高校を退学させられた後、異世界へ留学することになりました。

青空鰹

第6話 魔法の練習をしてみよう!

 「姉さん、掃除終わった」


 「ご苦労様。さっきお父さん達から連絡があったの」


 「連絡。何て?」


 俺のようすはどう。落ち込んでない? とかか?


 「“これは流石に許せない。だから僕達も校長先生の言い分をちゃんと聞きたいから、帰国する。”って」


 「えっ!? 帰国。お仕事どうすんの?」


 重要なポジションの役割をしているって言っていたから、抜けたら困るんじゃないのか?


 「会社の人にわけを話したら、全面協力するって言われたらしいわ。しかも業務提携していた相手会社も話を聞いたみたいで、そっちの人達も協力するって」


 うわぁ・・・・・・ツイ◯ターの炎上に会社のスポンサーが就いて、さらに日にちが未定だがテレビ局まで取材が来ることになっているとは。


 「一日で一大事になっている」


 「そうね。それだけのことをしたのよ、あのクズ校長は」


 あの校長がちゃんと制裁されれば、どうなってもいいや。と投げやりのなってしまう。


 「それよりも洸夜、魔法の訓練をするわよ」


 おっと忘れていた。さっき約束していたな。


 「そうだった。早速お願いするよ」


 「私は邪魔そうだから、部屋の方に行ってるわ」


 姉さんはそう言うと、リビングから出てってしまった。


 「私が1から魔法を教えるから、ちゃんと聞くように!」


 「はい、リタ先生!」


 姿勢を正してリタを見つめる。


 「まず魔力とは何かについて説明します。その世に存在する生命から生まれるエネルギーのことよ」


 「生命から生まれるエネルギー?」


 気とかじゃないのか?


 「訓練を積めば、そのエネルギーの自在に操れるようになるわ。こんな風にね」


 リタは手のひらに魔力の塊を出して見せて来る。


 「もうわかっているけれど、このエネルギーは触れることが出来るの。こんな風に魔力の塊を相手にぶつければっ!」


 リタはボールを投げるような動作で、テーブルの上に置いてあるエッフェル塔のモニュメントに向かって魔力の塊を放った。
 魔力の塊が小さなエッフェル塔のモニュメントにぶつかった瞬間、魔力の塊は弾け飛ぶようにして消えてしまったが、エッフェル塔のモニュメントはコテンッとそのまま倒れてた。


 「見ての通り倒せるのよ。魔力は消えちゃうけど」


 「スゴイなぁ」


 「これは子供でも出来る基本的な魔法だから、これで驚いていたらキリがないわよ」


 「え、そうなの?」


 キョトンとしている俺に対して、リタは頭を抱えていた。


 「本当にここが魔法がない世界だと、少し自覚したわ」


 「ま、まぁ。俺も魔力の塊を出せるから、ほら」


 先ほどリタがやっていたように、魔力の塊を手のひらに出して見せた。


 「小っちゃいわね」


 「え?」


 へ〜、出来るんだ。と言われると思っていたら、小っちゃいわね。と言われてしまったので、ちょっとショックを受けてしまう。


 「もう少し大きくしてみましょう」


 「えっとぉ、どうやんの?」


 「今出している魔力の塊に、水を注ぐようなイメージ」


 「水を注ぐようなイメージかぁ・・・・・・」


 目を瞑り、リタに説明したように水を注ぐようなイメージをしてみると、身体から何かが抜けていくのを感じた。


 「ストォップ! ストォップ!」


 「どうしたんだ? って、おお!」


 野球ボールぐらいだった魔力の塊が、バスケットボールぐらいの大きさまで膨れ上がっていた。


 「お、おお!」


 「あまりやり過ぎると、コントロールが出来なくなっちゃう可能性があるから、それぐらいにしておきましょう」


 「え、ああわかった。これってさ、形を変えることも出来るのか?」


 リタにそう言ったら、コクリと頷いた。


 「出来るわ。頭の中で形をイメージをするんだけれども、イメージが弱いと・・・・・・え?」


 リタは信じられないような顔をさせながら、四角形になった魔力の塊を見つめていた。


 「出来た」


 「ちょっと待って、アナタがやっていることは一日や二日で出来ることじゃないのよ」


 「そうなのか?」


 「そうよ。魔力操作で1〜2ヶ月掛かるのが常識で、具現化、つまりさっきからやっている魔力の塊を出すのも、最短で半月ぐらい掛かって、さらに言えば魔力の形を変えるのは、5ヶ月掛かってやっと形を変えられるのが普通よ。
 もしかして本当は最初っから魔法を使えたの?」


