高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

エピローグ コウヤと夢の話

 「う、うう〜ん・・・・・・ん?」


 目を見開くと、今にも泣きそうな顔をしたセリアの顔が飛び込んで来た。


 「コウヤくん!?」


 そう言いながら抱き付いて来た。


 「よかったぁ・・・・・・本当によかったよぉ」


 その後も嗚咽を混じりに泣いているので、頭を撫でてあげる。


 「なぁセリア。どうして俺はベッドの上で横になっているんだ?」


 しかもここは何処なんだ?


 「コウヤ、アンタが無茶な魔法を使ったせいで気絶したのを覚えてないの?」


 「あれ、姉さん?」


 「そうよぉ。ゼウス様達から話を聞いて、お母さんもビックリしたんだから!」


 『まぁ命に別状が無いから、よかったんだけどね』


 母さんや父さんまでいる! ・・・・・・あっ!? 思い出した!


 「あのゴーレムはどうなったんだ?」


 「どうもこうも、お前が作ったクリスタルの剣でゴーレムをぶった斬ったんだろう。覚えてないのか?」


 そう言いながら部屋の奥からアニス学園長がやって来た。


 「ぶった斬った?」


 あのゴーレムに向かって振ったのは覚えているが、斬った手応えなかったから不発で終わった筈。


 「やはりティアラ様達の言う通り、余りに鋭い斬れ味だったから、本人は斬った事を自覚していないかも知れない。って言っていたのは本当だったな」


 「余りび鋭い斬れ味に?」


 どう言うことなんだ?


 そう思いながら上体を起こすと、アニス学園長は呆れた顔をさせながら話始めた。


 「ああ。キミが作ったあの剣はとても強力らしくてね。ティアラ様達もその威力にビックリしていらっしゃった」


 「でも、鉄の塊を斬っただけですよ。そんなに驚くようなことではない気がします」


 「その鉄の塊を易々と切り裂いてしまうのが驚くことなんだが・・・・・・まぁいい。念の為に言っておくが、あの魔法は私のいないところでの使用は禁止。理由は自分が一番知っているだろう?」


 「あ・・・・・・はい」


 一回振っただけで気絶するような大技をポンポン使われたら困るよな。


 「それと、コウヤくんが向こうに連れて行ったルノアのことなんだが・・・・・・」


 「あ!?」


 しまった!? 向こうの世界に置き去りに・・・・・・って言うか、何で父さん達がこの世界にいるんだ?


 「ようやく気付いたか。彼らはゼウス様達のお力のお陰でルノアと共に連れて来て下さったんだ」


 「お見舞いに行けないのは、よくないですからねぇ〜。 って理由みたい!」


 「ああ、そうなんだ。因みに俺はどれぐらいの時間寝ていたんだ、リタ?」


 「大体3時間ぐらいかなぁ?」


 3時間かぁ〜。1日か2日ぐらいだと思っていたが、そんなに時間が経っていなかった。それはそうと、肝心なのはルノアのことだ。


 「ルノアは無事ですか?」


 『ああ無事だよ。彼女は両親の元にいる』


 「よかったぁ〜」


 父さん達に任せておいてよかった。


 「そのルノアのことについて、ティアラ様から伝言を預かっている」


 「伝言ですか?」


 「 “今回は仕方のないことだったから不問としますが、次やったら本当に怒りますよぉ〜。ちゃんと私達に相談してからにして下さいねぇ〜。” とのこと」


 「はい、わかりました」


 実際のところ、ティアラ様が怒ったようすを想像出来ないな。


 「それと、ルノアちゃんには洸夜のことを話しておいたから、彼女もセリアちゃんと同様に頼っていいよ」


 「実際に洸夜くんの身の上話を聞いて、可哀想って言ってたしね」


 今となってはどうでもいいと思ってしまう、過去の話なんだよな。おっとそうだ!


