受難の魔王 -転生しても忌子だった件-
第38話 ルスカの気持ち
★ ルスカSIDE ★
るーには、るーになんでもおしえてくれるおにいちゃんがいるの。
ちょっとだけおっちょこちょいだけど、るーのことをいつもたいせつにしてくれるから、るーはおにいちゃんがだいすきなの。
だいすきなおにいちゃんのなまえは、りおる。よびやすいから、りおってよぶの。
むかし、るーにやさしくしてくれるおねえさんがいたの。
いまではほとんどおぼえていないの。
おなまえは………ぴ………ぴう………うーん。やっぱりおもいだせないの。
でもそのおねえさんは、りおのことをいっつもぶっていたの。
「あくま」っていってたけど、いいことばではないことは、わかってたの。
でもるーはしってるの。りおはわるいことはなにもしてないの。
るーのほうがわるいこなのに。
はしりまわっていたらたいせつなかびんをわっちゃったの。
だけど、だれもしからなかったの。
なのに、りおがわったことになっちゃったの。
るーのせいなのに、るーがやったのっていっても、「るーさまはおやさしいですね」っていって、きいてくれないの。
るーがいいこいいこされているときも、りおはずっとべっどのうえだったの。
りおといっしょがいちばんたのしいから、りおといっしょにべっどにいたいのに、いつもはなされちゃうの。
……………
………
…
こんどはりおが、ゆかにいたむしさんをたべていたの。
たべちゃいけないよってりおにおしえてあげたの。
でも、りおはるーのほっぺをなでていったの。
「いきるためだよ」って。
よくわからないけど、りおはきっと、たいせつなことをいったの。
おいしそうだとおもったの。だからるーもたべようとおもったら、おこられちゃったの。
なんで? りおはよくてるーはだめなの?
そうきいたら、「るーはしあわせになってほしいから、こんなものはたべちゃだめだよ」
っていったの。
だから、りおとおねえさんにないしょでこっそりたべたの。
おいしくなかったの。
りおがいってたことはほんとうなの。
それをりおはおしえてくれたの。
……………
………
…
りおはるーに『まほう』をおしえてくれたの。
おなかにあるぽかぽかしたものをうごかして、みずがほしいっておもったらおみずがでてきたの。
りおがべっどでねているの。
ちょっとまえはりおといっしょにはしっていたけど、るーはしってるの。
りおはなんにもたべていないの。
なんにもたべていなかったら、げんきはでないの。
だから、りおはずっとべっどからうごかないの。
めをこらしたら、りおのからだから『もやもや』がみえないの。
ほかのひとは『もやもや』がでてくるけど、りおからは『もやもや』がみえないの。
るーからも『もやもや』はでてくるの。
るーはきんいろのおねえさんやぎんいろのおねえさんよりもはっきり『もやもや』がでてるの。
『もやもや』は、『まほう』をつかうときにつかう『まりょく』みたいなの。
りおは『まりょく』をおそとにださないから、ずっとたべないでいられたの。
でも、やっぱりたべないとりおはげんきにならないの。
だからいったの。
「りお、だいじょうぶ? くるしくない? 」
だいじょうぶにはみえないの。
くるしそうなの。
りおのほっぺたはへっこんでいたの。
りおのからだはるーとくらべるとちいさいの。
「るー、だいじょうぶだよ。ごめん、そこのリンゴ、とってくれるかな。」
これはちょっとまえからおいてあるりんごで、きんいろのおねえさんは
『くさってるかもしれないから、たべちゃだめよ。リオにしょぶんしてもらいましょう。』
っていってたの、だからりおにたべさせるためにとっておいてるりんごなの。
「うん♪」
だからるーも、りおによろこんでもらいたくて、りんごをわたしたの。
そしたらりおはるーのことをなでてくれるの。
きんいろのおねえさんもおねえさんも、るーのことをなでてくれるけど、りおがいちばんすきなの。
「るー。ありがと。」
「やんやあん♪」
りおがなでてくれると、きもちいいの。
でも、こんなにだいすきなおにいちゃんなのに、ほかのひとはりおをぶつの。
とってもいたそうなの。
なんでりおをぶつの? るーにはわからないの。
……………
………
…
つぎのひから、ねえさんが「おまえのせいだ」ってりおをたたいたの。
なにのことかはわからないけど、
りおはなにもしていないの! ずっとるーといっしょにいたの!
