受難の魔王 -転生しても忌子だった件-

たっさそ

第69話 ルスカがブチ切れたの、初めて見た………



        ☆ アルン・リノンSIDE ☆






 リノンは驚愕していた


「あ、こんにち―――」
「やあああ!!!」




 双子の姉がリオルを一瞬で圧倒したことはいい。
 問題はその後だ。




「ゲホッ! ゴホッ! おえっ………」


 アルンがバンダナの男の子を下し、達成感のなさそうなむなむなしい表情で佇む。




 しかし、バンダナの男の子が膝をついたまではよかったが


「え、よわい………」


 そのセリフを効いた瞬間、たしかに『プチッ』と何かが切れる音が聞こえ――
 二本のトンファーを持ったルスカが豹変した。


「リオ!!」


 ルスカはまずはリオルへと駆け寄るが
 リノンがルスカの姿を視認した瞬間には、リノンもルスカに向かって駆けていた


 それを邪魔者だと判断したルスカはチラリとリノンを一瞥すると、驚くべき速度でリノンに肉薄した
 右の足裏、ふくらはぎ、外ももの三点に【ブースト】を掛けて一瞬で加速したのだ


 ルスカは自分の代わりに攫われたリオルの為、盗賊を相手に丸腰で戦いを挑んだこともある幼女である。
 才能のある子とはいえ、8歳児程度の攻撃は止まって見えた。


「はやっ!」
「じゃましないでっ!」




 リノンが反射的に横なぎした木剣を右手のトンファーで防ぎ、リノンの眼前には左手のトンファーに備え付けられた紫色の魔石が突きつけられる




「――【ブラスト】」
「がっ!?」


 パァン! という破裂するような音と共に突風に煽られ、リノンの身体は宙を舞った


 何が起こったのかわからないまま、リノンは仰向けに倒れていた


―――負けた?
―――このわたしが?
―――なんで?


 師範代の一人の手を借りて立ち上がるも、現状を理解できないでいた


 いや、すこしだけわかっていた。
 彼女は魔法で突風を呼び寄せたのだ


―――卑怯者!!


 ここは武術の道場だ。
 魔法で攻撃するなんて反則だ!




 リノンはそう思った
 あの年で魔法を使っていること自体も驚嘆に値するが、リノンはそこに気付いていない。


 ルスカの方に目を向けると、またも驚愕することになる




 ルスカがトンファーの鞘を外すと、先端から刃物が見えていた


 それを逆手に持って敬愛する姉に向け、自分にした時と同じように目で追い切れないほどのスピードでアルンに肉薄した


 刃物。
 刃物である。


 武術の道場で剣術を習うアルンとリノンは、刃物は危ないので持たせてもらったことは無いが、本当に危ないということはよくわかっている


 将来的に剣を使って冒険者として生きていくと思っていた二人は、刃物の本当の恐ろしさをわかっていたのだ


 刃物は、“命を刈り取るためにあるもの”である


 道場はいわば訓練場だ。
 本物の刃物を使った訓練などはしない。


 それゆえやや危機感が薄れていた部分もあるだろう
 しかし




「あああああああああ!!」
「ひっ!」


 アルンも、突然突き付けられた刃物に恐怖を感じ、身を固くした
 突き付けられた死への恐怖。


 それを幼い身で受け、硬直しない者はいないだろう。
 アルンが身を固くしたことは仕方のない事であった


 当然、ルスカはそんな大きな隙を見逃すようなことはせず、トンファーブレードを躊躇いなくアルンに向けて振りおろし―――


―――ガギン!




