東京PMC’s
紫音と阿佐間の秘密
 真剣な眼差しを向ける真理亜さんは、カウンター席に指をさして僕に話し掛けて来る。
 「紫音ちゃぁん。大事な話をしてあげるから、そこに座ってぇ」
 「あ、はい」
 そう返事をして座ったら カランッカランッ!? とお店のドアが開く音がしたので、そちらに顔を向けると唯凪さんが立っていた。
 「やぁ、真理亜さんに紫音くん」
 「いらっしゃぁ〜い」
 「ご無沙汰しております」
 唯凪さんは僕の隣に座ると、疲れを取ろうとしているのか背伸びをする。
 「今日は神崎くんは来てないのかな?」
 「今日は来ていないわよぉ」
 「そうかぁ。ところで紫音くんがここに座っているって事はぁ〜・・・・・・何か紫音くんに話そうとしていたのかい?」
 「相変わらず勘がいいわねぇ〜」
 「伊達に刑事をやっていないよ。とりあえず、いつものを頂戴」
 「はいはい」
 真理亜さんはそう返事をした後、ノンアルコールビールを取り出してコップと共に唯凪さんに渡した。
 「ありがとね。ところで何の話をしようとしてたの?」
 「アナタが鈇田ちゃぁんの次ぐらいに、嫌いな女性の話をしようとしていたのよぉ」
 「それってもしかしてぇ・・・・・・阿佐間さんの事?」
 「そうよぉ!」
 「彼女の事かぁ〜」
 唯凪さんはそう言いながらガックリと項垂れた。
 「阿佐間さんの事を知っているんですか?」
 「ああ知ってるよ。部署は違うけど、同僚から彼女の素性の酷さをちょこちょこ聞いていたからね」
 「素性の酷さ?」
 僕がそう尋ねると唯凪さんはチラリと真理亜さんの方を見つめた。どうやら説明を任せるとアイコンタクトを取ったんだと思う。
 「そうね。アタシから説明をした方がよさそうねぇ」
 「もちろん無料の範囲内で話すよね?」
 「その通りよぉ。今は校長先生として活躍している 阿佐間 美代子 だけれども、昔・・・・・・と言うか婦警として働いていた頃は悪い評判が後を絶たなかったのよ」
 悪い評判が後を絶たなかった?
 「彼女が婦警として働いていた頃は同僚からは金遣いが荒いとか、新人イビリをしているって話で持ちきりだったんだ」
 「それに、取締りにも高圧的な態度を取っていたとも聞いていたわ」
 婦警が新人イビリって・・・・・・。
 「そんな事をしていたら、クビになりませんか?」
 「今の時代だったら普通にクビになってもおかしくない事だけど、彼女の場合は昭和の終わり頃の話でネットが確立されてない時代だったから、もみ消されてしまう事が多かったんだ」
 「それは酷いですね」
 「そうでしょ。そんな彼女がどうして校長なんかになれたのか、僕自身疑問に思っているんだ」
 唯凪さんはそう言いながらチラリと真理亜さんを見た。詳しい説明を真理亜さんに求めた感じだと思う。
 「そうねぇ〜。彼女を校長に就任させた理由は、もしかしたら責任のシワ寄せをしやすいからだと思うのよぉ〜」
 「責任のシワ寄せ? どう言う事ですか?」
 紫音が疑問に思っている中、唯凪さんは納得をした顔をしている。
 「なるほどねぇ〜。入浜警察予備高校で起きた出来事を彼女のせいにすれば、自分達に矛先が向かないと上の人達は考えたんだね」
 「そう言う事よ。唯凪ちゃぁん。その本人は大出世した! って喜んでいて気付いてないみたいよぉ〜」
 「まぁ彼女の性格を考えてみたら、そう思うだろうね」
 知らなかった。まさか警察がそういう事を見越して校長にしたなんて。
 「その話を本人に言った方がいいんじゃないんですか?」
 「本人に言ったところで信じないと思うよ」
 「そうそう、周りの意見を聞かない人って有名だからねぇ〜」
 「・・・・・・そうですか」
 話を聞いていたら、何だか彼女が可哀想に思えて来た。 と思っていたらスマホの着信音が聞こえて来たので、ポケットから取り出して確認をする。
 「あ、天野さんから電話だ」
 「スピーカーモードにして話してもいいわよぉ」
 「あ、じゃあそうさせて頂きます」
