高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第6話 特訓するセリアと報告するカーシャ

 〜〜〜 セリア side 〜〜〜


 コウヤくん達と別れた後に両親と共に家に帰って来て、そのまま自室へと直行した。


 どうしよう・・・・・・どうしよう、どうしよう、どうしよう! どうしよぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!?


 「コ、コウヤくんと、デ、デェー・・・・・・デート、だよね?」


 そう言い切った瞬間、顔を真っ赤にさせてしまった。


 「ッ〜〜〜!!?」


 余りの恥ずかしさにベッド寝そべり枕に顔をうずめてしまった。


 「エヘッ、エヘヘへ〜〜〜・・・・・・」


 今度は枕を抱きしめてベッドの上で寝転がり、嬉しさ身体で表現している。


 コウヤくんと一緒に色んな水槽を見て回ってぇ、そして最後にはコウヤくんと・・・・・・。


 「ヤダもう私ったらぁ〜! それはまだ早い、よね」


 「あらあらまぁまぁ! コウヤさんとお出掛けするの、そんなに楽しみなの?」


 「ヒャッ!?」


 出入口の方に顔を向けて見ると、何とそこにはニコニコ顔の母親がいたのだ。


 「お、お母様! 何時から見ていらしたのですか?」


 「アナタがベッドの上でゴロゴロしているときから、見ていましたよ。それよりセリア、何がまだ早いのかしら?」


 「ッ〜〜〜!?」


 声にならない叫び声を上げながら、身を縮み込まらせた。


 「もぉ〜、仕方ない子ねぇ〜」


 お母さんは私の側まで来ると、身体を抱きしめて頭を撫でて来た。


 「セリアちゃんのそういうところは、大きくなっても変わらないわねぇ」


 「からかわないでよ、お母様ぁ〜!」


 「はいはい」


 彼女はそう言うとセリアから離れて隣に座った。


 「お母様は何で私の部屋に来たのですか?」


 「私? セリアちゃんに話があってここに来たのよ」


 「話ですか?」


 「ええ、お話」


 明後日のデートのことかなぁ? そうだとしたら、お母様から何かアドバイスを貰えるかもしれない。


 「マルコシアスはアナタ達がお付き合いするのは認めているけど、私は現段階では認められないわ」


 「え?」


 どう言うことなの? 疑問に思っている私の顔を見つめたまま、お母様は話を続ける。


 「いいセリアちゃん。コウヤさんが契約している妖精の名前を呼ぶときは、呼び捨てだったわよね?」


 「は、はい」


 「セリアちゃんの場合は”さん” 付けで呼んでいたでしょ」


 「はい、それがどうしたのですか?」


 私はさん付けで呼ばれても、何の問題もないと思っている。


 「もっと親しい男女の仲なら、男性はさん付けで名前を呼ばないわ。ちょうど私達夫婦のようにね」


 「お、お母様、そうなのですか?」


 「そうよぉ。現状ではコウヤさんにとって、アナタは恩人で友人なのは理解出来るわよね?」


 「はい、お母様」


 コウヤくんにとって、私は友人。


 「エヘヘ〜・・・・・・」


 「セリアちゃんが嬉しそうにしているところ悪いんだけれども、コウヤさんにとってそれ以上でもそれ以下でもないの」


 「・・・・・・え?」


 それ以上でもそれ以下でもない?


 「お母様、仰っている意味がわかりません」


 「もっと噛み砕いて説明すると、コウヤさんは好きっていう感情、でアナタと接している訳ではないってことよ!
 つまり、コウヤさんから見たアナタの立ち位置は友人で、他の子を好きになる可能性があるってことよ!」


 「ッ!?」


 こ、コウヤくんが、他の子を好きになる可能性が、ある?


 「ないです! それは絶対にないですっ!!」


 「本当にないのかしら?」


 「だって、コウヤくんのお家にも行ったし、スイゾクカンに招待された。それにぃ〜・・・・・・」


 スカート越しだけどお尻揉まれたから、その責任を取って貰わないとぉ・・・・・・。


 「セリアちゃん。コウヤさんがスイゾクカンって場所にセリアちゃんを連れて行くのは日頃のお礼の為であって、本人はデートとは思っていない筈よ」


 「そ、そんなことは!」


 ない! と言い掛けたところで心当たりがあるのか、黙ってしまった。


 「やっぱり、心当たりがあったのね」


 「・・・・・・うん」


 か細い声で返事をしたら、お母様が頭を撫でてくれた。


 「私、コウヤくんに嫌われているのかな?」


 さん付けで私を呼ぶのも、もしかしたら私と距離を取りたいからなのかなぁ? そう考えると、何だか胸が苦しくなって来たよぉ〜・・・・・・。


 「コウヤさんがアナタのことを嫌いに思っていたら、話し掛けてないわよ」


 「そうなの?」


 今にも泣きそうな私の身体を、抱きしめながら話し始める。


 「それに、私はセリアちゃんにアドバイスをしに来たんだから」


 「アドバイス?」


 「そうよ、明後日がセリアちゃんのお礼の為に行く場所から、デートへ行く場所に変える為のアドバイス」


 お母様はそう言うと、抱きしめている手を緩めて私の顔を見つめて来た。


 「セリアちゃんがいらないって言うのなら構わないけど、聞かなかったら誰かにコウヤくんを盗られちゃうかもしれないわ。
 例えばぁ〜・・・・・・向こうの世界の子とか、セリアちゃんの身直にいるアンリネット様とかねぇ〜」


 アンリネット様!?


