チートなお家と精霊とスローライフ!

青空鰹

下郎が私に触れるな

 さて、私ことセラフィストは門番が仰っていた通りの道を歩き冒険者ギルドにたどり着いた。
 あとは中に入って持っているポーションを売るだけなのだが、私には心配ごとが一つだけある。それは冒険者ギルドに入ったら絡まれるのではないのか? と。


 「・・・・・・うむ、こうして悩んでいても仕方ないですね」


 意を決して冒険者ギルドの入り口をくぐり抜けると、中にいた冒険者たちが一斉にこちらを向いてくる。


 「・・・・・・メイド?」


 「メイドだ」


 「なんでこんなところにメイドが?」


 周りから聞こえてくる声を無視しながらカウンターに向かうのだが、一人の男が目の前に出てきて行くてを塞いでくる。


 「よう、メイドがここになんのようなんだよ?」


 「冒険者ギルドの職員でないアナタには関係のないことできたのですよ」


 そう言いながら男の傍らを通り抜けようとしたら手を伸ばしてきたので、セラフィストはその手を瞬時に掴むと捻りあげた。


 「な、なっ!? テメェ、ッ!?」


 男はセラフィストの顔を見た瞬間、怒りで真っ赤になった顔が一変して真っ青になる。


 「下郎げろうが私に触れるな」


 「ひっ!? ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃいいいいいいぃぃぃぃぃぃああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!!!?」


