東京PMC’s

青空鰹

残念な見崎と犯人の怒り

 〜〜〜 見崎 side 〜〜〜


 「こちらのお車、見崎様ので・・・・・・」


 「うぉぉぉおおおおおおんっ!? フ〜ガぢゃぁぁぁああああああ〜〜〜〜〜〜んっ!!?」


 警察署の駐車場に着いた彼は、ところどころ擦れて塗装が剥げていて、さらにはボディがベッコベコに形が変わっている上にいくつか穴が空いている愛車を見るや否や、涙と鼻水を垂らしながらへばり付いた。
 その姿を見ていた警察官達は、見崎にドン引きしていた。


 「こ、こちらでお間違いなさそうですね」


 「いやぁ〜、すんませんッス。社長は今日納車したばかりの車でしたッスからぁ」


 「ああ〜、そういう事でしたかぁ。お悔やみ申し上げます」


 案内を担当した警察官は田嶋にそう言い、軽く頭を下げた。


 「今すぐ持って帰る! ピッカピカにキレイにしてあげて、ビンビンエンジン吹かせて北海道から沖縄まで、俺と一緒に旅をするんだいっ!!」


 この状態だと、それはちょっと無理があるんじゃないのかなぁ? とここまで案内をした警察が思った。


 「あ、そうそう。恐らく直して乗ろうとするのは、不可能かもしれませんよ」


 「どうしてっ!! フーガちゃんは 僕はまだ走れる! って言ってるのに! ほら、この美しいボディーに耳を当てれば生命の鼓動が伝わって来る!」


 「社長、それ幻聴ッス」


 冷静な田嶋さんに話した方が、スムーズに終わりそうかも。 と警察官は思ったので、田嶋さんの方を見つめながら説明を始める。


 「実は、ここまで運んで貰うように手配した業者様が、お車の状態を見て 直る見込みがない。と申しました」


 「何でっ!?」


 「どうしてッスか?」


 見崎と田嶋の聞き方に温度差を感じつつも、警察官は丁寧に話し始める。


 「どうやらお車を奪った犯人が、無茶なドライブをしたせいでところどころパーツが痛んでしまっている上に、色んなところを銃で撃ち抜かれたせいでパーツの破損もしているそうです。
 特に、後ろのホイールとブレーキパッドに破損が見受けるとの事です」


 「直せば何とかなるもん!」


 「それと残念な事に、犯人が閉鎖区域へ逃げる際にSDカードを抜いた後に、カーナビと車載カメラを撃ち抜いていたのでエンジンが掛からないみたいです」


 その言葉を聞いた見崎は顔を青ざめさせた。


 「じゃ、じゃあ・・・・・・フーガちゃんは、もう直らない?」


 「恐らくは。あ、でも! あくまでも私達が依頼した業者が言っていた事なので、もしかしたら正規店に持って行けば、直せるかもしれませんよ!」


 「じゃ、じゃあ! 今すぐに販売店へ持ってって!」


 「すみません。それは出来ません」


 「「えっ!?」」


 2人はどうして? と言いたそうな顔で、警察官の顔を見つめる。


 「一応この車も証拠品なので、事件が解決するまでお渡し出来ませんが、こちらにディーラーを呼んで見て貰うのは可能ですよ」


 「する! ならそうする!」


 「でしたら、ここにディーラーを呼んで頂いても構いません。今日来れない場合は後日でも構いませんよ。って聞いてないよこの人」


 「すいませんッス。いつもはこんな風じゃないッスよ」


 その後、駆け付けてくれたディーラーがフーガの状態を隅々まで見た結果。修理不可。と、ちゃんと言われたのだった。もちろんその結果を受けた見崎が、見崎がその場で泣き崩れたのは語るまでもない。


 「・・・・・・すぐそこに美味しい鍋料理店があるので、そちらに行かれては?」


 警察官は泣き崩れている見崎の肩に手を置き、優しくそう言ったのだった。






 〜〜〜 ??? side 〜〜〜


 閉鎖区域内の自分の隠れ家で、犯人は銃弾が入っている個所を手で抑えて唸っていたが突然椅子から立ちあがった。


 「ぁぁぁああああああっっっ!!? あのぉ、カス犬がぁぁぁああああああっ!?」


彼はそう言いながら、ゴミ箱を蹴り飛ばすと自分の座っていた椅子の脚部分を掴み、壁に叩き付けて壊す。


 「クソがっ!? クソがっ!? ズタズタにしてぶっ殺してやるっ!! オラァアッ!!?」


 そう怒鳴りながら、犯人は手当たり次第に部屋の中にある物を壊していく。
 

 「〜〜〜〜〜〜ッ!? クソォ〜、腹がいてぇ〜!」


 あの時にアイツさえいなければ、こんな事にならなかったのに。 と思いながら彼はラジオの電源を点けた。


 『今日の午後3時40分ごろに、男が路上で銃を乱射しました。現場にいた警察官とPMCが男と銃撃戦になり、犯人が車を奪い現場から逃走しました。
 この時に、応戦した警察官2人が犯人が撃った弾が当たり、1人が重傷。もう1人が意識不明の状態です』


