受難の魔王 -転生しても忌子だった件-

たっさそ

第48話 これで僕たちは冒険者だ!

 街に着いた。
 ジンの所有する竜車は町では目立つ。


 鈍竜は色竜カラーズドラゴンですらない下位竜レッサードラゴンとはいえ、立派なドラゴンだ。


 体長は紫紺竜に生まれ変わる前のミミロと同じくらいだね。
 5m級。かなり大きい。


 のっしのっしと町の中を竜が歩く光景は、見る者に恐怖を与え、見る者に羨望を与える。


 そんな鈍竜の頭の上に仁王立ちで立っているのが、僕らがムードメーカー、ミミロさんだ。




「さー、どどんこ殿! 進むのであります!」
『グルル!』(おまかせください!)




 鈍竜の名前は『どどんこ』 名づけは赤竜戦士長のイズミさん。


 うーん。僕が言えたことではないけれど、イズミさんも大概にネーミングセンスが悪いね
 僕だったら『閃光のジークバート』とかつけるかも。
 なんで二つ名みたいになっちゃうのかな。鈍い竜なのに閃光とはこれいかに。


 通行人たちは小さな子供が鈍竜の頭の上ではしゃいでいる姿を見上げてはギョッとする
 そして、鈍竜を操っている御者がジンであることを確認すると、あの人の竜なら大丈夫だろうと頬を緩めた




「おねーさま、すごいのです! キラもそこにいくのです!」
「みみろおねーちゃん、いーなー! おれもそこにいきたい!」
「あー! キラもマイケルもズルいの! ルーもいくの!」
「あはは、ここはわちきの特等席であります! 何人たりとも寄せ付けませ………ああ! マイケル! もっと中央に寄ってください! 落っこちてしまいますよ!」




 鈍竜の背中によじ登る子供たち。
 こんな光景を見ていると、日本のことわざをおもいだす。


 『馬鹿と煙は』ってやつ。まさにそれかもね!


「ジン、あの子たちを鈍竜で遊ばせといていいの? 食べられたりしない?」
「む? そもそもリオ坊はどどんこに乗らんのか?」


 そういえば、僕は5歳児でした。


 でも僕は落ちるのが怖いから鈍竜に乗ったりはしないよ。


「あの高さから落ちたら打ちどころが悪かったら死んじゃうからね。僕はいかない。」
「ふむ。謙虚なことだ。ま、落ちたとしても心配はいらないがな。」


 言った側からマイケルが鈍竜の頭から滑り落ちる
 言わんこっちゃない。




 そう思っていると、鈍竜はマイケルが地面に叩きつけられてしまう前に右手でマイケルをキャッチした


「び、びっくりしたぁ~。どどんこ、ありがとー!」
『ガルル』(次は気をつけなさい)
「………はーい」




 しゅんとしたマイケルを竜車の荷台に乗せるどどんこ。結構器用だな


 荷台から再びどどんこの背中に飛び乗りよじ登るマイケル


「ま、もうそろそろ街の問屋に到着する。そこでしばらくマイケルたちをどどんこで遊ばせておくつもりだ。
 手のかかるガキを相手させるのにどどんこはちょうどいい。」




 ああ、ジンが鉱石とかを買っている最中にマイケルたちが何かをやらかしてしまうのを防ぐためにどどんこに遊び相手になってもらうつもりなのか


「………っと、そうこうしている内に、到着だ。おーい、ガキども。しばらくそこで遊んでろ!」


「「「「 はーい! 」」」」


「イズミ。ガキどもに異変がないか、随時チェック。目を離すなよ。」


「かしこまりました」


 一礼するイズミさん。


「リオ坊はどうする? 一緒に来るか?」
「うん。社会勉強だね」
「勉強熱心なこって」


 ジンはそう言って僕の頭を撫でた。大きくてごつごつした男らしい手だ。
 僕もこんな人になりたい




 そのためには、まずは腹いっぱい食べないとね


 ジンは僕を竜車の荷台から降ろしてくれた。


「それにしても、ガキの癖によく勉強なんかしたがるもんだな。」
「それは、あれだよ。僕は社会的弱者だから、世の中の事をよく知っておきたいんだ。
 虐められるのは辛いよ。そのせいで僕は人間のことが嫌いだし、人を殺すことに僕はもう抵抗は無いけど、あまり目立ったことをするつもりもないしね。」
「そうか。………だが、人間が嫌いだと言いながらも、人里に下りてきた。なぜだ?」


 なぜ? それはジンが誘ったからだけど?


