高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

洸夜とドキドキするセリア

 アイスを食べ終わった2人は、満足そうな顔をさせながらソファーに座っていた。


 「アイス美味しかったぁ〜」


 「そうねぇ〜。もう1個あったら食べたいわぁ〜」


 「もう1個食べたら、夕食を食べれなくなるからダメよ」


 笑顔でそう言う母さん。


 「2人共、そろそろ帰らなくてもいいの?」


 「あ、そうだったわ!」


 「リタの言う通り、そろそろ帰らないと!」


 2人はそう言うと俺の元にやって来る。


 「帰りもよろしくね」


 「ああ、一先ず俺の部屋に行こうか」


 「うん」


 「ええ」


 2人とリタを引き連れて自室へと向かい、向こうの世界に転移をする。


 「2人共、今日修行をやってみてどう思った?」


 「ハッキリ言って疲れた」


 「私も、あんなに運動したことなかったから、身体が重いと感じるよ」


 今になって疲労が出て来たのか、足元が覚束ないようすのセリア。


 セリアの家は目の前だから大丈夫だけど、ルノアの方はそうもいかないなぁ。


 「ルノア、家まで帰れそうか? 無理そうなら送って行くけど」


 「ああ〜・・・・・・多分大丈夫だと思う」


 本当にそうか?


 「ルノア、無理はしない方がいいと思うよ」


 「大丈夫よリタ。コウヤの家で休憩したから、そんなに疲れていないわ」


 「そう? ルノアがそう言うのなら信じるけど」


 そう言いつつも心配そうな顔でルノアのことを見つめる。


 「私の両親が帰りを待っているから、そろそろ行くわ」


 「そ、そうか?」


 「それじゃあ、また明日会おう!」


 ルノアはそう言うと、足早に俺の家から出て行ってしまった。


 「ルノアのヤツ慌てたようすだったけど、何を慌てていたんだ?」


 「きっと私達に気を使ってくれたんだと思う」


 「気づかい?」


 家まで送って貰うのは申し訳ないと思っているのか?


 「コウヤの鈍チン」


 「どうして俺が鈍チン何だよ?」


 「ちょっと考えればわかることだよぉ〜」


 口笛を吹いている姿に、ちょっとイラッと来る。


 「私もそろそろお家に帰ろうかなぁ」


 「すぐそこだけど家まで送ってやろうか?」


 「・・・・・・お、お願いします」


 頬を赤らめながら、そう言う姿に洸夜は首を傾げる。


 今の間は一体何だったんだ? まぁいいや。


 「手を繋いだ方がいいか?」


 倒れたら困るから、その方がいいだろう。


 「て、手を繋ぐぅ!?」


 いきなり大声を出したので、ビックリして引いてしまった。


 「もしかして嫌だった?」


 「いいえっ!! お願いしますっ!!?」


 セリアはそう言うと、俺の手を取った。


 「そ、そうか。それじゃあセリアの家に向かうか」


 「う、うん」


 俯いているセリアと共に家を出てオルコス家へと向かう。


 「セリア、着いたぞ」


 家の入り口前にやって来たのだが、何故か俯いたまま手を離してくれないのだ。


 「・・・・・・」


 「もしかして、まだ家に居たいのか?」


 「・・・・・・・・・・・・」


 ダメだ。黙ったままで何も答えてくれない。


 「セリア、手を離してあげないとコウヤさんに嫌われてしまいますよ」


 「ッ!?」


 その声に反応したセリアは、掴んでいる手を離した。


 「マーガレットさん」


 「ご無沙汰しておりますコウヤさん。ルノアはどうされたのですか?」


 「1人で帰ってしまわれました」


 「激しい運動した後だから、お家に帰れるのかちょっと心配だよぉ」


 リタの言葉を聞いたマーガレットさんは、 うんうん。 と頷いた後に笑顔で話し始めた。


 「彼女に何かあれば私の耳に入るので、心配をしなくていいですよ」


 「う〜ん・・・・・・」


 何かあってからじゃ遅いんじゃないんか?