 スピーカーモードして出ると、スマホの向こうから物凄い怒声が聞こえて来たのでビックリしてしまった。
 『あー、もしもし紫音?』
 「あ、天野さん。どうしたんですか?」
 『掻い摘んで話すと、今俺達は羽田空港に居てな。揉め事に巻き込まれているんだ』
 「揉め事ですか?」
 『そうだ。ホラ、さっき事務所で話しただろう? その事に付いてだ』
 えっ!? じゃあつまり・・・・・・。
 「もしかして、そっちに入浜警察予備高校の校長先生がいるんですか?」
 『ああ、そうだ』
 やっぱり・・・・・・。
 「天野ちゃぁん、大体の話を紫音ちゃぁんから話を聞いているわよぉ。大変ねぇ」
 『む、その声は真理亜か?』
 「そうよぉ〜。こうなっちゃったからには、彼女が諦めるまで粘るしかないわよぉ」
 『・・・・・・そうかぁ。やっぱりそれしかないのかぁ』
 天野さんが面倒くさそうにしているのが、電話越しにわかる。
 『とにかくだ。あの馬鹿女の説得に時間が掛かるから、夕食には帰れなさそうだ。だからどっかで食べて来てくれ』
 「わかりましたぁ」
 『それじゃあな』
 「天野さんも気を付けて下さいね」
 通話が切れたのでポケットにしまう。
 「とんでもない事になっているみたいだね」
 「はい、まさか阿佐間さんが羽田空港まで行くとは、思いもしてませんでした」
 あの人の行動力だけは見習ってもいいかもしれない。
 「そうねぇ〜・・・・・・はいこれ。アナタが欲しがっていた情報よ」
 「ん、ありがとう」
 唯凪さんはそうお礼を言い封筒を受け取ると、懐からお金を出して渡した。
 「また情報を買ったんですか?」
 「ああ、真理亜さんの情報が的確だからね」
 「情報屋は噂は伝えるけど嘘は伝えないわよぉ!」
 そう言ってウィンクをするので、背筋がゾゾゾッとした。
 「それじゃあ、僕はこれでね・・・・・・あ。そうそう紫音くんに伝えておかなきゃいけない事があった」
 「あ、はい?」
 「この間に焼肉店の事でさ、動画が出回っているから気を付けてね」
 「気を付けてって、何にですか?」
 「特定犯とかそういった人達に事務所に押し寄せられないようにね。まぁそこら辺の事に関しては、PMC協会が何とかしてくれると思うけどね」
 「・・・・・・はぁ?」
 疑問に思っている僕を余所に、唯凪さんはお店を出て行ってしまった。
 「行っちゃった」
 「紫音ちゃぁん。今日のお夕食はどうするの?」
 「お夕食ですか? う〜ん・・・・・・」
 コンビニのお弁当を買って食べるか何処かのファミレスに寄って食べるか、ちょっと悩ましいところ。それに安く済ませたいところもあるからぁ〜。
 「コンビニで適当に買って食べようと思います」
 そう言ったら、真理亜さんが僕の両手を握った。
 「じゃあ、今日はウチでご飯を食べて行きなさいよぉ〜。きっと真奈美ちゃぁんも喜ぶと思うわぁ!」
 「あ、いえ。真奈美さんの了承を得ていないので、ご遠慮します」
 「ウチは構いっスよぉ〜」
 いつの間にか真奈美さんがここにやって来ていたのだ。
 「真奈美さん、いつの間にいたんですか?」
 「紫音さんがスマホを取り出した辺りで、ここにいたっス。それにしてもあの校長は酷いっスねぇ〜」
 「いつか痛い目に会うと思うから、放っておいてもいいんじゃないんですかね?」
 「そうっスねぇ〜・・・・・・」
 ん? 真奈美さんにしては珍しく、歯切れの悪い回答だね。
 「何か心配事でもあるのかしらぁ?」
 「いやぁ、父上。自分が自滅するような事であればいいんスけど、周りを巻き込むような形になると大変かなぁ〜。って思ったんスよ」
 何を言っているのかサッパリわからない。 と思っている僕に対して、真理亜さんは真奈美さんの言いたい事が理解出来たのか、 うんうん。 と頷いている。
 「とにかく今日は真奈美ちゃぁんとご飯をたべなさぁ〜い! 真奈美ちゃぁん、紫音ちゃぁんを連れて行ってあげてぇ〜!」
 「了解っス! 紫音さん、付いて来るっス!」
 「あ、うん」
 真奈美さんに手を引かれるようにして、台所へと向かったのだった。
