テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!
第27話 由依ー夢幻牢獄2 前編
ぺけぽこぽんぽん♪ ぺけぽこぽんぽん♪
ガシッ!
「………また、この夢か。いや、現実?」
目が覚めると、早速違和感に気付いた。
私は、先程まで異世界で戦っていた。
瓦礫に埋まって気絶したと思う。
その状態でここにいる。
本体だか精神体だかはわからないが、向こうの私はまだがれきに埋まっているのだとしたら、危険な状態だと思う。
もしくは、死んだ? 私が気絶している間に死んだから戻ってこれた?
現状は不明だ。
あのドラゴンをどうにかできるのは、現状だと可能性があるのはチンピラ赤信号かなんか素敵な友情の力とかで限界を超える光彦くんか、自滅覚悟の俊平ちゃん。言霊使いのキョーコやタロウ。
もしくは存在を消滅できるタナカちゃんだろうか。
とはいえ、私を一撃でぶっ飛ばせるレベルともなると、存在の恪が違いすぎる。
まだ、私自身の能力がけた外れにインフレしているわけではない、というのもあるが、あれをどうにかできる能力を持っていない、というのもある。
瞬時には発動できないけど強力な結界を張れば大丈夫だったかもしれないなぁ。
異世界転移した初日に見た夢。
あの日に見た異様な現実の光景。
タツルやタナカちゃん、タエコちゃんと打ち合わせを行い、次にこの世界に来た時にしないといけない事は頭に入れてある。
第一。
「今日の日付………転移してから2日目。向こうで過ごした時間は関係なく、この世界にくると1日過ぎるってことかな。むしろこの辺はいつも通りだなー。」
第二。
『お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為』
タツルに電話を掛けてみるもつながらず
第三。
『もしもしにゃー』
「おはようカノンちゃん』
『由衣にゃんから田中に電話とは珍しいにゃん♪ 今日は槍がふるにゃん!』
会話終了。
田中押しが弱い。
第四。
髪を梳かして制服に着替えると、お母さんから「ごはーん!」との呼び声。
「おはよう、お母さん」
「おはよう由衣。」
リビングに入ると、焼き鮭と納豆ご飯と目玉ベーコン焼き。あと味噌汁だ。
足りないビタミンと食物繊維はサプリで勝手に取ってという、いたって普通のいつも通りの朝ごはん。
「お母さん、昨日の私、何してた?」
「昨日って、そうねぇ………。なんか朝はすっごく慌ててお隣のかよちゃん(タツルのお母さん)の家に突撃してたけど………ああ、帰ってからはいつもより口数が少なかったかしら? うん。とか、わかった。とか、そう。とかしか言わないの。ちょっと不気味だったわね。どこか上の空ってかんじ?」
やっぱり、私も他の子たちと同じように、学校生活を普段通りに送るだけの人形になっているんだ。
じゃあ、私の意識がない間に、私の肉体を動かしているのは、誰なんだろう?