「ジンが誘ったんじゃないか。身分証を作るってさ」
「オレが誘ったとしても、断ることは簡単だろう? 身分証だって、別に今すぐ必要ってわけでもないのだ。人間が嫌いならば、行く必要はないであろう?」


 あー、そっか。ジンが言いたいことはわかった。
 僕の心の中の矛盾だ。


「そうだね、たしかに、人間の事は嫌いだ。だけど、僕は人間に僕の事を認めてもらいたいんだよ。
 魔王の子でも、人間と仲良くすることができるってね。
 僕が嫌いなのは、『僕を嫌う人間』ってこと。大抵の人は偏見で僕の髪を見ただけで剣を抜くから嫌い」


「ま、そりゃ嫌いにもなるか。すごいな。リオ坊は村でも忌子扱いだったのであろう?
 よく復讐とか考えなかったな」


「人間に復讐したところで何も生まれないし僕も満たされないよ。
 なにも事情を知らない人間を殺したって僕が怨みを買われるだけじゃん。
 僕が殺すとしたら、理不尽に僕に敵対する人だけだね」




 前世だったら考えさえしないことを考えるようになってしまった


 昔はネズミ一匹殺せやしないただのいじめられっ子だったはずなのに。
 考えが少しずつ物騒になってきている


 でも、僕はこの矛盾した考えを止めるつもりはない。
 フィアルの事は好きだし、人間ではないけど、ウサ耳少年のラピスくんは僕を怖がったりしなかった。友達にもなってくれた。
 そういう人が居るから、人間を殺したいほど憎いとは思えないでいる
 フィアルもラピス君も、僕を認めてくれた。僕を認めてくれる人だって居るんだよ。


「ま、お前を見た時からリオ坊から危ない気は感じなかったから、特にお前が何かをやらかす心配はしていないさ。」


 そう言って、ジンは問屋のある建物に入っていった
 僕もその後に続く
 僕を信用してくれてありがとう。




                     ☆




「は? 鉄鉱石がない!?」


 素っ頓狂な声を出すジン


「製鉄がないならわかるが、鉄鉱石までないとはどういうことなのだ」


 今にも業者の胸倉をつかみかかりかねない形相だ


「ξΨ●∽ДЮ、∥§………▼ξΨ〇И£!!」


 ジンが東大陸の人間語で業者にそれを聞く
 早口すぎて聞き取れなかった


『ははははははい、申し訳ありません。近頃このあたりの鉱山にまで鉄鉱石竜メタルドラゴンが二体出現した模様でして………』


 東大陸の人間語でそういう問屋の人。
 イズミさんに習っておいてよかった。なんとか聞き取れるレベルだ。


 メタルドラゴン? なにそれ強そう


 色竜カラーズドラゴンとは違うの?




 聞けば色竜とは関係のないものだったらしい。
 だけど、色竜よりも強い個体だそうだ


 討伐ランクはSSランク。災害クラスの魔物らしい。


 特徴としては、鉱山で鉱石を食べる竜だとか。
 さまざまな鉱石や結晶を食べて、体表に食べた鉱石が浮き出ることがあるとかないとか


 そのせいで竜が固い。
 竜の鱗に鉱石を足したようなその体に傷をつけられるような者は“勇者”レベルの化け物でないと無理だそうだ


 メタルドラゴンは現職の魔王様、“ジャックハルト”が人間界に送り込んだという噂すらあるそうだ。
 話によれば、5年前から突如として現れ、東大陸から各地の鉱山を拠点にしながら町や村を破壊し、ゆっくりと西に移動しているらしい。


 5年前って言ったら、僕とルスカが産まれた時と同じくらいか。
 ………偶然、だよね?


