第418話　ヘルトラウダが案内するようです

「妹の何処が気に入らぬのだ！」

突然怒り出すクサンデル氏に僕は驚きます。

気にいる気にいらないの問題ではないのですが、この人は一体何を考えていたのでしょうか。

「今までの何処にヨランデ女史をお礼に僕が受け取る事になるのか、理解できないですよ。」

僕は混乱気味に喋ります。あれ？何を言ってるのかわからなくなってきたぞ。

「そんなバカな！見た目で言えば妹以上の女がそうそういるとも思えぬが、一体妹の何処がいけないのだ！」

さっきと同じ事を聞いてますが、わかってますか？

「何度も同じ事を言わせないで下さい。ヨランデ女史は確かに素晴らしい女性でしょうが、お礼にと渡され受け取るような、それは違うと言っておきます。それよりもロンパースを辿るのでしたら、その情報を我々にも知らせてほしいのですが、それがお礼としませんか？一応皇女様の居場所がわかるまでは情報が欲しいですが、別に皇女様の行方を、居場所までを知らせる事はないのですが、どうでしょう。」

この人本当に解呪できたのでしょうか？
全くこの人の思考が理解できません。
こっそりオイヴィに聞いてみると、
【何かを極めるというのは難しい。クサンデル氏は妹君の事となると常軌を逸する事があったかもしれぬ。】

とまあよくわからぬ回答が。

するとどうした事かクサンデル氏は、


「公爵殿の言う通りだ。確かにお礼にと渡すのは違うな。では然るべき手続きを得て妹は公爵殿の婚約させておくことにする。ご指摘感謝する！ヨランデよ、これでいいか？」

え？何でそっちに？この人理解してた？

「お兄様ありがとう！ではえと順平様、末永く宜しくお願いいたしますね。式はいつにいたしますか？」

【なあオイヴィ、どうしてこうなるの？】

【どうやらヨランデ殿は順平殿の事が気に入ったようだが、どうするのだ？嫁にするのか？】

【いやしないよ。そんなそぶりを見せたつもりもないし、何処に婚約の要素があったの？】

【ヨランデ殿が気に入ったのが全てであろうな。まあある程度時間を設けておけば、そのうち違う事に興味が映るであろうから、一度は受け入れ、長い期間を設けてはいかがか？】


どうするか？形だけでも受け入れるか？
ちょっとだけ考えよう・・・・

「クサンデル殿、ヨランデ殿、2人はこれから皇女様の行方を追うのですよね。お礼は一時保留とし、受け取るかどうかは皇女様の行方が分かってからにしませんか？こちらとしてそうでなければ受け入れがたいですし。」

「それもそうだがどうする？」

クサンデル氏はヨランデ女史に聞いてます。

「うーん、じゃあ婚約は受け入れてほしいかな？結婚は皇女様にお会いしてからでいいよ？」
そんな事を言うヨランデ女史だが、オイヴィが念話で、

【恐らくすぐには見つからぬだろうし、皇女様とお会いすれば状況も変わるであろうから、これで受け入れておいた方が良い。】

納得できないし、どうしてこうなったと思いますが、まあこの辺りで幕引きをしておきましょう。

「私も時間がありませんし、あとはこの後ヘルトラウダがやってきますから、彼女と打ち合わせておいて下さい。
」

因みにロンパースを所持していた人物はヘルトラウダに相談したらしいんです。

そして何と言いますか、絶妙なタイミングで秘書さんがこっそりと耳打ちしてきます。

『ヘルトラウダ様が戻ってきました。お通しますか？』

ヘルトラウダはなかなか忙しい女性なんです。
妻なのは勿論ですが、アーダの部下としての活動も行っており、事務的な知識も豊富なので事あるごとに細かな話し合いに向かってくれています。
そしてちょうど何かの話が終わったのでしょう。
『わかりました。ヘルトラウダに問題がなければ部屋に通してくれるかな。』
音もなく秘書さんは消えていきます。
そしてすぐにノックがし、ヘルトラウダが入ってきます。

「旦那様只今戻りました。」

「お帰りヘルトラウダ。今ロンパースの件と、ロンドロッグのピートロネラ皇女様の事で話し合いをしていたんだ。」

「ええ、わかっておりますわ。たった今ロンパースを所持していた女性と会う段取りが終わりましたので、クサンデル様とヨランデ様を今からお連れできますわ。」

相変わらず仕事が早いです。