しかるならるーもいっしょにしかって!
でも、おねえさんはりおをぶったの。
なにかが「しんだ」っておねえさんがいってたの。
それから、ぎんいろのおとこのひとがかえってこなかったの。
「しんだ」ってゆうのはいなくなること、らしいの。
それがりおのせい?
りおはるーといっしょにいたの。
だからりおのせいじゃないの。
るーがころんだとき、すごくいたくてないちゃうの。
でも、リオはたたかれてもなかないの。
すごいの。りおはつよいの。
るーよりからだはちいさいけど、るーよりもつよいの。
でも、りおはうごけなかったの。
るーもけががいたいいたいだとうごけないの。
だから、りおを『ひかりまほう』でなおすの。
そしたらりおはよろこんでくれるの。
それがるーはうれしいの。
……………
………
…
どらごんがむらにやってきたの。
おそらをとんでくるの。
とてもとてもおおきいの。
「あぅ~~、りお~~。」
とってもこわかったの。
「大丈夫、ここにかくれていて。」
でも、りおがまもってくれたの。
りおはるーといっしょにあなのなかにはいってかくれていたの。
りおは『いとまほう』をつかってそとのようすをみていたの。
「あー。村人全滅。■■も■■■■も魔法屋のババアも全員、たぶん死んでる。」
『しんでる』っていういみはわからなかったの。でも、「しんだ」とおなじようないみだとおもったの。おとこのひとがいなくなったときにもおなじことをきいたから、もうあえないとおもったの。
「■■も、■■■■も? えぅ………うえええええええええええ!! 」
そうおもったら、すごくかなしくなったの。
そのとき、りおがなんてゆったのかおもいだせないけど。
とてもとても、かなしかったの。
「………ま、元気出して。僕がいる。」
でも、りおはつよいの。
るーがないても、りおもかなしいはずなのに、るーをはげましてくれたの。
「びええええええええええええええ!!」
でも、やっぱりかなしかったの。
るーがないていると、りおはあなからでていったの。
おいてかないで! ひとりにしないで!
そういったら、りおはるーをあなからだしてくれたの。
でも、めのまえにはどらごんがいたの。
すごくこわかったの。
りおもこわそうだったの。あしがふるえていたの。
だけど、りおはるーのまえにたって、るーをまもってくれたの。
りおはるーよりもちいさいけど、すごくおおきいせなかだったの。
りおは『やみまほう』でどらごんをたおしたの。
やっぱり、りおはかっこいいの。
……………
………
…
ここからはよくおぼえているの。
ぜにすは、ずっといっしょにいるの。
るーがわるいことをしたら、しかってくれるの。
りおがわるいことをしたら、しかってくれるの。
しかられるのはいやだったけど、るーがしたことがりおのせいにならないの
それがうれしいの。
ぜにすはいろんなばしょにつれていってくれたの。
おいしいくだものをたべさせてくれたの。
きれいなものをみせてくれたの。
ぜにすはるーの『まま』だったの。
ぜにすはるーにいろいろなことをおしえてくれるの。
だから、りおはおにいちゃんで、ぜにすはままなの。
ままはるーのことをちゃんとしかってくれるの。
りおだけをいじめたりしないの。
だから、るーにとっては、ぜにすがままなの。
★ リオルSIDE ★
「ルー………本当に、本当におぼえてないの………?」
ローラがルスカの肩に手を置いている。
「わからないの。るーのままはぜにすなの!」
「そんな………っ! ルー………うぅううう………!」
ローラはルスカの事を抱きしめてから、泣き出してしまった。
当然だ。実の娘に覚えてもらっていないのだから。
「どうしたの? いたいいたい? 」
ルスカは突然泣き出したローラに対し、どうしたらいいのかわからなくなってしまったらしい。
