クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第39話

 『・・・・・・ん、んん?』

 神のなり損ないは目を開き、辺りを見回すが上下左右全てが真っ白でなにもない。

 ここは、一体どこなんだ?

 「どこって、キミはこの場所を懐かしく思わないのかい?」

 『ッ!? その声はっ!!』

 声が聞こえた方に顔を向けてみると、そのには自分が怨んでいる神であるガイラスがいた。

 『貴様・・・・・・どうしてここにいる!』

 「どうしてもなにも、ボクがここに居てなにが悪いのかな?」

 『ここに居て? まさかここは!』

 ガイラスがいる天界!

 「気がついたみたいだねぇ〜。いやぁ〜、ようやく帰って来てくれて良かったよぉ〜」

 相変わらず能天気な事言うヤツだ。しかしこれはチャンスだっ!!

 『ここでキサマを・・・・・・』

 「残念だけど、それは出来そうにないよ」

 『なに? 俺よりも強いとでもいいたいのか?』

 「ううん、違うよ。今のキミは身体がないから戦えないじゃん。って言いたいだけだよ」

 『身体が? ッ!?』

 そういえば、先ほどから身体を動かしている感覚がない!

 「キミ、最後どうなったのか覚えてないの?」

 あの時俺は魔核の力を使い、その力でエルライナ達を倒した・・・・・・ん? 倒した?

 「倒したと思っているなら間違いだよ。キミはエルライナちゃんと勇者達に倒されたんだ」

 「ッ!?」

 そうだ! 俺はエルライナに倒されてしまったんだ!! しかし、アイツらには礼を言わればならない。なぜなら当初の目的だったガイラスの元へ行けたのだからな!
 後はヤツを倒して神になれば・・・・・・。

 「さっきも言ったけど、今のキミにボクを倒すことは出来そうにないよ」

 『なんだと!? どういうことだ?』

 「キミが魔核を使ったせいで枯渇するほど魔力を消費したんだ。しかも枯渇してしまった分を命で補っていたから、そんな姿になってしまっているんだよ」

 ガイラスはそう言うと、鏡を取り出して姿を見せてきた。そして自分の姿を見た神のなり損ないは、自分の姿に驚愕してしまう。

 『なっ!? これが俺なのか?』

 スーパーボールぐらいの大きさしかない光の塊になってしまっていた。そんな姿を見つめているガイラスは、呆れた顔で神のなり損ないに話し掛ける。

 「そう、キミがあんな事をしなければボクと戦えていただろうにね」

 『グ・・・・・・ググッ!?』

 こんな姿じゃ魔法を使うどころか、殴ったり蹴ったりする事さえ出来ない!

 「初めっから他の分身の様にボクの言う事をちゃんと聞いていれば、人と仲良く出来たのに」

 『うるさい! 人間はクズだ! 忌むべき存在だ!! 簡単に裏切る様なヤツらなど、この世から消し去るべきなのだ!!』

 「ハァ〜・・・・・・ちょっと困っていたら、すぐに飛んで来て力をあげて。さらに考えなしに誰彼構わずに力をあげて信者を集めていた。
 そんな事をしていたら、普通に他の信者に目をつけられても、おかしくないよね?」

 『いいや! そいつらも俺の元へやって来ていたら、力を与えてやっていた!』

 その言葉を聞いたガイラスは、呆れた顔で神のなり損ないを見据えた。

 「なんでもかんでもキミに頼ればなんとかしてくれるって状態じゃダメなんだよ。自分の力でなんとか出来る様にするサポートがボク達の役目だよ。
 だから力を与えず、ヒントあげて自分で解決させるのが正しいやり方だったんだよ」

