東京PMC’s

青空鰹

舞と日常

 〜〜〜 糸風 舞 side 〜〜〜


 学校の授業が遅れていると言うので、今日も休日を返上して授業を受けていた。


 「全く、日曜日なのに学校に向かわないといけないなんて・・・・・・」


 私の隣で話しているのは同じ人族でカッコイイ顔の、実野妓 龍平。彼とは入手試験の時に知り合い告白されて、今はお付き合いさせて貰っている。


 「でも今度の日曜日は休めるからいいじゃない。それに本職の警察官になったら、そんな事を言えないんじゃない?」


 「まぁそれもそうだね」


 「ヒューッ!? ヒューッ!? お2人共今日もお熱いですねぇ〜」


 そう声を掛けて来た背の低い人族の男の子は同じクラスの 瀧口たきぐち 直也なおや くん。お調子者でクラスのムードメーカーでもある。その後からおでこから一本の角を生やした鬼人族の女の子がゲンコツを喰らわせる。


 「イッテェ〜〜〜!?」


 「アンタまた2人をからかっているの?」


 「何だよ 日野谷ひのや 。悪いのか?」


 「悪いからこうやってゲンコツをしてるんでしょうが! 大丈夫、マイ?」


 私の事を心配してくれている彼女は、 日野谷  香奈子かなこ 。中学校時代からの親友で彼女も私と同じ高校を受験して受かったのだ。因みに彼女と親友の私は香奈ちゃんと呼んでいる。


 「まぁまぁ、私は気にしていないよ」


 「俺も気にしていないから大丈夫だよ」


 「ほら〜、2人共気にしていないって言ってるじゃねぇか」


 瀧口くんは香奈ちゃんそう言うが、香奈ちゃんの方は瀧口くんを睨む。


 「ん? 2人共。静かにした方がよさそうだ」


 「どうして?」


 実野妓くんが出入口の方に顔を向けてアゴをクイッと出すので、そちらに顔を向けると嫌なクラスメイト2人が教室へと入って来たのだ。


 「ウゲッ!? アイツらかよ」


 瀧口がそう言う2人とは、人柄が悪そうな人族の 宇野元うのもと 忠志ただしくん と、こっちも人柄が悪そうな姿のドワーフ族 サルコ・オーラント の2人の男子学生だ。


 「バカ、声に出さないの!」


 そう言って瀧口くんの口を塞ぐのだが、2人は瀧口くんの言葉が耳に入っていたのかこっちに向かって来る。


 「おい、糸風」


 えっ!? 瀧口くんじゃなくて私ぃ?


 「テレビに出れたからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」


 「何を言ってるの?」


 テレビに出れて調子に乗ってるって、意味がわからないんですけど。


 「どうせ舞に出演する機会を取られて悔しいのよコイツ」


 そう、ニュース番組で銃を撃つシーンは理事長先生が提案した。それだけではなく理事長先生は成績トップクラスに入る宇野元を射撃させるように言ったが、下谷先生と他数名の教室が反対して私になったのだった。


 「宇野元の方が優秀なのに、何でお前がテレビに出れたんだよ!」


 サルコがそう言うが決定したのは先生なので困る。それに今更私に抗議しても意味がない気がする。


 「その事を舞ちゃんじゃなく、下谷先生に言いなよ」


 「そうよ。決めたのは舞ちゃんじゃなく、先生達なんだから。それとも何? 先生に 何で自分じゃなかったんですか? って聞けないの?」


 香奈ちゃん、彼の事を怒らせない方がいいんじゃない?