 今の所、大きな国には被害は無し。王国の騎士団を討伐に向かわせるか向かわせないか大きな国では審議中だとか。
 悠長なことを言ってる場合じゃないってのに!




 赤竜の里は大陸の西側にあり、海も近い。
 三年ぶりに人里に降りたこともそうだが、大陸の西端故にジンは今まで鉄鉱石竜メタルドラゴンの情報を知ることができなかったそうだ。


 そう、ジンが憎々しそうに語ってくれた






「ま、オレでも倒せないことは無いんだがな。疲れるのだ」






 ジンでもギリギリの戦いになるかもしれないということか


 そりゃそうか。
 竜は勇者と肩を並べて戦ったりしていたし、人間の中にも勇者と同じようにパーティを組んで戦っていた人もいた。
 勇者が超人なのは変わりないけど、才能と努力次第で人間でも勇者の近くまで技量を高めることは出来るはずだ。


 緑竜族長のシゲ爺だって、勇者に師事したことがあるらしいし。
 竜と勇者は力がどっこいくらいなのかな


 ちなみに、“勇者物語”の勇者パーティメンバーは勇者前衛、人間の騎士団長タンク古代長耳族ハイエルフ固定砲台アーチャー支援バフ神子ヒーラー白竜遊撃とバランスのとれたパーティだった。


 騎士団長は主人公の親友として、主人公を時には助け、時には喧嘩し、互角に戦える良い友だったな。
 人間なのに、勇者に匹敵する力を持っていた。騎士団長すげー!


