クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第4話

 目の前にいる人達が国王と王妃と知ったので、その場で正座をした上に両手を着いて頭を床に擦りつけた。そう、日本では誰もが知っている姿勢の土下座で謝る。


 「飛んだご無礼を致してしまい、すみませんでした。どうか命だけは取らないで下さい。許して下さい。本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・・・」


  潔く責任取って死ね。って言なんて言われたら断固拒否する!二度目のゲームオーバーなんてしたくなんてない!
 だからこれで許して貰えなかったら国外まで逃げてやるっ!!


 「・・・・・・ダメですね」


 「なんでですかぁっ!?」


 しかも国王様達に謝罪しているのに、なんでアリーファさんが答えているんですかっ!!


 そう思いながら勢いよく頭を上げると、アリーファさんが目の前にいて俺の事を見下ろしていた。


 「国王の顔を知らないなんてリードガルム王国民の恥です」


 「あのぉ〜、私はリードガルム王国の住民じゃないんですけどぉ〜・・・・・・」


 そう、ネットワーク情報以前に写真すらないのに、どうやって国王と王妃の顔を知れば良いのか聞きたいぐらいだ。


 「アナタはなにを仰ってるのですか。リードガルム王国の王都に住むと決めた以上、 国王の顔を知らなかったんです。 じゃ済まされませんよ。なのでエルエルには責任を取って貰いましょうか」


 「せ、責任・・・・・・ですか?」


 まさか一生王様の元で奴隷として働かされるのか? も、もしかしたら、真夜中に薄い本の様な事を求められるかも知れないっ!!
 や、止めて! 見た目は可愛いい女の子だけれども、中身は青少年なんだっ!! だから俺からしてみればノーマルの男なのに、 ウホッ♂ いいおとこ。 って言われながら迫ってくる感じなんだよっ!!


 貞操に危機を感じたので目の前の人達から間合いを少しづつ取りながら、この場からどうやって逃げるか模索し出す。


 「・・・・・・なにを想像していらっしゃるのかは存じませんが、言わせて頂きますね」


 「ヒ、ヒィッ!?」


 彼女の頭の中では 死刑、奴隷、えっちぃな事、の三つの言葉が過っていた。


 「今日から私を お姉ちゃん。 と呼びなさい」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 この人今なんて言ったの? エルエルお馬鹿さんだから全然理解出来なかったよぉ〜。


 などと現実逃避をしていたら、目の前にいるメイドさんが顔を近づけて来て、また話し掛けてくる。


 「聞こえなかったのですか? ならもう一度言います・・・・・・私を呼ぶ時は名前ではなく、と呼びなさい」


 一体なに言ってんだこの人はっ!!?


 「いや待って!! なんでアナタの事をお姉ちゃんと呼ばなきゃいけないんですかっ!? 家族じゃないのにっ!!?」


 「私はね、エルエルの様な可愛い妹が欲しかったのですよ」


 「キャッ、キャワイイ!!?」


 ふわああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・そんな事言われたらぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!! 顔がぁ、顔が熱くなっちゃうよぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!?


 「ふぎゅうっ!?」


 両頬に両手を当てていたら、アリーファさんがいきなり抱きついて顔に自身のお胸を押し当てて来た!


 「ウフフッ! さぁ、早く私に向かってお姉ちゃんと一言だけ言ってみなさい。そうしないと、 可愛いって言い続けますよ」


 「イ・・・・・・イヤァ〜〜〜」


 俺にだってプライドがあるんだ! だから争ってやるもんね!!


 「エルエルは可愛い」


 「ハウッ!?」


 「エルエルはとっても良い子」


 「ふみゅっ!?」


 うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・単調な言葉なのに反応してしまう自分が裏目かしいっ!!


 「反応が面白いから、もっと言ってしまおうかしらぁ〜?」


 「う、うぅ〜〜〜・・・・・・」


 も、もう・・・・・・背に腹はかえられない。 そう思いながら潤んだ瞳で上を向き、アリーファさんの顔を見つめながら言葉に出す。もちろん本人はその行動が上目づかいだと気がついてない。


 「お、おねえ・・・・・・ちゃん」


 「ッ!? き、聞こえなかったから、もう一回言って頂戴」


 「うぅ〜、お姉ちゃん・・・・・・これで良いでしょぉ?」


 今度こそはっきりと言ったから、これで解放してくれるはず。 と思っていたら腕の力が強くなって締めつけられている状態になった!


