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青空鰹

第4章 幼馴染みとサーキット

 とある高校の訓練施設。そこにいる生徒達は横に並び生徒達用にカスタマイズされたM4A1を手に持ち、ホルスターには最新式の拳銃 SIG P320 を挿していた。そんな生徒達の前に先生と思わしき女性が出て来た。


 「実野妓みのぎ 龍平りゅうへい! 糸風いとかぜ まい! 前に出て来い!」


 「「はいっ!!」」


 彼らはそう返事をした後に顧問の前まで行く。


 「先ずお前達にこの通路を進んで貰う! いいか! 先程も行った通りツーマンセルでこの中を進んで、その道中に敵がいるから銃で撃って倒して行くんだ!
 無論タイムアタック制だから3分を切ったらその時点で終了だ! 民間人を撃ったら5秒の加点だから注意するように!」


 「「はいっ!!」」


 「では準備が出来次第、そこのスタート位置に立つように」


 「「はいっ!!」」


 2人はそう返事をすると、自分の銃に弾が入っているかコッキングされているか確認をしてからスタートラインに2人並んで立った。


 「2人共準備出来たな? アラームオンが鳴ったら突入開始だ! よぉ〜い・・・・・・」


 スピーカから ビィイイイイイイッ!? という警報音と共に舞と龍平がM4A1を構えながらハウスの中へ突入して行くと、早速敵を模したターゲットが現れたので先頭を歩いていた舞が撃ち抜いた。その後は左に個室を確認してから突入して2つのターゲットを撃ち抜く。


 「クリア」


 「クリア、次行くぞ!」


 今度は龍平が先導して歩いて行くと曲がり角でターゲットが上半身の右半分を出した。そのターゲットに龍平は狙いを定めて撃ったのだが、1発目がターゲットに当たらず2発目で何とか当てた後にその曲がり角から先を確認してまた進む。
 その様子をモニターで見ていた教師は少しだけ険しい顔をしていた。


「1発目を外してしまったか」


 「あら、いいじゃないですか。1発ぐらいは」


 「限られた数の弾で戦い抜かなきゃいけないんですよ。1発ぐらいではなく、1発無駄にしてしまったと思った方が正しいです。理事長」


 そう戦闘教官としてこの学園に自衛隊からスカウトされた私、 下谷しもだに 由奈ゆな は今とても困っている。主に隣にいる理事長に付いてだ。


 「でも授業を始めてまだ1ヶ月過ぎぐらいで、もうこんなに出来るようになるなんて優秀だわぁ〜」


 私にとって彼らが優秀に思えない。クリアリング自体辿々しいくてどうすればいいのか迷っているところがあるし、狙って撃つのにも遅いし何よりも時間との勝負とも言えるダイナミックエントリー(※突入の事)の動きが全体的に遅い。


 「まだまだ実戦に出れるようなレベルではありません」


 「そうかしらぁ〜? ちゃんとやる事は出来ているから大丈夫じゃないかしらぁ?」


 私自身彼らに銃を持たせる事自体が反対だったけど、上官達がイメージアップと警察の繋がりをよくする為にと言われたから仕方なく受けた。最初は自衛隊と同じで銃の形をした模型で練習をしていたのだが、この理事長バカが急かしたせいで8日で実銃に変えられた。
 もちろん私は実銃を持つのはまだ早い! と言って抗議したが聞き受けてくれず実銃で訓練するハメになった。あのニュースの時だってそう。M4A1をちゃんと安全に使ってくれる学生を選んで1発だけ撃たせただけなのだ。
 ディレクターからはもうちょっと撃ってくれない? と言われたがこれ以上ボロが出てはいけないので安全上の観点からぁ〜、とか理由を言って2発目を撃つのを止めさせた。


 「・・・・・・っと、そろそろ終わりですね」


 ハウスから出て来た2人はM4A1を構えながら周囲を確認すると銃口を下げた。それと同時に手元にあるストップウォッチを止めた。


 「4分37秒58」


 「まぁ! また早くなったわねぇ!」


 正直言って遅い。SWAT、いや自衛隊なら3分代から2分半代を叩き出す事が出来る。私の上官がこのタイムを見たら激怒するレベルだ。


 「この様子ならこの子達をすぐにでも実戦に投入出来そうねぇ!」


 ハァ? 何言ってるの? と言いたい言葉をグッと我慢して、理事長に向かって話始める。


 「彼らにはまだ覚える事があるので、実戦には投入出来ませんよ」


 「う〜ん、そうかしらぁ〜? 彼らならきっと大丈夫よっ!」


 目の前にいるクソババァを閉鎖区域の中に放り込んで、実戦っていうのを味わせてやりたいと拳を握りしめて思ってしまう。


 落ち着け私、いつもの言葉。うん・・・・・・いつもの事。


 「2人共、銃の抜弾チェックをしたら列に戻るんだ! いいな!」


 彼女は隣で生徒達の様子を見ている理事長にイライラしながらも、授業を続けるのであった。


 ところ変わってとあるサーキット場。


 「遅いぞ紫音。もっとコース取りをしっかりしろぉ!」


 「次ノ左カーブ ハ アウト カラ イン ヲ・・・・・・アアッ!? ナニヲ シテイル ノ デスカッ!? シオンクンッ! 減速ヲシナイ カラ ブツカル ン デスヨォ!!」


