受難の魔王 -転生しても忌子だった件-

たっさそ

第67話 精霊円舞・友の舞



        ☆ ???SIDE ☆




 太鼓の音が聞こえる。


 楽しげな歌が聞こえる


 でも、あたしは楽しくない。


 街の中央で輪を描き、男女が曲に合わせて楽しげに踊っている。


 それを冷めた目で見るあたしがいる。


 どうせあたしには、一緒に踊ってくれる友達すら、いないのだから。


 醜い醜いあたしには、友達はいないの。


 味方なんて、誰もいないの。


 醜い顔をしたあたしは、いくらやさしい王子様でも裸足で逃げ出してしまうだろう。


 物語では王子様と結ばれるのは、虐げられていても結局は美しさ。


 たった皮一枚で美醜が決まるなんて、残酷もいい所。


 ほら、また人があたしの顔を見て眉を寄せた。


 ああだれか、あたしをあの輪の中に連れ出して。


 あたしだけの、王子様。






「ファン。ここにおったのか、探したぞ。」
「………ごめんなさい、おじいちゃん。」
「無事ならよい。ワシは心配性だからの。心臓に悪い思いをしたらいつポックリ逝ってしまうかわからんわい」
「大丈夫。おじいちゃんはあと300年は生きられるわ。」
「その頃には、ファンのひ孫のひ孫が産まれておるやも知れんのう」


 おじいちゃんは白髪しらがの混じった緑色の髭を撫で、あたしの頭を優しく撫でる




「のう、ファン。先ほど屋台で“バロット”と“脳みそカレー”があったのじゃが、食うかの?」


 バロットとは、アヒルの卵を羽化直前で茹でた料理である。
 タマゴを割ると、そこにはもうすぐ産まれる予定だったアヒルの子の姿。


 少々の罪悪感を覚えるも、珍味である。あたしもおじいちゃんもそれが好きだった。
 羊の脳みそを使ったカレーも、ゲテモノ料理ではあるものの、あたしとおじいちゃんは好きだった。




「ん。食べるわ。」
「そうかそうか。せっかくの豊穣祭じゃ。一緒に楽しむとしよう」




 食べる料理はことごとく醜いモノばかり。
 まるであたしの顔のよう。


 だけど、それがおいしいのだからしかたない
 思わず頬が緩んでしまう


「ほっほっほ、やっぱりファンは笑顔の方がかわええのう。」
「あたしの笑顔なんて、醜いだけよ。」
「そんなことないと思うがのう」


 あたしは右手で自分の右の目蓋からほっぺたにかけて撫でる




 忌々しい。
 前髪を流してそれ・・を隠す




 それ・・を隠しても、あたしの素肌はすべて隠れたりはしない。




「………。」


 自分の手の甲を見てみる。
 褐色の肌。


 まったくもって、忌々しい。




 人の美醜が、皮一枚ですべて決まる。
 なんて残酷な世界なのだろう。




「そうじゃ、ファン。明日はワシは用事で屋敷から出られんのじゃ。」
「用事?」


 その様子に首を捻る


「お客さんが来る。ファンと同年代の子供も来るそうじゃ。友達になれるといいのう」
「ど、どうねんだい………? だ、ダメ!」
「ふむ? どうかしたかの?」
「き、嫌われるわ。ど、どうせ………また、怯えられちゃうもの………」


 手が震える。
 同年代の子が、ウチに来る?


 なんで? どうして?


「このまえニルドと緑色の髪のお姉さんが来たじゃろ。その姉さんのお友達だそうじゃ。仲良くしてあげてはくれんかのう」
「ムリよ。あたしには………できないわ。仲良くしようとしても、きっと………その子からあたしから離れていくもの」