 「ハァ〜〜〜・・・・・・私はなんて罪深い人なのでしょうか、 ずっとこのまま抱きしめていたい。 という様な衝動に駆られてしまいますわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っっっ!!?」


 く、苦しい! 早く離れてくれないと窒息死しそう。


 「アリーファ、エルライナに話したい事があるからその辺にしてくれ」


 「はい、旦那様」


 アリーファさんはバルデック公爵様の指示に素直に従うが名残惜しそうだ。しかし、バルデック公爵様のおかげで俺の生命線は保たれた。


 「すまなかったエルライナ、む、ッ!?」


 「む?」 


 「コホンッ!? ・・・・・・家の者が悪い事したな。気を取り直してそこのイスに座ってくれないか?」


 なんか言い掛けていたけど、まぁいっか。俺が気に掛ける様な事じゃなさそうだから。


 「あ、はい。分かりました」


 そう言って空いているイスに座ると、なぜかその隣にアイーニャ様が座ってくる。


 「ズルいです、奥方様」


 「アァ? アンタさっきいい思いしたんだから、今度はアタシの番だろ?」


 「むぅ〜・・・・・・そう言われてしまっては仕方がないですね」


 アリーファさんは仕方なさそうにバルデック公爵様の隣に座った。


 「え〜っと、改めて自己紹介しますね。私の名前はエルライナです。バルデック公爵様達にはいつもお世話になっております」


 「ご丁寧にどうも、俺の名前は ゼオン・ディア・リードガルム この国、リードガルム王国の国王だ。種族は見ての通りの人族。よろしく」


 「わたくしの名は メイラ・ディア・リードガルム 元はラクスラード帝国の第二王女でしたが、こちらに嫁いで来ました。以後お見知りおきを」


 う〜ん、嫁いで来たって言う事は政略結婚って感じだなぁ〜。政略結婚で嫁いで来たとなると、リードガルム王国の貴族の中に現王妃を良く思わない連中が結構いそうだなぁ。
 まぁここら辺に関しては俺がどうこう言う問題ではないか。


 「まぁあいさつが済んだところで本題に入るか。ああ〜、そうだ! 王族だからっていう事で変に気づかいしたり、堅っ苦しい話し方は別にしなくていいぞぉ〜。
 めんどくさいし、なによりも距離感を感じてイヤだし、なによりもここは謁見の間じゃないからなぁ〜」


 「は、はぁ〜・・・・・・分かりました?」


 この人もしかして、変わり者なのかもしれない。だって、さっきと違って少しだらしなくイスの背もたれに寄り掛かって座ってるもん。


 「兄上、少しは大人っぽく振る舞って下さい。いい歳をした大人なんですから」


 バルデック公爵様は呆れているのか、頭に手を当ててため息を吐いている。


 「まぁいいじゃないかぁ〜。ここんところ一週間ぐらい、色々と問題が起き続けてずぅ〜っと仕事ばかりしてたんだからな。こうやって肩の力を抜かないと、精神的に参っちまうよ」


 「まぁ、そうだけれども・・・・・・大事な話しをエルライナにするから、大人らしい対応をしてくれませんか?」


 バルデック公爵様は自分の立場を気にしているのか、やんわりと国王様を注意している。


 「おいおい、今の彼女はアイーニャに雇われているんだからエルライナじゃなくてエルエルだろ?」


 「まぁアタシが雇ったって言うよりも、お金を払って店から貸し出して貰ってる。って言った方が合ってるけどなぁ〜」


 いや、あれはもう完全な買収だったよ。あっ! そうだ思い出した!? 俺を売り飛ばしたみぃさんは、今頃どこでなにをしているんだろう? 
 もしかして本当にミハルちゃんと一緒に飲みに行っちゃったのか? そうだったら解せんぞっ!! この話し合いが終わったら、絶対問い詰めてやるんだからぁっ!!


「どっちも同じだろう? ホント、我が弟のネルソンと言いアイーニャと言い面白そうな事に関われて」


 「そうかい?」


 「そうだとも。俺なんか、ここんところぉ〜・・・・・・」


 「アナタ様、いい加減にして下さい。これじゃあ重要な事を話したくても話す事が出来ません!」


 ん? 今、王妃様は重要な事って言わなかったか?


 「そうだけどもよぉ〜・・・・・・」


 「それにアナタ様はまだお城の仕事が残ってるんですから、早く済ませた方が得でしょう?」


 「し、城の仕事かぁ〜・・・・・・アイツらは優秀だから」


 「・・・・・・アナタ様は、また連日徹夜で仕事をしたいのですか?」


 王妃様がニッコリした顔でそう言った途端、国王様の顔が一瞬で青ざめた。多分、連日の徹夜作業が王様の中でトラウマになっているんだと思う。


 「分かった分かったぁ!? 真面目に話しをするから、徹夜作業勘弁してくれっ!!」


 「じゃあ先ずはちゃんとイスに座り直してから、身だしなみを整えて下さい! エルライナさんに失礼でしょっ!!」


 王様は王妃様に言われた通りに、イスに座り直してから身だしなみを整える姿を見た俺は、 この国がちゃんと成り立っているのは、王妃様のおかげなのかなぁ? と思ってしまうのであった。

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