 「紫音ちゃぁん。大事な話をしてあげるから、そこに座ってぇ」
 「あ、はい」
 そう返事をして座ったら カランッカランッ!? とお店のドアが開く音がしたので、そちらに顔を向けると唯凪さんが立っていた。
 「やぁ、真理亜さんに紫音くん」
 「いらっしゃぁ〜い」
 「ご無沙汰しております」
 唯凪さんは僕の隣に座ると、疲れを取ろうとしているのか背伸びをする。
 「今日は神崎くんは来てないのかな?」
 「今日は来ていないわよぉ」
 「そうかぁ。ところで紫音くんがここに座っているって事はぁ〜・・・・・・何か紫音くんに話そうとしていたのかい?」
 「相変わらず勘がいいわねぇ〜」
 「伊達に刑事をやっていないよ。とりあえず、いつものを頂戴」
 「はいはい」
 真理亜さんはそう返事をした後、ノンアルコールビールを取り出してコップと共に唯凪さんに渡した。
 「ありがとね。ところで何の話をしようとしてたの?」
 「アナタが鈇田ちゃぁんの次ぐらいに、嫌いな女性の話をしようとしていたのよぉ」
 「それってもしかしてぇ・・・・・・阿佐間さんの事?」
 「そうよぉ!」
 「彼女の事かぁ〜」
 唯凪さんはそう言いながらガックリと項垂れた。
 「阿佐間さんの事を知っているんですか?」
 「ああ知ってるよ。部署は違うけど、同僚から彼女の素性の酷さをちょこちょこ聞いていたからね」
 「素性の酷さ?」
 僕がそう尋ねると唯凪さんはチラリと真理亜さんの方を見つめた。どうやら説明を任せるとアイコンタクトを取ったんだと思う。
 「そうね。アタシから説明をした方がよさそうねぇ」
 「もちろん無料の範囲内で話すよね?」
 「その通りよぉ。今は校長先生として活躍している 阿佐間 美代子 だけれども、昔・・・・・・と言うか婦警として働いていた頃は悪い評判が後を絶たなかったのよ」
 悪い評判が後を絶たなかった?
 「彼女が婦警として働いていた頃は同僚からは金遣いが荒いとか、新人イビリをしているって話で持ちきりだったんだ」
 「それに、取締りにも高圧的な態度を取っていたとも聞いていたわ」
 婦警が新人イビリって・・・・・・。
 「そんな事をしていたら、クビになりませんか?」
 「今の時代だったら普通にクビになってもおかしくない事だけど、彼女の場合は昭和の終わり頃の話でネットが確立されてない時代だったから、もみ消されてしまう事が多かったんだ」
 「それは酷いですね」
 「そうでしょ。そんな彼女がどうして校長なんかになれたのか、僕自身疑問に思っているんだ」
 唯凪さんはそう言いながらチラリと真理亜さんを見た。詳しい説明を真理亜さんに求めた感じだと思う。
 「そうねぇ〜。彼女を校長に就任させた理由は、もしかしたら責任のシワ寄せをしやすいからだと思うのよぉ〜」
 「責任のシワ寄せ? どう言う事ですか?」
 紫音が疑問に思っている中、唯凪さんは納得をした顔をしている。
 「なるほどねぇ〜。入浜警察予備高校で起きた出来事を彼女のせいにすれば、自分達に矛先が向かないと上の人達は考えたんだね」
 「そう言う事よ。唯凪ちゃぁん。その本人は大出世した! って喜んでいて気付いてないみたいよぉ〜」
 「まぁ彼女の性格を考えてみたら、そう思うだろうね」
 知らなかった。まさか警察がそういう事を見越して校長にしたなんて。
 「その話を本人に言った方がいいんじゃないんですか?」
 「本人に言ったところで信じないと思うよ」
 「そうそう、周りの意見を聞かない人って有名だからねぇ〜」
 「・・・・・・そうですか」
 話を聞いていたら、何だか彼女が可哀想に思えて来た。 と思っていたらスマホの着信音が聞こえて来たので、ポケットから取り出して確認をする。
 「あ、天野さんから電話だ」
 「スピーカーモードにして話してもいいわよぉ」
 「あ、じゃあそうさせて頂きます」
 スピーカーモードして出ると、スマホの向こうから物凄い怒声が聞こえて来たのでビックリしてしまった。
 『あー、もしもし紫音?』
 「あ、天野さん。どうしたんですか?」