 あたしは醜い。
 あたしは醜い。
 あたしは醜い。


 醜さのせいで親からも捨てられた。


 どんなに隠していても、あたしの側に寄ってしまえば、すぐにわかることになる。
 どれだけあたしが醜いか。




「自分から諦めてはダメじゃ。心を強く持てと常日頃からあれほど言っておるであろう?
 ファンならできる。その子もきっと、ファンと仲良くしたいと思っておるはずじゃ」


 その子は男の子だろうか、女の子だろうか。


 どれだけ切望しても、あたしの醜さは変わらない。


 期待するだけ無駄なんだ。あたしの顔を見た人は、みんな同じ顔をする。


 まずは目を見開いて、悲鳴をもらす。
 そして、口に出してしまう。『気持ち悪い』と。




 今度も同じだ。
 期待なんか、初めからしない方がいい。




「今日は客人が泊まりに来る日じゃ。むろん、その子も一緒じゃろう。
 安心しなさい。もしファンを虐めるような子であったならば、ワシが直々に殴り飛ばしてやるわい」


「おじいちゃんが殴り飛ばしたら跡形も残らなくなっちゃうからやめて。」


「ほっほっほ」




 おじいちゃんは髭を撫でながら笑うだけだった。
 泊まりに来る、か。


 不安だなぁ。






                  ☆






「いやー、一瞬だったNa!」
「ええ本当に………。」




 ニルドが頭の後ろで手を組んで口元をω←こんなふうにしてニィっと笑い、フィアル先生がすこしぐったりしていた


 さらっとフィアル先生の肩を抱いて支えてあげる彼の優しさを誰か見てあげて。


 フィアル先生は魔力消費が激しすぎて、一時的な貧血状態。
 フィアル先生も多くの魔力を持つ魔法使いだけど、さすがに大陸を往復するという長距離をゲートで繋ぐのは相当魔力を消費したみたいだ


 フィアル先生はポーチから魔力回復薬を取り出すと、ぐいっと飲み干した。
 アルノー山脈の特産物。アルノーの濃縮エキス1000mg配合、アルビタンDだね。


「ふぅ………落ち着きました。ニルドさん、ありがとうございました」
「にゃはは、お礼は体で支払ってくれればいいZe☆」
「そこまでのことはしていないでしょう。そういや、どさくさに紛れておしり触っていましたね。何か奢ってくれたらチャラって事にしておきますよ」


 ジト眼のフィアル先生の視線を口笛を吹いて受け流すニルド。
 先生のおしりを触っただと!? けしからん!


 あとでニルドのおしりを蹴っ飛ばそう。


 僕たちはフィアル先生の魔法で、東大陸から中央大陸に再び戻ってきた。


 ここにいるメンバーを紹介しよう。


 まずは子供の
 僕。ルスカ。キラケル。ミミロ。
 この5人


 そして、色竜族長の
 ジン。ゼニス。ニルド。


 戦士長のイズミさん


 最後に、唯一の人間族、フィアル先生。


 計10人だ。


 大所帯だ。




「ここが、【世界樹】ですか。」


 僕のとなりでイズミさんがぽつりと呟く
 イズミさんは僕と同じく、前世の記憶を持った人だ。
 赤竜戦士長でありながら赤竜亜種の紅竜。
 フィアル先生と同じくポニーテールがよく似合う凛々しい女性だ。
 フィアル先生のぴっちりしたポニテではなく、後頭部でゆるふわにまとめたポニテだ。


 族長会議には、族長と戦士長が参加することになっているらしい。


 戦士長が参加するのは、まぁ顔見せだ。
 次期族長候補としてみんなに顔を覚えてもらっておこうってこと。


 なんというか、百年以上の長い付き合いになるだろうしね。


 ちなみに、紫竜戦士長のテディと黄竜の戦士長はすでにリョクリュウ伯爵宅についているそうだ。
 ゼニスたちは僕たちを呼ぶために東大陸まで来たみたい。




「おっきいのー♪」


 僕の手を繋いだルスカが万歳して世界樹のおおきさを表す
 ここはサザン森林。
 森林の中の小さな広場。そこから見える天高くそびえる大きな木は、まるで僕たちの来訪を祝福するかのようにサラサラと木の葉を揺らす音を立てる


 目をキラキラさせて目の前の風景を楽しむ姿に、僕の頬も緩む。


 そう、目の前には世界樹とかいうとてつもなく高い木がある。
    ここからだと、もう天辺まで見ることはできそうにないや


 フィアル先生がすでに世界樹の近くにゲートを設置していたらしく、旅支度を特にする必要もなく目的地の近くにワープした。


 本当にこういう転移系の無属性魔法は便利だ。


「世界樹の周辺には緑竜の里、エルフの集落、リョクリュウ伯爵領があるの。世界樹はリョクリュウ伯爵領の観光名所だね」




 顔色の良くなってきたフィアル先生はニルドから距離をとり、僕たち子供に言い聞かせるように説明してくれた


 エルフの集落!!!


