クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生
第16話
「私? 勇者を助けに来た人ですが、なにか?」
 ふぅ・・・・・・なんとか間に合ったみたいだ。
 マップを確認して最短ルート通りつつモンスターを倒し行きながら、モンスターが落とす魔石を見向きもしないで五階まで降りて来た。
 そこまでは良かったのだが、この階の何処にいるのか分からない勇者達をどうやって探そうか悩んでしまった。
 そんな時に進んでもいないのにレーダーの範囲内に敵が出てきた上に不自然な動きをするので、 もしかしたら勇者が敵と戦っているのかもしれない。 と思ったのでマップとレーダー両方を見ながら向っている途中で壁の向こう側にその敵がいると言うところで敵が増えたので、 これはおかしい。 と感じたので奇襲を仕掛ける為に導爆線を壁に貼って爆破して今に至る。
「助けに来ただと?」
「アナタには色々と聞きたい事があるけど、聞いて良いかな?」
「聞きたい事だと? 無礼な人間め! キサマに答える事など全くないっ!!」
 相手は睨み付けながら言ってくるが気にせず話し続ける。
 「アナタ達の正体と黒幕を教えて欲しかったんだけどぉ・・・・・・まぁ良いや。話す気がないなら力ずくで答えさせればいい」
 目の前にいる人が雇われた暗殺者なのか、もしくは何かの組織の一員なのか、それともただの殺人鬼なのか、そして自分はどんな敵を相手しているのか? それが知りたくなって男に聞いたのだが、ソイツは立ち上がり俺の方に歩いて来る。
 「正体、黒幕? フフ、フフフッ!」
 こんな状況で手を口に当てて笑ってるだと?
 『注意!十二時方向に危険を感知、敵の可能あり』
 しかも敵意剥き出してるって事は、なにかするつもりだな。
 「なにがおかしいの?」
 なぜかある程度の離れたところで止まり。口を押さえている右手を離して、こっちに顔を向ける。
 「失礼、知らない方がいらっしゃると思わなかったので私は彼の方にお仕えしている魔人のドーゼムです。ああ、先に言っておきますがファミリーネームは色々あって捨てましたよ」
 魔人・・・・・・そんな種族なんていたっけ?
 「ドーゼムだと! なんでこんなところにいるんだっ!?」
 「知ってるんですか?」
 「ハッ!? ・・・・・・え、ええ知ってるわよぉ~!」
 ピーチさんが普段とは違う声を出しながら言うのだから、かなり有名なヤツなのかもしれない。
 「三十年も前の話よぉ~。ドーゼムちゅぁんは小国の王族に仕えていた執事だったのだけれども、ある時突然行方不明になったのぉ~」
 え!? じゃあ・・・・・・つまり・・・・・・。
 「行方不明者が目の前にいる事ですか?」
 「ええ、そうよぉ~! 話の続きなんだけど、ドーゼムちゅぁんが行方不明になったその一ヶ月後になぜかその国が突然一日で滅んだのよぉ~。なんの前触れもなくねぇ~」
 「国がなんの前触れもなく滅んだ・・・・・・ん?」
 いくら小国でも一日で滅ぶなんておかしいんじゃないか? もしかしたら・・・・・・。
 「国が滅んでしまったんじゃなくて・・・・・・彼自身が自国を滅ぼした?」
 「え! ・・・・・・なにを言ってるんですか? いくらなんでもあり得ないですよ」
 いや、憶測だけどあり得ないなんて事はないだろ。
 「クックックッ! アーッハッハッハッハッ!!?」
 行きなり笑いだすドーゼムに対して俺以外の人達は驚いた顔をする。
 「なにがおかしいんだっ!?」
 「いやいや、失礼。勇者様方にはお見苦しいところを見せてしまいました」
 彼はそう言いながら頭を下げて謝罪してきた。
 頭を下げて謝罪してくるとは・・・・・・この人は紳士的なんだな。
 「彼女の言う通りです。私がこの手で祖国を滅ぼしたのですよ。あの国に住む者を一人も逃がさずに始末させて頂きました」
 やっぱりなぁ。
 「なっ! なんでそんなことしたんだっ!!?」
 「なんで? そんな事まで私は・・・・・・」
 ドーゼムの目が俺を妖しく見据えてくるので、なにがあっても良いように身構える。
 ッ!? 来るか?
