なんと平和な(非)日常 ~せっかく異世界転生したのに何もやることがない件~
この世界だと転生者は暇だって思われてるらしい
「ねえ大丈夫これ? 首、変な方向に曲がってない?」
引きずられることしばらく。
街の外れまで来てようやく解放された俺は、人体の急所でありながらさっきまで集中的にダメージを喰らっていた首の損傷具合と動作の確認を行っていた。
おそらく問題ないだろうことを確かめ、そこでようやく俺をここまで拉致した犯人を睨みつける。
しかし犯人のポンコツツインテールはどこ吹く風。涼しい顔してまるで悪いことなどしていないかのような態度であった。どうやら俺の『にらみつける』攻撃は効果がないらしい。防御力とか下がってねぇかな。
「おい小林、とりあえず言い訳くらいは聞いてやろうか」
「何よサンゴ。まるで私が何か悪いことをしたみたいじゃない」
「したよ! みたいじゃなくてその通りだよ!」
ああ、どうかこいつに天罰が落ちますように……あっダメだ。その天罰を下すこの世界の神様はあの神様(憎)だし。
「一つずつ話していこう。なんで俺を拉致した?」
「拉致じゃないわ。連行よ」
「変わんねぇよ!」
連行ってあれだよね? 警察官が容疑者を連れていくことだよね? 何でちょっと俺が悪いみたいなニュアンスが含まれてるんだ。
「確認するまでもないけど、サンゴって暇よね?」
「おい、必要のない言葉が混ざってるぞ」
「確認するまでもないけど、暇よね?」
「俺の名前を必要ないって判断するな! 人の名前を何だと思ってんだ小林!」
「あんたに言われたくないわよ! 私はコビャーシだって言ってんでしょ!」
くそっ、ああ言えばこう言いやがって。
「で! もし、万が一、珍しいことに俺が暇だったんならどうするつもりなんだ?」
「絶対に、確定的に、基本的に暇でしょ」
うるさいそれ以上言うな。
「いいからさっさと要件を言えよ。どうして俺をここまで連れてきたんだ」
「ふふんっ、それはねサンゴ。私の冒険にあんたを連れていくためよ!」
俺の質問に対し、小林はどや顔でツインテールをぶんぶんさせながらそんなことをのたまった。
「ほら、私って勇者でしょ」
「自称な」
「勇者といえば冒険! だから私は冒険をしようと思ったわけよ! 勇者だから!」
「自称だけどな」
「だけどパパとママに『危ないからやめなさい』って言われちゃって」
「自称だもんな」
「でも私、どうしても勇者として、勇者らしく、勇者の冒険がしたかったの」
「自称なのにな」
「そしたら『近くの森を探検するくらいにしておきなさい』ってパパとママが」
「賢明な判断だと思う」
「あと『一人じゃ危ないから誰かと一緒に行きなさい』って」
「妥当な判断だと思う」
「『最近転生してきたらしいサンゴ君とやらと一緒に行きなさい』って」
「ちょっと待とうか」
どうしてそこで俺の名前が出てくるんだ。それになんで俺が転生者だって知られているんだ。もしかして俺って有名人?
「だから行くわよサンゴ!」
「はっ、やなこった! 俺は忙しいんだよ!」
「嘘つくんじゃないわよ! 全然そんなふうには見えないし、パパとママだって『どうせこの世界の転生者は暇だろう』って言ってたんだから!」
「何だその決めつけ方!?」
その通りだけどさ。
「そ、そうだ! 俺はサリエルちゃんと街でお散歩デートする予定だったんだ! だからお前の冒険(笑)に行く暇はない!」
「あんたこれ以上罪を重ねるつもり!?」
「別に何もするつもりはねぇよ!」
なんで俺が何かすると思ってんだ。サリエルちゃんが悲しむような真似をするわけがないだろう。そんなんだから小林って言われるんだぞ小林。
「ふん、でもあんたがいくら冒険に行くのを拒んだところで無駄よ」
「はぁ?」
何やら不穏な言い方だ。
無駄とはどういうことだろう。まさか物で俺を釣るつもりか? だとしても俺は屈するつもりはない。
例えばそれが金銀財宝だったり、よだれが出るほどおいしい食べ物だったり、可愛い女の子とキャッキャうふふだったり、その他俺の心を動かすような魅力的な物であっても、俺は拒んで見せる。もはや意地だ。
神様を一発殴れる権利とかじゃない限り、俺はどんな卑怯な手にも乗らない!
