高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

無能な兵士がしつこい件について!

 ウンザリした表情を見た兵士は、何を思ったのか知らないが一歩前に出て来た。

 「もう一度聞こう。イレイラ第3王女様が何処にいるのか知っているか?」

 「知りません」

 俺の答えに不快感を覚えたのか、顔を近付けて来た。

 「本当に知らないのか?」

 「すまないが、本当に知らない」

 そう言ったら何故か胸ぐらを掴んで来た。

 「嘘を吐くなよクソガキィ! テメェが何処かに連れて行ったのはわかっているんだよ!」

 「ッ!?」

 勘付いているのか?

 「コウヤ!」

 心配したようすで俺に駆け寄るが、手を出して静止させる。

 「どういうことですか? 俺が連れて行ったって言うのは?」

 「お前がオルコス家に行ったと聞いているんだぞ!」

 「襲われたときにオルコス家に連れて行ったのは俺ですが、その後はオルコス家の人達に預けたので、その後はどうなったのか知らないです。
 その話を聞いていないのですか?」

 「・・・・・・」

 俺の言葉が癇に障ったのか、歯軋りを立てた。

 「いい加減手を離してくれませんか?」

 「・・・・・・チッ」

 舌打ちをした後、乱雑に手を離してくれた。

 「お前が攫ったのはわかっているんだ。絶対に捕まえてやる!」

 兵士は睨め付けながらそう言うと、学園から出て行ってしまった。

 「何で俺が誘拐したってことになっているんだ?」

 「うん。お母様が言うには陛下から説明を受けているって。それなのに・・・・・・・」

 「ミヤマくん!」

 その掛け声と共にアニス学園長とルコア先生が走ってやって来た。

 「コウヤくん、大丈夫か? 怪我はないか?」

 「はい、大丈夫です。胸ぐらを掴まれただけなので、怪我はないです」

 一応何か仕込まれていないか服を叩いたり、ズボンのポケットに手を突っ込んで変な物が入っていないか確認をする。

 「うん。何か仕込まれては無さそう」

 「アイツらはただの兵士だから、そこまで器用なことは出来ないさ。それよりも私に付いて来てくれ。
 セリアくんとリタくんもだ」

 「はい」

 「わかったよ!」

 そう返事する2人と共にアニス学園長の後に付いて行く。

 「入ってくれ」

 理事長室へと入って行く。

 「長い話になるかもしれないから、そこに座ってくれ」

 アニス学園長の言われた通り、椅子へと座った。

 「ルコア先生は教室の方に行ってくれ。授業の方は・・・・・・ルノアくんがノートを取ってくれるから心配しなくていいと思う」

 「わかりました。それじゃあ、また後でね」

 「さて、何故キミがあんなことをされたのか説明をしないといけないな」

 アニス学園長はそう言うと、資料を渡して来た。

 「これは?」

 「読んでみたらすぐにわかる」

 アニス学園に言われた通り、資料に目を通して行く。

 「・・・・・・ん? 陛下はイレイラ王女様は安全な場所に連れて行ったと説明されているが、我々にはその場所を教えてはくれなかったぁ?」

 「もしかしたら脅されている可能性があるので、真実なのかどうかわからないので、調査をして貰えないか・・・・・・ん?」

 この資料。何か違和感を感じるなぁ。

 「一応説明するんだが、兵士の1人に渡された手紙なんだ」

 「その手紙がどうしたんですか?」

 「うんうん」

 リタも同意した顔で頷いている。

 「誰もがそう思う筈だろう。しかし、その送り主に問題があるんだ」

 「送り主?」

 ルド・オーランド と名前が書かれているが・・・・・・。

 「この人、知ってるか?」

 「うん。陛下と仲がいい宰相なんだけど・・・・・・まさか?」

 「いや、ルノアくんが考えているような、宰相が黒幕ってことではない」

 ん? 宰相が黒幕じゃない?

