私、魔法少女に抜擢されちゃいましたが、実は怪人なんですぅ!!!

たっさそ

私、魔法少女に抜擢されちゃいましたが、実は怪人なんですぅ!!!





私の名前は金剛季こんごうすもも


魔法少女に憧れるごく普通の中学1年生




この町には、『マギアジュエリーラ』と呼ばれる正義の魔法少女が3人います。


まず、マギアルビー


「みんな、避難して!」


真紅の瞳に肩まである桃色の髪。見るからに赤系主人公の女の子だ。


次にマギアシトリン


「いっくよー! くらえ怪人!」


黄金色の瞳に金髪のくるくるツインテール。黄色系活発な女の子だ。


最後にマギアラピス


「こっちの避難は完了しました。迎え撃ちましょう!」


静謐な蒼眼に淡白な水色の髪をポニーテールにした冷静な青系の女の子。






そして………


「ふぇえああ! こないでぇえええええ!!!!」




そんな推しの魔法少女達に追い回されているのが、


ひょんなことから悪の秘密結社の幹部候補として研修中である、金剛季こと『ワンダプラム』。つまり私である。






⭐︎




ことの始まりはなんだったかなあ


「見るべ、また怪人が出たみたいだべ!」
「マジかよ、でもすぐマギアジュエリーラに鎮圧されたんな?」
「この辺だったよなぁ、たしかぁ」


私の机の近くで、おバカ3人組の男子がスマホをいじりながら騒ぐ。


「おれ直接現場で見てたべ! マジカルビー!」
「マギアルビーな。」
「まちがえちゃぁ、いけないよぉ。せっかく守ってくれてるのにぃ」


そう、この地域には怪人がよく出現するんだ。
怪人が出るメカニズムはよく知らないけれど、怪人が出ると、どこからともなく魔法少女がやってきてそれらを退治して去っていく。


街の人たちを救う為に行動する彼女たちに、わたしは強い憧れを抱いていた。


「鈴木はどの子推しだべ? おれさルビー推しだべ」
「ドキーッ!」


どさささ!


「大丈夫だべか紅玉さん!」


教科書を床に落としてしまった紅玉茜こうぎょくあかねさん。
慌てて3ばかの1、佐藤くんが紅玉さんの教科書を拾うのを手伝っていた。


「気をつけるべ」
「あ、ありがとう佐藤くん。そ、それじゃあ移動教室だから行からなー!!」


ぴゅーん!
紅玉さんは光の速さで足をぐるぐるにして教室から出て行ってしまった。


「なんだべか?」
「女の子の考えることは分からんな」
「トイレ我慢してたのかなぁ」


なにか慌ててたような………


「まぁいいんな。俺はマギアシトリンにいつも元気貰ってるんな」
「うぴょ!!?」


どがらがらっしゃん!!
缶筆箱から盛大にペンが散乱してしまいあたりに散らばった


「大丈夫かいな、黄水!」


黄水晶きずいあきらさんの散らばった筆箱の中身を3ばかの2、鈴木くんが拾って手渡してあげていた


「あっ、あっはははー! 大丈夫大丈夫! 拾ってくれてありがとう! 鈴木っち! チャイムなっちゃうぞ! 君らも急げー!」


パタパタと手足を忙しなく動かしながら黄水さんは笑顔で元気にそう言った。


「あとでちゃんと行くんな」
「そかそか! じゃねー! 茜、まってよー!」


ぴゅーん!
黄水さんは足をぐるぐるにして光の速さで走り去ってしまった。


「行ったんな」
「流行ってるのかなぁ。」
「そろそろ行くべか」
「そーだねぇ。」


次の教科は理科。わたしも教科書を準備して理科室に行かないと。


「ちなみに田中は誰推しなん?」
「僕はねぇ、ラピスラズリ。クールでかっこいいよねぇ」
「ーーーへくち」


可愛いくしゃみが聞こえた。


「あれれぇ、委員長ぉ、風邪ぇ? 珍しいねぇ」
「スンッ。そう、かな。花粉のせいかも?」
「あぁ、花粉、辛いよねぇ、これ使っていいよぉ?」


鼻が赤くなっているクラス委員長の青空瑠璃あおぞらるりさんに3ばかの3。田中がティッシュを渡してあげた


「あら、ありがとう田中くん。助かるわ。移動教室、早く行きましょう。理科の杉本先生は厳しいわよ」
「そうするよぅ」


青空さんは教科書と、ノートをまとめると席を立ち、ゴミ箱の前で静かに鼻を噛んでから教室を出て行った。


3ばかもそれに続くように出ていき、ポツンとわたし一人、教室に取り残された。


わたしには、友達がいないのだ。


わたしにも友達がいたらなぁ。みんなで一緒に移動教室。お弁当。楽しいだろうなぁ


『心のスキマ、発見クオ! そのスキマ、埋めてやるクオ!』


え?