「なるほど、ありがとう。多分、今日もそんな風になって帰ってくると思う」
「なに、いじめられてるの? そうだったら今夜、お母さんが矢沢先生の所に日本酒持って突撃するけど?」
「いいよ。そんなことしないでも。モンペじゃん。納得できる状況だけどさ。今、私たちのクラス、不思議な出来事に巻き込まれてるから、皆上の空なんだ」
「ああ、いつだったか由衣が見たっていう、冒険の夢とか? みんなも同じの見ちゃってるとか!」
「………すごいね、当たってる」
「やだうっそ! 本当に? みんなが同じ夢見てるってすごいわね!」
まさかお母さんが適当言ったことがズバリ的中しているとは。
「まぁ別に隠してるわけじゃないから言うんだけど、日付的に一昨日の朝? HR中にクラスメイト達皆異世界に召喚されちゃったわけ」
「ほむほむ。 あ、ちょっと待って。ボイレコボイレコ」
スマホの録音機能で録音を開始するお母さん。
なんだかお母さんは興味津々といった顔で両肘をテーブルについて両手を組み、そこに顎を乗せる。
私がほむほむ言うのって、お母さんの遺伝なんだろうね。
「それで? HRの最中に異世界に召喚されて、どうなったの?」
「召喚された日の夜、異世界で寝たら、昨日の朝ここで目が覚めたの。でも、おそらくみんな登校してて、みんな上の空なの。」
「ふーん。その話に矛盾点があるんだけど、クラスメイト全員が異世界に召喚されて、じゃあどうして由衣はこんな話ができるの? どうしてここにいるの? 今の話は妄想?」
お母さんは、俗にいうアニメオタク。
わたしはお母さんの影響で漫画やアニメやなろうを読むようになったといえる。
だから、一緒に見たアニメの設定なんかで盛り上がる事が出来る。
だからこそ、今私が言っていることに自分の推測と考察をまぜて、矛盾点などを指摘してくれるの。
「召喚されたってのも精神だけで、私が夢の中でで世界を渡る能力だからだと思う。それで、向こうにいる友達と推測したんだけど、昨日の朝、私が一度この世界に戻ってきたときに、皆が上の空だという事を話して、そしたら………みんな、夢を見ている状態なんじゃないかってなったの。」
「なるほど。みんな夢を見ている状態だから、上の空で、精神だけ異世界を旅しているのかもしれない、と。」
お母さんはワクワクしながら指を組んでニコニコと私を見つめる。
「そう。それで今は私だけが戻ってきてる状態かな? いま、その世界で私、気絶してるか死んでるか分からない状態だから。いつも異世界に行く夢を見るのと、逆の状態で、まさに今、夢を見ている状態なんだと思う」
「なるほど。次の矛盾点は、皆が夢を見ている間に、体を動かしているのはだれ?」
ピッと指を立てるお母さん。
「それは、わからない」
私がそう答えると、立てた指をシュっと私に向け
「はいガバー。設定が緩いんだよ由衣。本当に今はまだ分からないだけかもしれないけれど、その世界の世界観がまだ全然つかめないから何とも言えないね。ただ、その世界に神様らしきものがいるなら、それが操ってあげているのかもしれないわね。そういう作品死ぬほど見たし。」
設定のガバを指摘された。
そのガバを埋める設定も一緒に言われたけど………。
「………。神様が住まう空中大陸があるらしい。私たちを召還したのも現地人が神様の力を借りて私たちを召還したらしいし」
「………それじゃん。召喚された目的はあるだろうけれど、最終目標はその空中大陸だね。ごめん、ガバってなかったわ。………とはいえ娘の身体を弄ばれるのは良い気がしないな」
「だから、もしかしたら帰ってくる頃にはまた私が上の空になっているか、今日布団に入ったらまた異世界に行くかも。みんな学校生活を送る最低限度の返事とかしかしないから、そろそろ噂になっててもおかしくないかも。」
「なるほどね。ママ友ネットでお母さんも調べてみる事にするわ」
「………ありがとう」
「あ、帰ってくる頃にはその世界の設定と、魔法と、クラスメイト皆の能力を書き出しといて」
「あ、はい」
能力の考察を行うつもりだな?
「他、確かめたい事は?」
確かめたい事、あ、そうだ。
「お母さん、タツルって覚えてる? 隣の鈴木さんちの一人息子。」
「あら、タツルって………誰だったかしら」
やはりお母さんもタツルの記憶が抜け落ちている。
子供のころは互いの部屋でよくお泊り会とかしていたというのに。
「私の幼馴染のタツルも一緒に異世界に行っている。お母さんもミーム汚染に巻き込まれているよ。昨日朝は、それで慌てて隣の家に行ったんだから」
「………由衣の妄想の友達じゃ?」
「………。部屋はそのまま残っているのに、存在とみんなの記憶だけ抜け落ちるのが妄想?」
「………ごめん、今のは忘れて」
異世界に皆が行っている中、現実世界にも心強い協力者が………いや、楽しんでるだけかもしれない。
それでも、相談には乗ってもらおう。
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