 『掻い摘んで話すと、今俺達は羽田空港に居てな。揉め事に巻き込まれているんだ』
 「揉め事ですか?」
 『そうだ。ホラ、さっき事務所で話しただろう? その事に付いてだ』
 えっ!? じゃあつまり・・・・・・。
 「もしかして、そっちに入浜警察予備高校の校長先生がいるんですか?」
 『ああ、そうだ』
 やっぱり・・・・・・。
 「天野ちゃぁん、大体の話を紫音ちゃぁんから話を聞いているわよぉ。大変ねぇ」
 『む、その声は真理亜か?』
 「そうよぉ〜。こうなっちゃったからには、彼女が諦めるまで粘るしかないわよぉ」
 『・・・・・・そうかぁ。やっぱりそれしかないのかぁ』
 天野さんが面倒くさそうにしているのが、電話越しにわかる。
 『とにかくだ。あの馬鹿女の説得に時間が掛かるから、夕食には帰れなさそうだ。だからどっかで食べて来てくれ』
 「わかりましたぁ」
 『それじゃあな』
 「天野さんも気を付けて下さいね」
 通話が切れたのでポケットにしまう。
 「とんでもない事になっているみたいだね」
 「はい、まさか阿佐間さんが羽田空港まで行くとは、思いもしてませんでした」
 あの人の行動力だけは見習ってもいいかもしれない。
 「そうねぇ〜・・・・・・はいこれ。アナタが欲しがっていた情報よ」
 「ん、ありがとう」
 唯凪さんはそうお礼を言い封筒を受け取ると、懐からお金を出して渡した。
 「また情報を買ったんですか?」
 「ああ、真理亜さんの情報が的確だからね」
 「情報屋は噂は伝えるけど嘘は伝えないわよぉ!」
 そう言ってウィンクをするので、背筋がゾゾゾッとした。
 「それじゃあ、僕はこれでね・・・・・・あ。そうそう紫音くんに伝えておかなきゃいけない事があった」
 「あ、はい?」
 「この間に焼肉店の事でさ、動画が出回っているから気を付けてね」
 「気を付けてって、何にですか?」
 「特定犯とかそういった人達に事務所に押し寄せられないようにね。まぁそこら辺の事に関しては、PMC協会が何とかしてくれると思うけどね」
 「・・・・・・はぁ?」
 疑問に思っている僕を余所に、唯凪さんはお店を出て行ってしまった。
 「行っちゃった」
 「紫音ちゃぁん。今日のお夕食はどうするの?」
 「お夕食ですか? う〜ん・・・・・・」
 コンビニのお弁当を買って食べるか何処かのファミレスに寄って食べるか、ちょっと悩ましいところ。それに安く済ませたいところもあるからぁ〜。
 「コンビニで適当に買って食べようと思います」
 そう言ったら、真理亜さんが僕の両手を握った。
 「じゃあ、今日はウチでご飯を食べて行きなさいよぉ〜。きっと真奈美ちゃぁんも喜ぶと思うわぁ!」
 「あ、いえ。真奈美さんの了承を得ていないので、ご遠慮します」
 「ウチは構いっスよぉ〜」
 いつの間にか真奈美さんがここにやって来ていたのだ。
 「真奈美さん、いつの間にいたんですか?」
 「紫音さんがスマホを取り出した辺りで、ここにいたっス。それにしてもあの校長は酷いっスねぇ〜」
 「いつか痛い目に会うと思うから、放っておいてもいいんじゃないんですかね?」
 「そうっスねぇ〜・・・・・・」
 ん? 真奈美さんにしては珍しく、歯切れの悪い回答だね。
 「何か心配事でもあるのかしらぁ?」
 「いやぁ、父上。自分が自滅するような事であればいいんスけど、周りを巻き込むような形になると大変かなぁ〜。って思ったんスよ」
 何を言っているのかサッパリわからない。 と思っている僕に対して、真理亜さんは真奈美さんの言いたい事が理解出来たのか、 うんうん。 と頷いている。
 「とにかく今日は真奈美ちゃぁんとご飯をたべなさぁ〜い! 真奈美ちゃぁん、紫音ちゃぁんを連れて行ってあげてぇ〜!」
 「了解っス! 紫音さん、付いて来るっス!」
 「あ、うん」
 真奈美さんに手を引かれるようにして、台所へと向かったのだった。
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