受難の魔王 -転生しても忌子だった件-

たっさそ

第52話 鉄鉱石竜の石化吐息





 僕らの下からいきなり姿を現した【鉄鉱石竜メタルドラゴン


 採掘をしてただけなのに、なんでこんなことになるんだか






『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』






 それに、鉄鉱石竜メタルドラゴンの咆哮。


 竜言語で『魔王様、見つけた』


 あれは、どうも僕を探していたっぽい。
 僕は空中に跳びながら思考する。


 いきなり真下から現れるものだから右足に《ブースト》を掛けて真上に跳びあがるしかできなかったんだ。
 だから今の僕は空中だよ。着地予想地点は鉄鉱石竜の真上。


 鉄鉱石竜メタルドラゴンは現職の魔王様が人間界に送り込んだという噂があった。
 もともと、鉄鉱石竜メタルドラゴンは人間界の魔物ではなく、魔界の魔物であるらしい。


 5年前から東大陸に急に鉄鉱石竜メタルドラゴンが現れ、町や鉱山を蹂躙しながらゆっくりと西へ移動していたって問屋の人が言ってたっけ。


 僕が産まれた時と合致するね。


 赤竜の里は東大陸の西寄りにある。
 それなりに海も近い。


 人里に降りたのは三年ぶりだって言ってたし、大陸の西端だから、ジンは鉄鉱石竜メタルドラゴンの存在に気付くことができなかったって悔しそうに言ってた。


 だからジンはこの鉄鉱石竜メタルドラゴンを討伐するために出発していたはずだ。
 ジンはこいつの討伐に失敗したのか?


 いいや、その可能性は考えたくない。


 たしか、鉄鉱石竜メタルドラゴンは2匹居たっていう話だ。


 だから、そのうちの一匹がここに来たんだろう。そう考える方が自然だ。


 でも、ここは資源の少ない鉱山のはずなのに?
 鉄鉱石竜メタルドラゴンにとって、この鉱山はおいしい鉱山ではないはずだ。


 じゃあ、なぜ現れたのか。
 その答えが、『魔王様、見つけた』ってことなんだろう。


 僕はこんな竜に見覚えはないし、魔王になった記憶もない。


 だけど僕は《魔王の子》だ。
 僕を探しに来とすぐに結論が出た。


 なぜ僕の場所がわかったのかはわからない。
 でも、コレが結果だ。


 僕を探していて、僕の敵なのか味方なのか判断ができないけど、僕はさっきこいつに食べられかけた。
 この竜は頭はいい方ではないのかもしれない。
 僕を探しに来たのに僕を食べようとするくらいだしね。


 だけど、それが逆に僕を安心させてくれた。


 僕が殺されかけたということは、僕が殺しても文句は言えないということだからね。


 よくわからん敵に容赦をするほどの甘さはない。
 バカな竜に感謝だ。


 速攻で殺そう。
 殺して晩飯にするんだ。


 こいつを殺せば、鉄鉱石竜メタルドラゴンが喰らった鉱石を納品して、珍しい鉱石でも見つかればさらなるボーナスが期待できる。


 あと、こいつはジャムのおっさんを食った。
 僕の髪を見ても怖がらなかったおっさんの仇でもある。


 殺さなければならない理由ができたんだ。
 ふつふつと怒りが湧いてくる


 ためらう必要はない


 行け!!




「【岩石創造クリエイト・ロック】!」




 僕は空中で密度の高い大岩を作成。


「【十倍加重グラビティ・テン】!!」


 それに重さを付加する。
 咄嗟に考えた僕の必殺技。3歳の時、紫竜の首を落とした断頭刃ギロチン時に使った連携でもある。




 名づけて


「【隕石落としメテオ】!!!」






―――バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!






 という耳を塞ぎたくなるような轟音を残して
 鉄鉱石竜メタルドラゴンの丁度頭に【隕石落としメテオ】が直撃した


 出てきてそうそうだけど、僕は今、オマエのせいで虫の居所が悪いんだよ。
 さっさと死んでしまえ




『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!』


「アハハハハハハハハハハ!!! って、うわあ………」


 咆哮。竜言語の意味は無い




 マジか。あれを喰らって生きてんの?
 紫竜だったら確実に頭が潰れている威力だったはずなんだけどなぁ


 しかも、たいした傷跡がない。
 どーゆーこっちゃ。


 密度の高い大岩を作ったから鉄鉱石竜メタルドラゴンに直撃した後も大岩は割れていない。
 とっさだったから鉄塊は作れなかったけど
 鉄塊を落としても、おそらく結果は同じだっただろう。