 ジンは竜だから同じくらい強いだろうけどね。


「しゃーない。もう一つの方の用事に行くか。」
「あ、僕たちの身分証ってやつ?」
「そうだ。」


 ガシガシと赤い髪を掻いたジンは、少しだけ苛立たしそうに問屋を後にした






                    ☆






 やって来たのは冒険者ギルド
 まあ、思った通りの結果だね




 僕もこの世界で身分証って言ったら冒険者証ライセンスくらいしか思いつかなかった


 もしかしたら、騎士身分の人は騎士用のライセンスがあるかもしれないけどね


 貴族様だったら家紋かな。
 平民の場合は成人したら王都で保険証みたいなカードがもらえるらしい


 奴隷身分にはそれ相応のカード。
 スラム出身は知らない。


 もしかしたらそう言う人でも冒険者証ライセンスは発行してもらえるかもしれないけど、どうだっていい


 とりあえず、みんなと一緒に冒険者ギルドの門を潜った


『あ、ジンさんだ!』
『ジンさん、助けてくれ!』
『俺たち炭鉱族ドワーフはもう食ってけねぇ!』




 的なことを東大陸の人間語で語るドワーフ


 ドワーフ………。
 もっさりしている


 そんなもっさりこんまりしているドワーフたちに助けてと懇願されるジンも、すこしタジタジになっていた


『わかっている。鉄鋼不足だろ。オレも鉄が欲しい。なんとかしたいのはオレも同じだ』




 ジンもため息を混ぜながらそう言った。


 ジンも困っているということに炭鉱族ドワーフたちも項垂れた


 その鉄鉱石竜メタルドラゴンとかいうのは、鍛冶師や炭鉱夫なんかには天敵なんだろうな。




 うう………早い所東大陸の言語に慣れないとダメだ。
 今は赤竜戦士長のイズミ先生の同時通訳がないと成り立たない




 ジンも大変そうだ。族長として赤竜の管理もしているし、人間に擬態して街を警戒している
 ゼニスもそうだったけど、族長たちは人間が好きだよね




「まぁ、まずは登録からするか。なにもかもそれからだ」




 ジンがそういって僕らの事をギルドの職員に紹介し始めた




『僕、リオル。5歳。』


 東大陸の人間語で簡素な挨拶をしてみた


『ルスカ、5しゃい!』


 ルスカも僕に続いて簡単に挨拶をする。
 ルスカは中央大陸の言葉は結構慣れてきているけど、さすがに東大陸の人間語はすこしだけおどろおどろしかった




 イズミさんに抱っこしてもらい、受付の人にあいさつをすると、受付の人はニッコリと微笑んだ。


 受付の人もドワーフだ。女性のドワーフってちっこくてかわいいな。
 髪のボリュームはあるけど、そんなものすけばいいし


 なんか『必要事項を書いてください』って感じで用紙を手渡されたよ。あはは、読めるわけないじゃん。




 東大陸の文字までは把握していない。イズミさんに代筆してもらい、最後に『水晶に手を置いてください』とか言われて促されるままに水晶に手を置いた


 僕はこの水晶好きじゃない。
 僕が闇属性の魔力を持っていたから村の人たちに嫌われたわけだし。




 でも、この水晶は魔力の波長とかいうのを調べるだけで属性はわからないらしい。
 よかった。


 水晶に手をかざしたあと、写真を撮ってから(!)カードを手渡された。コレが冒険者のライセンスか


 写真は科学具テクノアイテムらしい。『閉鎖都市ボルト』から輸出されたものだってさ。
 射影機っていうんだって。なにそれ。幽霊でも映るのかな?


 それ持って古びた屋敷か地図から消えた村に行ってみたいね。




「にへへ~、リオ! ぼうけんしゃなの! フィアルとおなじなの!」


「そうだね、コレで僕もルスカも採取の冒険者だ。冒険なんかしないのに冒険者。ただの身分証代わりだ」




 冒険者証ライセンスを見てみる




―――――――――――――――――――


  名前:リオル
  年齢:5歳
  性別:男
  種族:人間族ヒューマン
 ランク:F(紫)
  所属:東大陸サルマン王国ガイズ領冒険者ギルド
  出身:中央大陸西部リリン王国ファンタ領
  種類:採取
  受注:―――
  預金:0Bボトル
 連絡先:ゼニス(S) ジン(S


――――――――――――――――――――




 こんな感じ。事務的なことが書いてあるだけだった
 ファンタの町があった場所ってリリン王国なんだ。
 自分が所属していた国の名前を知らなかったよ。


 あとはカード自体は紫色で、この冒険者証ライセンスの発行年月日と僕の顔写真が貼ってあった
 この冒険者証ライセンスの有効期限とかも書いてあった。


 まさか免許更新をしなければならないとは。
 まぁ当然か。




 東大陸の通貨はB (ボトル)らしい


 銅貨1枚で1B
 銀貨1枚で100B
 金貨1枚で10,000B 
 オリハルコン貨1枚で1,000,000Bらしい


 オリハルコン貨てなに? こわい。


 東大陸では通貨100枚で金の単位が変わるのか。ちょっと小銭が増えて面倒くさいな


 銅貨は1円玉
 銀貨は100円玉
 金貨は500円玉
 オリハルは諭吉サイズのアルミホイルみたいに薄い板みたいなものらしい。偽造を防ぐためにいろんな文様がはいっているんだって。
 どうせ使わないから関係ない。


 カードの色は
 赤(Sランク) 橙(A) 黄(B) 緑(C) 青(D) 藍(E) 紫(F)


 こんな感じで七段階に変色するらしいよ。不思議だね。
 ちなみにジンは赤の冒険者証ライセンス
 イズミさんは赤竜の里からあまり出ないみたいだから黄色Bランク冒険者証ライセンスだ。




 あ、そういえば、今更になるけど魔法使いにも色でランク分けがされていたりするんだよ。


階級は


『無級』 『初級』 『中級』 『上級』 『超級』 『賢人級』 『伝説級』となる


 もちろん、これも虹の色で区別される感じ。


 『無級魔法使い』は“紫級パープルクラス”と呼ばれる。
 紫級は主に生活魔法だ。火種を作ったりコップ一杯の水を作り出したり。
 一般人程度かそれ以下のことをいう。


 『初級魔法使い』は“藍級インディゴクラス
 水の玉を発射したり、火の玉を発射したり。これはあまり強力なものではないらしい。


 『中級魔法使いは』“青級ブルークラス
 おもに体から離れない魔法。僕が赤竜の里に着くまで駆けっこしていた時があったけど、あの時、僕に絡まったツタを焼き切った《炎転火フレイムダンス》という僕に巻きつく火がそれにあたるね。
 それと、視界阻害系の魔法。《爆炎イクスフロー》《濃霧ヘビーフォグ》とかだね
 《閃光フラッシュ》や《暗幕ブラックカーテン》もこれに当たりそう