声が


突然、声が聞こえてきたかと思うと、胸が苦しくなる。




『さあ、お前はどんなことをしたいクオ? どんな悩みがあるクオ? 言ってみるクオ!』


「わ、たし、は」


口が、勝手に動く。
なんなのこれ!
どうなってるの!?


「いつ、も、ひと、り。ひ、と、り、は、もう、い……や!」


『ならば仲間を作ってやるクオ!』


「うぅうう、ああああああ!!!」


苦しい、苦しい!苦しい!!
心に、何かが入って来るぅう!
思わず膝をつき、床に倒れ伏す。


『ここまでスキマがあるとは、オマエ、素質があるクオ!』


苦し、い。だれ、か


たす、け




『さあでろ怪人! 奇跡の力でクオクオクオ!!』


ポン!! スモモの花が現れ、さらに、ボボン!と音を立ててそれが形を変える。
私の目の前に出現したのは、わたしそっくりのドッペルゲンガー


そして、黒い、犬のぬいぐるみ?


「な、に………こぇ………?」
『オマエの仲間を奇跡で作ってやったクオ! 感謝するクオ!』


犬のぬいぐるみが大口を開けて笑いながら喋っていた
この子が、わたしに語りかけていたの?


『さて、授業に行かなきゃ』
「まっ、へぇ、おいへか、らいでぇ」


声が、うまく、出せないっ!


『邪魔ね、コレ。』


もう一人の私は、普段つけている眼鏡を外し、後ろで三つ編みにしていた髪を解くと、季の髪留めで前髪を留めて、伸びた爪で眉を剃って整えた


スマホの暗い画面を鏡の代わりにして細かく眉を整えると、軽く頷き、
『授業に遅れちゃう………!』


私の教科書たちを持って教室を出て行ってしまった


「な、ん」


『奇跡のワンダー光線は相手の欲望を刺激して怪人を作り出すクオ!』
「そ、ん……な!」
『オマエのコピーはオマエの欲望そのもの! 心の隙間にたっぷりとワンダー光線を浴びせたからすごい怪人が産まれたクオ!』


私のせいで、私のせいで怪人が生まれた、なんて!


ーーーキーンカーンカーンコーン




授業が、始まった


怪人が、なりすましたまま。
みんな、にげ、て!


『クックック、オマエの欲望、たっぷり見物させてもらうクオ!!』


ドン!と私の目の前にスモモの花で作られたゲートが現れる




そこに映し出されていたのは、理科室の光景。


『おい、あんな子いたべか?』
『いや知らないんな』
『美人だねぇ』


 先生がまだ到着せずにざわついた教室の中、私のドッペルゲンガーが堂々と理科室に入っていった




『ふふっ、今日の実験、よろしくっ、紅玉さん♡』
『ふぇあ!? よ、よろしゅくお願いするぞ』


 わたしはそんなこと絶対に言わない!
 艶やかなその姿。


 薄化粧をして、スカートを短くし妖艶な笑みを浮かべたりしない!


 同じ斑の紅玉さんが顔を赤くしているのはなんでなの!


『授業を開始するぞ。席つけー』




 理科の杉本先生が教室に入ってきた


『じゃあ、今日はリトマス紙を 使うぞ。リトマス紙、何色から何色に変わるのはなに性だったかな。分かる奴はいるか?』


『はい』
『珍しいな。お前は確か………金剛か。答えてみなさい』


 やめて! いつもわたしは手をあげたりなんかしない!
 そんな恥ずかしいことしないで!


『青から赤が酸性。覚え方は「青赤酸おかーさん」よ』


やっめってっ!
恥ずかしい!!


『なにを恥ずかしがることがあるクオ! 勉強して頑張ったことを認めてもらう機会クオ! あのドッペルゲンガーはオマエの欲望! オマエが本当にしたいことしかやっていないクオ!』


わたしの、本当にしたい、こと?


『見ていて分かるクオ。オマエは声を出すのを恥ずかしがり、目立つのを嫌い、1人になろうとする。それは全部裏返しクオ! 本当は友達が欲しい。ハキハキと喋りたい!おしゃれしたい! そんな心がないとあんな怪人は生まれないクオ!』


ッ!!!


