受難の魔王 -転生しても忌子だった件-

たっさそ

第102話 ★★技の名前は格好よくするのです!

「“エクステンドシザーちょきちょき”!!」


 出落ち。
 とは、こういう時に言うのでしょうね。




「ブギャアアア!!」


 Cランクの魔物。豚頭族オークが×字に切り裂かれて叫び声を上げながら血を噴き出して倒れました。
 傷跡からは炎が吹き出します。
 見事、としか言いようがないですね。


 キラの双剣は属性剣。それもカートリッジ式なので、『火』『土』『雷』『眠』『水』『毒』『風』の属性を入れ替えながら戦うことが出来るのであります。
 ただし、キラはそんなに器用なものではないので、一つの属性を使いっぱなしなのでした。


 もっといろんな属性を使い分けて戦ってみたいと本人も申しておりました。今は剣術の育成期間とでも言ったところでしょうか。




「うーん、『終焉之十字ファイナルクロス断罪ちょきちょき』の方がかっこいいと思うぞ」
「コレだからマイクは雑魚なのです“エクステンドシザーちょきちょき”の方がかっこいいのです」
「そもそも“ちょきちょき”を付ける意味が解らないであります」


 うーむ、おかしいですねえ。普段ならリオ殿がツッコミ役を買って出てくれるので普段はわちきがボケの担当だというのに、ツッコミしかできません。
 我が子ながら、アホ丸出しですごく恥ずかしいであります。


 しかもわちきがツッコミに回らないといけないというのもおかしい。これではわちきの存在意義アイデンティティがどこかに行ってしまいます


「それにしても、意外と魔物も多いのです」
「たしかに。Eランクの手におえるレベルの魔物じゃないぞ」
「そりゃあ、森の中まで探しに来ているのですから開拓されて整備された街道なんかとは比べ物にならない程危険なのは当然であります。」


 森の中は整備なんかされていませんし、魔獣や害獣が野放しになっているのですから、すこし欲張りすぎたでしょうか。
 一応、わちきたちの実力以内に収まるように森の中の魔物の種類を調べてから来てますから油断しない限り負けることは無いでしょう。
 しかし………


「まあ、キラ達に掛かれば余裕なのです。“転ばぬ先の笛”なのです」
「転ばぬ先に笛を置いても汚いだけであります。杖を置いてください。しかもそれは用心するに越したことは無いという意味なので、油断だらけのキラには適さないことわざであります」




 まったくもう。
 キラはいつまでたっても間違ったことわざしか覚えないであります。
 どうしてこう、頭だけは弱くなってしまったのでしょう。
 もう少し成長するまではわちきがフォローしてあげるとしましょう。


 さて、わちき達は『どくどく草』と『ねむり草』を探して街の外へと出て行きましたが、草と言えば森! ということで森の方に歩みを進めておりました。


 森の中での採取はDランク以上に推奨される行為なのだとか。


 定期的に騎士団が討伐隊を繰り出しているのですけど、森全体を狩りつくせるわけでもないですし、暇つぶしとはいえ森に来てしまえば、運が悪ければ魔物にも遭遇してしまいます


 こちらとしても、あまり魔物との遭遇は喜ばしい事ではありません。
 無駄な戦闘はしないに限ります。


 一応、“魔力探知”にて周囲の動植物の動向を探ってから行動しておりますが、避けられない戦闘というのもあるのです。
 採取の最中だったりだとか、目的の場所に魔物が居たりだとかです。


「ええと、“毒の心得”によりますと、『どくどく草』というのは強力な毒だそうです。判りやすい名前なだけはありますね」




 リオ殿から預かった“毒の心得”を開いて『どくどく草』の情報を読みます。


 “毒の心得”とは、毒を司る竜の族長“藍竜族長・アドミラ”殿より預かった、毒のすべてが書かれた書物であります。


 ただ、この“毒の心得”はアドミラ殿の直筆で、開いてみればものすごく役に立つ情報は乗っているものの、おっそろしいほどまでに字が汚かったのであります。


 開いた瞬間には呪いの文章かと思ってメモ帳を放り投げながら『ひえ!?』と漏らしてしまったほどです。


 そんなわちきを見て何事かと“毒の心得”を覗き見たキラとマイケルに至っては、そのあまりのぐちゃぐちゃな文字列に恐れをなして涙目で逃げて行ってしまいました。
 薄情な息子たちであります。