 殺される。というような恐怖よりも、殺された。というような錯覚を起こしてしまうような威圧感に当てられた男は、白目をむいた上に口から泡を吹きながら倒れてしまった。


 これしきの威圧でそうなってしまうとは情けない冒険者ですね。


 「おいっ! いまの威圧は一体なんなんだっ!? てかそのメイドは一体誰なんだ?」


 おや? あの人はここに転がっているゴロツキ、もとい冒険者たちとは格が違うようですね。


 「メイドと言うのは私のことですか?」


 「そうだ!」


 「私はこちらにポーションを売りにきただけですが、なにか問題があるのですか?」


 「なにっ!? ポーションを売りにきただって、それは本当か?」


 「ええ、本当ですよ。カバンの中に6つ入ってます。なんでしたらお見せしましょうか?」


 「いや、そのポーションの鑑定したいから、こっちにきてカウンターに出してくれないか?」


 「わかりました」


 そう言ってカウンターの前まで行くと、馬鹿女神の部屋から勝手に借りたカバンの中からポーションを取り出してカウンターに置いていく。


 「一応聞いておくがぁ・・・・・・あの泡を吹いて倒れているヤツもお前がやったのか?」


 「いいえ違いますよ。私が見つめた途端に口から泡を吹き出しながら倒れたのです。不思議ですよね」


 正確には威圧でその冒険者を脅すだけのつもりのだが、加減を間違えて気絶させてしまった。


 「「「「「「「「「「ええーーー・・・・・・」」」」」」」」」」


 「そうですよね。みなさん?」


「「「「「「「「「「ハ、ハイッ!? その通りですっっっ!!!」」」」」」」」」」


 冒険者の人たちはそう言うが、なぜか目に涙を浮かべている上に膝を左右にガクガク振っている。


 「・・・・・・まぁいい。一応規則に犯罪者の称号を持っている者からの買取は禁止。ってのがあるから、アンタのステータスを見せてくれないか?」


 ステータス・・・・・・私のステータスを見せたくありませんでしたが仕方ありません、これもリィン様にためですからお見せしましょう。


 「ステータスオープン」


 「どれどれぇ〜、なぁっ!?」


 私のステータスを見た目の前の職員は驚いた顔をしたまま身体を硬直させていた。


 「どうしたんですか、ギルドマスター? 彼女のステータスにぃ・・・・・・」


 そのようすを見ていた受付け嬢が私のところまで来て、硬直している職員と同じようにステータス覗き見てきた瞬間に彼女もまた驚いた顔をしたまま硬直するのであった。


 「あの、お二人とも大丈夫ですか?」


 「「ギョェェェエエエエエエェェェェェェエエエエエエッッッ!!!?」」


 二人は叫びながら仰向けに倒れ込んだ後に身体を震わせながら喋り出す。


 「ア、アン・・・・・・いや、アナタ様は! セ、セセセ、セセセセセセッ! セラフィスト様ああああああっっっ!!!?」


 「はい、そうですが?」


 その言葉を言った瞬間に周囲の冒険者たちがざわつきだした。


 「勇者と称えられたセラフィスト様が・・・・・・目の前にいるだって!!」


 「ウソだろおいっ!? だってもう100年以上前にいた伝説の英雄がここにいるわけないだろ?」


 「いやいやいやいや! 俺が聞いた話しじゃ女神様に実力が認められて精霊になったってさ!」


 「そういえば、私が子どもの頃に読んもらった絵本にそう書かれていたような気がする・・・・・・」


 「アタシも協会のシスターさんからセラフィスト様の武勇伝を聞いた!」


 ・・・・・・むぅ、少し騒がしくなってきましたね。この場合は用事を速やかに済ませてさっさと帰るのが一番良い選択肢ですね。


 「それで、ポーションを買い取っていただけるのですか?」


 「も、もちろん買わせていただきます! 鑑定士、セラフィスト様がお作りになられたポーションの品質を鑑定してくれ!」


 「は、はいっ!!」


 私が作ったポーション? どうやら彼らは勘違いなさっているようですね。説明しないといけなさそうですね。


 「そのポーションは私が作ったものではありませんよ」


 「「「えっ!?」」」


 私の言葉を聞いた鑑定士と職員改めギルドマスターと受け付け嬢は驚いた顔をする。


 「で、では一体・・・・・・このポーションをどなたがお作りになられたのですか?」


 そう問われてしまうとこちら困ってしまう。なにせそのポーションは肩書き状6歳の子供が作ったアイテムなのだから、正直に答えてしまうと信じないどころか場合によってはウソを吐いてると言われてしまう。


 「・・・・・・それに関してはお答え出来ません」


 「えっ!? しかしですね・・・・・・」


 「くどいですよ」


 「は、はい! すみませんっ!!」


 「私はあまり時間を見て余したくないので無駄話を控えてくれませんか?」


 買い物を済ませたらリィン様のお家に帰って部屋の掃除も済ませないといけないのと、あのアホ女神がやらかしそうな気がするので出来れば早めに帰りたい。


 「あ、はい・・・・・・それでは、セラフィスト様がお持ちしてきたポーションの鑑定をしますね。 【鑑定】」


 鑑定士の彼はそう言うとリィン様がお作りになられたポーションをジッと見つめている。


 「・・・・・・あれ?」


 「どうかなされたのですか?」


 「いえ、セラフィスト様がお持ちなられたポーションなのでスゴい能力が備わっているのでは。と思ったのですが、普通のポーションでした」


 「え、ええっ!?」


 「そんなっ!?」


 職員たちはなにを期待していたのか分かりませんが、ただのポーションに期待するほどの能力が備わってる訳がないでしょうに・・・・・・あ! でも他のポーションと違って美味しいのは有り難いですね。


 「ま、まぁ毒はないので買い取りましょう! それにポーションが不足していたので助かりますしね! 品質がいいので、一個80レミルのところを100レミルで買い取ります」


 う〜む、持ってきたポーションが6個だから全部合わせて600レミルですか・・・・・・門で払った500レミルを考慮すると100レミルしか得していないことになってしまう上に、この状態が続いてしまうと街にきたくてもこれなくなってしまいます。
 う〜む、リィン様がお作りになられたポーションがここまで安く買い取られしまうのは私の想定外でした。こうなることなら薬草をいくらか摘んで持ってくれば少しは足しになっていたのかもしれないですね。


 「・・・・・・わかりました」


 600レミルの内の500レミルはまたここにくるときのために残しておくとして、残り100レミルは野菜の種を買うことにしましょう。


 「600レミルです。どうぞお納めください」


 「はい」


 お納めください。って私は王や女神ではないので、そんなにかしこまらなくても構わないのですが・・・・・・。


 そう思いながらお金を受け取った瞬間、セラは突然険しい顔つきなる。


 「ムッ!?」


 「ん? どうかなされましたか?」


 「なんでもありません。気にしないでください」


 なんでしょう? とてもイヤな予感がしますね・・・・・・ハッ!? もしやリィン様の身になにかあったのでは?


 「買い取っていただき、ありがとうございました。用事があるので帰らせていただきます」


 くるりと反対側を瞬間、目にも留まらぬ速さで冒険者ギルドを出て行ってしまった。


 「あっ!? セラフィスト様が行ってしまわれた。冒険者ギルドに登録してもらいたかったなぁ〜・・・・・・ハァ〜・・・・・・」


 ギルドマスターは、 もっと早い段階で冒険者ギルドへの登録の話しをするんだった。 と後悔するのであった。

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