 「イタタタタタァ〜・・・・・・すみませぇ〜ん」


 そう、今は絶才車の運転の練習中なんだけど車と言ってもゴーカートなので速度は遅い筈なのに、積まれたタイヤにぶつかってしまった。


「さっきよりは上手くなっては来たけど、アクセルワークが課題だねぇ〜」


 「アクセルワークですか?」


 「車は早くなればなるほど曲がり難くなる上にブレーキ踏んでも止まり難くなる。ブレーキに関しては物理の法則を習っただろう?」


 「確かに習いましたよぉ! でもゴーカートに乗ると速度がわからないんですよぉ」


 スピードメーターが付いていないからわかりづらい。


 「そういう時は路面や周囲を見て判断するか、もしくエンジンオで判断するんだよ」


 「え、そんなやり方があるんですかぁ?」


 「経験ヲ積マナイ ト 判断ガ 難シイ デスヨ」


 「まぁ1番はそれだな」


 結局経験がモノを言わせる世界じゃんっ!!


 「もう少し慣れたら普通乗用車に乗らせるつもりだから早く慣れろ」


 「あのぉ〜、今更ながら疑問なんですがぁ〜」


 「ん? どうした?」


 「どうしてダニエル教官がここにいるんですか?」


 て言うか、いつの間にか僕の運転指導をしていた。


 「oh!? ワタシ ハ 月2デ コチラ ノ サーキット デ 自慢ノ愛車ヲ乗ッテ イルノ デスヨ!!」


 そう言って指をさした先にはトヨタのスープラSZが停まっていた。


 「た、高そう・・・・・・」


 「公道ヲ走レルグライ二 チューン シテ貰ッテマス! オ金掛カリマシタヨ。コレカラ 運転シヨウト思ッテマス」


 公道を走れるぐらいって何ですか、公道を走れるって!


 「そんな事よりもだ。もう1周コースを走って来い! 今度はぶつからないようにな!」


 天野さんが僕のヘルメットを叩いて来たので、睨みつつもゴーカートを走らせてもう1周しようとしたのだが・・・・・・。


 「いやぁ〜、ゴメンねシオンくん」


 リトアさんが申し訳なさそうな顔をさせてコースアウトしている僕に対して謝っているのだ。


 「リトアさぁ〜ん! 煽り運転をしないで下さいよぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!?」


 そう、もう1周コースを走っている途中で後ろから追い上げて来たリトアさんに煽りに煽られて挙句、コース中盤のカーブで後ろから追突されてしまったのが原因でそのままスピンしながらコースアウトをしてしまったのだ。


 「あ〜あ、これがゴーカートじゃなかったら大惨事だ」


 「後ろから追われるのを振り切らせるのは、ちょっと早かったんじゃないの? 教えてもないし」


 「えっ!? もしかしてこれも訓練なんですか?」


 「ああ、そうだ。相手に追われているとプレッシャーを感じるからな、そのプレッシャーに耐えて運転をする訓練をしていた」


 「シオンクン ハ プレッシャー 二 負ケテシマイマシタネ!」


 うっ!? 確かにそこは認めるけど。


 「でもぶつかる事ないじゃないですかぁ!」


 「シオンくんがカーブの途中で減速するからぶつかったのよ。あのまま走って行けたのに何で減速しちゃったのかしら?」


 「それはぁ〜・・・・・・」


 「外へカーブの途中でふくらむと思ったのかい?」


 リュークさんの問いに対してコクリと顔を縦に振った。


 「アノ カーブ ノ 後ハ 緩イカーブ ナノデ フクラムノヲ 気二スル事ハナイデスヨ」


 「どうせ、変なところで怯えたんだろう?」


 「ウッ!?」


 図星と言わんばかりの声を聞いた天野さんは、ちょっと呆れた顔で僕を見つめて来る。


 「お前が銃を持って戦っている時と同じで、ここぞって時に勝負に出ないとダメだからな」


 「はい・・・・・・すみません」


 「まぁいい。そのゴーカートを戻して来い。今度は中古で買った普通乗用車で走らせるからな」


 「はい」


 ゴーカートを戻した後に、中古で“とても安く”買ったセダン型のマニュアル車でサーキットで走ったりバックの練習をした。何度かエンストを起こしたけど、最終的にはクラッチの使い方に慣れてエンストを起こさなくなった。
 でも10万円以下の値段って・・・・・・天野さん、もしかして事故車を買ったんじゃないんですよね?

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