 『どくどく草』の説明と同時に『どくどく草』の絵も乗せてありましたが、そちらに目を向けてしまえば発狂しそうなほど狂った絵が描いてあるので、務めて視界に入れないようにしております。


 藍竜族長のアドミラ殿は、絵心が全くありません。
 草の絵を描いているはずなのですが、どう見てもオバケの類にしか見えないのであります。


 内容的には本当に申し分ないので、解読を進めてなんとか汚い文字の規則性を見つけて少しずつ読めるようにはなってきました。


 いやあ、苦労の連続でしたが、アドミラ殿が時折シゲ爺の館まで来てくれて世話を焼いてくれなかったらもっと時間がかかっていたかもしれません。
 このめちゃくちゃな文字の読み方を教えてもらっていなければ一生読めなかった可能性もあります。
 宝の持ち腐れですね。


 族長たちにはどこかわかりやすい欠点がありますが、みんな面倒見がいいということは共通しておりますね。


 おっと、こちらに一つ発見しました。これがどくどく草ですね。
 アドミラ殿の描いた絵とはまったく似ても似つかないです。
 特徴だけは文字で記してありますが、特徴を伝えるのが判りやすいのでとてもためになります。


「それにしても、『どくどく草』の薬の調合ですか。このどくどく草の依頼者は魔物を仕留める毒薬を作ると言っておりましたが、たしかに、どくどく草の毒を喰らえば、普通の魔物なんかはひとたまりもないですね。今度わちきのトラップにも塗りたくって見ましょう」


 おや、“毒の心得”によると草よりも種の方が毒の効果が強いみたいです。
 人間が致死量に至るのは、どくどく草の種が3つ分。なるほど、さすがは“毒の心得”であります。
 為になりますねえ。トラップの想像が掻き立てられます。むふふ。どんなトラップを作って見ましょうか


「………マイク、ミミロおねーさまがまた凶悪なトラップを考え始めたのです」
「………ひい! オレ、この間は気付かずにトラップを踏んだと思ったら宙吊りにされた挙句閉じ込められたぞ。もう実験台になるのは勘弁だぁ!」
「………キラもなのです。とらばさみも落とし穴も、首切りワイヤークローズラインも経験したことがあるのです」
「………ミミロ姉ちゃんが手加減していなかったら、今ごろオレ達の魂は三途あたりを彷徨っているぞ」
「………向こう岸の彼岸まで行っているかもしれないのです」


 おや? なぜだかキラとマイケルがこそこそと相談しております。
 こちらをチラチラと見ては怯えた表情をしています。
 なぜでしょう?


「ほら、早くここら辺のどくどく草を回収してください。キラとマイケルはいったい何の冒険者でありますか?」
「ね、ねーちゃん。オレ達は採取の冒険者だぞ!」
「マ、マイクに言われなくてもわかってるのです!」


 パンパンと手を叩いて二人を急かすと、せっせと『どくどく草』を狩りながら口げんかを始めるキラとマイケル。
 そうです。ちゃんと仲良くしているならそれでいいのです。




                ☆


「ドラゴンバスタースラッシュ!」
「同族殺ししてどうするのでありますかー!」




 大剣を振り回して大鬼族オーガを一刀のもとに切り伏せたマイケルにツッコミが炸裂します


「だってオレ、ドラゴンだぜ? ドラゴンバスターでいいじゃねえかよぉ」
「ドラゴンバスターはドラゴンをバスターしているのであります。どちらかと言えばオーガバスターですよ」