 『上級魔法使い』は“緑級グリーンクラス
 広域に雨を降らせたり、広範囲に火を放ったり、あと『なんちゃらカッター』とか『どうてらランサー』とか。切断や貫通系の魔法がここに分類される。
 おもに範囲技が多い。あと、身体強化と支援系の魔法もここあたりから分類されるね。【インヴァリディションフレイム】とか。
 そう考えると、僕を攫った盗賊ダズは最低でも“上級魔法使いグリーンクラス”だったってことかな。


 さらに上の『超級魔法使い』は“黄級イエロークラス
 もっと大規模に災害を起こすレベルの魔法使い。
 あとは、魔力を圧縮して貫通力を特化させた魔法がコレだ。
 『なんちゃらジャベリン』になるんだって。ランスとジャベリンの違いがよくわからないけど、威力は段違だよ。“超級魔法使いイエロークラス”になれるのはほんの一握り。
 ちなみに、フィアル先生はまだ“上級魔法使いグリーンクラス”だけど、フィアル先生は天才だから、数年で超級魔法使いイエロークラスにはなれそうだ。
 あと、土魔法の物質創造も魔力を圧縮できる量で創造できる鉱物が変わるよ。オリハルコンは相当圧縮してる。
 僕が全力で魔力をそそぎこんで50kg程度しか作れないもん


 『賢人級魔法使い』は“橙級オレンジクラス
 魔方陣と儀式が必要な核撃魔法を単体で発動できる化け物。
 人間の限界と言われるのが賢人級魔法使いオレンジクラスだ。
 年よりの人間ばかり。


 最後に、『伝説級魔法使い』が“赤級レッドクラス
 これは、魔法の極意。 詠唱が必要なく、なおかつイメージによる魔法使用がこれに当たる。
 僕とルスカに至っては、最初から詠唱が必要なかった。魔力を込めてイメージするだけで大丈夫なんだ。
 だから、魔法の形をいろんな風に変形できる。
 ただし、通常の10倍は魔力の消費が高い。
 普通は変形とかできないんだって。だから土魔法でコップを作る、とかも普通の魔法使いなら思うようにできないらしい。伝説級魔法使いレッドクラスじゃなくても多少ならできるらしいけどスムーズにはいかないんだってさ。
 例外があるとしたら、フィアル先生が教えてくれた《最適化》
 あれは魔法に応用性が増す技術だから、フィアル先生が土魔法を覚えていたなら土偶とか作れるかもしれない。
 ちなみに僕は作れるよ。残念ながらフィアル先生は火魔法と風魔法に適性があるんだよね。


 《最適化》ってのは伝説級に匹敵する技術なんだね。フィアル先生すごい。
 突き詰めれば《最適化》で無詠唱までできるかもしれない。
 まぁ、僕にはそこまで研究欲は無いけど、フィアル先生ならやってくれそうだ。




「にーちゃん、おれもぼうけんしゃだ!」
「ねーさま、キラもぼうけんしゃなのです!」


「ふたりとも落ち着くであります。………といいたいところでありますが、わちきもちょっとだけ興奮していたりします! えへへ」




 興奮する竜たちのカードも確認させてもらった
 もちろん冒険者証ライセンスの色は紫色のFランクだ。




――――――――――――――――


  名前:マイケル
  年齢:0歳
  性別:男
  種族:竜人族
  出身:赤竜の里


――――――――――――――――




 あとは同じ


 出身は赤竜の里ってしてるけど、竜人族なら問題ないのかな
 ジンだって種族は竜人族で通ってるし、竜人族なら竜言語も使えるだろう


 そう言うことがあっても不思議ではないのかもね




「コレはまだ仮免だ。本当は最低限冒険者になれる実力があるか試験があるのだが………簡単な依頼を一つ受注して、それをクリアできたら、晴れて冒険者を名乗れるようになるようにオレが頼んでおいた。」