「ここにどんな相手でも言うことを聞かせることが出来る魔道具があるわ」
卑怯ってレベルじゃなかった。
「これを使えばサンゴの意思なんて関係ないわよ!」
「仮にも勇者を自称するならそんな悪役御用達アイテムみたいなもん使うな!」
懐中時計のような外装に、時計の部分が禍々しい目玉のような物体をはめ込まれた見た目。そんな魔道具を片手に自信満々の小林。
そもそもどうしてこんな物騒極まりない物を小林が持っているんだ。仮にこれを持っているのが魔王様だったのなら違和感はない。あの優しい魔王様がこれを使うことはないだろうが、魔王様だし持ってる可能性もある。しかし小林は勇者を自称するただの人間だ。魔王様とは違い一般人である。
だとすると、小林はこの魔道具を誰かからもらったと考えるのが妥当か。魔王様はこんな危ないものを誰かに渡したりしないだろうから違うだろう。
他に考えられる候補は――
「いいでしょ、これ。神様にお願いしたらその場で造ってくれたわ」
「やっぱりあいつかっ!」
あいつもう邪神だろ。神様のすることじゃないよ。
「効果を発揮出来るのは今日一日だけみたいだけど、サンゴを冒険に連れていくだけだしそれで充分ね。さあサンゴ、覚悟しなさい」
そんなこと言いながら、魔道具片手に小林が近づいてくる。
逃げようとするも、その場に縫い付けられたかのように足が動かず、尻餅をついてそのままじりじりと後ずさりすることしかできない。これもあの魔道具の効果なのだろうか。
「や、やめろっそれ以上近づくな! やめっ、待っ……アァ――――――――ッ!!」
結果。
魔道具には勝てなかったよ……。
引きずられることしばらく。
街の外れまで来てようやく解放された俺は、人体の急所でありながらさっきまで集中的にダメージを喰らっていた首の損傷具合と動作の確認を行っていた。
おそらく問題ないだろうことを確かめ、そこでようやく俺をここまで拉致した犯人を睨みつける。
しかし犯人のポンコツツインテールはどこ吹く風。涼しい顔してまるで悪いことなどしていないかのような態度であった。どうやら俺の『にらみつける』攻撃は効果がないらしい。防御力とか下がってねぇかな。
「おい小林、とりあえず言い訳くらいは聞いてやろうか」
「何よサンゴ。まるで私が何か悪いことをしたみたいじゃない」
「したよ! みたいじゃなくてその通りだよ!」
ああ、どうかこいつに天罰が落ちますように……あっダメだ。その天罰を下すこの世界の神様はあの神様(憎)だし。
「一つずつ話していこう。なんで俺を拉致した?」
「拉致じゃないわ。連行よ」
「変わんねぇよ!」
連行ってあれだよね? 警察官が容疑者を連れていくことだよね? 何でちょっと俺が悪いみたいなニュアンスが含まれてるんだ。
「確認するまでもないけど、サンゴって暇よね?」
「おい、必要のない言葉が混ざってるぞ」
「確認するまでもないけど、暇よね?」
「俺の名前を必要ないって判断するな! 人の名前を何だと思ってんだ小林!」
「あんたに言われたくないわよ! 私はコビャーシだって言ってんでしょ!」
くそっ、ああ言えばこう言いやがって。
「で! もし、万が一、珍しいことに俺が暇だったんならどうするつもりなんだ?」
「絶対に、確定的に、基本的に暇でしょ」
うるさいそれ以上言うな。
「いいからさっさと要件を言えよ。どうして俺をここまで連れてきたんだ」
「ふふんっ、それはねサンゴ。私の冒険にあんたを連れていくためよ!」
俺の質問に対し、小林はどや顔でツインテールをぶんぶんさせながらそんなことをのたまった。
「ほら、私って勇者でしょ」
「自称な」
「勇者といえば冒険! だから私は冒険をしようと思ったわけよ! 勇者だから!」
「自称だけどな」
「だけどパパとママに『危ないからやめなさい』って言われちゃって」
「自称だもんな」
「でも私、どうしても勇者として、勇者らしく、勇者の冒険がしたかったの」
「自称なのにな」
「そしたら『近くの森を探検するくらいにしておきなさい』ってパパとママが」
「賢明な判断だと思う」
「あと『一人じゃ危ないから誰かと一緒に行きなさい』って」
「妥当な判断だと思う」
「『最近転生してきたらしいサンゴ君とやらと一緒に行きなさい』って」
「ちょっと待とうか」
どうしてそこで俺の名前が出てくるんだ。それになんで俺が転生者だって知られているんだ。もしかして俺って有名人?