おろおろしつつ、ローラの背中に手を回して、僕がルスカをあやす時のようにポンポンとローラの背中を叩いた。
「なんで………。なんでママの事をわすれちゃうのよ………」
悲しみに暮れるローラの声。
「うー………りお~~~。」
どうしたらいいのかわからないらしく、ルスカは僕に助けを求めてきたけど、僕にもどうすればいいのか、わからないよ。
まさかルスカがローラの事を覚えていないとは思わなかった。
ババアの事を忘れていることはこの町に着いたときに知ったけど、ローラのことも覚えていないなんて………
「でも、そっか。そうだよね。ローラ、コレが僕たちを見捨てた結果だよ。」
「………結果?」
「紫竜が村を襲ったのはルーが三歳になったばかりの時だ。それ以前の記憶が曖昧なんだよ。」
「るーちゃんとおぼえてるよ! ぜにすたちとあうまえから、りおとあそんでいたの!」
「………そうだね。ゼニスに会う前に居た村は覚えている?」
「うん!」
「じゃあ、ゼニスじゃない、本当のママのことは覚えていないの?」
「わからないの。ままはぜにすだけなの! まえにいたのは、りおをぶつおとなのひとだけなの! ほんとうのままなんてしらないの! ぜにすだけなの!」
「……………。」
ぶんぶんと首を振ってルスカがそう言い放つと、ローラも、ゼニスも、フィアルも。
そして僕も。
絶句してしまった。
ルスカはぼんやりと昔のことは覚えている。
僕が打たれていたことも覚えている。
幼かったけど、ルスカにとってはそれが日常になっていたはずだけど。
ルスカは、僕が打たれ続けるそんな日々に疑問を抱いていたんだ。
能天気に僕に抱き着いてくるだけかと思っていたけれど、ずっと、ルスカは僕の事を心配してくれていたんだ。
「………? どうしたの? るー、なにかへんだったの?」
「………いや。ルスカは正直な気持ちを言っただけだ。ローラよ。お前がしてきたことは、全てルスカも知っている。子供は、全部見ているのだ。」
「………。」
「リオルから聞いておったが、こんな子供からこうも言われるのだ。村では相当の事をしていたようだな。
リオルが初めて私の所に来た時も、やせこけていて、まずは腹を満たすものをくれと頼んできたぞ。
そうとう衰弱していた。ルスカがお前を母親だと認めたくない気持ちもわかる。」
「………で、でも、わたしがルーの………」
「母親であっても、子供にそういう認識をされていたのだ。これが事実なのだ」
「うぅ………うううううう………。」
………。せっかく会えたはずなのに。
自分が見捨てたせいで、ルスカに忘れられてしまっている。
自業自得といえば、それまでだ。
でも、この状況は、ローラにとってはあまりにも酷だ。
「皮肉なモノだね。ローラにとって汚点であったはずの僕の方がローラの事をよく覚えている。
大事にしていたはずのルスカはローラの事はほとんど覚えていないなんて。」
「………。」
ゼニスも、今の僕の皮肉には口を閉ざすしかなかったようだ。
「まー、安心してよ。僕はローラの事は忘れたりはしないよ。
もちろん、それと一緒に僕にしてきたことも忘れるつもりはないし許す気もないからね。
とはいっても、今僕はローラの事を信じてる。ルスカがローラの事を忘れているからって変な気を起こすようなら、僕はローラを殺すよ。
これ以上、僕を裏切らないでね。」
僕はローラの味方でもなければ敵でもない。
変な気を起こさないように釘を打つことは忘れないよ。
「うにゅぅ~~ りおー………」
「ルスカ。こっちにおいで。」
僕はルスカをこっちに呼ぶと、ローラから離れて僕の腕にしがみついた。
「そろそろ、僕たちは宿に戻るよ。ルスカが覚えていないことは本当に残念だと思う。
だから、だからこそ、残ったリールゥだけは、幸せにしてやってよ。
あの子は僕たちの弟なんでしょ?
