東京PMC’s

青空鰹

紫音とおじさんが渡したい物

 叔父さんがスナックに来た翌日の午後。学校から帰って来た僕は大慌てで普段着に着替えて装備品を身に付ける。


 「紫音、準備は出来たか?」


 「あ、ちょっと待って下さい。マグナムの弾を確認したいんで」


 僕はそう言うと、 S&W M327 R8 のシリンダーラッチを押して本体からシリンダーを出して弾が入っているか確認をする。


 うん、弾が入っている、問題なし。


 そしてシリンダーを戻すと、 S&W M327 R8 をホルスターに入れる。


 「準備出来ました!」


 「じゃあ出発するぞ」


 天野さんの後をついて行くようにして事務所の外に出た後に、ピックアップトラックへと乗り込む。


 「お待たせしました!」


 「リューク、車を出してくれ」


 「了解」


 リュークさんはそう返事をしてから車を発進させた。


 「それで、シオンくんのおじいちゃんが羽田空港の方で待っているんでしょ。どうするの?」


 「ん〜・・・・・・長くなりそうになかったら、先に会ってもいいんじゃないんですかね?」


 「そうだな。てか、お前に渡したい物って一体何なんだ? 昨日は会って魔石に魔力を込めたんだろう?」


 「あ、はい。その魔石を持って帰っちゃったんですけど」


 おじさんが意気揚々と帰って行く姿と、興味深そうに僕の事を見つめていた188さん姿は今でも忘れられない。


 「きっとシオンくんの為にペンダントを作っているのよ!」


 「ペンダント?」


 「ええ、一部の種族の間では自分と同じ瞳の色をした魔石をペンダントして、相手に贈る風習があるのよ!」


 「リトアくん、それは告白する時に贈るんだよ」


 リュークさんの説明に対して、違うと分かっていてもおじさんが指輪を持って告白する姿を想像してしまい、背筋がゾゾゾッとした。


 「まぁ、ペンダントか指輪かは知らないが貰っておけよ」


 「あ、はい!」


 僕が天野さんにそう返事したら、リトアさんが僕の耳を摘んで来たのだ。


 「あの、リトアさん?」


 「着くまで暇だから、触らせてちょうだい!」


 ニコニコとした顔で僕の顔を見つめている。


 止めて欲しいと言っても、 いいじゃない。触っても減るもんじゃないんだからっ! って言って激しくするから、穏便に済ませる為にもYESと言うしかない。


 「ハァ〜・・・・・・好きにして下さい」


 「やったぁ!」


 リトアさんはそう言うと、羽田空港の入り口に着くまで両耳を揉み揉みして来た。


 「それじゃ、僕はピックアップトラックを駐車場に置いて来るから、PMC本部で合流しよう」


 「おう、わかった」


 リュークさんは軽く手を振った後にピックアップトラックを出して、僕達の方はPMC本部に向かって歩き出したが、リトアさんが何かを探しているのか周囲をキョロキョロしている。


 「シオンくんのおじいさん何処にもいないわねぇ〜」


 「昨日PMC本部の方で待ち合わせって言っていたので、ここを探しても意味がないんじゃないんですか?」


 「そうとも限らないわよ。可愛い孫に会えるのを楽しみで仕方なくて、羽田空港中をウロチョロしている可能性があるわよ」


 そんな事をするような人に見えないんですけどぉ。


 「本部の方にいなかったら、スマホなり何なり使って呼び出せばいいじゃねぇか」


 「それもそうね。あら? ねぇ、あそこにいるのはオズマ達じゃない?」


 「ん? あ、本当だ」


 オズマさん達も僕達に気付いたのか、軽く手を上げて近付いて来たので僕達も軽く手を上げて近付いて行く。


 「よぉ、アマノ」


 「オズマ、仕事帰りか?」


 「いいや、お主達を同じでこれから仕事に行くんじゃ。もちろんお主達と同じ仕事じゃ」


 「同じ仕事?」


 天野さんは眉を潜めてそう言うと、オズマさんの代わりに神崎さんが答えた。


 「今回は夜間の行動になるから、3チームじゃ危ないって事で俺達がお呼ばれされる事になったんだ」


 「なるほどねぇ。確かに夜間は危険が多いから、人が多い方がいいわね」


 「期待しているぞ。シオ〜ン!」


 神崎さんはそう言うと、僕の頭をガシガシと撫でて来た。


 「おい止めてやれ、紫音の髪の毛が乱れるぞ」


 リガードさんの言葉に、神崎さんはニヤニヤしながら答えた。


 「また後で整えればいい話だろ?」


 そう言った後に手を離したので、ボサボサになった髪を手ぐしで整えた。


 「そういえば、オズマさん達は僕のおじさんを見掛けてませんか?」


 「おじさん? お前の祖父がここに来ているのか?」


 「はい、渡したい物が完成しているみたいなので、それを私にここに来るって」


 僕がそう言った瞬間、オズマさんとリガードさんはお互いに見つめ合った後に僕の方を見る。


 「いや、俺達は見掛けてないな」


 「そうだのう。ワシも見掛けてないぞ」


 「そうですか」


 じゃあやっぱり、PMC本部の方にいるのかな?


