高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

洸夜とイレイラ王女の危機

 何だかんだあったが、何とか校舎の外へと出ることが出来た。

 「あれ? アニス学園長」

 「やぁコウヤくん。それにセリアくん、って何で背負われているんだい」

 「ああ〜、これには訳がありましてぇ〜・・・・・・」

 とりあえず道場の話を掻い摘んで説明をしたら、アニス学園長は納得したようすを見せた。

 「つまりだ。昨日頑張って修行した成果がこの状態ってことなのか?」

 「はい・・・・・・ルノアも見ての通りです」

 プルプル震えながら立っている姿を見たアニス学園長は、何故か額に汗を滲ませる。

 「2人共すまない」

 「いえ、アニス学園長が気に病むことはないです!」

 「そうですよ! 私達が望んで修行した結果なのですから!」

 「それよりか、向こうに見えている馬車ってルノアの迎えか?」

 正門の真ん中に ドドォ〜ン!? と馬車が待っているが、ルノアは首を横に振った。

 「あれは私の家の馬車じゃないわ」

 「そうだな。王家の家紋だから、イレイラ王女のお迎えだろう」

 「あれ? 王家の馬車にしては豪華な感じがしないようなぁ〜・・・・・・」

 黒塗りで威厳があるように見えるが、リタの言う通り飾りが少ない気がしなくもない。

 「まぁ、彼女の地位を考えてみればな」

 「どういうことですか?」

 「他国のお前には関係ない話だから、気にするな」

 要するに、 これ以上関わらないように。 と言う警告だろうな。

 「そうですか。アニス学園長がそう仰るのでしたら、気にしません」

 そう言った後、馬車が走り出した。その後を入れ替わるように他の馬車が校門の前に停まる。

 「あ! あれが私の家の馬車よ!」

 どうやらルノアのお迎えが来たらしい。

 「そんじゃあ向こうまで行こうか」

 「そ、そうね」

 ルノアの身体を支えながら、馬車へと近付く姿をアニス学園長はとても申し訳なさそうな顔で見送っているのに気付いていない。

 「ルノアお嬢様。お迎えに上がりました!」

 「ルノアはとても疲れているので、早く馬車に乗せてあげて下さい」

 ルノアのライフはもう0よ! の状態なのか、背中を丸めてグッタリしている。

 「さ、左様でございますね! ミヤマ様、ルノア様をお連れして下さって有り難うございます!」

 「いえいえ、友人なのでこれぐらいのことは当然ですよ。それよりも早くお屋敷に帰った方がいいんじゃないか?」

 「そうですね、それでは我々はこの辺でお暇させて頂きます」

 おじさんはそう言って頭を下げたら馬車を出した。

 「あのようすなら無事に帰れそうだな」

 「それに明日になれば、筋肉痛がマシになっているだろうからな」

 でも今度の土曜にまた道場に行くから、どうなるかわからないぞ。

 そんなことを思いつつ、ルノアが乗った馬車を見送った。

 「とりあえず俺もセリアを家まで送りに行かないといけないので、もう行きますね」

 「ああ、帰りに気を付けるんだぞ」

 アニス学園長に見送られながらセリアの家へ向かうが、その道中でセリアが申し訳なさそうな声で話し掛けて来た。

 「あの、そのぉ〜・・・・・・ゴメンね。コウヤくん」

 「ん? どうしてセリアが謝るんだ?」

 「そのぉ・・・・・・ね。私がこんな風じゃなければ、コウヤくんに迷惑を掛けることがなかったと思うから」

 ああ、そういうことか。

 「俺自身も修行始めた頃はそんな感じだった」

 「そ、そうなの?」

 「ああ、修行を続けていればその疲れが無くなっていくから、根気よく続けるようにした方がいい」

 「でも無理して倒れたら意味がないから、無理は禁物だよぉ!」

 俺達の言葉を聞いたら、何故かギュッと俺の身体に抱き付いて来た。

 「うん・・・・・・コウヤくん、私頑張ってみるよ」

 「ああ、セリアなりに頑張ってくれ・・・・・・ん?」

 ちょっと先の方に見覚えがある停まっていた。

 「あれは、イレイラ王女が乗っていた馬車じゃないか?」

 「本当だぁ! でも何でこんなところに停まっているんだろう?」

 そうだなぁ。周りにはお店は見当たらないし、何よりも連れ添っていた人達も見当たらないので不審に思う。

 「私達が気にしなくていいんじゃない?」

 「リタの言う通り、気にせずに行こうか」

 そのまま素通りしようとしたときだった。馬車の陰から人がバタリッと道に倒れたのだ。

