高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

オルコス邸に戻って来るコウヤ達

 ようやく行ったかぁ。

 そう思いながらため息を吐いていると、ルノアが俺の袖を引っ張て来た。

 「ねぇコウヤ。本当によかったの? あんなふうに言って」

 「ああ、うん。ああ言うしかなかったからさ」

 今度連れて行って。何て言われたら、どう断ろうか悩みものだなぁ。

 「私、アンリネットが言って来ても何も言わない。コウヤに任せる」

 「そんなことを言わないでくれよぉ」

 俺だって頑張って言った言葉なんだから、少しは庇ってくれてもいいんじゃないか?

 「まぁとにかく。今日セリアの家に来てくれ」

 「わかったわ。セリアのお家に行くのなんて久しぶりね」

 どうやらセリアの家に行くのは久しぶりらしいな。

 そう思っていると予鈴が鳴り、ルコア先生が入って来た。

 「はぁ〜い。ホームルームを始めるから、みんな席に着いてぇ〜!」

 クラスメイト達は返事をすると、自分が座る席に座る。

 「皆さんご存知だと思いますが、イレイラ第3王女様はしばらくの間学園の方へ来ません!」

 ルコア先生の言葉に教室はザワついた。

 「落ち着いて下さい! 話を続けますよぉ!
 その為、しばらくの間は生徒会は副会長が生徒会長としてお仕事をするので、安心して下さい!
 私の話は以上です。何か質問したい人はいますかぁ?」