 という金属音によって、アルンの柔肌を刃物が裂くことはなかった




「………しばらく見ぬうちに、ルスカはだいぶ過激になったようだな。」


 ゼニスが斧槍ハルバードの柄でルスカのトンファーを受け止め


「あー、すまんな。オレがルスカ嬢に刃物を持たせてしまったばっかりに」
「はなしてー! リオをぶったの! ルーがやっつけるの!」


 ジンがルスカを押さえつけていた
 そのままトンファーブレードをルスカから取り上げる


 ぺたりと座り込んだアルンの股からはちょろちょろと暖かい液体が流れていた


 ルスカのあまりにも凄まじい圧力に恐怖し、失禁していた




「う………ぐぐ………」
「あ、リオ! だいじょうぶ? だいじょうぶ? いたいいたい?」


 リオルが腹を押さえて立ち上がり、ルスカの元へと歩み寄る
 リオルの表情は困惑顔だ


 自分の為にそこまで怒ってくれることは正直うれしい。
 しかし、自分のせいでルスカが『人を殺しそうになった』ということが、どうしても我慢できなかった




「ルー。僕の為に怒ってくれてありがとう」




 まずはルスカを落ち着かせるために、ほっぺを撫でながらお礼を言った。


「でもね、よく聞いて。人を殺そうとするのは、よくない事だ。
 ほんとうに死んだ方がいい人って言うのは、悪いことをした人だ。彼女たちはそんなに悪い人かな?」


「リオをぶったの! リオをぶつ人はわるい人なの!」


 ルスカはリオルがまだ村で生活している頃、親や伯母から打たれていたことを知っている。
 ルスカの中では、リオルを打つ人は無条件で悪であった


「ちがうよ。彼女たちが襲い掛かってくるのは解ってたことなんだ。これは訓練なんだよ。
 ルスカが僕のために怒ってくれるのは嬉しいけれど、そのせいでルスカには人殺しになってほしくない。
 これは、彼女たちに対抗できなかった僕が悪いんだ。」


「でも、でも………」


 リオルが諭すように説得するがそれでも、子供故に納得できない部分が多々あった


「リオはつよいの! リオはまけないの!」


「うぐっ………」


「リオは叩かれるのが怖いの………。だから、ルーが守ってあげたいの………」


 ルスカはリオルとよく組手をする。
 その際、リオルはいじめられていた頃からの癖なのか、暴力を受け入れる姿勢でいる


 脅威に対して目を瞑ってやり過ごすことしかできないのだ


 ゆえに、ルスカにも転がされ、現に今回も腹に痛烈な一撃を貰うことになったのだ


「それに………リオのこと、よわいって言ったの………」




 それが決め手だった
 ルスカにとっては、リオルは自分の敬愛する偉大な兄である。
 自分の代わりに盗賊の身代わりになり、自分を守るために村に攻めて来たドラゴンを下し
 常に自分たちの前に立ち、勇気と目標を与えてくれるすばらしい兄を侮辱されたのが、どうしても許せなかった




「………それでも、よーく考えて? 確かに、僕は弱い。それは本当のことだ。
 だから僕は負けた。だからといって、それが“相手に刃を向けていい理由”になる?」


「うゅ………。」


「これは殺し合いじゃない。訓練だ。それをはき違えるようなら――」


 リオルは拳を握って振り上げる。
 普段から暴力を嫌うリオルが拳を握ることは無い


 ルスカが間違ったことをした時も、怒るではなく、いつも優しく諭していた。


 でも、本気を出したリオルなら、自分を木端微塵にすることも可能だろうと思い直したルスカは、ギュッと目を閉じ


(―――きらわないで!)


 その拳を振り下ろされる衝撃を待った




―――コツン と、リオルの左手がルスカに触れた


 想定していた衝撃とは異なることを不思議に思い恐る恐る目を開くと


「ぅう?」


 リオルは困ったような笑みでルスカを見下ろして


「もう、抱きしめてあげないぞっ!」


「――――っ!!!!!!!」




 その瞬間の、ルスカの絶望した表情と言ったらなかった。
 リノンは、師範代に支えられながら、そうぼんやりと思った






        ☆ リオルSIDE ☆






「………ごめんなさいなの」


 先ほどルスカが吹っ飛ばした女の子とトンファーブレードで刺しかけた女の子に向けて頭を下げるルスカ。


「うん、ちゃんと謝ることができる子はえらいよ」
「うゅ………にへへ~♪」


 こうして甘やかしてたから、ルスカは僕にべったりになってしまったのだろうか。
 ありうる。


 しかし、あぁ~~~~っ! 僕もルスカと離れたくないっ!