 「「ッ!?」」

 「えっ、何? あの人は確か馬車を操縦していた人だよね?」

 俺達はただならぬ雰囲気を感じたので、セリアを背中から下ろした。

 「リタ、セリアのことを頼む。俺はあの人のようすを見て来る」

 「わかった。気を付けてね、コウヤ」

 先程倒れた人は意識があるのか、助けを求めるように踠いていたので注意しながら馬車に近付いて行く。

 病気? それだったら中にいるイレイラ王女が降りて来る筈だ。それに扉が開き放なのも気になる点だな。もしかしたらマズイ状況に出会したかも知れないな。

 そんなことを思いつつ馬車の前方に出ると、何と痛々しい姿の男性が横たわっていたので、慌てて近付き仰向けにすると俺の方に顔を向けた。

 よかった。まだ意識がある。

 「オッサン、一体何があったんだっ!?」

 「キミは?」

 「学園の生徒の1人だ! それよりも、イレイラ王女が見当たらないが・・・・・・って!?」

 周囲を見渡していたら、路地の先で護衛と思わきし2人がフードを深く被った黒服の2人と戦っていて、そこから離れた位置にイレイラ王女が立っていた。
 しかし、護衛もイレイラ王女も屋根の上にいるもう1人の黒服に気付いていない。

 ヤバイッ!? 3人目に気付いていない! 駆け寄ってら気付かれてしまうかもしれない・・・・・・そうだっ!!

 「これならいけるかもしれない!」

 結晶化のスキルを屈指して、頑丈なYの字の取手に手首が反らないようにする為の押さえ、それに加えて魔力を糸上にした物をゴムのように伸び縮みするように改良して取手の両先端に結合させる。

 出来た! スリングショット!

 その後は丸い結晶を作り、魔力の糸に引っ掛けて思いっきり引いて屋根の上にいる男目掛けて放った。

 「ガァッ!?」

 屋根の上にいた男は顔に当たったらしく、顔を押さえながらフラついていると足を滑らせて落ちてしまった。

 「なっ!?」

 「もう1人いたのかっ!!」

 しかしその伏兵は足を滑らせて落ちてしまったせいなのか、痛そうに脚を押さえて踠いていて何もしない。

 多分あれは脚を骨折した感じなんだろうな。

 そう思った直後にもう一個丸い結晶を作り、気を取られている敵を狙い放つと、脇腹に当たりその場に蹲った。

 「〜〜〜ッ!?」

 「ッ!? 隙あり!」

 護衛は剣の柄部分で殴り気絶させると、最後の1人を見据えた。

 「・・・・・・チッ!?」

 最後の男は舌打ちをすると、逃げる為かこっちに向かって走って来た。

 「そこを退け、クソガキィイイイイイイッ!?」

 そう言いながらナイフを突き出して走って来る。

 「甘い!」

 ナイフを躱しつつも顔面に右拳を喰らわせて、その勢いで地面に叩き付けた。

 「単調な動きで俺を止められると思うなよ」

 と言ったのだが、相手は俺の一撃が効いたのか伸びてしまっていた。

 「コウヤくん、大丈夫?」

 「ああ、俺は平気だ」

 「えげつないことをやるねぇ」

 いや、地面に叩き付けたのは仕方ないって。相手も走って来ていたんだから押し負けないように力を調節しないといけなかったし・・・・・・って、それよりもだ!

 「この人の手当てをしてくれ」

 「了解! これぐらいの傷なら、すぐに治しちゃうよ!」

 リタはオッサンに近付き、治癒魔法を掛ける。

 「相手は暗殺者かもしれないから、念の為に解毒をしておいてくれ」

 「え? この人毒は掛かってないから、キュアは必要ないよ」

 「わかるのか?」

 「うん」

 どうやらリタは毒に掛かっているかどうか判断出来るようだ。

 「あのぉ〜、すみません」

 「ん?」

 どうやら護衛の人が俺達の元へやって来たみたいだ。

 「助けて下さって、ありがとうございます。私達はイレイラ王女の・・・・・・」

 「ストップ!」

 「どうされたのですか?」

 「もしかしたら近くにコイツらの仲間がいるかもしれないので、自己紹介する前に離れましょう」

 そう、必ずしも見えている人数で全員と判断してはいけない。

 「そ、そうですね! とにかくこの場から立ち去りましょう!」

 「それなら私の屋敷が近いので、そこへ向かいましょう」

 「・・・・・・その方が安全そうだな」

 おじさんの治療を終えた後、全員でセリアの家に向かうのであった。

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