東京PMC’s

青空鰹

紫音と体力測定

 着替え終わった人から順番にクラスメイト出て来て、廊下に全員出たところで筒城先生が声を掛けて来た。


 「名前を言うから、言われた順番に男子女子1列に並んで!」


 そう言ってから苗字を言って行くが、僕の名前を言う時だけこちらを睨んで来たが、正直言って前に死ぬような思いをしてからは睨まれたぐらいじゃ動じなくなった。


 「先生、僕を睨まないで貰えませんか? 何も悪い事をしてないので」


 「・・・・・・ゴメンなさい。気を付けるわ。みんな、私に付いて来て下さい」


 筒城先生はそう言い、歩き出すが不機嫌そうなのが丸わかりだ。


 どうして僕にあんな態度を取るんだろう?


 「アナタ、PMCなんだって?」


 「ん、そうだよ」


 僕の隣にいた女子が話し掛けて来たので、そう言った。


 「もしかして、人を殺したの?」


 「それは・・・・・・撃たれた事はあるけど、まだ殺した事はない」


 僕は嘘を吐いた。だって正直に言ったら、どう思われるか恐い。


 「へぇ〜、そうなんだぁ。その持っている銃も本物?」


 「本物だよ」


 そう言ったら、興味深そうにUMP45を見つめて来た。


 「何か、オモチャみたいな銃」


 「この銃は外装が樹脂だから、そう見えても仕方ないね」


 「ふぅ〜ん、樹脂を・・・・・・」


 そう言って触ろうとして来たので、スゥッと下げる。


 「その、PMCの規定上、緊急時以外一般の人に銃を触らせないように。ってのがあるから触らないで欲しい」


 「あ、ゴメン」


 「今度からは気を付けてね」


 あのまま触らせていたら、僕が工藤さんに怒られる可能性がある。だってスマートウォッチを通して、全部聞かれているんだもん。


 「そこの2人、静かにしなさい」


 筒城先生に怒られたので、 はい、すみません! と言って、そのまま校庭まで出た後に、準備体操をした。


 「まず最初に、走り幅跳びをします順番に飛んで」


 この装備のまま飛ぶのかぁ・・・・・・。


 記録が伸びないのが丸わかりだったので、飛んでみたら65cmしか飛べなかった。何でかって? 銃に砂が付くのを避ける為に、着地しても立ったままの状態をキープ出来るような飛び方をしたからである。


 「次、このボールを投げて!」


 遠投の方は装備が邪魔して上手く投げられないので、記録を伸ばす為に砲丸投げのような投げ方。つまりグレネードの投げ方をして記録を伸ばした。
 短距離走でも装備がウエイトになってしまい、下から数えた方が早いぐらいの記録になってしまった。反復横跳びも、同じような感じになってしまった。


 『シオン、お前さんの記録散々結果だな』


 「仕方ないですよ! こっちは装備を付けたままやっているんですから!」


 無線を使って話して来るオズマさんにそう言ったら、周りにいたクラスメイト達がビックリした様子でこっちを見ていた。


 『ところでシオン。校門の向かい側に黒いセダンが停まっている』


 黒いセダン?