 傷跡は無いけど頭にダメージは通ったみたいだ。
 痛みによってその場で悶えている。


 着地するなら今の内か。


 闇魔法で自分を浮かし、落下地点を変える。
 聞きたいことがあるからイズミさんの隣に着地した。


 イズミさんは親方たちの避難誘導をしていた。
 ルスカたちもそれにしたがって鉱山夫のおっさんたちと逃げているのが見えた


 急に空から大岩が降ってきて鉄鉱石竜メタルドラゴンにぶち当たったにもかかわらず、ぴんぴんしている鉄鉱石竜メタルドラゴンに、体を震わせる鉱山夫たち。


 もー! 震えている暇があったら早く逃げてよね!!


 空から無傷で着地した僕にすこし驚いていた様子だったけど、鉱山夫たちはすぐに逃げ出す。
 それは僕にとっては好都合だ。


 僕とイズミさんも移動を始める
 逃げるためじゃなくて、迎え撃ってみんなが逃げられる時間を稼ぐために。


「イズミさん。なんなのあいつ! さっき、『魔王様見つけた』って!」
「ええ………確かに言っていましたね。なぜかはわかりませんが、リオルの事を探していたのだと考えるのが妥当だと思います」
「そっか。なんで僕を探していたのかはわかんないけど………ねぇ、コレが鉄鉱石竜メタルドラゴンでいいんだよね!?」
「はい、おそらくは………。わたしも初めて見たので………」


「………そっか。とにかく、一度ジンに連絡を取るよ。鉄鉱石竜メタルドラゴンを狩りに行ったようだけど、ここに現れるなんて!」
「はい、お願いします!」


 僕はジンにつなげておいた《糸魔法》の念話を発動。すぐにコンタクトを取った。


『ジン! なんでかわからないけど僕を探しているみたいで、こっちに鉄鉱石竜メタルドラゴンが来た!』


 こんな時の為にジンに糸魔法を繋いで置いてよかった
 念話って本当に便利だ


 でも、ちょっと慌て過ぎて言葉が支離滅裂になっちゃった。


 ジンは僕の言葉を咀嚼してわかりやすく脳内変換したのか


『なに!? もうそっちに行ったのか!』


 ジンも慌てた様子ですぐに念話に応じてくれた


『なにか知ってるの!?』


『いや、こちらではすでに一匹倒したところなのだが、こちらの鉄鉱石竜メタルドラゴンもリオルを探しているようだった。オレも急いでそちらに向かう。なんとか耐えてくれ!』


『………わかった、やってみる』




 そう言って念話を切った。
 よかった。ジンはすぐに来てくれるみたいだ




 それをすぐにイズミさんに伝える
 鉄鉱石竜メタルドラゴンを見上げるイズミさんの足は、震えていた
 まぁ、元々が平和な日本人ならしかたないけどね………。


 ………平和? じゃあないか。僕はその日本人に殺されたようなもんだし。


「イズミさん。怖いんだったら逃げた方がいいんじゃないかな。僕だって怖い。死にたくない。でも、あいつは僕を狙ってると思うから、僕が囮になっているうちに他の人たちの避難誘導をしてもらっていいかな?」


「いいえ。ダメです。ジンにリオル達の事を任されました。一緒に逃げるならまだしも、わたしを逃がすためにリオルが囮になることは許しません」


 ありがとう。そう言ってくれるのはすごくうれしい。
 でも―――


「うーん、一緒に逃げるっていってもあいつは絶対に僕を追って来るよね。それは下策だよ。イズミさん、竜形態の自分より大きい生物を殺したことは?」


「………ありません。赤竜はドラゴンの上位種。色竜カラーズドラゴンはすでに人間界ではほぼ最強種ですから。」


 ………だよ、ね。
 最初から敵なしなのに、いきなり強敵と戦うことになっても、竦んでしまうのは目に見える。
 今までは竜という種族の恩恵で敵はいなかったけど、イズミさんは初めてて見る明確な敵に、竦んでしまっているようだ。
 僕だって同じだ。怖い。