 疑いの目を向けるリタの対して、俺は首を横に振って否定する。


 「今日初めて魔法を使ったから」


 「・・・・・・まぁいいわ。そこまで出来れば話が早いわ。アナタのイメージ次第で槍にも出来るし、剣にもなるわ。
 現に魔力の剣を使って戦っている人がいるから」


 「へぇ〜、そうなんだ」


 「ただ、いいことばかりないのよ。術者によって強度が変わるし、常に魔力を発している状態だから場所を察知されるわ」


 ほうほう、そうなんだ。何か他にもデメリットがありそうだな。それよりも。


 「これを消すのって出来るのか?」


 「今出している魔力を霧になるようなイメージをすれば、カンタンに消えるわよ」


 俺はリタに言われた通りにイメージしてみると、魔力の塊がフッと消えていった。


 「本当に消えた」


 「そこまで出来れば上出来よ。もう魔力操作に関しての説明しなくてよさそうね。どんどん使ってコントロール出来るようにしましょう」


 「ああ!」


 「じゃあまた魔力を手のひらに出して」


 リタに言われた通り、先ほどと同じ大きさの魔力の塊を手のひらに出す。


 「さっき四角い形が出来たから、今度は長方形の形を作ってみて」


 リタに長方形を作る。


 「うんうん、上出来ね。なら今度は紐状にしてみて」


 「それぐらいなら、お安い御用」


 リタにそう言ってから魔力の塊を紐状にしていく途中、リタが紐の途中を両手で掴み左右に引っ張った。その瞬間、プチンッという音と共に紐状の魔力が千切れてしまった。


 「あ!」


 俺の身体の中で、少しだけ何かが抜ける感覚がした上に、リタが持っていた左側の紐状の魔力が、勝手に消えていった。


 「どう、わかった?」


 「どう、わかった? って、いきなり何をしてんだよ」


 「強度をテストしてみただけよ」


 「強度?」


 「そう、強度。説明するよりも、見せた方が早そうね。私が作った紐を千切ってみて」


 リタがそう言い、魔力で作った細い紐を渡して来たので、リタがやったように思いっきり引っ張って引き千切ろうとしたが、出来なかった。


 「あれ?」


 俺が作った紐よりも細いのに引き千切れない。何で?


 今度は弛んだ状態から一気に引っ張り千切ろうとしたが、ビィィィンッ!? と張ったまま千切れることはなかった。


 「何で千切れないんだっ!」


 「これが私とアナタの強度の違いよ」


 「えっ!?」


 どう言うことだ? 現に形のしているのに強度が足りないってのは。


 「イメージが不足している場合や、形に対して魔力が不足している場合。まぁその他にも理由があるけれども、主な原因はこの2つになるわ」


 「そうなんだ」


 「アナタの場合は好きな形にするのまではいいけど、維持する為に供給する魔力が少ないせいだと思うの」


 「え、これに魔力を流し続けなきゃいけないのか?」


 シャボン玉みたく、塊を作ったらあとは勝手に維持されると思っていた。


 「違うわ。形状を変え続けていけば、その分の魔力がなくなるの。その分を供給して維持すればいいの」


 へぇ〜、そうなのか。てか、それぐらい説明をしてくれよ。


 「俺魔法のこと全く知らないからさ、説明して貰いたかった」


 ジト目でりリタを睨むが、 フンッ。 と鼻で笑われてしまった。


 「口頭で説明したってチンプンカンプンでしょ。だからこうやって実際にどうなるのか見せながら教えてるのよ」


 「確かに、それはそうだけどさ。やる前に一言ことわってからでもよかったんじゃないか?」


 「それじゃあ身構えられて意味ないじゃない。それよりも、基本的なことは大丈夫そうだから、次は魔力強度の維持の訓練をするわよ。だから魔力の塊を出して」


 「あ、わかった」


 その後も、リタとの魔法の訓練が続いたのだった。

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