 グオオ! と苦しげな声を上げながら倒れる大鬼族オーガ
 それを尻目に、わちきは眉間に手を当てます。


 ああ、どうしてこの子達はこんなにおバカなのでしょう。


「つまりマイクはバスターされる側なのです」
「その通りであります」
「ええっ!」


 当然ですよ。その技名は禁止です。縁起でもない。
 そんなにわたわたしないでください。技名の許可はしませんよ。


「ほら、大鬼族そんなものは道具袋に仕舞いますから、はやいところねむり草の採取を終わらせてください」


 自分の3倍ほどの背丈のある大鬼族をせっせと道具袋に詰め込みました。
 大鬼族オーガ豚頭族オークなんかよりもよっぽど膂力が優れている魔物であります。


 まだ子供で未熟ながらも竜族のマイケルと同程度の筋力を保有しているのです。
 油断できません。


「ま、ミミロ姉ちゃんがトラップで足止めしてくれたから楽に勝てたんだけどな」


 そうですよ。慢心はいけません。
 わちきが足止めしていなかったら、マイケルといい勝負をして、結果負けていた可能性さえあります。


 まぁ、わちきがそんなことさせませんけどね。
 オーガの注意を逸らすのも、オーガの足に罠を仕掛けて機動力を削ぐのもシーフの仕事であります。
 命を懸けた戦いで、正々堂々なんてきれいごとはスパッと切り捨てます。
 卑怯でなんぼ。生きて帰ればそれでいいのです。


 ワイヤートラップで血を流し、マイケルの攻防に集中していたら癇癪玉の爆音で集中を散らし、避けた時に踏み込んだ足にトラップが食い込み、相手を万全の状態で戦わせないことに特化した者が、シーフなのであります。


 頭の回転を止めない事。勝つために必要な情報は常に集め続けるのが、勝利の秘訣であります


「さあ、わちきがオーガの解体をしている間にねむり草も充分に集まりましたし、戻りましょう」
「そうだな。街は………よっと、向こうか。行こうぜ!」
「夕焼け小焼けでお腹すいたのですー」


 マイケルが木の上に登って森を見渡し、そびえ立つ王城の場所を確認してから街の方へと歩みを進めることにしました。




                  ☆




「戻りました、精算をお願いします。コレが依頼書の半分です」
「無事に戻ってきていただけたようで何よりです、では………え、こんなに!?」


 冒険者ギルドに戻り、道具袋の中からどくどく草とねむり草を取り出して受付に渡します。


「本数の指定はありませんでしたし、時間のある限り採取を続けたので、結構稼げましたね。森の深部まで行ったので、すこし魔物と戦いましたが、問題はありませんでした」
「オレはもうちょっと戦いに興じて見たかったなぁ」
「キラもなのです」
「馬鹿を言わないでくださいよぅ。戦いなんてわちきはしたくありません。死ぬリスクが上がる行為をわざわざする必要はないであります!」


 後ろでキラとマイケルがわちゃわちゃとワガママを言っておりますが、怪我は嫌ですし、命の危険というのは、考えたくもないですからね。
 わちきだって痛いのは嫌なんですよ。


「で、では精算しておきます」
「よろしくおねがいします」


 受付嬢が奥へと引っ込んでしまったので、今度は素材買い取りのところまで向かいます




「どうしたんだい、嬢ちゃん」


 おや、買い取りの窓口に立っていたのは立派なお髭が特徴のおじさんでした。
 人のいい笑みでこちらを見下ろします


「採取の途中でオーガを仕留めたので、こちらに売払うっぱらうことはできますか?」






―――ザワッ!




「………ほぇ?」




 急にギルドの中がざわつきました
 何事でしょう


「お、オーガかい? それは、一体どこで見かけたんだ?」
「森の深部であります。ねむり草を採りに行っていたら奥に行きすぎたみたいでして、採取の邪魔をしてきたので、適当に倒して来たのであります」
「適当にって………それで、売却というのは?」


 そうでした。売却するからにはオーガを取り出さねばなりません!