 視線だけ移して確認して見ると、確かに校門の向かい側に黒いセダンが停まっていた。


 昨日の朝に僕が見たセダンに似ている。


 『あのセダンは、犯人が乗っていたものと似ておる。もしかしたら犯人の車かもしれないから、そっちに神崎を向かわせるから、2人で様子を窺って来て貰えんか?』


 「わかりました。確認して来ます」


 僕はそう言うとUMP45のコッキングハンドルを引いてから、筒城先生を見つめる。


 「ちょっと同僚の方に呼ばれたので行って来ます」


 「え、ちょっと・・・・・・」


 「仕事なので」


 先生にそう言ってから、黒いセダンへと向かう。


 「こちら紫音、セダンに動きがありません」


 『了解。校門の前で待機しろ。俺が来るまでそこにいろ』


「了解、校門の前で待機します」


 オズマさんにそう伝えたら、校門の前まで行きそこで待機する。


 『こちら神崎、紫音から見て9時方向から接近している』


 左を見ると神崎さんがこっちに向かって走って来るのが見えた


 「了解。こちらからも神崎さんの姿を確認しました。合流したら取り掛かりましょう」


 『了解』


 セダン型の車の警戒をしていると、神崎さんが側まで来た。


 「紫音、首尾は?」


 「中に人がいるようなのですが、動きがありません」


 「そうか、紫音くん。注意しながら近づくぞ」


 「はい」


 そう返事をしてから目標へと近づくが、途中で気が付いた。


 う〜ん? あの車から独特の臭いがしない。


 「あの、神崎さん。多分違うと思います」


 「ん? どうしてだ?」


 「あの車から、犯人の臭いがしません」


 そう、車にはドアとかに隙間があるので、そこから臭いが漏れ出すだ。あの強烈な臭いなら、絶対に気付かないわけがない。


 「そうか。お前鼻がいいもんな。でも警戒は解くなよ。共犯者の可能性があるからな」


 神崎さんはそう言うと車に近づき、運転手側の窓ガラスを手で軽く叩く。するとこっちを中にいた人が向いた。


 「すみません。PMCの者なのですが、ちょっとお話をいいですか?」


 『あ、はい!』


 中にいた人はそう言うと、ドアミラーを下げて顔を出す。


 うん。臭いどころか体型自体違うから、この人は犯人じゃない。 神崎さんが職質をしている間、そう思うのであった。


 「・・・・・・そうですか、ここ昨日ここ周辺で家を襲った犯人が目撃されているので、注意して下さいね」


 「あ、わかりました。気を付けます」


 彼はそう言うと車を出して、何処かへ行ってしまう。


 「紫音くん。さっきも言ったけど、臭いが違う理由で気を緩めたりしてはいけないよ。下手したらあの人が、犯人の協力者の可能性もあるかもしれないから」


 確かにその可能性もあった。それに付いては僕の反省点である。


 「ご、ゴメンなさい! ファッ!?」


 神崎さんが耳を触って来た。


 「えっとぉ・・・・・・神崎さん?」


「今度やったら、もっと激しく揉むからね」


 それは困る。


 「それじゃあ、学校に戻って授業を受けて来なさい」


 「はい!」


 マガジンを抜いて、銃本体に入っている弾をコッキングして取り出してから空撃ちをする。そして銃本体から出て来た弾をマガジンへ装入したら、マガジンを差し込んでから校庭へ戻って身体測定の続きを受けた。
 その後も警戒していたのだが一行に現れなく、放課後になってしまった。


 「結局、犯人現れませんでしたね」


 『“今日は” だ。明日来る可能性もあるからな、気を引き締めてろよ』


 「はい」


 確かにリガードさんの言う通り犯人は犯行声明を出してないのだから、いつ襲ってくるのかわからない。


 『一応言っておくが帰り道に犯人とバッタリ合う可能性もあるからな、周囲に警戒しつつ帰れよ』


 「あ、はい。わかりました」


 その後も 寄り道がどうのこうの。 とか言って来たので、 はい。わかりました。 と言う姿を真奈美さんが見て笑っていた。


 「フゥ〜・・・・・・やっと終わった」


 神崎さんとリガードさんは何で説教がましく言って来たんだろう? と思っていると、真奈美さんがチョンチョンと僕の背中を突いて来た。


 「話はもう終わりましたか?」


 「はい、終わりました」


 「紫音さんはもう帰るのですか?」


 「はい。あ、でも。帰ってから、天野さん達と仕事に出ますけどね」


 出没した場所を中心に犯人の探索と警戒の仕事。それが僕の仕事である。


 「そう、紫音さんも大変ですね。応援しています」


 「ありがとう。そう言って貰えると助かるよ」


 それと、尻尾を掴んでいる手を離して欲しい。背筋がゾクゾクするから。


 「ちょっと待ちなさい、大園くん」


 「ん? 何ですか筒城先生?」


 「「私をアナタのお宅へ連れて行って貰います」」


 「・・・・・・はい?」


 僕どころか真奈美さんも 何で? と聞きたそうな顔で筒城さんを見つめる。


 「アナタの保護者と個人面談を行おうと思います」


 「それは無理です!」


 担任なのに、もしかしてこの人は僕の事情を知らないの?


 「えっとぉ、僕に保護者がいない事を、他の方から聞いてませんでした?」


 「でも、同居をしているのでしょう? だったらその人と話をしたいです。だから連れて行って下さい」


 「その人に迷惑を掛けるわけにはいかないので、すみませんが諦めて下さい」


 そんな事をしたら、本当に追い出されちゃうから! って言いたいんだけど、ヒートアップしそうだし・・・・・・。


 「連れて行きなさい」


 「あのぉ〜、後日お伺いするという形に」


 「今日がいいです」


 その後も行く。無理です。と言い争うが、工藤さんからスマートウォッチ通達で、 ラチが明かないから、連れて行ってやれ。 と言われたので渋々連れて帰る事になった。


 学園生活2日目にして、帰り道の足取りが重いのは何でだろう。答え、筒城先生が天野さんの事務所に付いて来るから。


 「あの、どうしても会うのですか?」


 「ええ、教師として見過ごせませんから!」


 「先生は他の教員の人から、僕の事を聞いたんですか?」


 事情を知っているのなら、こんな事はせずにやんわりと 辞めた方がいいんじゃないの? と言って来るんじゃないのかな?


 「知ってるからこそ、アナタを救いたいと思っているのです! だから先ずはアナタがPMCとして活動させないよう、その人達に頼もうと思います」


 この人頭大丈夫なのかなぁ? 僕からして見ればお門違いの考え方をしている気がする。


 「あのですねぇ・・・・・・ん?」


 この臭いは!


 言葉の途中で周囲を気にしながら鼻をスンスンと動かし始めたので、 筒城先生が 何をしているんですか? と言って来るが気にせず周囲を見渡す。


 「ッ!?」


 いた。あの特徴的な体型に黒いパーカー、昨日のままの姿でいた。そしてその人はバックの中身を取り出そうとしているのか、手を突っ込みながらこっちに向かって歩いて来る。


 「筒城先生」


 「何?」


 「隠れて!」


 「えっ!?」


 筒城先生の手を引っ張って十字路の塀の裏へ隠れた瞬間、激しい発砲音が聴こえるのと同時にブロック塀から土煙が上がる。そうフルオートで撃ち込まれている状態だ。


 「きゃああああああああああああっっっ!!?」


 「こちら紫音。緊急事態発生! 犯人が発砲をして来た! 繰り返します! 犯人が発砲をして来た!」


どうして犯人が僕の目の前に、まさか僕が狙い? と思いながらUMP45を構え、反撃のチャンスを窺う。


 「見つけたぞぉぉぉおおおおおお、クソアマァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」


 「クソアマ?」


 クソアマって事は、ひょっとして犯人のターゲットって筒城先生なの?


 怯えた表情させながら、丸まっている筒城先生を見つめた。

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