 さっきちょこっとルスカを叱ったことも少なくない罪悪感がぁぁあああっ!
 それに、最後のルスカの絶望する表情は、本当にこの世の終わりみたいな顔をしていた。


 ルスカがそんな表情をするなんて思ってもいなかった


 僕の心を抉るその表情を心を鬼にしてなんとか目を逸らすことに成功した。
 心を鬼にしてやっと目を逸らすことしかできない程だった。


 それ以上は鬼の心を持ってしても良心の呵責に耐えかねた


 だから、まずは『ね、ルー。あのおねーさんたちに、謝ろうか』
 とルスカに手を差し伸べた。


 僕の中の鬼めっ。どんだけルスカを甘やかすんだっ!
 こんな僕が魔王の子って大丈夫か?




 少々ルスカに怯えながらもなんとか許してくれた二人の門下生
 すみっこでひそひそと会話をしていたが


「リノン、男の子はすごく弱かったわ」
「アルン、女の子はすごく強かったね」


「むー! また言ったの!」
「どうどう、ルー、押さえて押さえて」


 それを聞いてルスカが再び駆け出そうとしたのを必死に止める
 落ち着きなさい。キミ達も悔しかったからってルスカを煽らないの!
 また漏らすよ!


 ちなみに、アルンっていう女の子は服を着替えてもらった。当然だ。


 ルスカにあんな恥をかかされたのだ。一生の黒歴史になるだろう。ナンマンダブ。




 珍しくルスカがガルガルと威嚇を繰り返す。
 ルスカの人間関係には『好き』か『大好き』しかないと思っていたけれど、初めて『嫌い』が現れたかもしれないね。


 傷害沙汰になりそうになったものだから、ルスカからトンファーは没収。


 しばらくつかっちゃいけません。
 ジンには刃物のついていない普通のトンファーを作成してもらおう。
 それでも、ルスカに持たせたら十分凶器だ。


 おそらく、警杖刃マジックトンファーはルスカにとって一番丁度いい武器だろうからね。


 トンファーを貰った当日、そして初めての実戦であれだけ武器の本質を引き出して戦えたんだ。
 ルスカにあれ以上しっくりくる武器は無いだろう。






 ちなみにだけど今は武道館の隅で僕たちは体育座りをしている。
 なぜかというと、竜の族長と師範代たちの模擬戦をやっているからだ。


 僕たちの実力はだいたい計られただろう。
 次は本番。


 ゼニスは槍術の師範代との模擬戦を。
 ジンは斧術の師範代との模擬戦を。
 ニルドは棒術の師範代との模擬戦を。


 もちろん、結果的には三人とも圧勝した。




 師範代を超えるってか。すっげーや。


 周りの門下生たちも自分たちに武術を教えている師範代の負ける姿に口元をあんぐりさせていた


 イズミさんは剣術の師範代と模擬戦を行ったようだけど、【ブースト】なし、【魔闘気】なしの型にはめ込んだ試合だったからか、それなりにいい勝負をしたけれど敗北してしまった




 まぁ、イズミさんは一番若いしね。
 族長じゃなくて戦士長だし。大槌斧ハンマーアックス専門のジンに刀の修行をさせられても、中途半端になるのは仕方のない事だ。


 ちなみにフィアル先生は魔法オンリーで武術経験は貴族として剣をたしなむ程度らしく、僕ほどじゃないにしてもかなりヘッポコらしい。


 一応【最適化】とゼニスとの特訓の成果で 【ブースト】が使えるけれど、やはり本職は魔法なので模擬戦は無し。


 最後のニルドの試合が終わると、武道館の中の人たちは拍手していた。
 なかなかにハイレベルないい戦いだったらしい。


 残念ながら僕の眼にはほとんど映らなかったから、糸魔法の空間把握で見逃さないよう常に武道館全体を覆って、脳内に戦いの様子を映す。




「す、すっげー」
「にゅ? リオ?」


 僕はルスカを落ち着かせながら糸で状況を視ていた。
 三人とも、師範代相手に勝てちゃうんだもん。しかもすっごくかっこいい!