 「そう言えば駄爆親子のことについて、話たいことがあるんだけどさ。みんな時間ある?」


 「え? もしかしてコウヤ、また夢を見たの?」


 「ああ。昨日は親父の方で、さっきは息子の方を見たんだ」


 そう言ったら、全員驚いた顔をさせた。


 「そのお話。私達にも聞かせて頂けるかしら?」


 「マーガレットさん。それにオルコシスさんも」


 多分、廊下で出待ちしていたんだろうな。


 「それよりもセリア。何時までコウヤさんの身体に抱き付いている気ですか?」


 「ハッ!? ゴメン、コウヤくん!」


 セリアはそう言いながら離れてくれたのだが、顔を真っ赤にさせている。


 「えっとぉ〜、先ずはどっちの方から話たらいいのか」


 『先に見た方でいいんじゃないかな』


 「私もお父さんと同意見」


 「お母さんも同じよぉ〜」


 他の人達も同意見と言いたそうな顔で見つめて来る。


 「じゃあ、親の方からだな。ハゲ校長は中国・・・・・・あ、向こうの別の国に」


 「何となくわかるから、気にせず続けていいぞ。コウヤ殿」


 「あ、はい。中国に逃亡して家を買ったのまではよかったんですが、潜伏先を強盗に襲われて有り金を全部取られてしまったみたいです」


 『「「「「「「「ええっ!?」」」」」」』


 そりゃ驚くよな。俺自身その光景を見て驚いたんだから。


 そんな中、アニス学園長が真っ先に俺に聞いて来る。


 「有り金を持って行かれたってことは、コウヤくんを嵌めたヤツは現在一文無しってことなのか?」


 「そう言うことになりますね。一応言っておきますが、その犯人達が有り金を持って去って行ったところまでしか見てないので、行方とか知りませんよ」


 「そうだよなぁ〜。しかし、その犯人グループが大金を持っているのを知っていたとしか思えないな」


 確かにそうだよな。


 そんなことを思っていたら、父さんが何かに気が付いたような表情をする。


 『もしかしたら、その家を貸した人が襲撃の手助けをしたかもしれない』


 「どう言うことですか?」


 『これはあくまで僕の予想なんだけど、住宅を買うときにお金を取り出すよね』


 「ああ〜、確かに」


 クレジットカードとかじゃなければ、お金を見れるな。しかもハゲ校長の場合バッグの中から取り出すから、いくら持っているか確認出来る筈。


 『多分そのときにバッグ中身を確認したんじゃないかなぁ?』


 「「「「「「「ああ〜」」」」」」」


 バッグの中に大量に札束を入れていたからな。父さんの言う通りかもしれないな。


 「それで契約金を払わせた後に、金を取る計画を立てたのか?」


 『そうかもしれない』


 父さんも予想の範ちゅうで話しているから断言出来ないでいる。


 「あのハゲ校長に付いて何か聞きたいことがある人がいる? いないんなら、息子の無乃の話に移るんだけど」


 全員の顔を見るが、誰も何も言わないので無乃の話をすることにした。


 「じゃあ息子の無乃について話をするぞ。少年院から脱走した無乃は駅の近くの電気屋のテレビで自分が脱走したニュースを観た後に、俺達家族に復讐する為に金を集めようとしていた」


 「金を集めようとしていたぁ!?」


 「大変! 早く防犯対策をしないとぉ〜〜〜!?」


 『2人共落ち着いて、コウヤくんの話を全部聞いてから判断しても遅くはないと思うよ』


 父さんの言葉を聞いた2人は、落ち着いた表情で俺の顔を見つめる。


 「話の続きをするぞ。ちょうど無乃の目の前に中年の男性がいたから、無乃は親父狩りをしようとしていたんだ」


 「親父狩りって何?」


 「働いている中年男性からお金をむしり取る行為のこと。20年以上前のことになるけど社会問題になっていたんだ」


 今じゃすぐに身元がバレるから、やる人なんて滅多にいない。


 「ふ〜ん、それでムノって子も親父狩りをしようとした訳だね」


 「ああでも。その相手がマズかったんだ」


 「と、言うと?」


 「相手はヤクザだったんだ」


 「「『ゲッ!?』」」


 ヤクザを知らないアニス学園長達は首を傾げているが、唯一知っているリタだけは俺の目の前までやって来て話し掛けて来る。


 「ヤクザってあれだよね? 闇ギルドみたいな危ない人達の集まりで、裏社会で色々悪いことをやっている・・・・・・」


 「うん、その認知は間違ってないかも」


 俺がそう言ったら、マーガレットさん達は顔を引きつらせた。


 「その人は最初、そのままどっか行けば見逃す。って言ったんだが、馬鹿な無乃は襟首を掴んでしまって・・・・・・」


 「そこから修羅場になったのね」


 「うん、最終的にスーツの弁償と称して車に乗せられた」


 『内臓を取られてないよね?』


 父さんがそう言ったら、セリアが身体を強張らせていた。


 「な、内臓って・・・・・・一体何に使うつもりなのですか?」


 「セリア、そこら辺のことは気にしない方がいい」


 「そうよ。生々しい話をしなきゃいけなくなるから」


 「あ・・・・・・はい」


 セリアはそう言うと、おずおずとマーガレットさんの元まで下がって行く。


 「でも、そのヤクザの話を聞いていたのだけれど、内臓を取るつもりは一切無いらしい」


 「そうなの?」


 「ああ、無乃を働かせるらしい」


 『ヤクザ系列の仕事かぁ〜・・・・・・』


 「お父さん何か思い当たる節があるの?」


 『ゴメン、調べてみないとわからないや。でも辛くて月収が安い仕事をさせられるのは目に見えているよ』


 「ザマァ!」


 リタ、そう言うことを口にするんじゃないよ。


 「とにかく、俺が見た夢はそこまで。後どうなったのかは、全く持ってわからない」


 「そうかぁ〜、また何か見たら私達に話して欲しい」


 「そうします」


 自分でも不思議なぐらい、駄爆親子がこの先どうなっているのか楽しみで仕方なく思っている。


 「あれ〜? 何か私が目立っていない気がするのは、気のせいかなぁ〜?」


 うん、オルコシスさんの存在が空気になっていたのは、多分気のせいだ!

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