テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!
第36話 俊平ー???
ジラトールの大迷宮
俊平が自爆を行った後、飛び散った肉片をジュエルタランチュラが回収していた。
小さな穴の中をカサカサと移動するそのタランチュラは、ゴミくずのように横たわる俊平を背に乗せ、離脱を行っていた。
その俊平であるが、右腕と右足を失い、虫の息ではあるが、彼は生きていた。
「ひゅっ………ひゅっ………」
浅い呼吸を繰り返し、自爆の衝撃で焼けて炭化した腕の傷跡。
切断された右足の切断面。どちらも傷跡が焼けている為、血が流れず、失血死することが無かった。
即死できなかったことが、俊平をさらに苦しくしてしまっている。
赤城雄大に蹴り飛ばされた際に砕けたあばらが肺に刺さっている。呼吸するたびに激痛が走り、蜘蛛が運ぶ振動で激痛が走りそのまま浅い呼吸を繰り返すしかないのだった。
そのまま何時間だろうか、蜘蛛に乗ってこのまま死ぬ運命をじっと待つ俊平がたどり着いた場所は
(しょく、りょう、こ………?)
リザードマンやマムシ、ゴブリンなどが糸でがんじがらめにされ、生きたまま放り込まれていた。
俊平はそれを食糧庫だとおもった。
蜘蛛の非常食がそこに無造作に放り込まれているのだと。
「………し、て」
だが、そうではないことに気づいた。
俊平も同じように糸にがんじがらめにされ、ジュエルタランチュラが俊平の腹に穴をあけた。
(ぐぅっううううううう!!!)
もはや叫ぶだけの力が残っていない俊平は腹に穴をあけられても、じっと堪えるしかない。
開けられた腹の穴に卵を植え付けられる。
ここは食料庫じゃなくて
苗床だ。
「………ろ………て」
痛みのあまり気を失うことすら許されない俊平の耳に、なにかが聞こえた。
(な………………に………………?)
目を凝らせば、苗床の中心には、白い女の子。
手足を絡めとられ、身動きができず、腹から無限に蜘蛛の子供が湧き出してくる
「ころ………………て」
ジュエルスパイダーはゴブリンの腕らしきものを細かく砕いたゴミの汁を、白髪の女の子の口元から押し流す。
無理やり食べさせていた。
「ごぼ………じ………………」
腹から蜘蛛が湧き出し、肉が内側からめくれ、鮮血がまう。どろりとした血液が流れ落ちる。
あきらかに致死量の出血。あきらかなる致命傷。
腹を内側から食い破られる感触を味わうあの白髪の女の子は、蜘蛛たちにとっても大事なものなのだと俊平は察した。
なぜなら、食い破られた腹が、ものの数秒で塞がっているのだから。
おそらく再生のアビリティを持った女の子。それを苗床にして、無限に食える食糧として、彼女は蜘蛛を生産し続けていたのだ。
「ころし………て」
そして、彼女は己の死を願っていた。
いつ頃からここにいるのか。
僕がくるよりずっと前から、彼女は蜘蛛の苗床としてここにいるのか。
なんて残酷なんだ。
俊平は涙を流す。
こんな状況でさえ、自分の心配ではなく、無限に苗床にされる彼女の心配をしているのだ。
自ら命を断つことすら許されず、肉体の内側を蜘蛛に侵され、蹂躙され、激痛に苛まれながらも腹の中で育てた蜘蛛にはらわたを食われて育て、出てきた蜘蛛は腹を食い破って出ていく。
最悪だ。
彼女が望んでいるのが、安らかな死であることは明白。
ならば自分のできることは………。
俊平は己に流れる魔力を血管に這わせ、通力と混ぜ合わせる。
(僕はここで死ぬのは間違いない。だったら最後くらい、人助けができたらな………)
蜘蛛が俊平を女の子の近くに運ぶ。
どうやら今日の彼女のご飯が僕であるのか? いや、苗床をまとめているだけなのかも。僕の気が途絶えたら、彼女のご飯にでもされるのだろうか。
彼女はどれほどの屈辱を受けたのだろう、
どれだけの苦行を強いられたのだろう
無理やり食わされたものは、人肉もあったかもしれない。虫だって食わされただろう、
すべて、蜘蛛の苗床として食い破られても食い破られても再生するその母体のために。
俊平は、蜘蛛糸に拘束されたまま立ち上がる。
「ぼく、が………ころして、あげる」
俊平も、殺したくなんかなかった。
だが、もはや彼女は死ぬことに救いを求めてしまっていた。
彼女を救うことができるのは、死のみ。
ならば俊平は彼女を縛る蜘蛛糸ごと、左手で彼女を、もたれかかるように抱きしめた
「一緒に………死のう………」
俊平の全身が赤く光る。
一人で死ぬのが怖かったのか、死を求める彼女を免罪符にしたかったのか。
激痛に苛まれる俊平には、もはやわからない。
ただ、彼女を殺してあげないと、一無限に続く苦痛に、彼女は囚われ続けることになる。
それだけは避けたかった。
俊平の異能。<自爆>自身を媒介に大規模な爆発を起こすアビリティ。
くらった相手はひとたまりでもなくなる。
俊平は、彼女を胸にだいたまま、もう一度<自爆>を行った。
竜の腹の中で自爆した時よりも、心は晴れていた。
この能力でも、人の心を救うことはできるのだと。
「………………あり、がと」
それは、聴き慣れた言葉で。
俊平は右腕がない。
右腕がないということは、翻訳の指輪がないということ。
俊平は日本語以外はわからない、
彼女は、日本語を喋っていたのだ。
数百年前に召喚されたという勇者のことを、俊平は思い出しながら、俊平は自爆した、
ーーーーードォオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!!
と、俊平の全身と、少女の全身が文字通りバラバラに弾け飛んだ。
今度は体の一部に限定して自爆を行ったり、自分の身に防御膜を張ったりはしない。
正真正銘、自分自身と白い女の子の二人を殺すための自爆だった。
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