 「話すつもりはありませんよっ!!」
 「オッ!?」
 ドーゼムが右腕を上げた瞬間に反射的に後ろへ向かって跳んだ為、床から上に向かって勢いよく黒い針が突き出て来た。
 危なかった! あのまま突っ立ていたら死んでいたな。
 「察しが良いですね」
 「それはどうも!」
 お返しにACE32を構えてからドーゼムを狙いトリガーをテンポ良く絞り三発撃ち込むと、そのうちの一発がドーゼムの腹部にぶち当たり踞る。
 チッ!? 慌てて撃ったから2発の狙いが反れた。でも今の状態なら確実に仕留められるっ!
 「小癪で脆弱な人間風情がぁぁぁ〜〜〜〜〜~・・・・・・図に乗るなぁぁぁああああああっっっ!!!?」
 なんだ? アイツ自分の身体に影を纏い始めたぞ! 一体なにをする気なんだ?
 そしてその影が鎧のような形をした途端にこっちを向いてくる。
 「行くぞ、小娘ぇぇぇええええええっ!!?」
 一体あの影はなんだ? 
 拳を振りかざし勢いよく走って来るのでACE32を構えてから狙いを見定めて、トリガーにかけてる指を絞ろうとしたのだが男の勇者が目の前に入ってくるのでトリガーにかけた指を慌てて戻す。
 「俺が相手だっ!!」
 そう言いながらドーゼム向かって剣を構える姿を見た俺は目を見開いて驚いてしまう。
 「な、バッ・・・・・・」
 馬鹿かっ!? 目の前に出てくるなんて事をされたら撃てないじゃないかっ!!
 そう思っている間にドーゼムは勢いをそのまま乗せた拳を勇者の腹部に当てる。その拳を喰らった勇者は少しの間だけ宙に浮いた。そして足が床に着いた瞬間に操り人形の糸が切れたかの様に倒れてしまった。
 「大輝いいいいいいっっっ!!!?」
 「あ・・・・・・ああっ!?」
 「・・・・・・これ、邪魔ですね」
 ドーゼムは男勇者をつまみ上げると、ゴミをそこら辺に捨てるかのような動作で高く上に投げてしまう。
 マズいぞっ!? 気を失ってる状態じゃ受け身が取れない!それに俺の位置からじゃ、受け止めようにも間に合わないっ!!
 宙を舞う勇者を見ながらそう思っていると床へと落下している勇者ピーチさんを受け止める。
 「おっとっと!? 危なかったわぁ~!」
 「ナイスピーチさんっ!!」
 「この子達はアタシに任せて、ライナちゅぁんはドーゼムちゃんをやっつけちゃいなさぁ~い!!」
 「了解! 勇者達をお願いします!!」
 ピーチさんにそう言うとACE31を構えてフルオートでドーゼムの身体に弾丸叩き込むが、身体に当たったと同時に甲高い金属音と火花が散るだけでドーゼムは平然とした態度で俺を見つめていた。
 「なぁっ!?」
 ウソだろ、全弾撃っても平然としているなんて、7.62mmが効いてないかっ!!
 そう驚いていると、ドーゼムが殴り掛かろうとしているのか拳振りかざしてくるので避けるのだが、なぜか膝に痛みを感じる。
 「ツゥッ! ・・・・・・えっ!?」
 痛む個所に目線を移すとドーゼムの右膝から黒い槍が伸びていて、左膝に深々と突き刺さしていた。
 まさかあの拳はフェイントだったのかっ!
  「死ね、小娘!」
 ドーゼムはそう言うのと同時に俺の膝に突き刺さっている槍を引っ込めると、右手を剣のような形にして構える。
 横凪ぎ! 躱せるっ!!
 しゃがんで剣を躱した瞬間に後ろに飛び退いて距離を取り、JERICHO941PSLとカランビットナイフを取り出すと左膝の調子を確認する。
 傷は深そうだけど膝はちゃんと動く。これも多分FPSゲームの機能が効いているからこんな傷でも動けるんだろうな。
 「おやおや、あのような傷を受けても動けるとはぁ・・・・・・どういう事なんでしょうか?」
 「・・・・・・私は普通の人と違って鍛えられてるから動けるだけの話。たったそれだけ」
 質問すればなんでも正直に答えると思うなよ。しかしどうすれアイツに攻撃が通るんだ?