 「つまり、どういうことなの?」

 「宰相の名を偽って、コウヤくん達に差し向けた者がいた。ってことさ」

 「「「ッ!?」」」

 まさか、そんなことをするとは。

 「一体どうして?」

 「どうしてもイレイラ王女様を探し出したいって人がいる訳だ。しかも手紙を受け取った兵士は何を勘違いしたのかわからないが・・・・・・」

 「イレイラ王女様を見つけ出せば、手柄になるって考えた」

 「しかも、それに同調するように他の兵士達も動いたって訳か」

 出世を考えて動いていたのか。

 「そういうことだ。一応手紙の内容については調査をしているらしいよ」

 「えっとぉ〜。自分の身の心配の方は?」

 「無論、今まで以上に心配をしてくれ。もしかしたら直接キミ達に何か仕掛ける可能性があるから」

 そっかぁ。それはヤバイなぁ。

 「私からの話は以上だ。話がなければ教室へ向かってくれ」

 「・・・・・・はい」

 「お邪魔しました」

 「またね!」

 それぞれ挨拶をしてから部屋を出た。

 さて、どうするべきかなぁ。

 「コウヤくん」

 彼女は心配していそうな顔で、俺の顔を見つめて来る。

 「そんな顔をしなくても大丈夫だって。心配をするなよ」

 セリアの頭に手を置いて撫でたら、目を細めた。

 「だからセリアは自分の心配をしてればいいさ」

 「・・・・・・うん」

 よかった。不安を取れたようで。

 「ムゥ〜!」

 むっ!? この声は!

 「アンリネットさん!」

 しかも不満そうな顔させながら、洸夜達の元へやって来る。

 「ムッ!」

 アンリネットさんはそう言いながら、頭を突き出した。

 「えっとぉ。どうしたんだ?」

 「お嬢様はミヤマ様に頭を撫でて貰いたいのですよ」

  いつものことながら、何の前触れも無く来ますね。

 「う〜ん」

 もしこの場で撫でたら、誰かに何か言われないか?

 「ああ〜・・・・・・また今度ってことで」

 「ダメ、今がいいの」

 やらなきゃイヤ! と言わんばかりに、アンリネットさんが左腕に抱き付いて来た 。

 「ッ!?」

 そして何故か反対側の腕にセリアが抱き付いて来て、アンリネットさんを見つめる。

 「その手を離して」

 「イヤです。アンリネット様が離して下さい。私達は教室へと向かわなければなりませんから」

 「・・・・・・そっちが先に離す」

 「アナタ様の方が先です」

 2人はそう言った後、俺を挟んで睨み合いを始めた。

 「とっ、ところで、何でカーシャさん達はここにいるのですか?」

 「そうだよ。ホームルームが続いている筈だよ」

 「私達は学園長に用事があったので、途中で抜けさせて頂きました」

 「そうなんですかぁ」

 用が何なのか気になるが、余計な詮索はいない方がいい。何せ他人事に首を突っ込むのはよくないと俺は思っている。

 「お嬢様、学園長の元へ行きましょう」

 「まだ撫でて貰ってない」

 「それは今度の機会にして貰えればいいじゃないですか。そんなことよりも、ミヤマ様のご実家が何処にあるのか知りたくないのですか?」

 「「「えっ!?」」」

 俺の実家の場所だって?

 「イヤイヤイヤイヤ! 何で俺の実家の場所を聞こうとしているんですか?」

 「ミヤマ様本人に確認をしたいところなのですが、聞いても答えて貰えないと思ったので学園長に確認を取ることにしました」

 うっ!? 確かに俺に聞かれても困るな。

 「ミヤマ様、アナタのご両親はお元気ですか?」

 「元気にしていますよ」

 無論、その実家にいるのだから知っていて当たり前だ。

 「・・・・・・そうですか。ミヤマ様のご両親に是非とも会ってみたいと、アンリネット様が仰るんですよ」

 「そうなのか」

 「うん」

 そんなに俺の両親が気になるのかよ。

 「どうしてコウヤくんの両親に会うのですか?」

 「コウヤの両親に会って、気に入って貰う」

 「気に入って貰う? 何の為に?」

 「コウヤと仲良くなる為に」

 俺と仲良くなる為に?

 何を言っているんだ? と言いたそうな顔をしていると、セリアが青ざめた表情をさせる。

 「もしかして、アンリネットさんは・・・・・・」

 「お、おい。大丈夫か?」

 「長話になってしまいましたね。行きましょうかアンリネット様」

 「・・・・・・うん」

 アンリネットさんは名残惜しそうな顔をさせながら、カーシャさんと共に歩き出したのであった。

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