だったら、僕が望むのはその弟が僕やルスカみたいに歪んでしまわない事だけだよ。
………僕たちの分まで、かわいがってあげてね。」
僕はそう言ってローラに背を向けた。
これ以上、ローラを見ていられなかった。
「よいのか?」
「………うん。」
ゼニスが声を掛けるけど、ゼニスも一緒に宿屋の方についてきた
ゼニスもローラにかける言葉が見つからないんだ。
「ま、待って! 」
そのローラの声に、振り返らずに立ち止まる。
「リオは、行っちゃうの? そ、そうだ、一緒に暮らさない?
わたし、いっぱいおもてなしするし、リオを虐める子が居たら守ってあげる!
だ、だから………ルーと一緒に………」
僕は拳を握りしめた。
「………。ごめん。ローラの事は信じてる。
でも、僕はローラとは暮らせない。頭ではわかってるよ。
ローラは反省している。僕にひどいことをするなんて今は考えられない。
だけどね、体が覚えているんだよ。ローラに、ピクシーに、叩かれたり蹴られたりしたことを………。
思い出すとね、やっぱり怖いんだよ。
それに、もしまた………裏切られたらって思うと………僕は………きっと耐えられない。
だから………。ごめんね。それだけは、できないんだ。」
それだけ言って、僕とゼニスは再び歩みを進める
一緒に暮らすということは、あの魔法屋のババアも一緒ということだ。
そんな息が詰まる生活はごめんだし、2年もの間ローラと会うことは無かったし、お互いの距離感も分からない。
そして、僕は決してローラの事を許すことはできない。
そんな状態で一緒に暮らしても、お互いが苦しくなるだけだ。
僕は最後まで振り返ることは無かった。
「うぅ………あああああああああああああああああああああああああん!!」
泣き崩れるローラを残して、僕たちは宿屋へと戻る。
………重い。
だけど、コレはローラが2年前に借りたツケが返ってきた結果だ。
同情はするけど、自業自得だ。
「………………。ゼニス。夜明けと同時にこの町をでよう。」
「………うむ。」
せめて、
せめて、リールゥだけでもちゃんとした愛情を注いで育ててほしい。
ローラの泣き声を背に、僕はそう願った。
るーには、るーになんでもおしえてくれるおにいちゃんがいるの。
ちょっとだけおっちょこちょいだけど、るーのことをいつもたいせつにしてくれるから、るーはおにいちゃんがだいすきなの。
だいすきなおにいちゃんのなまえは、りおる。よびやすいから、りおってよぶの。
むかし、るーにやさしくしてくれるおねえさんがいたの。
いまではほとんどおぼえていないの。
おなまえは………ぴ………ぴう………うーん。やっぱりおもいだせないの。
でもそのおねえさんは、りおのことをいっつもぶっていたの。
「あくま」っていってたけど、いいことばではないことは、わかってたの。
でもるーはしってるの。りおはわるいことはなにもしてないの。
るーのほうがわるいこなのに。
はしりまわっていたらたいせつなかびんをわっちゃったの。
だけど、だれもしからなかったの。
なのに、りおがわったことになっちゃったの。
るーのせいなのに、るーがやったのっていっても、「るーさまはおやさしいですね」っていって、きいてくれないの。
るーがいいこいいこされているときも、りおはずっとべっどのうえだったの。
りおといっしょがいちばんたのしいから、りおといっしょにべっどにいたいのに、いつもはなされちゃうの。
……………
………
…
こんどはりおが、ゆかにいたむしさんをたべていたの。
たべちゃいけないよってりおにおしえてあげたの。
でも、りおはるーのほっぺをなでていったの。
「いきるためだよ」って。
よくわからないけど、りおはきっと、たいせつなことをいったの。
おいしそうだとおもったの。だからるーもたべようとおもったら、おこられちゃったの。
なんで? りおはよくてるーはだめなの?