 「そうですか、それなら!」
 ドーゼムが右手に作り出した剣が禍々しい形に変化する。
 「次こそ仕留めます。覚悟してください」
 今度は剣を真っ直ぐ突き出しながら突っ込んで来る。
 「チッ!?」
 舌打ちしながら剣を大げさに躱した瞬間に突き出している剣から更に針が出て来る。
 それぐらい想定済みだっ!!
 身体を突き刺さそうとしてくる針を躱しながらドーゼムの懐に潜り込むと、右脇に目掛けてカランビットの刃を滑り込ませるように突き刺そうとするが手応えを感じない。
 関節まで影でガードしてるのか!? 一旦離れないとマズいっ!!
 「甘いぞ小娘っ!!」
 ドーゼムがそう言いながら右手の剣を振り上げてくる中、JERICHO941PSLをドーゼムの顔を目掛けてトリガーを連続で引き弾丸を叩き込んだ瞬間に振り下ろそうとしている右手を止める。
 そして両手を顔に当てて怯んだ瞬間を狙ってドーゼムから距離を取るとJERICHO941PSLのマガジンを装填する。
 やっぱり銃で顔に撃たれると精神的な面でショックが大きいみたいだな・・・・・・でも本当にどうすれば良いんだ? このままじゃジリ貧だぞ。
 「・・・・・・ツウッ!? 小娘がぁ~、ただで済むと思うなよっ!!」
 ・・・・・・ん? もしかして痛がってるのか?
 今度は両手を剣に変えるが右手で作った時よりも明らかに短いのが見て分かる。
 短い方が取り回しが良いから、ああしているのか?
 ドーゼムは両手の剣を構えながら走って来る。
 「はぁぁぁああああ!!?」
 接近して来たドーゼムが両手の剣を振り回してくるので、その剣裁きを躱していると急に止めて来た。
 今度はなんだ? 身体を震わせてる・・・・・・もしかして激怒しているのか?
 「ちょこまかと避けよってぇ~! ぬぅぁぁぁああああああっっっ!!!?」
 ドーゼムは唸るように声を出しながら両手を合わせると影で出来た巨大な剣を作り上げる。
 あの禍々しくて肉厚の大剣、切られたらヤバそう!
 「死ねぇぇぇええええええっっっ!!?」
 「ヤバッ!?」
 鈍く風を切る音を出しながら大剣を振り下ろしてくるので、その場から横へ向かって思いっきり飛んで回避した直後に自分がいた場所から凄まじい音と共に煙が舞い上がるので、反射的に左腕を目の前に出して爆風から顔を守ってしまう。
 「ライナちゅぁ〜んっ!! 無事かしらぁ~っっっ!!?」
 「大丈夫、なんとか避けましたよっ!!」
 そう言いながら左腕を下ろしてドーゼムがいる場所を見ると俺がさっきいた場所からドーゼムの手前までが、まるで床が爆発したかのような形で床がえぐり取られていた。
 なんて威力なんだよっ!? こんなの食らったら人溜まりないぞっ!!
 「ハァ、ハァ・・・・・・小娘が、運良く避けたか・・・・・・ハァ、ハァ・・・・・・」
 アイツ、相当疲労しているな。あんな大技を使えば無理も・・・・・・ん?
