クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第8話

 「ダンジョンが見えてきたぞ」


 シドニールさんがそう言うので前方に顔を向けると建物数件見えてくる。


 「前に来た時も思っていた事なんですが、危険なダンジョンの周辺に建物を建てて良いものなんですかね?ダンジョンの中からモンスターが出てくる危険性あるの筈なのに」


 もう村と言っても良いぐらいに建物が並んでいるしね。


 「まぁ、本来なら止めさせるべき行為なんだが、ここのダンジョンは国の方でしっかりと管理体制を整えているから大丈夫と言う事で、建物の建築を許可しているんだ」


 管理されてるから建物を立てていい?


 「つまり、管理体制がしっかり整えれば建物を立てて良いんですか?」


 「ああ、でも建物を立てて良いか悪いかの総合ギルドの審査に合格しなければ建築の許可は出ないぞ」


 「ふ〜ん、この前ダンジョンで魔人が出たけど・・・・・・まさかまた出ませんよね?」


 「もう出ないだろ・・・・・・そう言えばあの時は対応に苦労したんだよなぁ〜」


 そう言いながらエイドさんが俺を睨んでくる。


 この人はあの時の事を絶対根に持ってるな。


 「そ、そろそろダンジョンに着くのでミハルちゃんを起こさないといけないですよね!」


 「着いてからでも遅くはねぇよ」


 「そ・・・・・・そうですねぇ〜」


 「それとなんだ・・・・・・試験官の俺が言うのもなんだが、お前は本当にその装備で大丈夫なのか?」


 俺の装備が気になってたんだ。って思っていたけど、 エルライナ、お前を心配してるんだ! 気持ちが顔に出てるよっ!!


 「俺もそう思った! どう見ても魔法を付与した装備じゃないだろ。それにその鉄の杖も見た事ないな。どうやって使うんだ? それで殴るのか? それともそれが魔法の杖なのか?」


 シドニールさんの方は俺の武器に興味津々だ。


  「いや、あのぉ・・・・・・順を追って話すと長くなるんで後で説明します」


 「ん〜、しかしその装備はなぁ〜・・・・・・」


 「防御面は心配要りません。ほら」


 エイドさんの手を取って俺の胸に押し当てると、エイドさんは動揺したのか顔を真っ赤にさせる。


 「バ、バカお前! 俺には奥さ・・・・・・あれ?」


 「どうしたんだ?」


 シドニールさん、わき見運転は危険ですよ。馬車だからわき見運転とは言わないと思うけど。


 「コイツの装備に鉄板が入っているな。もしかしてお前のその防具って鉄板を入れられるようになってるのか?」


 コラー! いくらチタンプレートごしでも女の子の胸を弄るなー! エイドさんのエッチ!! って大声で言うぞっ!!


 「その通りです。生地も破れにくい物を使用していますので、枝に引っかけた程度なら切れません! ・・・・・・それとそろそろ触るのを止めて頂けませんか? 周りの視線が気になります」


 「・・・・・・え?」


 そう、もうダンジョンの近くまで馬車が来ているのだ。


 「なっ!? お前、俺を嵌めやがったなぁっ!!」


 「嵌めてませんよ。それに私はエイドさんが奥さんの事を裏切らないと信じているので・・・・・・どうぞ、気が済むまで触って下さいなっ!!」


 「もう触るかっ!!」


 エイドさんはそう言うと、ムスッとした顔をしながら外方そっぽを向いてしまう。


 マズい、エイドさんをからかい過ぎた。どうやって機嫌を取ろう?


 「うるさいわね。眠れな、あれ? ・・・・・・え?」


 「この寝坊助はやっと起きたか」


 「師匠、もしかしてミハルは・・・・・・寝てたの?」


 「そうだ」


 「なんで起こしてくれなかったのっ!!」


 「騒がしいヤツを起こすわけないだろうっ!! それよりも、さっさとダンジョンに入る準備をしろっ!!」


 「え! もうダンジョンに入るの?」


 「入るに決まってんだろう!」


 「もぉぉぉ〜〜〜っ! 師匠のバカァァァアアアアアアッ!!!」


 ミハルちゃんは大声でそう言うと自分が持ってきたバックを漁り始める。


 「籠手と魔石パックは確かここに入れておいたはずだけどぉ・・・・・・・・あった!」


 お、おおう! 流石異世界。あの鞄の狭い口から籠手と小さい腰掛けカバンを同時に出したよ。


 「ミハルちゃん、他に用意する物はない? 大丈夫?」


「大丈夫よ! アンタに心配される事なんて一つもないわ!」


 「それとダンジョンに入る前にエイド教官から話しがあるから、ちゃんと話しを聞いてね」


 「話し? ミハルに話す事なんてないでしょ。さっさと行くわよ!」


 おいおい、エイド教官の話しだぞ。責任者にそんな事を言ったらダメだろう。


 「おいこら、俺の話を聞かない限りダンジョンには行かせないぞ!」


 「話さなくて良いわよ。あれでしょう、そこにいる白髪しらがに試験のルールを教えるだけでしょう?」


 白髪白髪って言ってくれるね、この子はぁ〜・・・・・・ORIGIN-12を身体に撃たれたいのかな?