 やっばい! すごく行ってみたい!


 エルフに会いたい会いたい会いたい!


「でも、エルフの集落には方向感覚を狂わせる結界が張ってあるみたいで、たどり着けないんだって」


「…………!!!!」


「そんなに落ち込むことなの、リオル?」




 異世界でエルフって言ったらやっぱりロマンじゃないか。
 会えないって、そりゃないよ………




 地面にorzどころか肘までついて項垂れる僕をニルドがひょいと持ち上げて肩車。
 ツンツン頭にしがみつく。ふむ。結構堅い




「にゃはは、そんなに落ち込むなって。たぶんすぐ会えるZe☆」
「ほんとう?」
「ああ。今は秋だろ? リョクリュウ伯爵領では今豊穣祭っていうお祭りをやってんだ。
 いろんな種族が集まっていて、屋台とか開いてるんだZe☆ 羊肉の串焼きに小龍包。焼売、ケバブにちまき! うまいもんがいっぱいあるからNa!」


 祭りごとはみんな大好きってことだね。
 おいしいものがあったらそこに行く。
 楽しげなものを見つけたらそこに行くってね。


 というか、やけに中国っぽいラインナップだこと。


 そう聞いたら遠くの方でがやがやと楽しげな声が聞こえてくる。
 街が近いんだ。


 ニルドは僕を肩車したまま街の方へと歩き出す。


 他のみんなもそれに続く


 それにしても、フィアル先生は一度ここに来ているんだね。
 来ていないとゲートを記録できないでしょ。


 そう聞いたら、ちょっと遠い目をして乾いた笑みを浮かべながら
『あはは、こうでもしないと、ゼニスさんが時間にルーズだから、大事な会議をすっぽかしそうだったんだよ………』
 と言っていた。


 ゼニスの為に自力で族長会議の場所を特定してゲートを記録したのか。


 そう思っていると、実は赤竜の里に寄る前にニルドがフィアル先生の魔法の有用性に目をつけて連れて行ってあげたそうだ。それから一緒に緑竜族長に挨拶をしに行ったらしい。


 それにしても、二人っきりで? なんで?
 女に節操のないニルドと二人っきりってめっちゃ不安。
 フィアル先生美人だし、ニルドと二人っきりなんて怖いじゃん。


 でもニルドはとくに何かをするわけでもなく、口調はチャラいけど紳士的にエスコートしてくれたそうだ。
 ほほう、ニルドは本格的にフィアル先生を口説いていないかい?


 ちなみに、族長会議を開く場所は、中央大陸東部のクロッサ王国、リョクリュウ伯爵領。
 わかっているだろうけど、言うなれば緑竜族長のテリトリーだ。


 あたりが緑いっぱいで空気がおいしい。


「イズミさんイズミさん。」


 ニルドの肩の上からイズミさんに声を掛ける


「はい。」


「屋台だって。たこ焼き食べたくなってきちゃった」
「ふむ、そうですね………。専用の機材がないので、お好み焼きで我慢してください。」


 イズミさんは料理上手。
 東大陸に日本料理を浸透させた張本人だったらしい。


 なんてこった。
 僕はそんなイズミさんに次の晩御飯をリクエストするけど、まぁこんな世界にたこ焼き器があるとは思えないからね、しかたないか。


 こんなふうに日本の会話ができるイズミさんは重宝している。


「お? なになに、イズミちゃん料理作れんの? にゃはは、今度俺にも作ってYo そんでたこ焼きってなんだ? 美味いのか?」


「うん、おいしいよ! こう、丸くて一口大の大きさで、アツアツで、中はトロットロで、中にタコが入ってて、ソースをからめてマヨネーズ掛けて食べるんだよ!」
「にゃはは、どんなものか全然わかんねーけどリオルはそれが好きなんだNa」