 肩を上下させるほど息の荒いドーゼムのようすを見ていて鎧の少し変形してに気づいた。
 アイツの鎧のあの形、疲労、そして影・・・・・・もしかしたらいけるかもしれない。
 「ライナちゅぁ~ん! 勇者ちゃん達を避難させたから加勢するわよぉ~っ!!」
 「ピーチさんストップ! 一人で大丈夫ですからっ!!」
 ピーチさんに向かって言うと、大剣を構えて向かって来るので止めて険しい顔を向けてくる。
 「なに馬鹿な事を言ってるのよぉ~っ!? 魔人相手に一人で勝てるわけないでしょぉ〜っ!!」
 「大丈夫。勝ってみせますから、だから下がって見ていてください」
 「・・・・・・分かったわ。危なくなったらアタシが出るわよぉ~」
 剣を仕舞うと壁まで歩いて行く。そして壁際に到達すると振り返り、俺を真剣な目で見つめてくる。
 「ありがとうございます。ピーチさん」
 俺はそう言いながらドーゼムに向かってJERICHO941PSLを構えた。
 ふぅ・・・・・・なんとか間に合ったみたいだ。
 マップを確認して最短ルート通りつつモンスターを倒し行きながら、モンスターが落とす魔石を見向きもしないで五階まで降りて来た。
 そこまでは良かったのだが、この階の何処にいるのか分からない勇者達をどうやって探そうか悩んでしまった。
 そんな時に進んでもいないのにレーダーの範囲内に敵が出てきた上に不自然な動きをするので、 もしかしたら勇者が敵と戦っているのかもしれない。 と思ったのでマップとレーダー両方を見ながら向っている途中で壁の向こう側にその敵がいると言うところで敵が増えたので、 これはおかしい。 と感じたので奇襲を仕掛ける為に導爆線を壁に貼って爆破して今に至る。
「助けに来ただと?」
「アナタには色々と聞きたい事があるけど、聞いて良いかな?」
「聞きたい事だと? 無礼な人間め! キサマに答える事など全くないっ!!」
 相手は睨み付けながら言ってくるが気にせず話し続ける。
 「アナタ達の正体と黒幕を教えて欲しかったんだけどぉ・・・・・・まぁ良いや。話す気がないなら力ずくで答えさせればいい」
 目の前にいる人が雇われた暗殺者なのか、もしくは何かの組織の一員なのか、それともただの殺人鬼なのか、そして自分はどんな敵を相手しているのか? それが知りたくなって男に聞いたのだが、ソイツは立ち上がり俺の方に歩いて来る。
 「正体、黒幕? フフ、フフフッ!」
 こんな状況で手を口に当てて笑ってるだと?
 『注意!十二時方向に危険を感知、敵の可能あり』
 しかも敵意剥き出してるって事は、なにかするつもりだな。
 「なにがおかしいの?」
 なぜかある程度の離れたところで止まり。口を押さえている右手を離して、こっちに顔を向ける。
 「失礼、知らない方がいらっしゃると思わなかったので私は彼の方にお仕えしている魔人のドーゼムです。ああ、先に言っておきますがファミリーネームは色々あって捨てましたよ」
 魔人・・・・・・そんな種族なんていたっけ?
 「ドーゼムだと! なんでこんなところにいるんだっ!?」
 「知ってるんですか?」
 「ハッ!? ・・・・・・え、ええ知ってるわよぉ~!」
 ピーチさんが普段とは違う声を出しながら言うのだから、かなり有名なヤツなのかもしれない。
 「三十年も前の話よぉ~。ドーゼムちゅぁんは小国の王族に仕えていた執事だったのだけれども、ある時突然行方不明になったのぉ~」
 え!? じゃあ・・・・・・つまり・・・・・・。
 「行方不明者が目の前にいる事ですか?」
 「ええ、そうよぉ~! 話の続きなんだけど、ドーゼムちゅぁんが行方不明になったその一ヶ月後になぜかその国が突然一日で滅んだのよぉ~。なんの前触れもなくねぇ~」
 「国がなんの前触れもなく滅んだ・・・・・・ん?」
 いくら小国でも一日で滅ぶなんておかしいんじゃないか? もしかしたら・・・・・・。
 「国が滅んでしまったんじゃなくて・・・・・・彼自身が自国を滅ぼした?」
 「え! ・・・・・・なにを言ってるんですか? いくらなんでもあり得ないですよ」
 いや、憶測だけどあり得ないなんて事はないだろ。
 「クックックッ! アーッハッハッハッハッ!!?」
 行きなり笑いだすドーゼムに対して俺以外の人達は驚いた顔をする。
 「なにがおかしいんだっ!?」
 「いやいや、失礼。勇者様方にはお見苦しいところを見せてしまいました」
 彼はそう言いながら頭を下げて謝罪してきた。
 頭を下げて謝罪してくるとは・・・・・・この人は紳士的なんだな。
 「彼女の言う通りです。私がこの手で祖国を滅ぼしたのですよ。あの国に住む者を一人も逃がさずに始末させて頂きました」
 やっぱりなぁ。
 「なっ! なんでそんなことしたんだっ!!?」
 「なんで? そんな事まで私は・・・・・・」
 ドーゼムの目が俺を妖しく見据えてくるので、なにがあっても良いように身構える。
 ッ!? 来るか?
