの?」


「足見せて」


「‥‥‥は、はぃ‥‥‥」


 クロは手術室そばに設置された椅子に座り、右足を前に出す


 おっちゃんはクロのスカートをめくり上げた


 いや、スカートパンツか。一見スカートに見えるけど、ズボンの一種だな。


 おっちゃんは一応オシャレとかに気を使ってるのかな‥‥‥


 おっちゃん自身は上下黒色(白のラインの入った)のジャージ姿で上ジャージは羽織るだけというラフな格好だ。


 上ジャージは背中に鳥のような柄がついていて、むしろ羽織る用のようなジャージだ。


 本人の肌の色と相まって、背中か白のラインを探さないと夜中は見つけづらいだろう


「包帯とるよ。」


 クロの足に巻いてある包帯を取り、傷口が露出する。


 完全に血が止まっている訳ではなく、包帯を外すと、クロの白い素肌に赤い線が下に伸びていった




「‥‥‥つぅ‥‥‥」


「大丈夫大丈夫。」


 おっちゃんは藁人形をクロに押し付け、


「ほい。」




 クロの傷が綺麗に消えた


 僕はまばたきをした記憶はない。


 あっと言う暇すらなくクロの傷が、藁人形に移っていた


 藁人形の左足から、絶え間なくポタ、ポタ。と水滴が落ちる


 その藁人形をおっちゃんが指差し、


「コレがただの藁人形でもあり、クロでもあるのね。」


 クロは目をパチパチさせている。


 自分の身に何が起こっているのかまるでわかっていない様子だ
 正直、僕だってよくわからない現象だもん。


「本当はこの藁人形は捨てちまいたいんだけど‥‥‥。うぅ、ちょっと勇気がいる………」


 自分の左手に血を流す藁人形を持ち替え、木槌で五寸釘を打ち、左手もろとも藁人形を打ち抜いた


 すると、不思議なことに釘が貫通した左手からの出血は無かったが


「いっでぇええええっっ!!! クロ、こんな深いの、よく叫ばずに耐えたなっ! っつああああ!!」


 おっちゃんは下ジャージの右側をトランクスのちょっと下までずらす
 たしかに、おっちゃんの右足の根元辺りから血が流れていた


 藁人形は無傷。藁人形と左手を貫通している釘を抜き取り、
 おっちゃんは藁人形に念を込めるような動作をすると


「ちょっと! なに堂々とズボン脱いでんのよ!」


 ドラムさんが顔を赤くしてツッコんだ。
 少しツッコミが遅かったのは脳の情報処理が追いついていないからかな


「樋口さん! ツッコむとこはそこじゃないよね!? 集中乱れちゃうよ、タイミング考えて!」


 おっちゃんの足に傷はなくなり、今度はまた藁人形の左足から血が滴ってきた


 再びダメージ交換が行われたみたいだ


 おっちゃんはジャージを引き上げて血の滴る藁人形をビニール袋に入れる


「で、この藁人形は俺であり、ただの藁人形でもあるってこと。俺もコレをもらった人にそう教わっただけだから意味なんか全然わかんない。なんとなく使えるようになったんだよね」


 おっちゃんがぽんぽんとクロの頭に手を置くと、クロは目を赤くしておっちゃんの腹部に抱きついた。


 やっぱりそうとう痛かったんだね。
 安堵したっていうのもあるだろうけど。


「おーおー。ごめんねクロ。怖い所に送り込んじゃって。痛かったろ‥‥‥」


「ううん‥‥‥修さんが、生きててよかった‥‥‥。もう二度と死なないで‥‥‥。」


「おっちゃんは死んでも死なないよ。安心しなさい。そして俺を守れるくらい強くなりなさい。おっちゃんは非力なんやで。」


「うん‥‥‥うんっ!」


 クロを抱っこしてこっちに向き返る。クロはおっちゃんの肩に顔を押し付けて声を殺して泣いた。
おっちゃんは、ぽんぽんとクロの背中をあやすように弱く叩く。


「修ちゃん、その子にずいぶん好かれてるねぇ」


「バカいえ師匠。俺の猫だよ。俺を好いてくれないと困る!」


「クロちゃんは人間でしょ。礼子さん、この変態はほっといて戻りましょう。ヘレンたちも心配しているでしょうし」


 ドラムさんはタマの変身を見ていなかったのか。
 まぁ見えていない方がいいだろう。
 そうそうこんな現実離れしたことは起こらないはずだし。


「スルーされた‥‥‥タマ、おっちゃん泣いていい?」


「ダメー」


「oh‥‥‥」






 戦闘後にそんな無駄話をしつつ、来た道を戻る。
 ドラムさんはこの現実離れした現象をどこか空想のような感じで捉えているようだ


 ちなみに、タマは服を着ている。
 おっちゃんはあらかじめ猫化を想定していたのか、三人分の着替えを準備していたみたいだ


 さすがに服が裂けることは想定外だっただろうけど。




「おーい、急に走り出してどうしたんだい? なんか叫び声とか悲鳴とか聞こえてきたけど。わっ、白黒ちゃんまでいるし、どこいってたの?」


 ヘレンさんがこちらに歩いてきながら疑問を口にする


「どうもこうもないわよ。アタシも追いついたらコイツが血まみれで倒れるし、いきなりメスが飛んできてクロちゃんが怪我するし、タマちゃんがいきなり目の前で裸で現れるしわけわかんないわよ!」


「ドム子。頭は大丈夫か? 病院いくか? 誰も怪我してないじゃん」


ヘレンさんがそんなことを言うのも理解できる。だってドラムさんが言ってることが一般人には意味不明なんだもん。


「アタシは大丈夫よ! こっちのみんなの方が異常なの!」


 ブンブンと頭を振り、僕らを指差すドラムさん。
 ………僕自身はおかしい自覚はあるんだけど、面と向かって言われると腹立つな


「礼子さん、ドム子のやつ‥‥‥なんか変なのに憑かれてるんじゃ‥‥‥?」


「いやいやナイナイナイーブリヂストン。ウチらが異常って方がよっぽど正しいヨーグルト。」


 ママがからからと笑いながら手を振る


「あんなこと言ってるドム子の方が正しいの!? ‥‥‥そういや岡田くんも瓦礫から這い上がってきたし、‥‥‥たしかにおかしいわね」


「ね!? ねっ!? おかしいでしょ!?」


「ゴホン! 人をおかしい扱いするんじゃありません。怒るよ樋口さん!」


 背後からダスッと脳天にチョップをかますおっちゃん。
 よくアイドル相手にそんなことできるな。


「アンタが一番変人でしょう。反論は?」


「あるよ! 礼子さんの方が変人じゃん!」


「なにおう!? 修ちゃん、喧嘩売ってんのか! 買ってやるよその喧嘩! あたしゃ至って普通の霊媒詐欺師だっつの!」


 認めるのかよ、詐欺師であることは。


「ほら胡散臭い! やっぱり変人は礼子さんだよ。俺じゃないね~!」


 戻って早々、ギャーギャーと騒ぎ始めるみんな。
 なんだこの茶番。


「‥‥‥。」


 僕のため息も、その茶番の喧騒に溶けて消えた







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