「ちょっと待ってくださいね。よっと、こいつであります」


 道具袋に手を突っ込んでオーガを手に取り、ズルッと引きずり出してやりました


 それにしても、便利な道具袋であります。
 これはいつの間にやらリオ殿が持っていた道具袋です。


 なにやら幼少期にリオ殿が攫われたあの頃、盗賊をとっちめた際に手に入れた道具袋だそうで、かなり収納スペースの広い道具袋だそうです
 500kg位までなら入る魔法の道具袋であります。


 ただ、オーガの巨体では余裕で500kg以上あるので、内臓をすべてほじくり出してからキラの双剣による火の剣で燃やしてもらいました。


 なんとか道具袋に入れましたが、内臓だけでなく、下半身も入らなかったので、放置して来ました。
 一応金になりそうな部位ははぎ取ってきましたよ。
 足の爪とか骨とか睾丸とか。なんとか500kg以内にするのが大変でしたよ。まったく。


 キラもマイケルもいい加減に解体の仕方を覚えてほしいモノであります。
 リオ殿だってできるのですよ?
 面倒くさがっていたら成長なんてできませんよ。


「上半身とちょっとした部位くらいしかありませんが、コレをお金に替えてください」




 道具袋から取り出したオーガをドシンと受付に置きました




「んなっ! ほ、本物のオーガだ、Aランクの化け物を、こんな子供たちが………?」
「うそでしょ!?」
「そんな馬鹿な!」


 少々の悲鳴と驚きの声がその辺から聞こえてきます
 ええい、心地いいくらいにうるさいであります。
 『適当に』なんて言ってますが、ちゃんと格好つけさせてくださいよ。
 ふふん、もっと驚いてください。称えてください! うふふんふふん


「早く査定してくださいよぅ。そろそろリオ殿が学校を終えて戻ってくる時間でしょうし、はやく迎えに行かないといけないのでありま―――」




「うそだ!  お前らがオーガを倒したなんて、信じられない!」


 周囲の驚きの声に対し、調子に乗っているわちきの声を遮ってそう叫んだのは、今朝にけちょんけちょんにしてあげた、ザッツ殿でした。
 今朝けちょんけちょんにされたばかりだというのに、元気ですねえ


 たしかザッツ殿の足は、わちきのトラップでしばらくは使い物にならないはずだったのですが、よく見れば彼の足は効果の高い薬で回復させられていたみたいであります。ほとんど傷跡が残っておりませんでした。


 そういえば、“毒の心得”には薬草についても書かれておりましたね。
 いつもはキラかルー殿の光魔法で怪我は治癒してもらっていましたが、いずれは薬の調合にも手を出してみましょうか。


「そんな言われても事実ですし………。そんなに功績が欲しいのでしたら、別にあなた方が倒した事にして差し上げてもいいのでありますよ。こちらはお金さえ貰えればいいわけですし、ランクなんかに拘りはありませんからね」


 あ、ちやほやされたい願望はありますが、言っていることも本当であります。
 暇つぶしを兼ねてお金を稼ぎ、謙虚堅実に決して無茶はせず、それでいて実力を見せてちやほやされたいのであります。
 だから別に名声なんていりません。


 この気持ち、誰かわかってくださいますか? わちきだけでしょうか。くすん




「ええーっ! オレがぶった切ったのにー!」
「また切ればいいではないですか」


 まぁまぁとマイケルを宥めていたら、お髭が素敵な買い取り係りの職員が声を掛けてきました。


「功績を他人に譲渡すりゃあギルドの契約違反だぞ、お嬢ちゃん」


「あやや、そうですか。まぁ、正直なところ名声とか本当にどうでもいいので、できないならできないで別にかまわないのであります」


 正直なところ、ちやほやされたいだけですからね!


「舐めやがって………! 採取のEランク冒険者インディゴクラスの癖に」


 そんなわちきたちが心底気に入らないのか、血走った目でこちらを睨むザッツ殿。


「ぷぷっ、採取のEランク冒険者インディゴクラス“ごとき”に負けた負け犬が何か言ってるのです」
「姉ちゃん、事実とはいえ煽りすぎだぞ」
「こら、相手にする時間が無駄であります。おじさん、査定の結果が判ったら教えてください」
「ああ、わかったよ」