 「話すつもりはありませんよっ!!」
 「オッ!?」
 ドーゼムが右腕を上げた瞬間に反射的に後ろへ向かって跳んだ為、床から上に向かって勢いよく黒い針が突き出て来た。
 危なかった! あのまま突っ立ていたら死んでいたな。
 「察しが良いですね」
 「それはどうも!」
 お返しにACE32を構えてからドーゼムを狙いトリガーをテンポ良く絞り三発撃ち込むと、そのうちの一発がドーゼムの腹部にぶち当たり踞る。
 チッ!? 慌てて撃ったから2発の狙いが反れた。でも今の状態なら確実に仕留められるっ!
 「小癪で脆弱な人間風情がぁぁぁ〜〜〜〜〜~・・・・・・図に乗るなぁぁぁああああああっっっ!!!?」
 なんだ? アイツ自分の身体に影を纏い始めたぞ! 一体なにをする気なんだ?
 そしてその影が鎧のような形をした途端にこっちを向いてくる。
 「行くぞ、小娘ぇぇぇええええええっ!!?」
 一体あの影はなんだ? 
 拳を振りかざし勢いよく走って来るのでACE32を構えてから狙いを見定めて、トリガーにかけてる指を絞ろうとしたのだが男の勇者が目の前に入ってくるのでトリガーにかけた指を慌てて戻す。
 「俺が相手だっ!!」
 そう言いながらドーゼム向かって剣を構える姿を見た俺は目を見開いて驚いてしまう。
 「な、バッ・・・・・・」
 馬鹿かっ!? 目の前に出てくるなんて事をされたら撃てないじゃないかっ!!
 そう思っている間にドーゼムは勢いをそのまま乗せた拳を勇者の腹部に当てる。その拳を喰らった勇者は少しの間だけ宙に浮いた。そして足が床に着いた瞬間に操り人形の糸が切れたかの様に倒れてしまった。
 「大輝いいいいいいっっっ!!!?」
 「あ・・・・・・ああっ!?」
 「・・・・・・これ、邪魔ですね」
 ドーゼムは男勇者をつまみ上げると、ゴミをそこら辺に捨てるかのような動作で高く上に投げてしまう。
 マズいぞっ!? 気を失ってる状態じゃ受け身が取れない!それに俺の位置からじゃ、受け止めようにも間に合わないっ!!
 宙を舞う勇者を見ながらそう思っていると床へと落下している勇者ピーチさんを受け止める。
 「おっとっと!? 危なかったわぁ~!」
 「ナイスピーチさんっ!!」
 「この子達はアタシに任せて、ライナちゅぁんはドーゼムちゃんをやっつけちゃいなさぁ~い!!」
 「了解! 勇者達をお願いします!!」
 ピーチさんにそう言うとACE31を構えてフルオートでドーゼムの身体に弾丸叩き込むが、身体に当たったと同時に甲高い金属音と火花が散るだけでドーゼムは平然とした態度で俺を見つめていた。
 「なぁっ!?」
 ウソだろ、全弾撃っても平然としているなんて、7.62mmが効いてないかっ!!
 そう驚いていると、ドーゼムが殴り掛かろうとしているのか拳振りかざしてくるので避けるのだが、なぜか膝に痛みを感じる。
 「ツゥッ! ・・・・・・えっ!?」
 痛む個所に目線を移すとドーゼムの右膝から黒い槍が伸びていて、左膝に深々と突き刺さしていた。
 まさかあの拳はフェイントだったのかっ!
  「死ね、小娘!」
 ドーゼムはそう言うのと同時に俺の膝に突き刺さっている槍を引っ込めると、右手を剣のような形にして構える。
 横凪ぎ! 躱せるっ!!
 しゃがんで剣を躱した瞬間に後ろに飛び退いて距離を取り、JERICHO941PSLとカランビットナイフを取り出すと左膝の調子を確認する。
 傷は深そうだけど膝はちゃんと動く。これも多分FPSゲームの機能が効いているからこんな傷でも動けるんだろうな。
 「おやおや、あのような傷を受けても動けるとはぁ・・・・・・どういう事なんでしょうか?」
 「・・・・・・私は普通の人と違って鍛えられてるから動けるだけの話。たったそれだけ」
 質問すればなんでも正直に答えると思うなよ。しかしどうすれアイツに攻撃が通るんだ?