「ですが、わたしは約束を守る『人間』です。リオル達の事は、わたしが守ります。」




 イズミさんは腰に据えられた刀を抜いた。
 紅い刀身のその刃は、まるで燃え上がるかのような鮮やかな紅色。




「この刀は、紅熱石とわたしの鱗によって作られた魔刀・『紅煉ぐれん』です。」


「ほう………」


 緊急事態だというのに、思わず見とれてしまった


 だが、それも一瞬の事。




―――ゾクリ


「「 っ!! 」」




 視線を前に戻す


 よくわからないけど、なぜか嫌な気配がした。
 見れば鉄鉱石竜メタルドラゴンがブルブルと頭を振り、嗜虐心に染まる瞳でこちらを見ていた


 ようやく脳震盪から解放されたということか。
 明らかに、空気が変わった。
 本気になったということか


 全身から黒いオーラを出しながら僕たちを見下ろすその口元は、かすかに笑っているように見えた


 鉄鉱石竜メタルドラゴンが再び動き出してしまいそうだ。


 冷や汗が頬を伝う。




「おそらくジンはすぐこちらに向かってきてくれます。わたしの実力では鉄鉱石竜メタルドラゴンを倒すことはできません。
 ジンが来るまで、時間稼ぎをしましょう! 鉄鉱石竜メタルドラゴンの《眼》と《ブレス》に注意してください!」




「り、了解!」




 僕とイズミさんは二手に分かれた。




『宣言通り、しっかりと僕を守ってね! 僕は魔力が多いだけの5歳児なんだから。』


『当たり前です。アレを倒すとまではいきませんが、守り抜くだけはするつもりです』




 僕はイズミさんに糸を貼り付け、念話で会話をしながら鉄鉱石竜メタルドラゴンの背中に向かって左右から回り込む。




『まずは敵の機動力を奪います。動きを封じることはできますか?』


『任せて!』


 前に盗賊を相手した時のような甘さは、今の僕には無い。
 機動力を奪うなんて甘いことは言わずに、一気に潰す!!


 僕は両手を付きだし、思いっきり振り下ろす


「【百倍重力グラビティ・ハンドレットォ】!!」




――――ベッゴオオオオオオオオオオオン!!!




 というよくわからん爆発音みたいな音を出す。
 僕が重力を掛けたところに巨大な四角いクレーターができていた
 その地面だけをえぐり取られたかのような………


 うわぁ、百倍だとそんな風になるんだ
 闇魔法は本当に世界をどうにでもできちゃいそうな魔法だなぁ




 今まで、僕は『十倍重力グラビティ・テン』までしか使ったことは無い。
 だけどこいつは今までにない厄介な何かだと、僕の直観が告げていた


 機動力を奪うどころか、ぺしゃんこにするつもりだ。




 しかし




『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』






「うっそ! あれでうごけんの!?」




 クレーターの中心で埋まっていた鉄鉱石竜メタルドラゴンはのっそりと起き上がった。
 もうやだあいつ!


 もちろん、僕は重力を解除したつもりはない。
 なんでかはわかんないけど、鉄鉱石竜メタルドラゴンには闇魔法の効果が薄いんだ
 全くと言っていいほど堪えていない!


 この様子だと、先ほど大岩に付加した重力も、意味をなしていなかったのかもしれない




『ごめん、あんまり動きを止められなかったみたいだ』


『いえ、充分です』




 イズミさんは自分の体に炎を纏わせる
 赤竜は色竜カラーズドラゴンの中で炎を司る竜だ。 黄竜が雷を操れたように、赤竜は炎を操ることは容易なのだろう。


 そのまま、炎を刀に纏わせる。
 炎刀か………かっこいいな、あれ。




「行きます!」


《ブースト》で加速し、刀を一閃




――― ギィイン!!!!!




 金属同士がぶつかり擦れる不協和音が響く。




『くぅ………さすがに硬いですね………何度も続けたら刀が先にダメになりそうです』




 イズミさんは鉄鉱石竜メタルドラゴンの右前脚に切れ込みを入れた


 だけど、切り口は浅い
 《ブースト》込みの竜人の筋力でそれだけしか傷つけることができないという事実に、僕は愕然とした


 “黒いオーラ”と強靭な“鉄鋼鱗メタルスケイル”により刃が思うように通らないのだ






 なんなのこれ! ジンはこんなやつを一人で二匹も倒しにいったの!?
 すでに一匹狩ったって言ってたし!




