クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第20話

 一体なにがどうなってるんだ? 人が宙に浮いているけど、死人のようにグッタリしているなんて・・・・・・おかしいとしか思えない。


「あっ!?」


 あの人の身体に向かって棒のような物がまっすぐ伸びている? いや待てよ。もしかしてあれは棒が伸びて身体を支えているんじゃなくて、棒のようななにかが男の人の身体に突き刺さってるのか?


 「ば、化け物が! 化け物が息を吹き返したぁぁぁああああああっっっ!!?」


 「逃げろおおおおおおおおおおおおおっっっ!!? 殺されるぞおおおおおおおおおおおおっっっ!!!?」


 逃げてくる人達のせいで、あの化け物になにが起こってるのか分からない。こうなったら!


 「お、おい! 待てエルライナっ!!」


 エイドさんの言葉を無視して、お互いを押し合いながらこちらに向かって逃げてくる冒険科の人達の間を駆け抜けて行く。


 「うっ!? なんだよこれはっ!!」


 化け物の失った左腕と両足から棒状のなにかが生えていて、生きているかのように脈を打っているのだ。あまりにもヒドい姿に口に左手を当ててしまった。


 「グォォォオオオオオオッッッ!!?」


 化け物の雄叫びを聴いて、 こっちに襲いかかって来るっ!! と思って身構えたのだが、なぜか近くにいる俺を無視してその場でのたうち回り始めた。


 なんだコイツ? パワーアップしたのに襲いかかって来ないのか? ・・・・・・いや、なにかおかしい。
 この声を聴いてると雄叫びを上げていると言うよりも叫び声に聴こえてくる。そしてなによりも残った右手でひたすらに首を掻き毟っているのはなぜ?


 「理由はともかく、さっさと倒さないとヤバそうだ!」


 ホルスターに入れていた S&W M500 を抜き化け物をブチかますが、残り三発しか入ってなかったからすぐに撃ち終わってしまう。


 まだ足りないかっ!!


 S&W M500 をホルスターにしまうのと同時に、反対側に入れていた Desert Eagle を引き抜き化け物の身体に向かって弾頭をブチ込み続けるっ!!


 終われっ!! 終われ終われ終われ終われっ!! 終わってくれぇぇぇええええええええええええっっっ!!!?


 マガジンに入っていた弾薬を全て撃ち切った瞬間にのたうち回っていた化け物が死んだかのように動かなくなったが、嫌な予感が消えないので撃ち切った Desert Eagle に新しいマガジンを装填した後に S&W M500に取り替えてこちらもシリンダー内に入っている排薬莢を抜いてから新しい弾薬を込める。


 ポイントが入ったって事はったのか? いや、待てよ・・・・・・なにかが、ッ!?


 「おーい! エルライナっ! 無茶しやがってっ!! でもまぁお前のおかげで・・・・・・」


 なっ!? エイド教官が無警戒のままこっちに向かって来てるなんて、最悪だ! マズいぞっ!!


 「こっちに来ちゃダメですっ!!」


 「なんで?」


 「コイツまだ生きているんですっ!! 」


 俺がそう言った瞬間に、化け物は上半身をゆっくり起こしていく。その姿を見たエイド教官は信じられないような顔をしながら足を止めてしまう。


 「ウ、ウソだろう? おい・・・・・・」


 「クソォッ!!」


 持っている S&W M500 を構えて化け物に向かって半ば乱射気味に撃ち続けるが、化け物は効いてないのか撃たれながら立ち上がったのだ。


 「マジかよ! 化け物めっ!!」


 化け物から距離を取りながら撃ち切った S&W M500 をホルスターに入れると、 背負っているパンツァーファスト3 を構えてる。


 エイド教官は化け物と離れているから大丈夫。今度こそ仕留めてやる!


 「エイドさん、撃ちますよっ!!」


 「やってやれエルライナッ!!」


 化け物に狙いを定まった。後は引き金を引き金を引けばぶっ飛ばせるっ!!