 ルコア先生がそう聞くが誰も何も言わないので、そのままホームルームが終わり、何ごともなく授業して放課後を迎えた。

 「さて、放課後になったことだから、私のお家に行きましょうか!」

 授業中でも思っていたことだが、アンリネットと話し合ってからのセリアは、何故か生き生きとしている気がしてならない。

 「ルノアはどうする? 直接私のお家に来る? それとも一旦お家に帰る?」

 「ああ〜・・・・・・一旦家に帰らせて貰うわ。制服を汚したくないし」

 「じゃあルノア、後で会おうね。行こう、2人共!」

 「あ、ああ、うん!」

 「了解だよぉ〜」

 戸惑いながらもセリアの後に続いて行くのであった・・・・・・が。その後ろ姿を遠くで見つめていた2人の姿があった。

 「どうやら彼らは直接オルコス邸に向かうようですね。お嬢様」

 「ん、そうだね」

 「このまま気付かれないように付いて行きますよ。いいですね?」

 どうやらこの2人は尾行を考えているようだ。しかしアンリネットの方が乗る気じゃないのか、少しだけ不貞腐れた顔をさせている。

 「コウヤに会いたい」

 「ダメですよお嬢様。もし今出て行ってしまったら、尾行されているんじゃないかと勘付かれてしまいますから」

 「ここまでする必要ないと思う」

 その言葉を聞いたカーシャは、首を横に振って否定をする。

 「私も最初はそう思いました。しかし、彼らのようすを見ていると怪しいと感じるところがあるんですよ」

 「怪しいと感じるところ」

 「そうです。私達が接触しようとすればやんわり避けられて、更にはオルコス家に行こうとすれば断られる。これをおかしいと思わない方がおかしいです」

 そう、貴族社会では貴族同士の付き合いに断る理由がない限り、受け入れるのが当たり前。しかし彼らはというと、明確な理由もなくやんわりと断って来る。

 「きっと何かを隠しているに違いありません。なので調査を致します」

 「・・・・・・そう?」

 「行きたくないと仰るのでしたら来なくて構いませんよ。迎えの者にお嬢様をお願いしますから」

 「ん、そうする」

 アンリネットはこう思っていた。 めんどくさい。  と。

 「そうですか。では迎えの者を手配するので待っていて下さい。一応言っておきますが、これがキッカケで私とミヤマ様が仲良くなってしまわれても、恨まないで下さいね」

 その言葉にアンリネットはピクリと身体を反応させた。

 「それ、どう言う意味?」

 「どう言う意味も何も、乙女は気になる相手と親しくなろうとすればするほど、相手のことを知りたがるものですよ」

 「それとこれとは関係ない」

 「関係ありますよ。私自身もミヤマ様のことが気になりますからね」

 カーシャのその言葉を聞いたアンリネットは目を見開いて驚いているが、カーシャの方はと言うとニッコリと微笑んでいる。

 「と言う訳で迎えの者を呼んでおいたので、お嬢様はその者と共に帰って下さい」

 カーシャはペコリと頭を下げ、立ち去ろうとした瞬間にアンリネットにスカートの裾を掴まれた。

 「私も行く」

 「帰るのではなかったのですか?」

 「予定変更。コウヤを追い掛ける」

 「・・・・・・そうですか。念の為にさっき言ったことを言いますが、これは尾行なのでコソコソ隠れながら移動しなくてはいけませんよ」

 「わかってる」

 アンリネットはやる気なのか、ジッとカーシャのことを見つめている。

 「そうですか、わかりました。それでは私に付いて来て下さいね」

 「ん! わかった」

 カーシャは、やる気になっているアンリネットの見つめながらこう思った。 やっぱりお嬢様はチョロい。 と。

 そして、尾行されているとも気付いていないコウヤ達は、セリアの家へとたどり着いた。

 「コウヤくん、リタさん。どうぞ、お家の中に入って」

 「お、おう。お邪魔します」

 「お邪魔しまぁ〜す」

 普通に家に入り、リビングへと通されて、マーガレットさんが優雅に紅茶を飲んでいた。

 「ただいま、お母様」

 「どうも、お邪魔しております」

 「お邪魔しまぁ〜す!」

 「おかえりなさい3人共、学園の方はどうだったかしら?」

 俺達のことを心配していたらしく、そう聞いて来る。

 「生徒会がしばらくの間だけ、副会長が代理になるってだけで何も変わりがない感じです」

 「それに、お母様が心配しているようなことは起きなかったわ」

 「そう、それならよかったわ」

 マーガレットさんは安堵のようすを浮かべたが、何処となく疲れた表情にも見えたので聞くことにした。

 「そちらの方はどうだったんですか? 何かありましたか?」

 「ええ、まぁ・・・・・・また兵士達がこの屋敷に来て質問をして来ました」

 「騎士ではなく?」

 「ええ、反イレイラ王女派の者達か、もしくは功績を立てたい者達の集まりでしょう。
 この屋敷に来て早々、イレイラ王女は何処にいる? と尋ねて来ました」

 何処にいるって、まるで犯人のように扱うなぁ。

 「それで私は、 この屋敷には居ませんのでお引き取り願います。 言ったのですが、しつこく何処にいる? 言って来た挙げ句に屋敷の中へ入ろうとして来ました。
 令状がない限り、屋敷の中へ入ってはいけないということを知らないのですか、あの者達は」

 マーガレットさんはそのときのことを思い出しているのか、身体から怒りの雰囲気が漂わせていた。

 「結局は私の旦那様がやって来て、その場を押さえてくれました。今頃あの者達に厳罰が下っているでしょうね」

 おお〜、貴族を相手にするのはおっかないなぁ。俺も用心していよう。

 「あ、そうだお母様! ルノアがお家に来るんだけど、大丈夫ですか?」

 「ルノアちゃんが? 別に構いはしませんが・・・・・・まさかアナタ達!? ルノアさんにイレイラ王女様の居場所を教えるつもりなのですか?」

 「ええまぁ。ルノアだったらいいかなぁ? と思いまして」

 「もしかして、ダメでした?」

 俺達がそう言うと、マーガレットさんはアゴに手を当てて考えるような姿になる。

 「そんな顔をしなくても、ルノアだったら信じられると思うから大丈夫だよ」

 「・・・・・・そうですね、彼女の両親もこっち側の人間ですから、その点は安心してもいいと思います。
 しかし無関係な方を巻き込もうとする点に関しては、感心出来ませんね」

 「いやでも、いずれは知ることになっていたかもしれませんよ。ルノアは俺の世界にちょくちょく遊びに来ていたし」

 セリアと一緒に俺の部屋で勉強していたし、何よりも遊んでいた。

 「ハァ〜・・・・・・私達で問題を抱えるよりも、信じられる人を味方に付けた方がよさそうですね。
 わかりました。ルノアさんに教える件については、そちらにお任せ致します」

 こうして俺達は、ルノアが来るまで待っていたのであった。

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