そうきいたら、「るーはしあわせになってほしいから、こんなものはたべちゃだめだよ」
っていったの。
だから、りおとおねえさんにないしょでこっそりたべたの。
おいしくなかったの。
りおがいってたことはほんとうなの。
それをりおはおしえてくれたの。
……………
………
…
りおはるーに『まほう』をおしえてくれたの。
おなかにあるぽかぽかしたものをうごかして、みずがほしいっておもったらおみずがでてきたの。
りおがべっどでねているの。
ちょっとまえはりおといっしょにはしっていたけど、るーはしってるの。
りおはなんにもたべていないの。
なんにもたべていなかったら、げんきはでないの。
だから、りおはずっとべっどからうごかないの。
めをこらしたら、りおのからだから『もやもや』がみえないの。
ほかのひとは『もやもや』がでてくるけど、りおからは『もやもや』がみえないの。
るーからも『もやもや』はでてくるの。
るーはきんいろのおねえさんやぎんいろのおねえさんよりもはっきり『もやもや』がでてるの。
『もやもや』は、『まほう』をつかうときにつかう『まりょく』みたいなの。
りおは『まりょく』をおそとにださないから、ずっとたべないでいられたの。
でも、やっぱりたべないとりおはげんきにならないの。
だからいったの。
「りお、だいじょうぶ? くるしくない? 」
だいじょうぶにはみえないの。
くるしそうなの。
りおのほっぺたはへっこんでいたの。
りおのからだはるーとくらべるとちいさいの。
「るー、だいじょうぶだよ。ごめん、そこのリンゴ、とってくれるかな。」
これはちょっとまえからおいてあるりんごで、きんいろのおねえさんは
『くさってるかもしれないから、たべちゃだめよ。リオにしょぶんしてもらいましょう。』
っていってたの、だからりおにたべさせるためにとっておいてるりんごなの。
「うん♪」
だからるーも、りおによろこんでもらいたくて、りんごをわたしたの。
そしたらりおはるーのことをなでてくれるの。
きんいろのおねえさんもおねえさんも、るーのことをなでてくれるけど、りおがいちばんすきなの。
「るー。ありがと。」
「やんやあん♪」
りおがなでてくれると、きもちいいの。
でも、こんなにだいすきなおにいちゃんなのに、ほかのひとはりおをぶつの。
とってもいたそうなの。
なんでりおをぶつの? るーにはわからないの。
……………
………
…
つぎのひから、ねえさんが「おまえのせいだ」ってりおをたたいたの。
なにのことかはわからないけど、
りおはなにもしていないの! ずっとるーといっしょにいたの!
しかるならるーもいっしょにしかって!
でも、おねえさんはりおをぶったの。
なにかが「しんだ」っておねえさんがいってたの。
それから、ぎんいろのおとこのひとがかえってこなかったの。
「しんだ」ってゆうのはいなくなること、らしいの。
それがりおのせい?
りおはるーといっしょにいたの。
だからりおのせいじゃないの。
るーがころんだとき、すごくいたくてないちゃうの。
でも、リオはたたかれてもなかないの。
すごいの。りおはつよいの。
るーよりからだはちいさいけど、るーよりもつよいの。
でも、りおはうごけなかったの。
るーもけががいたいいたいだとうごけないの。
だから、りおを『ひかりまほう』でなおすの。
そしたらりおはよろこんでくれるの。
それがるーはうれしいの。
……………
………
…
どらごんがむらにやってきたの。
おそらをとんでくるの。
とてもとてもおおきいの。
「あぅ~~、りお~~。」
とってもこわかったの。
「大丈夫、ここにかくれていて。」
でも、りおがまもってくれたの。
りおはるーといっしょにあなのなかにはいってかくれていたの。
りおは『いとまほう』をつかってそとのようすをみていたの。
「あー。村人全滅。■■も■■■■も魔法屋のババアも全員、たぶん死んでる。」
『しんでる』っていういみはわからなかったの。でも、「しんだ」とおなじようないみだとおもったの。おとこのひとがいなくなったときにもおなじことをきいたから、もうあえないとおもったの。
「■■も、■■■■も? えぅ………うえええええええええええ!! 」
そうおもったら、すごくかなしくなったの。
そのとき、りおがなんてゆったのかおもいだせないけど。
とてもとても、かなしかったの。
「………ま、元気出して。僕がいる。」
でも、りおはつよいの。
るーがないても、りおもかなしいはずなのに、るーをはげましてくれたの。
「びええええええええええええええ!!」
でも、やっぱりかなしかったの。
るーがないていると、りおはあなからでていったの。
おいてかないで! ひとりにしないで!