『さあ、スモモ。オマエの内なる欲望を解放して本物の怪人になるクオ』


わたし自身が、怪人になれば、


『塩酸を触ると酸性だから指が爛れます。水酸化ナトリウムはアルカリ性だから人肉や骨を溶かします。コレを一緒に混ぜて………』
『なにをするつもりだ金剛!』
『ごくごくごくっ!』
『きゃあああ!!! 金剛さんが服毒自殺を!!!』
『なぁんて、ね。大丈夫よ。塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜて出来るのは、ただの塩水。ちょっとしょっぱいだけ』
『すげー!!!』


あんな風に、クラスの人気者に………


「なり、たい。わたしも、あんな風に。」


『ならば唱えるクオ「ミラクルワンダーチェーンジ」』
「みらく、る、わんだ、ちぇんじ」




胸の中心で黒い光が溢れてわたしの心を満たす


「あはっ、なにこれ、なにこれ! すごい力が湧いて来る!」
『くっくっく、これでミラクルワンダランドの新しい怪人の誕生クオ!』


鏡を渡され、それを見てみると、化粧を施し、露出の高いダークピンクのゴシックロリータ。
頭からは側頭部より前頭部へと歪曲して伸びるツノ。
銀色になった腰まで伸びる自分の髪の毛。
袖は長すぎて指先すら出てないけど、コスプレでありそうな可愛い服装に身を包んでいた


「これ、が、わたし? うそ………」
『嘘じゃないクオ。これでスモモも怪人の仲間入りクオ。今日から『ワンダプラム』を名乗るクオ』


わんだ、プラム。
奇跡の季。


それが、新しい、わたしの、名前。


『我が名はローズクォーツ。プラムのパートナークオ』




生まれ変わった。なりたい、わたし


「あは☆」







キュピーン!!




その時、私と晶と瑠璃に、怪人の気配が届いた




(なんだろう、この違和感)
(いつもの日常がジワジワと侵されるこの感じ)
(怪人が現れたのね!)




「「「 先生! トイレ行ってきます!! 」」」


「3人一斉にか!? ああもういいだろう! 行ってこい!」


私たちは教室を飛び出した。
今日の授業で無双していたいつもはおとなしい金剛季さんが目を丸くしていたけれど、そんな事は怪人が現れた今、どうだっていい。




わたしはルビーの髪留めを胸の中央に持って来ると


「真紅のルビーは勇気の証!」


晶がシトリンの髪留めを天に掲げる


「黄色いシトリンは友情の証!」


瑠璃がラピスラズリの髪留めに触れて目を閉じる


「瑠璃色のラピスラズリは真実の証!」


赤と黄と青の光に包まれて、力がみなぎる。




「「「 マジカルマギアチェーンジ!! 」」」


トゥルーララ♪トゥルルールル♪ たんターン♪


どこからともなくBGMが鳴り響き、手にはフリフリのレース。
スカートには宝石をあしらったドレス。
靴をトントンと地面で叩くと、真っ赤な靴に大変身!


目をギューっと瞑ってパッと開くと、髪が桃色に変化して、頭の上にはルビーをあしらった髪留めが煌めく。


「勇気のマギアルビー!」
「友情のマギアシトリン!」
「真実のマギアラピス!」


「「「 マギアジュエリーラ!! 」」」


両手の親指、人差し指、小指をピンと伸ばし、ポーズを決める。


ちょっと恥ずかしい。


「ラブラ! 怪人はどこに居るんだ!?」


わたしはラブラドライトの妖精に声をかける


「あっちのほうラブ!」


子犬の妖精。ラブラドライト。
全宇宙のパワーをその身に宿した、マジカルマギアランドのお姫様。


「あっちだな! わかった!」


ラブラの指差す方向に向かうと


『グオオオ! ドモダヂボジイヨ″オ″オ″』


校庭の花壇で花の怪人が暴れていた






ーーーウワァァマホウショウジョダ


ーーーカイジンモイルゾ


ーーールビータンダベ


ーーーペロペロシタインナ


ーーーパンツミエソウダネェ


ーーーウワサンバカキモー




生徒たちみんなが注目してる。
ここにいたらみんなに被害が出ちゃう!