 ま、僕は前世でもお金がないからあんまり食べたことないけどね
 夏祭りに侍刃が食べていたたこ焼きを一つもらったことがあったな。あれはおいしかった。


 そういうわけで、僕は屋台で買い食いするお金があったら貯金するよ。




 うーん、たこ焼き器が無いのであれば、作ればいいんじゃない?
 今度ジンに製作を依頼しておこう。




 とりあえず、街についたら冒険者ギルドに寄ってお金を降ろそう。
 鉄鉱石竜メタルドラゴンの売却金といろんな結晶石を売り払ったお金で6歳児の保有財産がとんでもないことになっているから、お金に心配はない。




 いっちゃえば、僕ら子供たちのお金をみんな合わせれば、豪邸を一軒余裕で買うことだって可能なレベルでお金を持っている。
 鉄鉱石竜メタルドラゴン一匹は僕たちの力だけで倒したから、みんなで山分け―――


 なんてことはなく、ほとんどは僕があずかっているけれど、やっぱりそれでも子供に持たせておくには超大金がルスカやキラやマイケルの通帳ライセンスに入っている




 でもま、超大金があるとしても、無駄遣いはするつもりはあらへんよ。
 ご利用は計画的に。
 前世ではお金は散財されるものであって、全然貯金できなかったからね。


 ちまちまとへそくりをためて貯金していくしかないのよ


 僕が守銭奴になるのは仕方のない事だと思う。




「おっと、そうこうしている内に街に到着だZe☆」




 門に居た衛兵さんは仕事をしているが、街に入るのはお祭りの最中だからか素通りだ。
 大規模な旅行客とでも思っているのだろう。


 街に着くと、どこからともなく陽気な歌が聞こえてくる。
 聞いているだけで気分が高揚してくる不思議な歌だ。


 さっきまでの沈んだ心境も吹っ飛んだ。


「ねえ、お祭りの最中ってことは宿屋なんかはどこもいっぱいいっぱいなんじゃない? 僕たちはどこに泊まるの?」


 ふと疑問が産まれた。
 会議は明日だから、僕たちは一度どこかで泊まることになるだろう。
 でも、こんなお祭りだとどこもかしこも満室だろう。
 そこんとこどうするのです?


「ん? そんなんシゲ爺の所に決まってんだろ。」
「伯爵の家に!? 恐れ多いよ!」


 シゲ爺は辺境伯爵をしているって話だったし、伯爵ってかなり偉いんでしょ!?
 そんな人のおうちにお世話になるなんて、ちょっと考えられないよ!


 僕は前世から貧乏人なんだから、貴族とか一生縁のない話だったもん!


「んー、そんなの俺様は気にしたことないZe!」




 うわお。ずーずーしいとはニルドのことを言うのだろう。




「りーおー」


 僕は内心で冷や汗を流していると、天使が僕を呼んだ。
 なんだいハニー。呼んだかい?


「あ、ごめんニルド。降ろしてもらっていい?」
「ほい」
「ルー、こっちにおいで」


 地面に降り立つとマイスイートエンジェル、ルスカたんが僕に左腕にくっついた。
 リオル成分が不足していたようだ。


 ぺたっとくっついて「にへへ~♪」と天使の微笑みを僕に向ける


 うお、エンジェルスマイル!


「本当に、仲が良いんだNa」
「とーぜん。何を当たり前のことを」
「あたり前なの! ねーリオ♪」
「ねー♪」


 顔を見合わせて「ねー♪」するとルスカが僕のほっぺたにキスしてきた
 恥ずかしそうに「んふふふふ~♪」と腰をくねらせる。


 あかん、萌え死んでまうわ


 転生してからこのかた、この子が支えになってくれたおかげで折れなかったと思う。
 だって転生してから絶望しかなかったんだよ?
 ルスカが僕の味方でいる限り、絶望なんか跳ねのけて見せる


 この子のおかげで今の僕があるんだ。
 ルスカの為だったらなんだってやれる。


 今この命があるのだって、ルスカのおかげだ。
 ルスカが死ねと言えば、僕は喜んで死のう。悲しいけれど、それがルスカの望みであれば、僕はルスカの為にできることはなんだってする。
 なんせこの命は、ルスカがくれたものだから。


 だって、最初は自殺しようと思っていたけれど、この子の天使の笑顔を見れば思いとどまれた。
 虐待を受けても、ルスカが光魔法で治癒してくれなければ、前世と同じように歪んだ骨格になっていただろう。
 それに、ヘタしたら何度か死んでいるはずだ。