 「え、お前のおじいさん? どんな格好をしているんだ?」


「黒狼族で上着を来ている人」


 「悪りぃ、それじゃあ特定出来ねぇ」


 「ですよね」


 それ以外にどう説明すればいいのか見当が付かない。臭いの事を説明しても理解してくれないと思うし。


 そう思っていたら、後ろから頭の上に手を置かれた。


 「お前の祖父は本部の方にいる筈なんだろ? だったらそんなに気にすんな」


 「それもそうですね」


 きっとおじさんもそこで待っている筈だ。


 「お待たせぇ〜! いやぁ〜意外と空いていたから早く来れたよ」


 ここでリュークさんと合流。駆け足でやって来たのか、息を切らしていた。


 「あっ!? それにほら、本部が見えて来たぞ」


 天野さんの言う通りPMC本部が見えて来たが、何だか知らないけど人集りが出来ていた。


 「何だ? また人権団体が羽田空港に来たのか?」


 「それにしては妙ね。プレートを持って抗議している感じに見えないわ」


 「そうじゃな。むしろギャラリーって感じがするのぉ」


 そんな会話としながら近付いて行くと、エルザさんの声が聞こえて来た。


 「クアッドに今の動作で異常はないかしら?」


 「異常なし。大丈夫です、ドクター」


 「次の動作をやってちょうだい」


 「了解。クアッド行動Bをやってくれ」


 男の人がそう言うと、機械音が聞こえて来た。


 もしかして、ここで動作のチェックをしているのかな?


 「あっ!? 皆さんお待ちしておりました!」


 「シオン、また会いましたネ!」


 サラさんとコニーさんが僕達の側までやって来た。


 「コニーさん、その格好って」


 コニーさんの格好がプレートキャリアと身に付けて武装していて、背中にコニーさんようにカスタマイズされた FN SCAR-H を背負っていた。


 「私も、今回のニンムに参加する事になりましたぁ! 皆さん、よろしくお願いしまぁす!」


「コニーさんも参加するんですかぁ!? 学校ではそんな事一言も喋らなかったのに!」


 「私からのサプラァ〜イズでぇすっ!!」


 いや、サプライズじゃないですよ!


 「コニーさんはどのチームと行動を共に取るんですか?」


 「それはもちろん、シオンと同じチームで任務に就くコトになりましたぁ〜」


 「「「えっ!?」」」


 僕とリトアさんとリュークさんで天野さんを見つめたら、思い出したかのような素振りを見せる。


 「今回コニーが俺達と共に任務に就くの、言い忘れていたな」


 「それ言いなさいよ!」


 「言ってくれなきゃ困るって、前々から言ってたじゃないかぁ!!」


 「いや、スマンスマン。忘れていた。でもまぁコニーは紫音と違って経験豊富だから、役に立つと思うぞ」


 それって僕が使えないって言いたんですか?


 「おお〜シオン! ここにおったかぁ〜」


 「ホント、このじいさんが シオンはまだか? 何度も言うからウンザリしていたよ」


 「おじさん、それに188さんまで! 何でここにいるんですか?」


 「それはお前、お前にプレゼントされる物に興味があったからなぁ。ここに来たんだよ」


 188さんはそう言うと俺の後ろに回ってから、背中をポンッと押したので188さんを振り向いて見つめた。


 「じいさんのプレゼントはスゲェもんだぜ。有り難く受け取りな」


 「あ、そのぉ・・・・・・シオン」


 「あ、はい」


 前を向いて見ると、おじさんは気まずそうな顔をさせながら布に包まれた物を目の前に差し出した。


 「シオン、ワシもヒューリーも使い、代々受け継がれて来た武器をお主に渡そう」


 「代々受け継がれて来た武器?」


 「ああ、これじゃよ」


 そう言って布を剥がして見せて来たのは、何と手甲で甲の部分に僕が魔力を込めた魔石が埋め込まれていて、左腕にかないのだ。


 「これの何処が武器なんですか?」


 「そうだな。ただの手甲じゃないか」


 「防具の間違いじゃねぇのか」


 天野さんと神崎、それにサラさんはそう言うがリトアさんとリュークさんは信じられない顔で目を見開いていた。


 「まぁ付けてみればわかる。左腕を差し出すのじゃ」


 「あ、うん」


 そう返事をしてから左手を差し出そうとした瞬間、ゾッとするほどの悪寒を感じたので横を向くと、クアッドがぎこちない動きをさせながら近付いて来いて、エルザさん達もクアッドの勝手な行動に驚いている。


 「ヒュー・・・・・・リー」


 「えっ!?」


 「クアッドが、ヒューリーって喋った?」


 「ヒュゥゥゥウウウウウウルルルリイイイイイイイイイイイイッッッ!!?」


 怒り憎しみ苦しみの感情が入り混じり、憎悪と化して僕を見つめるのであった。

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