『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』




 訳すると『邪魔するな』


 どうやらイズミさんを敵として認識したみたいだ。


 鉄鉱石竜メタルドラゴンが口を大きく開ける




『ブレスが来ます!! 下がって!!』






 クレーターの中央で鉄鉱石竜メタルドラゴンがブレスを吐いてきた


 狙いはイズミさんみたいだ


 僕も一応クレーターから距離を取ってブレスに備える


 僕だって一応竜の生体には詳しいつもりでいる。
 最上位の竜はブレスを吐く。コレ常識。


 赤竜は【火炎吐息レッドブレス】 まぁわかるよ。
 紫竜は【真空吐息パープルブレス】 さすが気圧の低い紫竜だ。息を吐いているのに真空波になるのは僕には意味が分からない仕様だけど、紫竜にとってはこれも常識。まともに喰らったら切断されるよ。
 ブレスには竜属性の魔力を使うらしく、魔力に属性を持たないゼニスはブレスを吐くことができないんだって。


 では、鉄鉱石竜メタルドラゴンはどんなブレスを吐くのか。


 答えは僕にはわからない。
 イズミさんに先に聞いておけばよかった


 クレーターからブレスが襲い掛かり、イズミさんはすぐさまクレーターから跳び出す
 それでもなお、ブレスはイズミさんを追ってくる。


 イズミさんはクレーターの外周をグルリと回って―――僕の所に走ってきたぁ!?
 そのままイズミさんは僕の首根っこを掴んでクレーターの外周を走る


 うわわわ! 僕のすぐ後ろまでブレスが迫ってきていた


「ちょっ! 僕まで巻き込まないでよ!」
「すみません! リオル、土壁を!! あのブレスには石化効果があります!!」




 なんだって!? 石化!?


 絶対に喰らってはいけない類のものだ。
 ブレスは所詮は吐息。


 障害物を作って分散すればいいんだね!


「了解! 鉱物創造ミネラルクリエイト、【鉄壁アイアンウォール・V】!!」




 前方に土属性の核となる魔力を射出。
 フィアル先生に教えてもらった《最適化》を行う。


 これは魔法に応用性が増す技術。


 単純に土壁を作り出す魔法から、鉄を作り出す。
 さらに、込めた魔力は逆V字型に変形し、想像イメージ通りの形状に変化。
 逆V字の中心に僕とイズミさんが入った瞬間に魔法の発動、鉄壁の発生だ。




 逆V字の形状なら、効率よくブレスの威力を分散できる。
 下手に曲線にするより効果的だ。


 ブレスは所詮は吐息。
 鉄鉱石竜メタルドラゴンのブレスを防ぎきることができたみたいだ




「ほぅ………さすがですね、リオル。」
「イズミさんも【氷壁アイスウォール】くらいなら出せるんじゃないの?」
「わたし程度の【氷壁】ではすぐに破られます。それに、わたしはV字型に張るなんて器用な真似はできませんし。」




 そっか。なら仕方ないね。




 ブレスが止んだので、逆V字の壁からひょっこりと顔をだすと―――




「さて、あいつはどうかな? ブレスを防がれて悔しがって―――ちょま!」


 僕は慌てて土魔法で地面を隆起させる


 顔を出した瞬間に巨大な砲弾が飛んできた!
 もうやだあいつ! 攻撃を防がれたら今度はこっちのターンだろ!?


 砲弾を受け流せるように斜めに隆起した地面に着弾し、受け流し損ねた




―――ドバアアアアアアアアアアアアアアアアン!!




 轟音を立てて僕が隆起させた土が舞う




 本当は受け流したかったのに、土壁程度の防御力しかないわけだけど、なんとかわずかに砲弾の軌道を逸らすことができたよ


 危なかった。
 おそらく僕が張った鉄壁もろとも破壊しうる威力だったからね


 一応鉄壁をもっと固く補強しておこう。えい。


「まったくもう、いったいなにしやがったのさ。」


 今度は同じようなへまはしない。
 【糸魔法】で鉄鉱石竜メタルドラゴンを監視する




 降り注ぐ土の残骸が視界を邪魔するけど、よく見れば鉄鉱石竜メタルドラゴンは尻尾をこちらに向けていた


 尻尾の先端には穴が開いており、さながら大砲の砲口のようだった


 なるほど、あの尻尾から大岩の砲弾(?)を射出したってことだね
 よし、さっきの砲弾には鉄鋼砲弾メタルキャノンと名付けよう。


 さらに近寄って糸魔法を尻尾の砲口の中にまで潜り込ませてみると、今まさに再装填中であった


(………うーん)




 僕はちょっとだけ考える




(………邪魔しちゃえ!)