 香奈ちゃんと宇野元くんの睨み合いが続いた後に、宇野元くんの方が顔を逸らした。


 「・・・・・・チッ!?」


 「あ、おい!? 宇野元ぉ!」


 彼らは自分の席へと座った。


 「全く、何よアイツら。どうしてこの学校に来れたのか、不思議に思うぐらいだわ」


 「アイツはテレビに出れなくて悔しいんだろう。それよりも今日は課外授業をするんだろう?」


 「あっ!? そうだったね!」


 今日は警察官の仕事がどういうものなのか見る課外授業があったんだ。


 「楽しみだね!」


 「ああ、今日は課外授業だけで済むから早く帰れそうだな!」


 「ハァ〜・・・・・・」


 「アンタってヤツは・・・・・・」


 瀧口くんの言葉に呆れた顔をさせていると、下谷先生が入って来た。


 「みんな席に着け、ホームルームを始めるぞ」


 みんな下谷先生の言う事を聞き、自分の席へと座った。


 「ええ〜、4日前から話していた通り、これから警察署の方に課外授業に出る。だから全員鞄を持って廊下に並ぶんだ。いいな」


 『はい!』


 みんなそう返事をすると、廊下に整列をした後に外に出てバスへと乗って出発した。


 「ねぇねぇ、警察署の中を見れるなんてラッキーじゃない?」


 隣にいる香奈ちゃんが、とても楽しそうな顔をさせながら私に話し掛けて来た。


 「そうかなぁ?」


 「そうよ! 警察署の中って早々見れるものじゃないでしょ! もしかして舞は、楽しみじゃないの?」


 「楽しみだけど、はしゃぐ程じゃないよ」


 「そうなの。あっ!? そう言えばこんな話を聞いた?」


 「どんな話?」


 「アタシもつい最近風の噂で聞いた事なんだけど、舞ちゃんの幼馴染みの紫音がPMCになったって」


 「え?」


 何それ、そんな話聞いた事ないよ。


 驚いた顔をしている私を余所に、香奈ちゃんは話を続ける。


 「あれ? 確か舞ちゃんは紫音の幼馴染みだから、何か知っていると思ってたんだけど」


 「ヒューリーさんが行方不明になって引っ越しする話はお母さんから聞いていたけど、PMCになってるとまでは言ってなかったよ」


 「そう、確か舞ちゃんは紫音の連絡先を知ってるんだったわよね?」


 「うん」


 ヒューリーさんから 紫音に何かあったら助けて欲しい。と連絡先を教えてくれた。シィくんの事だから、多分連絡先を変えないでいると思う。


 「課外授業が終わったら、紫音と連絡を取ってみたら」


 「うん、そうするよ」


 あの気の弱いシィくんがPMC? ないない! そんな事絶対にない! だって小さい頃からずっと側にいたから知ってるもん。シィくんは優しい人だって。
 でも、シィくん今どうしているんだろうなぁ〜? ヒューリーさんが居なくなってしまったから、心配だなぁ〜。


 「そろそろ着くから、降りる準備をしておけ」


 そんな事を考えていたら警察署に着いたのだが、何故か荒立たしくしている。


 「ん? 様子がおかしい。何かあったのか?」


 下谷先生がそう言っていると、1人の警官がバスに気付いて乗車口に立って開けて欲しいと言わんばかりに叩いて来た。運転手も気付いてドアを開くと警察官が入って来た。


 「すみません、今事件が起きて立て込んでいるんですよ!」


 「えっ!? 事件ですか?」


 「ええ、今さっきPMCが襲撃犯と交戦したみたいなので・・・・・・」


 「ここで話して説明するよりも、現場に行きながら説明した方がいいんじゃないかな?」


 「唯凪刑事! しかし・・・・・・」


 あの唯凪刑事って人は立場上偉いのかなぁ?


 「いいじゃないか、現場の様子を見せてどうやって事故処理をするのか見せた方が身になるでしょう」


 「でもぉ〜、彼らにとって現場の惨状が耐えられるものかどうかぁ〜・・・・・・」


 「彼らはいずれ現場に出る身なんだから、行って損はないでしょ」


 「ハァ〜、私の一存では決めかねません」


 「ああ〜、それでしたら私から理事長にお話します」


 下谷先生はそう言うと、スマホで電話を掛けて理事長先生とお話をした。


 「はい、わかりました。では・・・・・・理事長先生が是非連れて行って貰いたいと仰っておりました」


 「ならOKだね。彼らを現場に連れてってあげて」


 「わかりました。今から向かうのでパトカーに付いて来て下さい」


 「わかりました。お願いします」


 バスの運転手が頷き、警察車両の後に付いて行くようにして現場へと向かうのであった。


 「ここです。現場に着きました」


 窓の外を見てみると、転倒した数台のバイクに荷台が少し凹んだトラック。更にアスファルトの上で応急処置を受けている人達(※犯人)と悲惨な光景が目に飛び込んで来た。


 「うわぁ〜・・・・・・」


 「これは酷いわねぇ〜」


悲惨な光景を目の当たりにした生徒達は、顔を青くさせたり怯えた表情を見せたりと、様々な反応を見せていた。


 「みんな、外に出て並ぶんだ」


 『はいっ!?』


 先生の指示の元、バスを降りるとバス内に聞こえていた声やサイレンの音が鮮明になった。そして舞が香奈子と共に辺り見回していると、タンカに積まれた袋が私達の目の前を横切った。


 「ねぇ香奈ちゃん。今のって・・・・・・」


 「考えない方がよさそうよ」


 「みんな注目!」


 その掛け声と共に、みんなの顔が一斉に下谷先生に向いた。


 「これがPMCと襲撃犯が交戦した状況で、警察官がやるべき事は・・・・・・」


 警察官はこの状況をどうするべきなのかを説明いる中、突然大声が聞こえて来た。


 「あ、ありがとうございます!」


 え? 今の声、聞き覚えが・・・・・・。


 「あっ!? 舞ちゃん、あれ!」


 「あれ? って、えっ!?」


 香奈ちゃんが指をさす方向に顔を向けて見ると、私が知っている男の子が車の中にいる人に頭を下げていた。


 間違いない。あれは私の幼馴染みだ!


 「香奈ちゃん、ちょっと行って来る!」


 「え? ちょっとぉ!?」


 「おい、何をしている糸風! 戻って来い!」


 香奈ちゃんと下谷先生の心配を余所に、彼の元へ駆け寄って行く。


 まさか、本当にシィくんは・・・・・・そんな事絶対にないっ!!


 彼の側までやって来た舞は自分の中の不安をかき消す為なのか、声を張り上げて彼の名を呼ぶ。


「シィくんっ!!」


 彼は舞の声が耳に入ったので、顔を向けて驚いた様子を見せる。


 「舞・・・・・・ちゃん?」


 私は数ヶ月ぶりに幼馴染みと再会したのであった。

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