クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第12話

 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァッ!!」


 「ハァ、ハァ、次はどっちだエルライナッ!!」


 「右です! 右に曲がりますっ!!」


 必死に走りながらドーラさんを抱えているエイド教官に伝える。


 「分かった!」


 「あー、もうっ!焦ったいわね! アイツと戦った方が良いんじゃないの?」


 「ダメだっ!!」


 「どうしてよっ!?」


 「エルライナが持ってる強力な武器が効いてないって事は俺達が協力して戦っても何とかなる相手じゃないって事だ! だからこのまま逃げるぞっ!!」


 「なによ! そんなのやって見ないと分からないじゃないっ!!」


 ミハルちゃんは怒りぎみにそう言うと、ポーチから赤い色の魔石を取り出してからモンスターに向ける。


 「喰らいなさい! [ファイア・アロー]!!」


 彼女がそう詠唱すると、矢の形をした炎がモンスターに勢いよく向かって飛んで行き、ボンッ!? と言う音を立てたのだがぁ・・・・・・。


 「お前、なに外してるんだ?」


 「どこに当ててんだヘタクソッ!!」


 「・・・・・・ミハルちゃん」


 そう、ファイア アローはモンスターではなく壁に当たって爆発したのだ。


 「仕方ないじゃない! 走りながら魔法を当てるなんて至難の技よっ!!」


 「無理って分かってるんなら始めからやるなよ、馬鹿っ!!」


 いや、数を撃てば当たるんじゃないかな? ・・・・・・いや、余計な事を言うの止めておこう。


 「もうすぐ曲がりますよ! 曲がっても絶対振り返らないで下さいね!」


 そう言いながらプレートキャリアから M84スタングレネード を取り出してピンを引っこ抜く。


 「分かった!」


 「その鉄の筒は一体何?」


 ミハルちゃんがそう言ってくるが俺は答えもせずに投げるタイミングを見測る。


 あと少し・・・・・・今だっ!!


 右の通路に曲がろうとする瞬間に自分の足元にM84スタングレネードを投げる。


 「ちょ、なにしてるのアンタ! 武器を捨てるなん・・・・・・」


 パァンッ!?


 「グオオオオオオオオオオオオ!!? ウォォォォォォオオオオオオ!!!?」


 「えっ!? なに? 今のはなんの音だったの?」


 ミハルちゃんが、 なにが起きたか分からない。 と言う表情をしながら後ろを振り返って走ってる中、俺は、 手応えあり! と思いながらガッツポーズをしている。


 「よし、目くらましが喰らった! このまま逃げましょう!!」


 「喰らった。って・・・・・・今の破裂音がか?」


 「はい、説明は後でするんで今はあのモンスターから逃げましょうっ!!」


 「そうだなっ!!」


 俺達は必死になって走り、どうにか上の階に行く階段を見つけたので一息吐く為に立ち止まる。


 「ゼェ〜、ゼェ〜・・・・・・ここまで来れば安心だな」


 「えぇ、ハァ〜・・・・・・ハァ〜・・・・・・追ってきているようすがないので安心して良いですよ」


 レーダーで確認して見るとモンスターが遠くにいた。


 飲み物が飲みたくなったのでアイテムボックスからスポーツドリンクを取り出して一飲みする。


 「ハァー、ハァー、フゥー・・・・・・あのモンスターは一体何なのよ。顔がサイクロプスみたいだったけど、身体は全く違ったわ」


 「違った? 私はサイクロプスを見た事ないから教えて欲しいんだけどぉ・・・・・・いいかな?」


 「てかお前、サイクロプスを見た事あるんだな」


 「うん、ミハルが学園に通ってた時に授業で先生が召喚して見せてくれたのよ」


  ミハルちゃん学校通ってたんだぁ。ん? もしかしてミハルちゃん受験に受かったの? それとも義務教育で通ってたの?


 「でもあんな風じゃなかったわ。サイクロプスは顔が似てたけど、あんな立派な体格じゃなかったわ。身体がオークと似て太ってたわ」


  なら一体あの敵はなんなんだ?


 そう思いながらあのモンスターの姿を思い出していると今更ながらある事に気づいた。


 「そう言えば、あのモンスターの首に首輪っぽいのが付いていた気がします」


 「見間違えじゃないの?」


 「ううん。首輪がちゃんとついていたのはちゃんと見たから見間違えじゃないよ。
 それとぉ・・・・・」


 「それと?」


 「その首輪に何か水晶みたいな物がついていたのが気になるんだけどぉ・・・・・・ミハルちゃんは似たような首輪、なんか心当たりがない?」


 「ミハルが知ってるのは奴隷の首輪なんけれども水晶が付いているタイプは知らないわよ」


 ミハルちゃんは知らないかぁ・・・・・・だったら。


 「エイド教官は心当たりがありますか?」


  「ミハルと同じで知らないなぁ。第一に奴隷って言うのは契約の魔法で縛るのが普通だ。
 首輪をつける意味は犯罪者奴隷だけの身分証明だけの意味だから、つけていても束縛の効果なんてない」


 「エイド教官の言う通りだ。犯罪者奴隷は風呂に入る時以外は首輪を付ける義務がある。
 そうしないと注意されるだけで済む時が多いが、場合によっては雇い主が罰金を払わなきゃいけない時があるな」