 実体化した僕の糸は隙間さえあればどこにでも入っていける。






 僕は糸魔法の先端を鉄鉱石竜メタルドラゴンの尻尾の奥に潜り込ませる








「ありゃ、行き止まりだ」
「ん? なにがですか?」




 僕の独り言に反応するイズミさん
 ふーむ。尻尾の砲口から内臓に直接糸を通して内臓をズタズタにするつもりだったけど、尻尾は根本で行き止まりになった。
 残念。


 どうやらさっきの鉄鋼砲弾メタルキャノンは魔法的なもので作られた大岩らしい。
 再充填には少し時間がかかるようだ


「んっとね、糸魔法であの鉄鉱石竜メタルドラゴンがさっき放った砲弾の砲口に糸を突っ込んでみたんだよ。」
「うわぁ………。それで、なにをするのですか?」


 鉄壁の中で僕を抱きかかえ苦笑いのイズミさん。
 先ほどの砲弾を警戒してまだ鉄壁から出ることができない


「内側からなら鉄鉱石竜メタルドラゴンに反撃できるかなっと思ってね。でも、途中で行き止まりになっちゃった。しかたないからこのままやっちゃおう!【火炎障壁ファイアオブスタクルex】!!!」


 ゴウ! とう音が鉄鉱石竜メタルドラゴンの尻尾の中で響き渡る


 僕と糸は一心同体。糸の先端から炎の壁を作りだし、内側から焼き払う。
 糸の先から魔法を出せるまで、結構修行したんだよ?
 魔眼持ちのゼニスと魔法のスペシャリストフィアル先生にも協力してもらったから、意外と早くできるようになった。


 僕は運動ができないからね。相手に気付かれないように攻撃する手段が欲しかったんだよ。


 障壁の防御魔法は上級グリーンクラスの魔法だ。
 それに込める圧縮した魔力の量は多いため、超級イエロークラスの威力がある






『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』






 ククク、砲弾の代わりに尻尾から炎が噴き出すさまは滑稽だね!


 尻尾から炎を吐くのはそれはそれでかっこいい竜の姿だけど、さすがに体の内側から燃やされたとあっちゃダメージの一つでも通るもんでしょ!
 本当は炎で焼き切りたかったけど、ほとんど鉄鉱石でできている身体だからか、切断には至らなかった
 残念


「イズミさん、今なら逃げられるよ! ここから出よう! 今すぐに! 急がないと鉄鋼砲弾さっきのがもう一発くるよ!」
「あ、はい!」


 イズミさんは僕を抱きかかえて鉄壁から抜けて走り出す。


 走る方向はルスカ達が逃げて行った方向の逆方向。さっきまで僕たちが居た鉱山だ。
 あいつが僕を狙っているというならば、みんなに被害を出さないためにも僕とイズミさんだけでも別方向に逃げるべきだ


 ふと周りを見れば、あたりの木々や地表が固く軽石のように変質している。
 僕が出した鉄壁の表面も変質してしまっていた。
 なんだこれ。ブレスの効果かな?


 いや、今は逃げることを考えようか
 イズミさん、僕が贅沢を言える立場じゃないけどもうちょっと優しく抱えてほしい! わき腹締め付けられて少し痛いよ!






『ガルルルルルル、グルルル』






「「 え!? 」」






 クレーターの中心で獣のような唸り声を出す鉄鉱石竜メタルドラゴン


 その竜言語に、僕とイズミさんは走りながら顔を見合わせて脂汗を掻く


 まずいまずいまずい!!


 さすがにそれはダメだ!!




「イズミさん!! 戻って!!! あいつの好きにさせちゃダメだ!!」
「はい! わかってます!!」




 鉱山の方に走り出したばかりだけど急ブレーキをかけて急停止
 すぐに元着た場所に戻る


 あいつが言ったのは、『お前より、先にあっちの人間を喰らうとしよう。』


 僕とイズミさんの慌てようを確認した鉄鉱石竜はあざ笑うかのように僕たちの方に尻尾を向けて、鉄鋼砲弾メタルキャノンをぶっ放してきた






 ―――ドバッガガガガガガガガ!!!!!!!






 もともと尻尾の内部が焼け爛れていたためか、尻尾の内部で暴発。


 結果、鉄鉱石竜メタルドラゴンの尻尾が爆ぜた。


 尻尾はさまざまな鉄鉱石でできていたらしく、破片が散弾のようにあたりに散った




「【鉄障壁アイアンオブスタクル】ッッッ!!!!」




 僕は瞬時に鉄壁を発動。その陰に隠れて散弾をやり過ごす


 ガギンガガガガ! と僕が作り出した鉄の盾に小さな砲撃が当たる
 あまりの威力と弾数に、盾の方がぶっ壊れそうだ
 何とか魔力を込めて強化し分厚く作り替える


 それが収まった時、糸魔法で様子を窺うと、クレーターの中心にぽっかりと穴が開いていた


 あの隙に鉄鉱石竜メタルドラゴンは、地中に潜って移動を開始していたんだ








 ルスカ達の方へ。







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