「ほわぁ………強いとは思っていましたが、なんというか、かっこいいですね………」


 フィアル先生も言葉にならないという感じで感想を漏らした。
 心なしかポーッとニルドを見つめている気がしないでもないような気がする。


「………スケベなのに」


 うん、多分あってる。
 どこかジト目になりつつ、ニルドに拍手を送るフィアル先生。


 ほほう。




                 ☆




 師範代たちの試合もひと段落。
 拍手喝采に口元をω←こんなふうにして両手をブンブンと振り応じるニルド。
 テンションだけは高いようだ。




「………みな、腕は落ちていないようじゃの。」


 ニルドや他の族長たちへの惜しみない拍手が収まってきた頃。奥から老人が現れた


 老人と言っても、その体格は大きく、いかにも『武術してます』と言わんばかりの筋肉が着物越しにも見て取れた


 老人が、あそこまで美しく洗練された筋肉を持つことがあるだろうか。


 少なくとも僕はそんな老人は目の前の人物以外知らない。




「うげ! シゲ爺! 見てやがったのか!」
「当たり前じゃ。誰がお主らに戦い方を教えたと思っておる。」


 その老人をニルドはシゲ爺と呼び、いつもの飄々とした雰囲気が少しだけ硬くなっていた
 見ればジンやゼニスもピシッと気を付けしている。


 やっぱり、この人がシゲ爺か。
 色竜の強さのランキングは “赤≧橙≧黄≧緑≧青≧藍≧紫” この順番のはずだから『緑』はちょうど真ん中のはずなのに、族長の力関係では緑が頂点に立っているようだ。


 このランキングって言うのはおそらく気性の荒さからついているのだろう。
 不良が強いのは世の常だ。


「して、そこにおるのが、今回の会議の本題たちじゃな?」




 髭を撫でながらこちらに目を向ける。
 その目線の先に居るのはもちろんキラケルと僕たちだ。


 その厳格な顔立ちに、僕も無意識にたたずまいを直す
 自分の本質を見破られるような鋭い眼光に押されて後ろに体を逸らしてしまった


「そんなに怯えんでもよい。ワシは何もせんわい。」


 ああ、やばい。
 この人には魔王ですら敵わなそうな雰囲気がある


 どういうことだよ、魔王って魔界の頂点だろ?


 竜の族長がそれを超える風格って………


 冷や汗を流しながらゴクリと生唾を飲み込む


「さあ、余興は終わった! 皆自身の鍛錬に励むのじゃ!」




「「「はいっ!」」」


 パンパンとシゲ爺が手を鳴らすと、門下生たちは自分の武術の部門へと三々五々と散った
 シゲ爺の一言により、僕たちの隣で体育座りしていたアルンとリノンとかいう双子も立ち上がり―――


「「べー!」」




 舌を出して去ってゆく二人に、ほんのちょっとだけイラッ☆ とした。
 まぁ、その程度。腹を立てる程じゃないし、先ほどルスカに恥をかかされたと思えば分らなくもない。
 イラッとしたけど、中学生目線という上から視点を持つ僕ならば、微笑ましいとまで感じることは出来る。


 大人な視点を持っていても、武器を持って迫ってこられたら体格差からかかなり緊張しちゃうけどね。


 しかしここは武術道場。
 魔法さえ使えれば目を瞑っていてもさっきの子供程度ならば問題なくあしらえるんだけど………
 いかんせん、【ブースト】無しの接近戦闘では2歳年上であるだけで十分脅威であったようですよ。
 まったくもう。


 ルスカが僕の手をぎゅっと握った。ルスカは僕以上にイラッときたようだ。
 幼いから、当然だね


「まったく、あの子たちは素行に少々問題があるのう」


 ため息を吐きながらシゲ爺も髭を撫でてアルンとリノンの背を目で追った


「少々口は悪いが、あれでも腕の立つ子達じゃ。嫌いにならんでおいてくれ」
「うん。僕は大丈夫。僕が接近戦で弱いことは最初から知ってたからね」
「むー! リオはつよいのー! あのコたち、キライなの!」