 トリガーに指をかけたその瞬間だった。まさか自分も予想もしていなかった事態が起こるとは思わなかった・・・・・・なぜなら。


 「その武器を寄こせぇぇぇぇぇぇええええええええええええっっっ!!!?」


 「え? うわぁっ!?」


 照準が大きくブレた上に パンツァーファスト3 を奪おうとしているのか、グイグイ引っ張ってくる。


 な、なんだ? 邪魔か? 一体誰が俺の邪魔しに来たんだ? ってぇ!!


 「ア、アグスさんっ!!?」


 「このクソアマッ!! 俺があの化け物を仕留めてやるからさっさとその武器を俺に寄こすんだっ!!!」


 「ちょっ、止めて下さいっ!!」


 チャンスなのになんなんだよコイツはぁぁぁあああああああ〜〜〜っっっ!!?


 「団長! 彼女の邪魔をしてはいけませんっ! 今すぐその手を離して下さいっ!!」


 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁああああああいっっっ!!! 俺が化け物を仕留めさえすれば、我が家の復興が出来るんだっ!! 邪魔をするなぁぁぁああああああっっっ!!!」


 ああ〜もうっ!? 完全に冷静さを失っている状態だっ!! 早くこの人を引き離さないと・・・・・・。


 「わっ!?」


 アグスさんの腹蹴りを喰らったせいで、パンツァーファスト3 を手放してしまった上に地面に倒れてしまった。


 しまった!? 俺の パンツァーファスト3 がっ!!


 俺から パンツァーファスト3 を奪い取ったアグスさんは嬉しさからか一瞬だけニヤけ顔になるが、光と共に パンツァーファスト3 が消えていくのを見た瞬間に顔色をすぐに変える。


 「あ、あれ? あれ? あれぇぇぇええええええ〜〜〜っ!? おいっ! キサマッッッ!!?」


 今度はなんだよ、この馬鹿責任者っ!!


 「あの武器をどこにやった!?」


 「はぁ?」


 「出す気がないのならキサマを斬首の刑にしてやるっ!! 首を切られたくなきゃぁ今すぐ出して渡せっ!!!」


 ブチンッッッ!!!?


 ・・・・・・もういい加減、俺も頭に来たってぇのっっっ!!!


 「さっきから余計な事しかしてないくせに、なんだよその態度はっ!! 邪魔だからどっか行ってろ、このクズ野郎っっっ!!!」


 「な、なんだとっ!! キサマ、団長であるこの俺に暴言を吐くとは厳罰に値す・・・・・・」


 「化け物がそっちに行くぞっ!!」


 シドさんの声に反応して化け物が倒れていた場所に顔を向けて見てみたら、なくなった両足にヒモ状のなにかが生えていて、ぎこちない歩き方をしながらこっちに向かって来ているではないか!


 「こんな事している場合じゃなかったっ!!」


 そう言いながら立ち上がって体勢を整えようとした瞬間に、化け物のなくなった左腕からヒモ状のなにかが伸び出した! そしてそのヒモみたいなのを高い位置で振り回しだす。


 一体なにをするつもりなんだ? いや待てよ・・・・・・あの動きはまさかっ!!


 振り回す速度がだんだん早くなって行き、風を切る音がする様になったところで一気に腰の高さまで下げてくる。


 「うわっ!?」


 反射的に地面に寝そべって攻撃を回避したのだが、アグスさんは反応が出来ずそのまま胴体に鞭のような攻撃をモロに受けてしまい、無言のまま真横にすっ飛んで行く。


 「グワッ!? ゲハッ!? ・・・・・・ガァッ!!?」


 そしてボールの様に地面を転がって行き、勢いがなくなって止まったところで上半身を起こすと相当痛いのか踞ってしまう。


 「ゴフッ!? グェホッ!? ゲホッ!? ゲホッ!? グウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜ッ!!!?」


 自業自得だ! 助けてくれ! って言われても絶対助けてやるかっつぅーのっっっ!!! ・・・・・・って言ってもピンチな状況には変わりないんだよなぁ〜。
 どうする? 新しく パンツァーファスト3 を出すか? いや、この状況で相手から目をそらすのは危険だ。
 いっその事逃げてから パンツァーファスト3 を出す方法しかなさそう。
 周りの冒険者達に協力をお願いして・・・・・・。


 辺りにいる冒険者達の顔をチラッと見てみるが時間稼ぎを頼んでも協力してくれそうな感じじゃなさそうだ。


 ビビって逃げてる。って言うよりも、全部俺に丸投げされた。って言った方が合ってそうだ。
 ・・・・・・ええいっ!! もうこうなったら一か八かの勝負をするしかないっ!!!


 「ミハルちゃんっ!」


 「えっ!? な、なにぃ?」


 「アグスさんの事をお願いねっ!」


 「ちょっ、アンタはどうする気よっ!?」


 「化け物の相手をするっ!」


 Desert Eagle を引き抜き、化け物に向かって構えると後ろに下がりながら引き金を引いて撃ち込んでいく。


 さぁ、そのままこっちに来い! 


 撃って撃って撃ちまくって、弾がなくなったらマガジンを交換してからまた撃ち込む動作を後ろに下がりながら続けていく。目的地に着くまで引きつけなければいけない。


 ・・・・・・もう少し距離を離さないとな。


 「おい・・・・・・もしかしてアイツ、あの化け物を迷宮に戻そうとしているのか?」


 「いや! まさかエルライナのヤツは・・・・・・」


 目的地に近づいてくるにつれて不安や焦りと言った感情が大きくなるが、自分に対して 焦るな、落ち着いて行動しろ。 と言い聞かせてながら、後退しつつ撃ち続ける。


 まだ・・・・・・まだ・・・・・・今だっ!!


 迷宮の中に駆け込むとポケットの中から起爆装置を取り出してボタンを押し、四つ設置したクレイモアを同時に起爆させたその瞬間、視界が煙に覆われた上に身体を貫くような衝撃と耳鳴りを感じる。


 「ッツゥ!!?」


 ヘッドセットのおかげで鼓膜は守られたけど、これは流石に洞窟内だと音が反響するからキツいっ!!
 でも確実にあの化け物をブッ飛ばしたっ!!


 「ッ!? おい、エルライナッ!!」


 「こっちは無事なので心配いりませんっ!! ってなぁ!?」


 レーダーに敵マークがある。って事はクレイモアを四つ同時に喰らってもピンピンしてんのかよ!?


 そう思いながら驚いていると化け物が煙の中から姿を表したが、クレイモアの爆発をまともに受けた身体は人なら重症と言えるほど傷だらけだけれども、立ったままこっちをじっと見つめている。


 「クソッ!?」


 こうなったら最終手段! このまま迷宮の中に連れて行って置き去りにする! そうすれば体勢を立て直す時間を稼げるっ!!


 ピシッ!?


 今の音はなんだ? まぁいい、気にしている暇なんてない! Desert Eagle を撃ってこっちに誘い込んでやるっ!!


 「さぁ! こっちに向かってこいっ!! ってあれ?」


 化け物に向かって Desert Eagleを身構えたのだが、なぜか化け物は先程とは違い死人の様に横たわっていた。


 「・・・・・・死んだフリか?」


 でもレーダーにもマークが出てないからなぁ・・・・・・こういう時の対処法はあれしかないか。


 ドォンッ!! ドォンッ!!


 横たわっている化け物に向かって Desert Eagle を二発撃ち込んで死んだフリしているのか確かめてみる。


 「・・・・・・・・・・・・死んでる。クレイモアの爆破に耐えたのに、なんで?」


 化け物を倒したのは事実だがその決定打が一体なんだったのか分からないまま終わってしまったので、俺はエイド教官達がくるまでその場に立ち尽くしたまま なぜ? と思いながら倒せた要因を考えるだけだった。
 無論その答えは分からずじまいままだった。

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