クラス転移したけど私(俺)だけFPSプレイヤーに転生

青空鰹

第2章 プロローグ

 ゴーゼスでの事件から2週間後。 私、 ネルソン・ディア・バルデック公爵はあの事件の書類整理をしている。


 「書類に不備はなし。後は印を押すだけか」


 印鑑を手に取ると印が紙にちゃんと付くように朱肉にしっかりつける。そして、朱肉がついた印鑑を一枚一枚丁寧に押していく。


 「・・・・・・ふう、この事件の仕事はこれでひと段落だな」


 今印を押した書類の束に、印を付け忘れがないか念の為に一枚ずつ確認し、全部目を通したら束をまとめて隣の脇に置いてある束に重ねる。


 「この事件を聞いた兄も この事は国の方でも調査続ける。 と言っていたな。多分兄も私と同じで忙しい日々を送っているのだろうな・・・・・・」


 私はグルベルトを逮捕し、ゴーゼスの総合ギルド支部が問題がない事を確認した後に、報告書を書く為にトンボ帰りするように王都に帰った。


 そしてこの二週間でゴーゼスで捕まった三人の主犯格の裁判の判決も出ている。


 グルベルトは本来ならば大陸間協議で決められた国際法の一つ、違法奴隷売買の罪は身分問わず死刑にする。が当てはまり、グルベルト・ラングットは死刑なるのだが今回の事件への捜査協力と素直に自白した事も考慮された事もあり、言い渡された刑は爵位剥奪と財産没収、それにレーベラント大陸追放を言い渡された。


 グルベルト本人は裁判官に、 ここまでやったのだから、自分を死刑にするべきです。 と裁判官に話したのだが裁判官は、 罪の意識を感じているのなら、その意識を忘れずに真っ当な人生を歩み今後は自分の為ではなく誰かの為になる事をしなさい。 とグルベルトに話した。


 裁判官の話しを聞いたグルベルトはその場で膝を着き、泣きながら感謝を述べていたと言う。


 二人目のグルベルトと組んで違法奴隷を売っていたブリューマ奴隷商会の ラズベス・ブリューマ元会長 は裁判の結果、違法奴隷売買の罪で死刑が下された。しかし本人は ラングットが大陸追放なのに何故私は死刑なのだっ!! と不服を言い上訴しようとしたが出来ない状態だった。


何故なら上訴するには上訴費用、つまりお金を払う必要なのだがラズベス・ブリューマが悪行で稼いだお金は国の方で差し押さえられてしまっていた上に、本業で稼いだお金は無一文と言っても良いほどしかなかったので上訴出来ずに死刑が確定し、来週末に関与していた従業員と共に死刑執行される。


 三人目の元冒険者ギルド長、 デブトル はレーベラント総合ギルド会長暗殺未遂、および前ゴーゼス領主暗殺、更には街で起こしていた数々の悪事が明るみになりギルドに残っていた部下と共に犯罪奴隷に身を落されて危険な炭鉱送りにされたが、一つ問題が出た。
 

 「デブトルの残りのメンバーが、森の中で首を切られて死んでいたのは意外だったな」


 我が国の兵士たちの記録には盗賊にころされた。と言う事になっているが・・・・・・果たして本当なのだろうか? エルライナに聞いたらリードガルムの兵士と同じ事を言うのだろうか?


 「・・・・この事はエルライナに話してみるか」


 そういえば彼女は別れる時にグエルから 王都に来て騎士団へ入団しないか? と誘われたが あの、お誘いはありがたいんですけど・・・・・・今は自由に生きたいので、ゴメンなさいグエルさん。でも、お金が貯まったら王都に行く予定なので安心してください。 と言っていたな。
 

 「自由かぁ・・・・・・きっと彼女は騎士になるよりも冒険がしたいんだろうなぁ。う〜〜〜む・・・・・・よしっ!」


 私は引き出しから一枚の白紙を出すとペンを手に取り文字を書いていく。ゴーゼスにいるエルライナにデブトル残党の死亡の意見を聞く為に手紙を出す事にした。彼女なら違う方向からこの残党の死を見て兵士とは違う答えを出すかもしれないからだ。