そういったら、りおはるーをあなからだしてくれたの。
でも、めのまえにはどらごんがいたの。
すごくこわかったの。
りおもこわそうだったの。あしがふるえていたの。
だけど、りおはるーのまえにたって、るーをまもってくれたの。
りおはるーよりもちいさいけど、すごくおおきいせなかだったの。
りおは『やみまほう』でどらごんをたおしたの。
やっぱり、りおはかっこいいの。
……………
………
…
ここからはよくおぼえているの。
ぜにすは、ずっといっしょにいるの。
るーがわるいことをしたら、しかってくれるの。
りおがわるいことをしたら、しかってくれるの。
しかられるのはいやだったけど、るーがしたことがりおのせいにならないの
それがうれしいの。
ぜにすはいろんなばしょにつれていってくれたの。
おいしいくだものをたべさせてくれたの。
きれいなものをみせてくれたの。
ぜにすはるーの『まま』だったの。
ぜにすはるーにいろいろなことをおしえてくれるの。
だから、りおはおにいちゃんで、ぜにすはままなの。
ままはるーのことをちゃんとしかってくれるの。
りおだけをいじめたりしないの。
だから、るーにとっては、ぜにすがままなの。
★ リオルSIDE ★
「ルー………本当に、本当におぼえてないの………?」
ローラがルスカの肩に手を置いている。
「わからないの。るーのままはぜにすなの!」
「そんな………っ! ルー………うぅううう………!」
ローラはルスカの事を抱きしめてから、泣き出してしまった。
当然だ。実の娘に覚えてもらっていないのだから。
「どうしたの? いたいいたい? 」
ルスカは突然泣き出したローラに対し、どうしたらいいのかわからなくなってしまったらしい。
おろおろしつつ、ローラの背中に手を回して、僕がルスカをあやす時のようにポンポンとローラの背中を叩いた。
「なんで………。なんでママの事をわすれちゃうのよ………」
悲しみに暮れるローラの声。
「うー………りお~~~。」
どうしたらいいのかわからないらしく、ルスカは僕に助けを求めてきたけど、僕にもどうすればいいのか、わからないよ。
まさかルスカがローラの事を覚えていないとは思わなかった。
ババアの事を忘れていることはこの町に着いたときに知ったけど、ローラのことも覚えていないなんて………
「でも、そっか。そうだよね。ローラ、コレが僕たちを見捨てた結果だよ。」
「………結果?」
「紫竜が村を襲ったのはルーが三歳になったばかりの時だ。それ以前の記憶が曖昧なんだよ。」
「るーちゃんとおぼえてるよ! ぜにすたちとあうまえから、りおとあそんでいたの!」
「………そうだね。ゼニスに会う前に居た村は覚えている?」
「うん!」
「じゃあ、ゼニスじゃない、本当のママのことは覚えていないの?」
「わからないの。ままはぜにすだけなの! まえにいたのは、りおをぶつおとなのひとだけなの! ほんとうのままなんてしらないの! ぜにすだけなの!」
「……………。」
ぶんぶんと首を振ってルスカがそう言い放つと、ローラも、ゼニスも、フィアルも。
そして僕も。
絶句してしまった。
ルスカはぼんやりと昔のことは覚えている。
僕が打たれていたことも覚えている。
幼かったけど、ルスカにとってはそれが日常になっていたはずだけど。
ルスカは、僕が打たれ続けるそんな日々に疑問を抱いていたんだ。
能天気に僕に抱き着いてくるだけかと思っていたけれど、ずっと、ルスカは僕の事を心配してくれていたんだ。
「………? どうしたの? るー、なにかへんだったの?」
「………いや。ルスカは正直な気持ちを言っただけだ。ローラよ。お前がしてきたことは、全てルスカも知っている。子供は、全部見ているのだ。」
「………。」
「リオルから聞いておったが、こんな子供からこうも言われるのだ。村では相当の事をしていたようだな。
リオルが初めて私の所に来た時も、やせこけていて、まずは腹を満たすものをくれと頼んできたぞ。