「え? じゃあ、このカードも?」


「うむ。Sランクのオレが強引に作らせたのだ。本当は試験を受け、ギルドの登録料も払っておかなければならないのだが、オレが払っておいた。
 さすがに強引過ぎたから、何か一つでも依頼をクリアしてカードは身分証代わりに持っておくだけでいい。
 実際、顔写真取るのにバンダナつけたままにするのも結構賄賂積んじまったよ………。」


 すこしげっそりした様子のジン。
 ごめんね、無理させちゃって。僕がこんな髪の毛でごめんね。


 この世界の髪の色はみんな特徴的だから、髪の色っていうのはかなり重要な部分なんだけど、そこを隠しちゃ怪しいもんね。


 ちなみに、マイケルとキラは髪を晒して個人撮影したよ。
 あの子たちは人間じゃなくて竜人で、種族は違うからね。


 だとしても、黒と白の髪はほとんどありえない色だからかなり驚かれたけどね。


 冒険者証ライセンスって、本当に身分証代わりにしかならなそうだ
 でも、コレがパスポート代わりにもなるだろうし、持っているだけで便利だね


「とりあえず、お前たちには今はこのくらいの依頼がちょうどいいかもな」




 ジンは掲示板に張られた依頼書を持ってくる


―――――――――――


 ランク:F
  依頼:鉄鉱石の採掘
  概要:鉄鉱石竜の仕業で鉄鉱石が足りねぇ! 一緒に採掘してくれる仲間を募集中だ!
 依頼主:鉱山夫のドワーフ親方 アッガイ
 報酬金:銀貨2枚 あとは納品した鉱石による歩合制
 仲介料:銅貨50枚
  場所:ゴザック鉱山


―――――――――――




 読めないからイズミさんが教えてくれた


「仲介料ってなに?」
「あ? この依頼を受けるにあたって、ギルドに支払うお金だ。ギルドだって善意で回るわけないだろ。冒険者からも依頼主からも、仲介料をいただいて回っているのだ。まぁ、依頼の難易度が高くなるにつれて仲介料もたかくなるんだがな。」


 うーん、よくわからないけど、不動産屋みたいなものだね。


 建物を買うか依頼を買うかの違いだ。


 新規冒険者の登録と依頼失敗の罰金のみで冒険者ギルドが回っていけるはずがない。
 納得した。国からの援助もいくらかあるだろう。




「それじゃ、この依頼を受けてみることにするよ」


「あいよ。ちょっくら受理してもらってくらぁ」


 僕から依頼書をひったくると、受付のお姉さんに東大陸の人間語で何かを言っていた


 おそらく、この発注を受けるって言ってるんだと思う
 それにしても、なんで定番の薬草採取じゃなくて鉱石の採掘なんだろう?




「ああ? 火山灰によるシラス台地のせいで薬草の類が育たないんだよ。」




 なんと不憫な………。
 ………あ、シラス食べたい


「帰ったら食わせてやるよ。この鉱山はこの町に一番近い場所にある。乗合馬車が出ているから、それに乗って行けばいい。まだその辺には鉄鉱石竜メタルドラゴンは来ていないって話だからな。『はじめてのおつかい』だ、頑張ってこい。イズミ、後は任せたぞ」


「はい、承知しました」


 イズミさんは恭しく一礼する
 なんというか、イズミさんは戦士長っていうよりもメイド長をやっている方が似合っているんじゃないかな


「………ん? ジンも一緒に来るんじゃないの?」


 ジンは僕らの依頼を受理してもらった後、緊急依頼の掲示板をチェックしていた


「オレは鉄鉱石竜メタルドラゴンの討伐をしに行かねばならん。
 コレでもソロSランクの冒険者なのだ。災害級の脅威を放っておくことはできん。
 イズミ! 今夜は鉄鉱石竜メタルドラゴンのミンチでハンバーグだな!」


「かしこまりました」


 今夜の晩御飯は少しばかりジャリジャリしそうなハンバーグで決定した
 いつもの豪快な性格のままで特に気負ったような印象は無い


 鉄鉱石竜メタルドラゴン)とやらも、ジンならば軽く討伐できるだろう



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