 「ッ!?」


 もうニュースになっているのかっ!? と犯人は危機感を積もらせた彼は棚の中からポテトチップスを取り出してバリバリと食べ始めるが、その日の出来事を思い出してすぐに落ち着く。


 「あの警官共も大した事なかったから、大丈夫なんじゃねぇか?」


 その後もラジオを聴いていたが、自分に繋がる話しがなかったので 今のところは大丈夫だ。 と安心する。


 「いい加減、諦めたらどうなんだ?」


 犯人に掠れた声で話し掛けたのは、この間ここに誘拐して来た男。 金井かねい 浩司こうじ だ。犯人にとっては殺してやりたいヤツ、ナンバー2に入るほど憎んでいる。
 だから犯人は連れて来た瞬間、気が済むまで暴行を行ったのだ。


 「何だとぉ?」


 「住宅街で銃乱射事件なんて起こせば、捜査が強化されるに決まっているだろう?」


 「ふんっ! だから何だよ?」


 「自主して、俺達を解放しろ。そうすればッ!?」


 犯人は話している途中に、金井の腹に蹴りを入れたのだ。


「うるせぇんだよ、このクズ共が! テメェらが被害者ヅラしてじゃねぇぞコラァッ!! テメェのせいで俺の人生がめちゃくちゃになったんだっ! 俺はテメェら全員をブチ殺すまで止める気はねぇ!!」


 そう言いながら何度も何度も蹴りを入れるので、隣で縛られている男性が もう止めろっ!! と言った瞬間、今度はそっちを向き殴り始めたのだ!


 「もう止めろだぁ? テメェらはあの時にゲラゲラ笑いながら、俺を見下ろしていたじゃねぇか、あぁ?」


 「それはもう昔の事、ッ!?」


 「ハッ! 今だって忘れないぜ。テメェらが俺にして来た仕打ちをよぉ! テメェはバットで俺にこんな事をしていたよなっ!」


 そう言いながら、無防備な腹を拳で思いっきり殴り付けた! その勢いで縛られている椅子ごと床に倒れてしまう。


 「ッ〜〜〜!?」


 思いっきり腹を殴られた方は身体を丸めて悶絶をする。


 「そして、こんな事をしてニヤニヤと見下ろしていたよな、テメェはよぉ!」


 そう言いながら腹に乗っかり、縛られている男に拳を振り下ろし続ける。


 「も、もう止めてくれぇ・・・・・・俺が、俺が悪かったぁ」


 「・・・・・・もういい」


 「え?」


 縛られている人は 何がもういいんだ? と思いながら、マウントを取っている犯人を見上げる。


 「金井の野郎を痛ぶってから殺して野郎と思ったが、もういい」


 立ち上がり、金井のえり首を掴んだ。


 「お、おい。まさかお前、金井を!」


 「ああ、ウゼェから殺すつもりだ」


 「「ッ!?」」


 彼らは戦慄が走った。


 「や、止めろっ!! 俺を殺さないでくれっ!!」


 「お前が俺にやったようなやり方で、お前を地獄の底へ落としてやるよ」


 その言葉を受けた金井は、必死な形相でジタバタと暴れ出した。


 「いくら何でも殺さなくてもいいだろ!」


 「ハァ? お前らバカなのか? 俺は最初っからお前らを苦しめてから殺すつもりだったんだぞ。もうそんな事をするのが面倒臭くなって来たから、お前をろうと思っただけだ。
 冨上とがみ、お前は最後だからな。覚悟しておけよ」


「止めろぉぉぉおおおおおおっ!? 止めてくれええええええええええええっ!!? 冨上、助けてくれぇぇぇええええええっ!!?」


 ニヤニヤしながら金井を部屋から引きずり出す犯人の姿を、冨上は アイツ、狂っている。 と思っていた。自分がその原因を作ったを忘れて・・・・・・。

「東京PMC’s」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く