『ナンデダデモ″ハダジガゲデグデダイ″ノ″オ″オ″オ″!!』


「やい、怪人! 私たちマギアジュエリーラがあいてだぞぅ!」
『マボヴジョウジョ、ズギィィイイイ!!』


「うわっわっ! ツタが絡まって、わぁああ!!」


 シトリンが花の怪人を挑発すると、足元から伸びたツタに足を絡めとられてしまった!
 即落ちにもほどがある!
 逆さ吊りになるシトリン! まずい、助けないと!


「パンツ、パンツがぁ!」
「シトリン!! ドロワーズだから大丈夫だ!」


 必死にスカートを抑えるシトリンに私が叫ぶ。
 あれって、パンツの上にもう一つズボンを履いてるような気になって、ドロワーズを見られても特に恥ずかしくないんだよな


「いま助けるわ!」


 ラピスが魔法のステッキを構えてシトリンに絡まる触手に照準を合わせる


「ドロワーズも下着なのー!」


 必死にスカートの中身を死守するシトリン。
 私とシトリンでは女子力が違うというのか、この野郎おっと、野郎じゃなかった。この乙女。
 ルビーとラピスラズリの弾を射出してシトリンに絡まるツタを切る




「ありがとう、ルビー、ラピス!」


スタッと地面に着地したシトリン。
その瞳には怒りが浮かんでいる


「よっくもやってくれたなー! 草には炎って相場が決まってんのよ! シトリンフレンドリーファイヤー!!」


 シトリンが花の怪人に手をかざすと、その両手から炎が現れる
 その燃え盛る手で直接怪人をぶん殴る!


「でりや!!」
『ギャワワワワ!! グゾォオ″オ″オ″!!』


 ボウンと燃える怪人。


「やったか!?」


 勝利を確信してシトリンが口角を上げたが


「ダメよシトリン! そんな事をいったら!」


 私と同じフラグを感じ取ったラピスが注意をした。
 そう、それは復活フラグ。


 やったか=やってない ってのはこの世界の常識なんだよ!


『ドモダヂィイ″イ″イ』


「げげげ! まだ全然元気じゃん!!」


 当然だよ! やったか!? なんて言ったらそうなるに決まってる!


ーーーマケルナマホウショウジョ!
ーーーカイジンナンテヤッツケチャエ!
ーーールビータンガンバエー!
ーーーシトリンガンバエー!
ーーーラピスガンバエー!




「でも、負けるわけには行かないんだよ!」


 私は腕を組んでて花の怪人をにらみつける。


「みんなが応援してくれているもの!」


 シトリンも魔力を込めた拳を握りしめ


「行くわよ、みんな!!」


 ラピスがまとめた。
 ブンッ! と音を立てて私たちの手に魔法のステッキが現れると


「あの怪人の弱点は頭ラブ!」


 ラブラが怪人の弱点を教えてくれた
 ラブラは戦闘能力こそないものの、相手の本質を見破る力を持っている。
 ただ、幼い為、3歳児くらいの知能しかないのが不安だが。


「「「 さあ、みんなの心を一つに! 」」」


ステッキが虹色に輝く


「「「 マジカジュエリーシャワー! 」」」




 3色に輝く鉱石が3人の杖から飛び出し、植物怪人の頭を抉った


 怪人が暴れた跡はきれいになくなり、怪人も跡形もなく塵と消えた。
 不思議だけど、いつも怪人と戦った後は何事もなかったかのように破壊されたものも元に戻る


 今回はとくに何かが破壊されていたってこともないんだけどね。




「ラブラ! もう怪人はいないのか?」


 倒したからと言って油断したらだめだな! 私は周囲をすぐに見渡して異常を確認すると


「花をマモノに変えたヤツが近くにいるはずラブ!」


 ラブラがそう答えた
 ってことはつまり


「やった! ついに黒幕ってことね!」


 シトリンが拳を握って喜ぶ。
 黒幕。ラブラの住むマジカルマギアランドを脅かす謎の勢力。
 いつもこの街にちょっかいをかけてきて、姿をすっかり現さないんだよ


「ラブラ、どこにいるのか教えて!」


 ラピスが青の髪を揺らしてラブラに近寄ると


「あっちの教室ラブ!」


 ラブラは斜め上を指さした。
 その指の方向を見てみると


「1年2組? 私たちのクラスかよー!」
「すぐにっ! すぐに向かおう!」
「わかってるわ!」




 ちらり、と銀髪の悪魔のような姿が窓からのぞいているような気がした。






 ☆




「わっ! ルビーちゃんたちがこっち見た!」
「まずいクオ! ここが見つかったクオ、すぐに逃げるクオ!」
「どうしようどうしよう。握手? サインとか、あああ、緊張するぅ」
「プラム! プラムはすでに怪人クオ! 怪人のプラムが魔法少女と出会ったら退治されちゃうクオ!」
「え………」


 なんてこと………!
 せっかく近くで魔法少女たちの戦闘が見られたというのに、せっかく魔法少女がここに来てくれるというのに!