 「馬鹿ちげーよっ! 今回の試験での役目を伝えるだけだっ!!」


 「役目? 試験のサポートするだけでしょ?」


 「お前が言うサポートを具体的に説明してみろ」


 「サポート・・・・・・サポートォ〜・・・・・・・・・・・・」


 お〜いミハルちゃん、目が泳いでるぞぉ〜。ここは大人しく、 ゴメンなさい。話して下さい。 って言った方が身の為だと思うよ。


 「ミハルが、白髪女しらがおんなのダンジョン攻略を見守る」


「・・・・・・それで?」


 「モンスターと戦う時、ミハルが手伝う」


 「「「ハァー・・・・・・」」」


 俺とエイド教官とシドニールさんはミハルちゃんの話しを聞いた瞬間に深いため息を吐いてしまう。


 「え、違うの?」


 「手伝わなくて良いんだ。お前はエルライナの見学で来ているんだから自分に襲いかかってくる敵を倒す以外は、俺の側にいれば良いだけだ。そして俺が戦えと言ったら戦えば良い」


 「それだけで良いの? ミハルが手伝わなくて良いの? あの白髪、本当に弱そうよ。死なない?」


 「ああ、大丈夫だ。それと今すぐエルライナに謝った方が良いぞ」


 「なんでそんな事をしなきゃいけないのよ!」


 「お前がエルライナ事を馬鹿にしたような事を言うから、あんな風になってるぞ」


 エイド教官が顔を右に向けながらアゴをシャクるので、ミハルはその方向に顔を向けると息を呑んでいるのが分かる。


 「アイツがキレてるところをはじめて見たぞ。喧嘩を吹っかけるか、謝って和解するかは、お前が決めろ」


 無表情で自分ミハルを見ているだけ、たったそれだけなのに、ミハルは身体を震わせている。


 「な、なによ! なんか文句あるの?」


 「白髪白髪って言うのを止めて欲しいだけだけど」


 「・・・・・・わ、分かったわよ。ゴメンなさいエルライナ」


 「それとね。私のこの手を握ってみて。右手一本で地面に倒してあげるから」


 右手をミハルちゃんに差し出すと、睨みながら喋ってきた。


 「ハァ? 馬鹿じゃないの? そんな事出来るわけないでしょ!」


 「まぁまぁ、騙されたと思ってね」


 ハルちゃんは何も言わずに握ってきたその瞬間に、まるで糸が切れた操り人形の様に、膝から崩れて落ちる。


 「え? ・・・・・・ええっ!?」


 「これで私の実力が分かった?」


 「何言ってるのよ。今のは・・・・・・そう、油断してただけだからねっ!!」


 「そう、ならもう一回やってみる?」


 「望むところよっ!!」


 また俺の手を握った瞬間にミハルちゃんは倒れた。


 「まだまだっ!!」


 と言いながら俺の手を握ると、また俺に倒された。


 「キシャァァァアアアアアアッ!!」


 今度は吠えながら手を握ると、また俺に倒される。


 「ミハル、お前はなにを倒れてるんだ?」


 「違うわよ師匠!  アイツの手を握ったら倒されるのよっ!!」


 「ハァ? なに言ってるんだお前、片手で相手を倒すなんて出来るわけがないだろう?」


 「本当なのよ! ミハルの事を信じてよっ!!」


 「ハァー・・・・・・」


 ミハルちゃんは涙目になりながら訴えかけるが、シドニールさんは呆れた顔をしながら顔を横に振る。


 「ミハルちゃんが言ってる事はあってますよ」


 「なに、そうなのか?」


 「はい、私が使っている技は合気道の技です」


 「アイキドウ・・・・・・どう言う武術なんだ?」


 「簡単に説明すると、最小限の力で相手を倒す技です」


 「なるほど。俺にも同じ技をかけてくれないか?」


 「どうしてですか?」


 「ミハルの倒れる姿を見ていると、ワザとにしか見えないからな」


 「分かりました。シドニールさん、どうぞ握って下さい」


 「おう!」


 シドニールさんがしっかりと手を握ったのを目で確認する。


 「行きますよ。よっと!」


 「のわっ!?」


 シドニールさんが地面に倒れるのを見て、ミハルちゃんとエイド教官は驚いていた。


 「ウソ、師匠が倒された!!」


 「お前の師匠がエルライナに倒されたって事は、お前が地面に倒れたのは演技じゃなかったんだな」


 側から見ればそうみえるよね。
 ロバート・ケネディ夫妻のが日本に来日していた時にだって柔術の達人である 塩田しおだ 剛三ごうさんの柔術をまじかで披露見た時に、塩田 剛三が人をいとも容易く倒す姿を見たケネディ大統領は、武術が演技に見えたので自分のボディーガードを塩田 剛三に立ち会わせたほどだった。
 まぁその結果は言うまでもなく、塩田 剛三がボディーガードを倒した。


 「ん?」


 「エルライナの技を受けた感想を聞かして貰って良いか?」


 「ああ、不思議な感覚だった。倒されないように身構えていたんだが一瞬で倒されてしまった」


 「一瞬かぁ、うーむ・・・・・・」


 エイド教官は腕を組んで、一体何を考えているんだ?


 「エルライナ」


 「はい」


 「そのアイキドウに興味があるから、後で俺に詳しく教えてくれ」


 「分かりました」


 多分エイド教官は合気道が実戦で使えると思ったから覚えようとしているんだと思う。


 「それでだ! 二人ともダンジョンに入る準備は出来てるか?」


 「はい、出来てます!」


 「ちょっと待って! まだミハルとコイツの決着がついてないわっ!!」


 ・・・・・・何言ってんだこの子は?


 「いやいやいや! 最初っから勝負なんてしてないからなっ! それに時間も時間も惜しいから行くぞっ!」


 「でもっ!!」


 「これ以上ウダウダ言うんだったら、お前をここに置いて行くけどいいのか?」


 「うっ!?」


 ミハルちゃんは戸惑いながら目を左右動かした後にエイド教官の顔を見つめる。


 「・・・・・・準備出来てるわ」


 「うむ、それじゃあダンジョンに入るぞ」


 「はい!」


 「ん」


 エイド教官に付いて行く様にして、ダンジョンに入って行くのであった。

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