 「そうですか、それなら!」
 ドーゼムが右手に作り出した剣が禍々しい形に変化する。
 「次こそ仕留めます。覚悟してください」
 今度は剣を真っ直ぐ突き出しながら突っ込んで来る。
 「チッ!?」
 舌打ちしながら剣を大げさに躱した瞬間に突き出している剣から更に針が出て来る。
 それぐらい想定済みだっ!!
 身体を突き刺さそうとしてくる針を躱しながらドーゼムの懐に潜り込むと、右脇に目掛けてカランビットの刃を滑り込ませるように突き刺そうとするが手応えを感じない。
 関節まで影でガードしてるのか!? 一旦離れないとマズいっ!!
 「甘いぞ小娘っ!!」
 ドーゼムがそう言いながら右手の剣を振り上げてくる中、JERICHO941PSLをドーゼムの顔を目掛けてトリガーを連続で引き弾丸を叩き込んだ瞬間に振り下ろそうとしている右手を止める。
 そして両手を顔に当てて怯んだ瞬間を狙ってドーゼムから距離を取るとJERICHO941PSLのマガジンを装填する。
 やっぱり銃で顔に撃たれると精神的な面でショックが大きいみたいだな・・・・・・でも本当にどうすれば良いんだ? このままじゃジリ貧だぞ。
 「・・・・・・ツウッ!? 小娘がぁ~、ただで済むと思うなよっ!!」
 ・・・・・・ん? もしかして痛がってるのか?
 今度は両手を剣に変えるが右手で作った時よりも明らかに短いのが見て分かる。
 短い方が取り回しが良いから、ああしているのか?
 ドーゼムは両手の剣を構えながら走って来る。
 「はぁぁぁああああ!!?」
 接近して来たドーゼムが両手の剣を振り回してくるので、その剣裁きを躱していると急に止めて来た。
 今度はなんだ? 身体を震わせてる・・・・・・もしかして激怒しているのか?
 「ちょこまかと避けよってぇ~! ぬぅぁぁぁああああああっっっ!!!?」
 ドーゼムは唸るように声を出しながら両手を合わせると影で出来た巨大な剣を作り上げる。
 あの禍々しくて肉厚の大剣、切られたらヤバそう!
 「死ねぇぇぇええええええっっっ!!?」
 「ヤバッ!?」
 鈍く風を切る音を出しながら大剣を振り下ろしてくるので、その場から横へ向かって思いっきり飛んで回避した直後に自分がいた場所から凄まじい音と共に煙が舞い上がるので、反射的に左腕を目の前に出して爆風から顔を守ってしまう。
 「ライナちゅぁ〜んっ!! 無事かしらぁ~っっっ!!?」
 「大丈夫、なんとか避けましたよっ!!」
 そう言いながら左腕を下ろしてドーゼムがいる場所を見ると俺がさっきいた場所からドーゼムの手前までが、まるで床が爆発したかのような形で床がえぐり取られていた。
 なんて威力なんだよっ!? こんなの食らったら人溜まりないぞっ!!
 「ハァ、ハァ・・・・・・小娘が、運良く避けたか・・・・・・ハァ、ハァ・・・・・・」
 アイツ、相当疲労しているな。あんな大技を使えば無理も・・・・・・ん?
 肩を上下させるほど息の荒いドーゼムのようすを見ていて鎧の少し変形してに気づいた。
 アイツの鎧のあの形、疲労、そして影・・・・・・もしかしたらいけるかもしれない。
 「ライナちゅぁ~ん! 勇者ちゃん達を避難させたから加勢するわよぉ~っ!!」
 「ピーチさんストップ! 一人で大丈夫ですからっ!!」
 ピーチさんに向かって言うと、大剣を構えて向かって来るので止めて険しい顔を向けてくる。
 「なに馬鹿な事を言ってるのよぉ~っ!? 魔人相手に一人で勝てるわけないでしょぉ〜っ!!」
 「大丈夫。勝ってみせますから、だから下がって見ていてください」
 「・・・・・・分かったわ。危なくなったらアタシが出るわよぉ~」
 剣を仕舞うと壁まで歩いて行く。そして壁際に到達すると振り返り、俺を真剣な目で見つめてくる。
 「ありがとうございます。ピーチさん」
 俺はそう言いながらドーゼムに向かってJERICHO941PSLを構えた。
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