 「とにかくコウヤさん達は、心配せずにお家に帰っていいですよ」


 「・・・・・・わかりました。マーガレットさんの言葉を信じて帰ろうかリタ」


 「うん、わかった。それじゃあ、また明日ね」


 「うん、また明日」


 マーガレットさんの言葉を信じて帰ることにしたが、リタは不安なのかチラチラと周囲を見る。


 「ルノアが心配なら、家に行って見てみるか?」


 「別にそこまでしなくても・・・・・・」


 「ならそんな心配そうな顔をしなくていいだろう」


 俺が心配なのは、明日来るかどうかだし。


 「そうだね、。コウヤの言う通りだね」


 こうして家に帰り、家で過ごしたのであった。そしてその次の日の朝・・・・・・。


 「ん〜・・・・・・」


 「ああ〜・・・・・・」


 俺とリタは微妙な顔をしている。何故かって? その答えは目の前にいるセリアが物語っている。


 「コウヤくん、リタさん。が、ががが学校に行きましょうか」


 「いや、そのさ・・・・・・身体大丈夫か?」


 「だ、大丈夫!」


 そう言うけどさ、産まれたての小鹿のように脚をカクカクさせてたら説得力に欠けるぞ。


 「学園まで持ちそうに見えないんだけどぉ」


 うん、俺もそう思う。


 「今日は馬車で行きなさい。と言ったんだけれども、どうしても歩いて行きたい。って言うの」


 「どうして?」


 「それはぁ〜・・・・・・」


 何故か身体をモジモジさせながら、目を泳がせている。


 「運動の為に歩きたいんでしょ?」


 「そ、その通りです!」


 運動の為って。


 「筋肉痛になっている間でも身体を動かした方がいい。って聞いたことがあるけど、あんまり無理をすると逆効果になるから気を付けた方がいいぞ」


 「へ? あ、そうなの?」


 「ああ、馬車を使いたくないと言うのなら・・・・・・」


 セリアに背中向けて屈んだ。


 「俺が学園まで送ろうか?」


 「「「ッ!?」」」


 そう言った瞬間、3人の顔が驚いた表情になる。


 「コウヤさんって、大胆なんですね」


 「やるときはやるね!」


 「コウヤくんのおんぶ。コウヤくんの・・・・・・」


 ん? みんな、どしたんだよ?


 「早く乗らないと遅刻するぞ」


 「そうね。セリアコウヤさんのご厚意に甘えておきなさい」


 「は、はひっ!?」


 そう返事をすると俺の背中に乗った。


 「それじゃあ、行って来ますね」


 「行って来まぁ〜す!」


 「・・・・・・行って来ます」


 洸夜の背中で恥ずかしそうな顔させながら答えるセリア。


 「行ってらっしゃい」


 そして何故かいい笑顔で見送るマーガレットさんが、そこに居た。


 「・・・・・・・・・・・・ねぇ、コウヤくん」


 「ん? どうしたんだセリア」


 「私、重くない?」


 「重くないから気にすんな」


 むしろ姉さんの方が重いぐらいだ。なんて本人の目の前で言ったら、殺されるの間違いなしだよな。


 「とにかく筋肉痛の方は2〜3日で何とかなるだろう。それまでストレッチをしながら、ゆっくりと身体を休めるといい」


 「うん・・・・・・ねぇコウヤくん。私、今よりもっと強くなれるかな?」


 「強くなりたいと思いながら修行をしていれば、強くなれるさ」


 「そうなの?」


 不安そうな声を出しているので、どう答えようか考えているとリタが話し出した。


 「コウヤだって最初っから強かった訳じゃないと思うよ。小さい頃から修行をずっと続けて来たいたから、今のコウヤあると私は思っているよ。
 コウヤは言っていたもん。達人は1日にしてならず。日頃続けて来た積み重ねが結果として出ているんだって」


 リタはそう言うと、俺に向けてウィンクをする。


 「そうだな。もう少し続けてみれば結果が出るんじゃないか?」


 「もう少し・・・・・・うん。コウヤくんの言う通り、もう少し頑張ってみるよ」


 セリアが元気付いてくれてよかった。


 そんなことを思いながら歩いていると学園の門の前まで来たが、何故か周囲から見つめられている気がしてならない。


 「もしかして、セリアを背負っているのを気にしているのか?」


 「そうかもね」


 そうだとしたら非常にマズイ。


 「セリア、そろそろ降ろそうか」


 「そ、そうだね! 教室までの距離なら歩けそうだし」


 「・・・・・・2人共、何をしてるの?」


 後を振り向いてみると、何とそこにはアンリネットさんが不機嫌そうな雰囲気でこちらを見つめていたのだった。

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