東京PMC’s

青空鰹

紫音と喧嘩の仲裁

 流石に彼のやろうとしていた事を見逃せなかったので、彼の元に駆け寄り振り上げた腕を掴んだ。


 「なっ、何でテメェがここにいるんだよ!?」


 「何処に居ようが僕の自由だよ。それに話の焦点はそこじゃないよね?」


 僕がそう言ったら、掴んでいる手を振り解いて睨んで来た。


 「何で一目につく場所で、お友達を殴ろうとしているんだ、お前は?」


 「そうね。こんなところで揉め事を起こすものじゃないわよ」


 「お、お前ら・・・・・・」


 どうやら僕だけだと思っていたみたいなところがあったのか驚いた表情で天野さん達を見つめていて、騒ぎを聞き付けた店員さんが戸惑いながら天野さんに話し掛ける。


 「あの、彼とお知り合いなのですか?」


 「ええ、今日お昼に羽田空港に会ってタクティカルトレーニングを教えてあげたのよ」


 「タクティカルトレーニング?」


 「軍隊式トレーニングと言った方がわかりやすいかしら。とにかく彼の事を知っているから、任せて貰えないかしら?」


 「あ、はい」


 店員さんはそう言うと、一歩下がってこちらの様子を伺うような目で見つめて来る。


 「何があったのかは知らないけど、殴り合いをしたいのなら外でやってくれるかしら?」


 「そうだな。他にも客がいるところで殴り合いを始めるなんて、迷惑極まりないからな」


 「お前らには関係ないだろう?」


 「同じ客として来店しているこっちは、楽しい気分を害されて困っているんだが?」


 天野さんがそう言うと、彼は少し怯んだ様子を見せる。


 「お金を払って店を出て行くか、このまま迷惑を起こして学校の方に連絡されるか選びなさい」


 その言葉に冷静さを取り戻したのか、周囲を見渡して自分の置かれた状況を確認をする。


 「・・・・・・出て行くよ、こんな店」


 彼はそう言うと、不機嫌な顔をさせたままレジへと向かい、ポケットから財布を取り出した。


 「いくらだ?」


 「あ、はい! 2時間食べ放題コースなので、4800円です」


 「1人分は?」


 「半分の2400円です」


 「ならほら、残りはアイツが払う」


 そう言って2400円をキッチリ払って出て行った。


 「案外素直に出て行きましたね」


 「自分が置かれた状況を把握したから、素直に帰って行ったんだろう」


 「根に持ってないのを祈るばかりね」


 そんな会話をしていると、ドワーフの子が申し訳なさそうな顔させながら僕達のところへ来た。


 「あの・・・・・・助けて下さってありがとうございました」


 「ん、ああ。気にすんな。席に戻るぞ」


 「あ、はい!」


 そう返事をすると席に座って行く。


 「かっこよかったですよ、シオン!」


 「ハッハッハッ! 流石ワタシノ教エ子デス!」


 称賛してくれるのは嬉しいけど、網からお肉を取ってないせいで焦げてない?