そうとう衰弱していた。ルスカがお前を母親だと認めたくない気持ちもわかる。」
「………で、でも、わたしがルーの………」
「母親であっても、子供にそういう認識をされていたのだ。これが事実なのだ」
「うぅ………うううううう………。」
………。せっかく会えたはずなのに。
自分が見捨てたせいで、ルスカに忘れられてしまっている。
自業自得といえば、それまでだ。
でも、この状況は、ローラにとってはあまりにも酷だ。
「皮肉なモノだね。ローラにとって汚点であったはずの僕の方がローラの事をよく覚えている。
大事にしていたはずのルスカはローラの事はほとんど覚えていないなんて。」
「………。」
ゼニスも、今の僕の皮肉には口を閉ざすしかなかったようだ。
「まー、安心してよ。僕はローラの事は忘れたりはしないよ。
もちろん、それと一緒に僕にしてきたことも忘れるつもりはないし許す気もないからね。
とはいっても、今僕はローラの事を信じてる。ルスカがローラの事を忘れているからって変な気を起こすようなら、僕はローラを殺すよ。
これ以上、僕を裏切らないでね。」
僕はローラの味方でもなければ敵でもない。
変な気を起こさないように釘を打つことは忘れないよ。
「うにゅぅ~~ りおー………」
「ルスカ。こっちにおいで。」
僕はルスカをこっちに呼ぶと、ローラから離れて僕の腕にしがみついた。
「そろそろ、僕たちは宿に戻るよ。ルスカが覚えていないことは本当に残念だと思う。
だから、だからこそ、残ったリールゥだけは、幸せにしてやってよ。
あの子は僕たちの弟なんでしょ?
だったら、僕が望むのはその弟が僕やルスカみたいに歪んでしまわない事だけだよ。
………僕たちの分まで、かわいがってあげてね。」
僕はそう言ってローラに背を向けた。
これ以上、ローラを見ていられなかった。
「よいのか?」
「………うん。」
ゼニスが声を掛けるけど、ゼニスも一緒に宿屋の方についてきた
ゼニスもローラにかける言葉が見つからないんだ。
「ま、待って! 」
そのローラの声に、振り返らずに立ち止まる。
「リオは、行っちゃうの? そ、そうだ、一緒に暮らさない?
わたし、いっぱいおもてなしするし、リオを虐める子が居たら守ってあげる!
だ、だから………ルーと一緒に………」
僕は拳を握りしめた。
「………。ごめん。ローラの事は信じてる。
でも、僕はローラとは暮らせない。頭ではわかってるよ。
ローラは反省している。僕にひどいことをするなんて今は考えられない。
だけどね、体が覚えているんだよ。ローラに、ピクシーに、叩かれたり蹴られたりしたことを………。
思い出すとね、やっぱり怖いんだよ。
それに、もしまた………裏切られたらって思うと………僕は………きっと耐えられない。
だから………。ごめんね。それだけは、できないんだ。」
それだけ言って、僕とゼニスは再び歩みを進める
一緒に暮らすということは、あの魔法屋のババアも一緒ということだ。
そんな息が詰まる生活はごめんだし、2年もの間ローラと会うことは無かったし、お互いの距離感も分からない。
そして、僕は決してローラの事を許すことはできない。
そんな状態で一緒に暮らしても、お互いが苦しくなるだけだ。
僕は最後まで振り返ることは無かった。
「うぅ………あああああああああああああああああああああああああん!!」
泣き崩れるローラを残して、僕たちは宿屋へと戻る。
………重い。
だけど、コレはローラが2年前に借りたツケが返ってきた結果だ。
同情はするけど、自業自得だ。
「………………。ゼニス。夜明けと同時にこの町をでよう。」
「………うむ。」
せめて、
せめて、リールゥだけでもちゃんとした愛情を注いで育ててほしい。
ローラの泣き声を背に、僕はそう願った。
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