 あらそうなんだ。てっきり隷属の魔法が首輪に掛けられていて、誰かが命令してるんだと思った。
 てか奴隷制度知らないから後で聞いておこう。


 「エイド教官、もう大丈夫なんで下ろして貰ってもいいですか?」


 「ああ、分かった」


 エイド教官はそう言った後にドーラさんを床に下ろすと、こっちに顔を向けてくる。


 「まぁとにかく、転移魔法で入り口まで戻るから二人共こっちに来てくれ」


 「はい」


 「分かったわ」


 腰につけているポーチに手を入れているエイドさんに近づくが、微かに聴こえてくる変な音に気がついて足を止めて振り返ってしまう。


 「どうした。エル、ん? なんだこの音は?」


 まさか・・・・・・アイツが近くで暴れ回っているのか? それが合ってるのならかなりヤバイかもしれないな。


 そう思いながらレーダーを確認すると50メートル先でウロチョロしているのが分かる。


 「と、とにかく! さっさと地上に戻って報告をするぞ。[転移]!」


 エイド教官が呪文を唱えると同時に持っていた魔導書が輝くのと同時に魔法陣が現れるが、不吉な唸り声が迷宮の奥から聴こえてくる。


 ヤバッ!? あのモンスターがこっちに近づいて来てるよ。


 「・・・・・・ねぇ、もしかしてアイツがこっちに向かって来てるんじゃないの?」


 「うん、こっちに向かってきてるね。でも転移魔法の方が早く終わるから大丈夫・・・・・・ですよね?」


 あの敵が近いから出来れば早く転移して欲しい。


 「大丈夫だ。もうすぐ終わ・・・・・・」


 エイドさんはそう言いかけたところで止まり目線を迷宮の奥に移して固まっていたので、気になってその目線を辿っていくと薄暗い通路の先に辺りをキョロキョロしながらヤツが立っていた。


 「ウギャァァァアアアアアアッッッ!!? アイツがいるじゃないのッ!!!」


 ミハルちゃんの叫び声のせいで、こっちに顔を向けると走って来た。


 「ヤバイヤバイヤバイヤバイッ!!! 後何秒で転移するんですかっ!!?」


 「あと六秒だ!!」


 あーもう、やるしかないかっ!!


 走ってくる謎の敵に狙いを定めるとORIGIN-12を撃ち続けるが血しぶきを上げるだけで全く脚が止まるどころか衰えるようすがない。


 「弾切れっ!!」


 そう言った後に弾切れになった ORIGIN-12 を後ろに回して JERICHO941 PSL をホルスターから素早く抜くと、向かってくるモンスターに向けて構えて撃ち続ける。


 止まれ止まれ止まれっ!! 頼むから怯んでくれぇぇぇええええええっっっ!!!?


 「ウォォォオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!?」


 ヤツは走りながら拳を固く握ると俺の顔を見つめてくる。


 俺を見つめ続けているって事はまさか俺に狙いを定めたのか?


 攻撃されても避けらるように撃ち続けながら身構えた瞬間に視界が淡い光に包まれたので、ビックリして仰け反ってしまった。
 そして淡い光が消えるとあの敵の姿がなくなっていたのだ。


 「フゥ〜・・・・・・なんとか間に合った」


 よかった。ブン殴られる前にエイド教官の転移魔法が間に合ったみたいだ。


 「ハァ〜〜〜・・・・・・死ぬかと思ったぁ〜〜〜」


 気が抜けてしまったのでその場に力なく座り込んでしまうが、手に持っている JERICHO941 PSL の残弾を確認するのも忘れない。


 ヤバッ!? スライドに入ってるのと合わせて後三発しか残ってないじゃんっ!! 本当にギリギリだったんだな。


 「アンタ、座り込むなんて情けないわねっ!!」


 「そう言うミハルちゃんだって壁に手をついて身体を支えてるじゃんっ!!? 足プルプルしてるけど歩けるの? ねぇ、歩けるの?」


 まるで生まれたての子鹿の様に膝を震わせているミハルちゃんは、恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせながら怒り出す。


 「バッ、バカ言うんじゃないわよっ!! ミハルはビ、ビビビ、ビビってないし歩けるわよっ!!」


 いやぁ・・・・・・どう見ても歩ける状態じゃないだろ。


 「なによその目はぁ〜?」


 「別になんでもないよぉ〜」


 「ウソッ! 言いたいことがあるなら言いなさいよっ!!」


 ムカッ!?


この子は本当にぃぃぃ〜〜〜〜〜〜っっっ!!? 


 「じゃあ言うけどさっ! さっきから・・・・・・」


 「お前らその辺にしろ! さっさと迷宮から出るからエルライナ、お前は座ってないで立てっ!! ミハル、お前は情けない姿するなっ!! ビシッと立てビシッと!!」


 「「は、はいっ!!」」


 エイドさんにそう言われた俺達は、すぐさま立ち上がると並んで気をつけをする。


 「よし、二人共立ち上がったな。迷宮を出るぞ、駆け足でついて来いっ!!」


 「サー・イエス・サー!!」


 「サー・イ・・・・・・なに、その返事?」


 「返事なんてどうでもいいから、黙ってついて来い!!」


 「は、はい!!」


 「・・・・・・なんなんだコイツら二人は? でも見てて面白いな」


 こうして迷宮から無事に出ることが出来たのであった。

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