 「お前ら、肉を放置してないか?」


 「oh!? おニクが焦げてますねぇ!」


 「シオン達ノ行動ニ見惚レテイテ、スッカリ 忘スレテ イマシタァ!」


 みんなで焦げ焦げになってしまった肉を回収して、ひとまとめにした後に店員さんを呼んだ。


 「上カルビ1人前!」


 「タン塩1人前! 後カルピスも」


 「ビールもう一杯ちょうだい!」


 「じゃあ俺もビールとホルモンを1人前」


 「私、ロースを1人前です!」


 「ワタシモ ロース ヲ食ベタイノデ、2人前ニシテ下サァ〜イ!」


 「・・・・・・他にご注文はありますか?」


 「ないです!」


 「ご注文受けたわりました! 少々お待ち下さい! あ、後そちらのお皿をお下げしてもよろしいでしょうか?」


 「そうして下さい」


 店員さんは焦げた肉が乗っかった皿を持つと、そそくさと厨房へと向かって行く。


 「フッフゥ〜、今度は焦がさないようにしないとねぇ〜」


 「そうだな。それにもうこれ以上問題は起きないだろうしな」


 「アマノくん。それフラグって言うんだよ」


 「何だそのフラグって言葉は?」


 リュークさんは得意げな顔で話し始めた。


 「映画のワンシーンとかにあるでしょ? やったか? と言った後に復活した敵に襲われたりとかさ」


 「現実でそんな事ある訳がないだろう。つーか相手は学生なんだから、問題を起こす訳がねぇだろ」


 「まぁそれもそうかぁ」


 その後はみんなで2時間食べ放題+飲み放題コースを堪能した。


 「お会計は16800円になりまぁ〜す!」


 やはり飲み放題が加算されている分値段が高くなっている。


 「あ、はい」


 リュークさんはそう言うと、2万円を出して支払いレシートを受け取った。


 「えっとぉ〜、1人辺り2800円で、コニーくんの分はリトアくんとアマノくんが払うからぁ・・・・・・」


 「俺とリトアが3200円づつお前に払えばいいんだな」


 「そうだね」


 と言ったやり取りをしてからリュークさんにお金を払った。


 「さてと、ガキを夜遅くまで連れ回すのもよくねぇから、今日のところはお開きにして帰るか」


 「そうね。気分的にはもう一件だけどね」


 リトアさんは、まだ飲み足りないんですか?


 「ハッハッハッ! 皆サントノ食事楽シカッタデスヨ! 皆サン、マタ会イマショウ!」


 ダニエル教官はそう言うと、自慢のスープラに乗って駐車場を出て行った。


 「コニーちゃん、私達が車で送って行ってあげるからね」


 「何からナニまでありがとうございまぁす!」


 「自宅まで送るのはボクの役目だけどね」


 うん、そうですね。天野さんとリトアさんはお酒を飲んでいるから運転出来ないもんね。


 「まぁまぁ、とにかく車に乗りましょう!」


 ほろ酔い状態のリトアさんと共に後部座席に座ると、抱き付いて来たのだ。


 「はぁ〜・・・・・・やっぱりシオンくんの抱き心地はいいわぁ〜」


 「そうなのですか?」


 「ええ、このまま抱き枕にしたいぐらいよ」


 抱き枕って・・・・・・。


 「リトアさん、それはちょっと困りますよ」


 「どうして? もしかして、私にエッチな事をされると思っているから?」


 「いいえ、寝ている間も尻尾や耳を弄りそうなので」


 「そんな事はしないわよ」


 リトアさんの目はそう語ってはいませんよ。


 「・・・・・・羨ましい」


 「羨ましい? リューク、お前は知らないと思うがコイツ寝相が悪いから、一緒に寝ない方は身の為だぞ」


 「え? 本当なの?」


 「失礼ね! 寝相はいい方よ!」


 「野宿した時にお前に3回ぐらい腹を蹴飛ばされたんだが?」


 「あ、いやぁ〜・・・・・・あの時はね」


 何故かバツが悪そうな顔をするリトアさん。


 「本当にそうなんですか?」


 「本当にそうだから言っているんだ。夜這いされた時は気を付けろよ」


 「夜這いなんて事はしないわよ! てかした事もないわよっ!!」


 そんなやり取りをしていたら、サラさんの自宅に着いた。


 「着いたよコニーくん」


 「皆さん、今日はありがとうございました!」


 そう言って頭を下げてお礼を述べるコニーさん。


 「いいえ、こちらこそ」


 ニコニコ顔で答えるリュークさん。


 「気にすんな」


 ダルそうに言う天野さん。


 「また行きましょうね」


 僕に抱き付きながら言うリトアさん。


 「あ、シオン」


 「ん?」


 「また学校で会いましょうね!」


 「うん、またね」


 僕がそう言った後リュークさんは車を発進させ、信号待ちをしている時に気付いた。


 「あれ?」


 「どうしたのシオンくん?」


 「あの車」


 「あの車ぁ? あの車がどうしたの?」


 「見覚えがある気がします」


 「え、見覚え?」


 リトアさんはそう言うと、追い越し車線にいる車を見つめる。


 「あれは 日産 GT-R だな」


 「うん。しかもNISUMOだから1000万円以上するよ」


 「ああ、しかもスポーツカーだから加速がいいし速いぞ」


 「いや、今はそう言う話じゃないでしょ」


 リトアさんは天野さん達にそう言うと僕の方に顔を向ける。


 「あのGT-Rを見たって言うけど、何処で見たの?」


 「えっとぉ〜・・・・・・僕の通学路のお家で全く同じのを見ました」


 「いやいや、GT-Rは都内でも沢山出回っているんだから、被るのは当たり前だろう」


 「そうですかね?」


 「そうだ。だから気にすんな」


 天野さんがそう言ったのと同時に青信号になってGT-Rが先に行ってしまったので、言う通り気にしない事した。

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