 私は手紙を書き終えると、机の隅に置いてある呼び鈴を鳴らし使用人を呼ぶ。そして少しの間待っていると、ドアをトントン! と叩く音が聴こえてくる。


 「入れ」


ドアを開くと、 失礼します。と部屋の前で言い、執事のメルディンが入ってくる。


 「何かご用ですか。ネルソン様?」


 「ゴーゼスにいるエルライナ宛に手紙を書いたから、ゴーゼスの総合ギルド経由で渡すように手配してくれ」


 「ゴーゼスですか・・・・・・つい先ほどネルソン様宛てにゴーゼスの総合ギルド長から手紙が来ました」


 「なに? また何かあったのか?」


 「私は手紙の内容を読んでないので分かりませんが、恐らく緊急の用事ではないと思いますよ。前出した手紙と違って、名前が走り書きではないので」


 「そうか」


 私はメルディンが差し出して来る手紙を受け取り、封を開けて手紙の内容を確認する。


 「おぉ! エルライナが王都に来るのか。そうだ! グエル達にも知らせるか。きっと喜ぶぞ!」


 「では先ほどのゴーゼスに手紙を送る件は中止して、ホンドウ様にエルライナ様が王都に向かわれている事をお伝えすれば良いのですね?」


 「そうしてくれメルディン」


 「かしこまりました」


 メルディンはそう言うと、ドアの前で 失礼しました。 と言った後に部屋を出て行った。


 さて、エルライナが来たらデブトルの残党の事を聞いてからあの時のお礼するか。それと、妻がエルライナに会いたい。と言ってたから会わせてやらないとな。しかし・・・・・・大丈夫なのか? 妻は自分・・・・・・。


 トントン。


 「ん? 入れ」


 「失礼します」


 ん? メルディン。さっき出て行ったばかりだったはずだが・・・・・・俺が頼んだ事を他の使用人にでも任せたのか? いや、でも、コイツは几帳面な性格だからそんな事をするわけがないよな。


 「どうした?」


 「先ほど第二騎士団の エイミー・リステット様がここにいらして、 エルライナ様が王都に着いた。ともうされました」


 そうかエルライナがもう着いたのかっ!! ・・・・・・って、ん? んんん?


 「総合ギルトに行き要件を済ませてからこちらにお向かいするそうです」


 「そ、そうか・・・・・・分かった」


 「どうかなされましたか?」


 メルディンは心配したようすで私の顔を見つめる。


 「大丈夫だ。心配はいらない。しかし、こうも間の悪い事が起こるとはな。今日は厄日なのか? まぁ手間が省けるからいいのだけれともな」


 「左様な事ございません。むしろエルライナ様がネルソン様の屋敷に来て頂ける。と考えれば運が良かったのでは?」


 「まぁ、考え方次第って事か」


 「左様でございます。では私は、お茶をお持ちして参ります」


「あぁ、頼む」


 メルディンはそう言った後、また部屋を出て行った。


 しかしエルライナが王都に着くのがかなり早いと思ってしまうのは気のせいだろうか? この手紙もさっき届いたばかりだよな?


 私はふところから自前の懐中時計を取り出して現在の時間を見る。


  「9時半、相乗りの馬車ならもう少し時間が掛かるから・・・・・・相乗りの馬車で来たのではなく、厩舎に行き馬を借りたのか?」


 馬を借りるのは少し値が張るが相乗りの馬車よりも早く着く事が出来る。


 「あれ? そう言えば別れる時に、 それと、私は馬に乗って操る事が出来ませんから。 と苦笑いで話していたな」


 じゃあ彼女はゴーゼスから王都に歩いて四時間近く掛かる道のりをどうやって来たのか?


 「エルライナは私に馬に乗れない。とウソをついたのか?」


 私はそう結論付けた。それに彼女に何かしらの問題が起きずに、ここに来るのならゴーゼスからここまでどうやって来たのかなんて気にする事ではない。


 「さて、紅茶を飲んだら出迎えの準備でもするか」


 ネルソンは椅子にもたれ掛かり、窓ごしに庭の景色を見ながら紅茶がを待つのであった。

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