「なんでなの!?」
「プラムが怪人だからクオ!」
「なんで私が怪人なの!?」
「プラムが心のスキマを抱えていたからクオ!」
「わたしのせいなの!?」
「その通りクオ! とにかく逃げーーー」




ーーーガラッ!


 勢いよく教室のドアが開いた!
 うわあわわわわ!!!


「ぎゃ」
『静かに。変身を解いて! すぐにルビーちゃんたちがくる!』


そこにいたのは、


「ドッペルゲンガーさぁあん!!」


 最初に作り出された、私のドッペルゲンガーだった。
 怪人出現のどさくさに紛れて教室を抜け出してきたらしい


『宿主のピンチだもの。当然よ』


 私なのになんて行動力! 素敵!
 理想の私ってすごい!


 言われるがままに変身を解いて学生服の私に戻る


 ポンと音を立てて戻った


「それじゃローズは帰るクオ!」


 ドロンと音を立ててローズクォーツは虚空に消えた
 しかし、私の変身が解かれてローズクォーツも帰ったというのに、私のドッペルゲンガーさんはそのまま残っていた。


「それで、あなたはどうやって消えるの?」
『私はあなたの原初の願い。私はいつでもあなた共に。』


 溶けるように私の胸に吸い込まれて、ココロが満たされ、それはスモモの髪留めに形を変えた。
 その瞬間!!


「怪人、覚悟ぉ!!」
「ぶっとばしてやっかんなー!」
「あなたの悪事もここまでって………あれ?」


 魔法少女マギアジュエリーラが現れた!!


「ひゃわわわわ! 」


 そんでもって私は驚きと興奮で腰を抜かしていた


「いるのは金剛さんだけ………?」
「なんでここに!」
「まさか、あなた………!


 ………ごくり
 まさか、私が怪人になったことがバレた!?


 私だけここにいるのは明らかに不自然。
 しかも、先程ルビーちゃんと目が合っている。
 つまり、私こそが怪人だとーーー


「あの銀髪の怪人に何かされてない!?」


 セーーーーフ!
 大丈夫そうだ!
 ルビーちゃんが気づかわし気にこちらに視線をよこした。


「だだだ、大丈夫、です!」
「困ったわね、せっかく尻尾をつかんだと思ったのに」


 ぶんぶんと慌てて首を横に振る私。
 ラピスちゃんが頬に手を当てて悔しそうに眉を寄せた。


 あれ? でもなんでルビーちゃんは私の名前を知っていたんだろう?


「満たされているラブ!」


 甲高い声が聞こえた。


「ん?」


 私が首をひねっていると


「どうしたんだ、ラブラ?」


 ルビーちゃんがその声の方向に顔を向ける


 そこには、


「わんちゃん?」


 なんか犬っぽいのが居た


「その子のココロは満たされているラブ! 思いが溢れそうラブ!」


 何を言っているのだろう。
 たしかに、怪人になったことで私のココロは満たされた。
 引っ込み思案な私。そしてお手本のようなドッペルゲンガー。
 目の前の魔法少女。興奮は冷めやらない。


「ということは」
「つまり!」
「4人目の仲間ってことね!!」




 ………?


 ………ん゛!? まさか?


 いやいや………本当に?


 ………………………うそやん。




「さあ、金剛さん。胸に手を当てて、あふれる心のままにこう叫んで」


「「マジカルマギアチェンジ」」


トゥルーララ♪ トゥルルールル♪ タンターン♪


 どこからともなく鳴り響くBGM
 指先をピンと伸ばし、両手をクロスしてニィ! とほほ笑むと爪先にネイルが塗られ、
 勢いよく腕を下すと、アームウォーマーが装着される。
 パン! と胸の中心から手を鳴らせば、胸の中心にリボンが生える。
 流れるように太ももを叩けば、白のドレスが。
 パチンと指を鳴らして人差し指を上に向けると、髪は銀色に変化し、頭にはダイヤをあしらったティアラが乗っかる。




「永遠の絆 マギアダイヤ! ってなんじゃこりゃああ!!」




 この日、私は魔法少女と悪の秘密結社に同時に就職しました。







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