 ぷくーっとむくれるルスカに苦笑しつつ、ルスカの手を取り立ち上がり、シゲ爺に向き直る


「初めまして。知ってるとは思うけど、僕が魔王の子のリオルです。こっちが神子のルスカ。」
「むー………」
「ルー、伯爵さまにごあいさつして。」
「ルスカなの………。」
「よく言えました。えらいえらい。」
「うにゅ………にへへ~♪」


 なんだかんだでルスカは単純だ。
 シゲ爺へのあいさつすらちょっと不機嫌になっていたけれど
 僕のゴッドハンドに掛かれば一瞬で笑顔になる。




「ふむ。ニルドから話は聞いておるが、ずいぶんと仲が良いようじゃな。」
「そりゃもちろん。僕はルスカ無しじゃ生きていけないくらいだ。」
「ルーもなの!」




 ペタリと僕に引っ付いたルスカを見て、シゲ爺は先ほどまでのいかつい雰囲気はどこへやら。
 微笑ましいものを見る目でこちらを見た


「えっと、明日の会議まで伯爵さまのお屋敷に泊めていただけるということで………ありがとうございます」
「そんなに畏まらんでもよい。シゲ爺と呼んでくれ。どうせ門下生たちもワシのことをシゲ爺と呼ぶしのう」




 結構フランクなのだろうか。
 アルンとリノンの会話を聞く限りじゃ確かにみんな『シゲ爺様』と呼んでいるらしいことから伯爵っていう位で呼ぶよりは親しみやすいかも
 それじゃ遠慮なくシゲ爺と呼ばせてもらおう。
 どうせ心の中じゃシゲ爺って呼んでいたしね。


 ちょっと恐い学校の先生と同じように、近くに来るとなぜか緊張してしまうところがあるけれど、悪ささえしなければ問題ないだろう。
 ときどき敬語が混じってしまうのは、仕方のない事だと思う。
 無意識に緊張しちゃうもんだからつい………


「それで、こっちが黒竜のマイケル、この子が白竜のキラだよ」
「じーちゃん………かっちょいい………っ!!」


 マイケルに至ってはそういう堀の深く強い雰囲気の滲み出すものがすべてかっこよく見えるそうで………
 ジンと同じように尊敬の眼差し光線をシゲ爺に送っていた


「キラなのです。まったく、マイクは昔からちっとも変わらないのです! ちょっとは成長してほしいのです。」


 口を開けばマイケルの悪口。
 うん。ツンデレだって知ってるからかわいいものだね。


「今晩はよろしくお願いしますなのです、シゲ爺さま」


 ちなみに、マイケルとキラは10歳くらいの少年たちと剣で模擬戦した所、圧倒的なパワーと技術で全く相手にならなかった。
 この子達強くなりすぎ。


 そもそも、マイケルは一年前の時点で鉄鉱石竜メタルドラゴンの足止めが可能なほど強くなってしまっている。
あいてにならないのは当然だ。同じようにマイケルと毎日喧嘩しているキラもしかりだ。


「うむ。遠慮はいらん。ついてきなさい、屋敷まで案内してあげよう。」


 クルリとシゲ爺が向きを変えて武道館から出て行くので、僕たちもその後に続く。




「なぁシゲ爺。もう誰が到着してるんだ?」
「すでに橙竜族長アシュリーと藍竜族長アドミラが宿舎に着いておる。これで残りの族長はあと青のサンディだけじゃな。」
「ふーん。じゃあもうほとんど揃ったわけだNa☆ サンディちゃんは水中特化だから翼が退化しちまっているし、遅れるのはしょうがないか」


 ニルドがシゲ爺の隣についてそんなことを言った


 へー、橙竜の族長は女の子なのか。アシュリーね。藍竜族長のアドミラは知っているけど、こっちは名前だけじゃ性別もわからないや。
 聞けば、その他各色の戦士長もすでに宿舎についているようで、紫竜戦士長のテディも着いているようだ。


 ゼニスが時間にルーズだからだね。テディは頼れる戦士長なだけある。
 ゼニスはフィアル先生のおかげで遅刻しないで済むから良し。よかったね、ゼニス。


 なつかしいな。あとでミミロと二人っきりの時間を作ってあげようかな。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品