 『クッ・・・・・・御託はいい! この場で貴様を殺してやる!!』

 そう言って向かって来る神のなり損ないをガイラスはヒョイと避けると、手をかざした。

 「キミになにを言っても無駄そうだね」

 『なにを・・・・・・ッ!?』

 神のなり損ないは、自分の光が徐々になくなっていくのに気づいた。

 「このまま生きてても反省しなさそうだからね。ボク自らの手でキミを消させて貰うよ」

 『やっ、止めろ! 止めてくれ!! 俺はただ! 平和な世界を作りたかった、だ・・・・・・け・・・・・・・・・・・・』

 言葉の途中で光が消えてなくなった。そう、神のなり損ないは存在そのものを消されてしまったのだ。

 「キミが人との付き合い方をちゃんと知っていれば、分身でも良い神様になっていたかもね」

 どこか寂しそうな顔で、神のなり損ないがいた場所を見つめるガイラスであった。

 同時刻。エルライナと大輝達は崩れていく砦を見つめていた。

 「あの管が砦を支えていたみたいだね」

 「ああ、そうだな。逆に言えば、あの管がなければ今頃私達は瓦礫の下敷きになっていた。って考えられないかしら?」

 あ、そうだ! リヴァイスが言ってる事は合ってる。

 そう思いながらリヴァイスに顔を向けて見た瞬間、ギョッとした顔になる。

 「どうしたんだ、エルライナ?」

 「ちょっ、身体が光ってるよ!」

 「えっ!? 本当だ!」

 リヴァイス自身も驚いた表情で自分の腕を見つめている。

 「もしかして、天使に進化しようとしているんじゃないか」

 「ん・・・・・・大輝、それはない」

 「伊織の言う通り、それは無理があると思うわ」

 ショボーンとした顔をする大輝くんに対して、リヴァイスはハッと気がついた顔をさせる。

 「そうだ! 私という存在は、あの人がいるから存在出来たもの。あの人が亡くなった今、俺という存在が無くなるのは当たり前だ」

 神のなり損ないと一心同体だったのか。

 なんて事を思っていたら、大輝くんが心配した様子でリヴァイスに近づく。

 「え? じゃあ、アナタはこのまま消えてなくなってしまうって事ですよね? それで良いんですか?」

 「・・・・・・ええ、それで良いわ」

 「どうして?」

 「俺はアイツに滅ぼされた王国の民達の為に生きて来た。その目的さえ達成出来れば死んだって良い。
 それにあの人の死にざまも見れたもの、これ以上望むものはなにもないわ」

 リヴァイスはそう言うと、俺の方に顔を向けて来た。

 「感謝するよエルライナ。彼に殺された民達も、きっと喜んでいると思うわ」

 「そう、それは良かったよ」

 「勇者達も、色々と迷惑をかけて悪かった。心から謝罪するわ」

 「あ・・・・・・はい」

 「謝ってくれたのだから、それで良いわ」

 「ん・・・・・・気にしてない」

 大輝くん達の言葉を聞いたリヴァイスは、まるでもう消える事を悟ったかの様に静かに目を閉じた。

 「ああ・・・・・・こうしているとこう思ってしまうな。アナタ達と冒険が出来たら、きっと楽しかったんだろうなぁって。もしも俺がエルライナの様に生まれ変わる事が出来たら、その時は一緒に・・・・・・な」

 話を終える前に消えて行ってしまった。その様子を見ていた美羽さんは大輝くんに寄り添いながら涙を流して、伊織ちゃんは手を振っていた。俺はというと敬意を込めて敬礼をした。

 「来世ではどうか安らかに」

 多分この場にいる全員がそう思っているだろう。

 その後は連合軍が俺達の元にやって来て、神のなり損ないを倒したと話したら、とても喜んでいた。

 「喜ぶのは良いけどさ、女の子を胴上げするのは良くないと思う」

 そう、屈強な男達の手によって俺達は胴上げされた。セクハラ問題だ。

 「まぁまぁ、みんな脅威が去って喜んでいるんだから、それぐらい目を瞑ってあげても良いんじゃないかしら?」

 「まぁ、そうかもしれせんがぁ・・・・・・」

 キャンプに帰って来たら宴の準備が出来ていて、色んなところでワイワイガヤガヤやっている。

 この宴状態どうにかなんない?

 そんな事を思っていたら、隣にいた美羽さんに人差し指で突かれてしまった。

 「とにかく今日は世界から脅威が去ってめでたいんだから、お祝いしましょう」

  「・・・・・・そうですね。そうしましょう」

 そう返事をした瞬間、俺の元にネネちゃんが駆け寄って抱きついて来た。

 「お姉様、ここいいたのですか! 皆様があちらでお待ちしておりますよ!」

 「え? 皆様?」

 ネネちゃんが指をさす方向に目を向けると、ニコニコした顔のグエルさん達がいた。

 「エルライナ、こっちに来てくれ!」

 「主役のエルちゃんがいないとダメだよぉ!」

 俺主役だったんだ。

 そんな事を思っていたら、美羽さんとネネちゃんに腕を引っ張られた。

 「そうね! 主役がいないと締まらないわよね。行きましょうエルライナ!」

 「お姉様、みんなで楽しみましょうよ!」

 「・・・・・・まぁそうだね」

 俺はそう返事をした後、美羽さん達と共にグエルさん達の元へと行くのであった。

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