 こんな小さい身体をして、何度も僕の命を救ってくれているんだ。
 それなのにルスカはずっと僕を慕ってくれている。
 こんなにうれしいことは無い。感謝してもし足りないよ。


 ルスカは僕に従順なんだけど、実は逆もしかりだ。
 僕もルスカにいろいろなことをしてあげたいんだ。


 歪んだ愛と言いたければ言うがいいさ。
 それだけ、僕の中でルスカの占める割合が大きいんだもの、仕方ないよ。


 かといって、ルスカの教育を間違えるつもりはない。
 すでに僕が道を踏み外しかけているけれど、道徳的なことはしっかりと教えていくつもりだ。




「リオ! あれ、たのしそうなの!」
「あれは………どっかで見たことあるな。なんだっけ?」




 ルスカが僕の手を引っ張ってどこかを指差す。
 ルスカの指差す先、街の中央広場に人が集まって男女が何かを踊っていた


 フォークダンス?
 ではないな。見れば男性が胸に左手を当てて女性に右手を差し出し、『おどりましょう?』
 と言っているようだった。


 シャルウィーダンス?
 イエス、プリーズ


 女性は男性の手を取って広場に向かった


「あれは………お祭り限定のナンパかな?」
「うむ、『友達になりましょう』という意味も込められているぞ」


 僕が疑問に思っていることをゼニスが答えてくれた。


「ふーん。あの人たちが踊っているのはなんなの?」


 少なくともオクラホマミキサーではない。
 もっと舞踏会とかで披露されてもおかしくない、円舞ワルツだ。


「あれは精霊円舞エレメントワルツだよ。中央大陸でエルフの王女が踊っていた事で広まった踊りなんだよ。学校で踊りを習うから、大抵の人は踊れるし、覚えるのも簡単だから見ているだけでもやりかたはわかるよね」


 今度は僕らが先生、フィアル先生が答えてくれた。
 精霊円舞。どこかで………あ、そうだ。
 東大陸で鉄鉱石竜メタルドラゴンを倒した後ジャムのおっさんが踊っていたんだ


「あの人が踊っているのは《友の舞》かな。お友達やお友達になりたい人と踊るのが通例だよ。音楽が盛り上がってきたときには《友情舞踏》っていうちょっと激しいテンポに変わるの。他にも精霊円舞エレメントワルツにはいっぱい種類があるんだって」


「ふーん。」


 懐かしのフィアル先生講座。
 いつも通り、少しだけわかりにくい説明だった
 まとめてみよう




 精霊円舞エレメントワルツには二種類ある。
 《舞》と《舞踏》だ。
 文字通り、舞は旋回するような動きで緩やかに踊る
 そして、舞踏はちょっと激しく踊るように舞うらしい。
 ちなみに円舞を踊っている最中に流れている曲は、【伝統歌唱トラディションリリック ・陽気の唄】
 という、人々を陽気にさせる効果のある曲らしい。


 催眠術の類かな。自己暗示でもなんでもいいや。たしかに楽しくなる唄だ。


 そして、円舞の種類だけど、《友の舞》の他に《愛の舞》とか《喜びの舞》《怒りの舞》《楽の舞》などなど、エトセトラ。踊りにも種類があるっポイ


 さすがに覚えきれないや。




「リオ、いっしょにやろ?」
「うん、いいよ。踊ろうか」


 ダンスのお誘いを受けた
 どうせ会議は明日からだ。時間は余っている。
 でも一応ゼニスたち大人の顔色をうかがうと


「私達はここで待っているから、行って来い。」
「うん、ありがと」


 お許しをもらった。
 僕はルスカの手をひいて広場へと向かった


「フィアルちゃんも、俺様と一曲踊るかい?」
「うーん、せっかくのお祭りですからね。わかりました、踊りましょう」


 あっちもあっちでドラマがありそうだ。
 というわけで、広場の中央で他の人たちを見よう見まねで踊ってみた






……………
………





「痛いのです! さきほどからマイクは足を踏みすぎなのです!」
「ねーちゃんはおれの足を蹴りすぎだぞ!」
「ケンカうっているのです?」
「うっさい! それはこっちのセリフだぞ!」


 ゲシゲシと手を繋ぎながら足の応酬を繰り返すキラケル。
 向こうも向こうで仲よさそうだ。







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