 すべてにおいて待ちの時間になったので、待合室の椅子に3人で腰掛けて受付さんに呼ばれるのを待ちます。


 殺気の籠った瞳をこちらに向けるザッツ達のパーティ。
 一応、冒険者歴だけを見れば、こちらの方が長いのでしょうが、それは見た目の問題もありますし、冒険者としての活動はほとんどしていません。なので相手にとってはわちきたちはルーキーです。


 天狗の鼻をへし折られ、プライドはズタズタに、しかも明らかに年下のルーキーに馬鹿にされれば、その眼も理解できます。


 しかし、こちらだって、相手が何もしなければ手出しはしません。
 何かをしそうになった時点で『やられる前に、殺る』を実践できるようにシゲ爺様に訓練をされているのです。


 ザッツたちがちょっかいを出さなければ、こちらだって本当は穏便に済ませますよ。
 手を出す相手を間違えた。自業自得という奴です。




「ミミロ様、受付までいらしてください」


 おっと、呼び出しがかかりました。
 どくどく草とねむり草の査定が終わったみたいですね




「まずは依頼の達成として、銀貨3枚と大銅貨5枚………Fランクパープルクラスの採取だけでこの短時間でよく3,500Wも稼げましたね………」
「ローニャ殿に群生地を教えていただいたからでありますよぅ」


 わちきに群生地を丁寧に教えてくれた受付嬢―― ローニャ殿を褒めるように微笑むと、ローニャ殿も嬉しそうに相好を崩しました
 ローニャ殿はフィアル殿と同じくらいの年でしょうか。二十歳くらいで、明るい赤毛と丸眼鏡が特徴のかわいい受付嬢さんであります。


「アルノーとキングアルノーの方はどうなりました?」
「そ、それについてですが、アルノーはともかく、キングアルノーは品薄状態でして、かなり高値で買い取らせていただきます」
「そうですか。ではお金は冒険者証ライセンスに振り込みでお願いします。明細書をください」
「はい、こちらになります」




 もうザッツ殿のような輩は勘弁ですからね。
 金額を公開するような真似はよしましょう。
 もうわちきをちやほやしてくれるのは、リオ殿だけで充分です。


 あまりちやほやしてくれないみたいですし、帰ったらリオ殿に今日の事をいっぱい話してちやほやしてもらうことにしました。




 ふむふむ、アルノー一つにつき銀貨5枚………わぁお!!
 キングアルノーが………大銀貨5枚………わぁぁお!!


 合計金額で金貨2枚になりました。
 一気にお金持ちですね。


「すっごい高いですね」
「キングアルノーは標高8000mのアルノー山脈を登頂して、そこから持って帰らないといけないですし、アルノー山脈には紫竜がいますから、危険だらけで依頼のランクも高いし買い取り価格もそれ相応のモノになるんですよ」
「ほっへー………」
「昔はキングアルノーの採取はBランクの依頼だったんですけどね。最近は魔物も活性化していてなかなか頂上にまでたどり着けるような冒険者は居ないので、本当に久しぶりにキングアルノーを見ましたよ」
「へえ、まぁわちきは見ての通り、竜人族なので気圧や気温の変化も慣れていますし、竜言語だってわかります。機会があったらまた採りに行ってみるであります」
「ふふっ、天職かもしれませんね期待していますね」




 そうですね。天職かもしれません。
 お金があればおいしいものがたくさん食べられます。
 つまり、実家に帰っていくらでも実っているアルノーを時々売りに来れば、おいしいものは食べ放題ということですね


 アルノーはアルノー山脈にしか成らない不思議な果物。高所でしか成らない不思議な果物。
 味気は無いですが、魔力回復薬の原料にもなるとても貴重な果物なのです


 キラやマイケルも同じようなことを考えていたらしく、顔を見合わせて『ニシシ』と笑っていました






「それと………オーガを討伐したという報告が上がっていたのですが、その件についてギルマスがあなたたちに話しがあると………」
「はい?」




 申し訳なさそうに眉を寄せながらわちきたちに頭を下げるローニャ殿。
 ギルマス? ギルドマスターの事でしょうか。
 な、何事なのでしょう。面倒事でなければよいのですが………。



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