 アンリネット本人には思い当たる節はないが側近のカーシャにはあった。何故ならカーシャはコウヤとアンリネットの仲を取り繕うとしているのを感じ取っていたのだから。
 もしこのまま放置していたら。と考えると、セリアは危機感を感じざる得なかった!


 「ほ、欲しいです! 教えて下さい、お母様! 絶対に覚えます!」


 「よろしい。明日までに覚えてね」


 「はい、お母様!」


 「先ずは立って!」


 セリアは ハイッ! と返事をさせながら立ち上がると、私の左の方の手を握って来た。


 「先ずは、デートらしい歩き方! コウヤさんと手を繋ぐのは当たり前だけど、親しい感じにするにはこうやって、腕に身体を密着させるの」


 何とお母様は自分の胸元を私の腕に密着させて来たのだ。


 「え、ええっ!?」


 こんな大胆で破廉恥なことがアドバイスなの?


 「こうやって歩くと、好感が上がるのよ」


 コウヤくんの腕に私の身体を・・・・・・。


 「ハウッ!?」


 彼女はそう言うと、 ボンッ!? と顔を真っ赤にさせたのだ。


 「で、出来ない出来ない! こ、コウヤくんの腕に、わ、私の胸を・・・・・・」


 「アンリネット様か、側近のカーシャなら平然な顔してやると思うわ」


 アンリネット様やカーシャさんがこんなことを!?


 「これぐらいのことが出来ないのなら。セリアちゃん、コウヤさんのことを諦めるしかないわね」


「ッ〜〜〜!!?」


 私だって出来るもん!


 母親に乗せられているのに気づかないまま母親の手を握り、自身の胸を腕に押し付けた。


 「こ、これでいいんですよね?」


 「う〜ん、ちょっと力が強いかなぁ? それに不自然な感じもするわねぇ〜」


 「ふぇっ!?」


 こ、これじゃあダメなのっ!?


 「この行動が自然に出来るぐらい練習を続けましょう」


 「は、はい!」


 セリアとマーガレットの訓練は次の日の夜まで続いたのであった。


 ところ変わって何処かの屋敷。


 「何、アンリネットが相手の名前を?」


 「はい、左様でございます。ご主人様」


 イスに腰掛けている初老の男性は、跪いているカーシャが話した内容に驚いていた。


 「う〜む、にわかに信じられん」


 「私も最初見たときは信じられませんでした」


 初老の男性はそう言うと、顎ひげをさすってからカーシャに話し掛ける。


 「まさかと思うが、アンリネットがそのミヤマと言う者に、好意を持っているのではないのか?」


 「いいえ、そのようすはありませんが、明かに興味は持っています」


 そして、彼女自身も好意ではないが彼に興味を持っている。何故なら、どんなに彼のことを調べても全く情報が出て来ないのだ。まるでフッと現れて出て来たかのような感じだ。


 「そうかぁ〜、今日のこともあったからなぁ・・・・・・」


 カーシャの主人が言っている今日のこととは、アンリネットに婚約者候補とお見合いさせてみたことだ。しかし、結果は散々なもので終わったのは言うまでもない。


 「そして、ミヤマ様はオルコス家のご両親とも親密な関係を持っています」


 「何と、本当かぁっ!?」


 「はい、どうやらオルコス家は、ミヤマ様の国で流通している白ワインというお酒を頂いたようです」


 「白ワイン。それは美味しい酒なのか? ワインと言うからにはワインなんだろうなぁ。そのワインを飲んでみたいなぁ」


 飲めるものなら私が飲んでみたいぐらいだ。とカーシャは心の中でツッコミを入れた。


 「私も実物を拝借していないので、こればかりは何とも言えません」


 「そうかぁ・・・・・・しかしオルコス家と親しいとなると、少しマズイなぁ」


 「いえ、お嬢様が彼のことを好きなのかは断定していないので、そのようなことはないかと。
 それに、こちらが手を加えてしまうとお嬢様に嫌われてしまうかと思います」


 「う〜む・・・・・・焦るのもよくないか」


 初老のおじさんが立ち上がると、手を前に出してカーシャに命令を出す。


 「引き続きお主の方でようすを見ていてくれ。後、息子には悟られないようにしてくれ。ヤツに知られたら、後々面倒くさいことになるからな。わかったら持ち場に戻ってくれ」


 「わかりました、ご主人様」


 カーシャはそう返事をすると部屋を出て、アンリネットの元へと行くのであった。

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