「だから行くわよサンゴ!」
「はっ、やなこった! 俺は忙しいんだよ!」
「嘘つくんじゃないわよ! 全然そんなふうには見えないし、パパとママだって『どうせこの世界の転生者は暇だろう』って言ってたんだから!」
「何だその決めつけ方!?」
その通りだけどさ。
「そ、そうだ! 俺はサリエルちゃんと街でお散歩デートする予定だったんだ! だからお前の冒険(笑)に行く暇はない!」
「あんたこれ以上罪を重ねるつもり!?」
「別に何もするつもりはねぇよ!」
なんで俺が何かすると思ってんだ。サリエルちゃんが悲しむような真似をするわけがないだろう。そんなんだから小林って言われるんだぞ小林。
「ふん、でもあんたがいくら冒険に行くのを拒んだところで無駄よ」
「はぁ?」
何やら不穏な言い方だ。
無駄とはどういうことだろう。まさか物で俺を釣るつもりか? だとしても俺は屈するつもりはない。
例えばそれが金銀財宝だったり、よだれが出るほどおいしい食べ物だったり、可愛い女の子とキャッキャうふふだったり、その他俺の心を動かすような魅力的な物であっても、俺は拒んで見せる。もはや意地だ。
神様を一発殴れる権利とかじゃない限り、俺はどんな卑怯な手にも乗らない!
「ここにどんな相手でも言うことを聞かせることが出来る魔道具があるわ」
卑怯ってレベルじゃなかった。
「これを使えばサンゴの意思なんて関係ないわよ!」
「仮にも勇者を自称するならそんな悪役御用達アイテムみたいなもん使うな!」
懐中時計のような外装に、時計の部分が禍々しい目玉のような物体をはめ込まれた見た目。そんな魔道具を片手に自信満々の小林。
そもそもどうしてこんな物騒極まりない物を小林が持っているんだ。仮にこれを持っているのが魔王様だったのなら違和感はない。あの優しい魔王様がこれを使うことはないだろうが、魔王様だし持ってる可能性もある。しかし小林は勇者を自称するただの人間だ。魔王様とは違い一般人である。
だとすると、小林はこの魔道具を誰かからもらったと考えるのが妥当か。魔王様はこんな危ないものを誰かに渡したりしないだろうから違うだろう。
他に考えられる候補は――
「いいでしょ、これ。神様にお願いしたらその場で造ってくれたわ」
「やっぱりあいつかっ!」
あいつもう邪神だろ。神様のすることじゃないよ。
「効果を発揮出来るのは今日一日だけみたいだけど、サンゴを冒険に連れていくだけだしそれで充分ね。さあサンゴ、覚悟しなさい」
そんなこと言いながら、魔道具片手に小林が近づいてくる。
逃げようとするも、その場に縫い付けられたかのように足が動かず、尻餅をついてそのままじりじりと後ずさりすることしかできない。これもあの魔道具の効果なのだろうか。
「や、やめろっそれ以上近づくな! やめっ、待っ……アァ――――――――ッ!!」
結果。
魔道具には勝てなかったよ……。
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