ブラック企業戦士、異世界で救国の勇者になる
メリンダの話
「駄目駄目、最近はほんとさっぱりだよ!」
俺の言葉にメリンダさんは堰を切ったようにまくしたててきた。
いや、お喋りなのは最初からか。
「最近はノーザストと戦争をするんじゃないかって話でもちきりだろ?
お蔭でみんな万が一があるんじゃないかと倹約倹約で商売あがったりだよ!
それにね、ここだけの話……」
ここまで言ってメリンダの顔が急に険しくなった。
「あんた、まさか市民が王族をどう思ってるのか嗅ぎまわってるんじゃないだろうね?」
「いやいや、そんな事ないから!
戦争が近いって事は俺も知ってるんだ。
でも城じゃ俺は門外漢なんでその辺の詳しい事がさっぱりわからなくってさ。
だったら街に行って詳しい人に聞いた方が実際の状況を掴めるんじゃないかって思ったんだ。」
「そうかい……だったら良いんだけど……」
メリンダは尚も疑わしそうな顔をしつつ話を続けた。
「ここ一週間位で街に来てたノーザストの行商人が全員国に帰っちまったんだよ!
しかも戻って来やしない!
こんな事は初めてだよ!」
「待った、この国ってノーザストと交易があるのか?
戦争になるかもしれないのに?」
「当り前じゃないか! お隣さんなんだからやり取り位あるよ!大体ノーザストはうちから取れる魔晶がなきゃサウザンと戦えやしないよ!」
「つまり、ノーザストはこの国と貿易するよりも奪った方が早いと判断したって事か?」
「そうに決まってるよ! だいたいノーザストなんか文明国でございと気取っちゃいるけど戦争がしたいだけの野蛮な国だよ!」
「待った、ノーザストは文明国なのか?」
そう言えば講義でもノーザストがどんな国なのかはまだ勉強していなかった。
「はっ!自分達こそ魔術の正統後継者だとうそぶいてるけどね!私に言わせりゃ戦争がしたくてしたくて堪らない、戦争をするための言い訳を探し続けてるような国だよ!まったく、あんな国が隣にあっちゃいつ癇癪起こして攻めてこないか気が気じゃないね!」
「じゃあサウザンは?」
「サウザン!」
メリンダはまるで恐ろしいものを口にしたとでも言わんばかりに天を仰いだ。
「あんな蛮人!同じ人間だとは思えないよ!奴らが何をしてるか知ってるのかい?人間と魔獣の間に子供を作らせて軍隊を作ってるんだよ!国境じゃサウザンに攫われた子供が何人もいるって話だよ!全く、国は何をしてるんだか、さっさと取り戻しに行くのが国を動かすものの仕事なんじゃないのかい!」
「でもミッドネアはサウザンとも危ないんじゃなかったっけ?」
「それなんだけどね、噂じゃノーザストとサウザンは戦争してると見せかけて裏で手を組んでこの国を攻めようとしてるんじゃないかって言われてるのさ!大体変じゃないか、何年も戦争してた国同士がいきなり同時にうちにちょっかい出してくるなんて。」
「なるほどなるほど、ところでサウザンとミッドネアは貿易をしてたりはしないのかな?」
「もちろんしてるさ!砂糖はサウザン産が一番だからね!最近じゃ全然手に入んなくってね。塩だってサウザンの海水塩の方が味がまろやかで良いんだけどさ、高すぎるからしょうがなくミッドネア産の岩塩を使ってるんだけど本当はミッドネア産の海水塩が使いたいんだよねえ。ほんと戦争なんてするもんじゃないよ!」
「じゃあノーザストとはどんなものをやり取りしてるんだ?」
「小麦だの肉だのはノーザストから来てるのが多いね。うちでも採れるんだけどほら、国が狭いし大量に作ってるノーザストの方が安いからねえ。でもこの十年戦争のせいで値上がりしっぱなしでたまんないよ!」
「それなら逆にミッドネアは何を両国に売ってるんだ?」
「そりゃ当然魔晶だよ!」
メリンダは得意げに鼻を鳴らした。
「魔晶はミッドネア産が一番さ!ノーザストでもサウザンでも採れるけど、質が悪くってねえ!
全然魔素が溜まりゃしないしすぐに漏れちまうのさ。それに他の鉱物だってミッドネア産が一番質が良いんだよ。」
魔晶、講義で習った事がある。
魔素を吸着する事ができる鉱物で魔術と組み合わせることで様々な効果を発揮することができる。
城で使っていた照明も魔晶によるもので、ルノアが使っていた魔晶魂縛法も魔晶の性質を利用している。
魔術が社会活動に大きな力を持っているこの世界で魔晶が採れるのはかなりのアドバンテージだろう。
同時に常にその鉱床を狙われるという危険性もある訳だ。
「つまり、やっぱりノーザストとサウザンの目的はミッドネアの魔晶鉱山って事なのか。」
「そうに決まってるよ!あいつら戦争で魔晶を使いまくってるもんだからもう魔晶を買う金がないんだよ。だから力づくで奪おうって腹なのさ!」
「そういやそれなら魔晶を高く売れるミッドネアはかなり儲かってるんじゃないのか?」
「それがねえ~、そうでもないらしいんだよ。」
メリンダは大きく溜息をついた。
「うちは小さな国だろ?あんまり無茶な価格を付けたら怒らせるし、ただでさえうちはノーザストともサウザンとも魔晶の取引をしてるからどちらの国からも良く思われてないしね。」
「でもしょうがないんだよ、そうでもしないとうちみたいに小さな国は生き残れないんだから。前王のガラルド様もそれで相当苦労してたらしくってさ、根回しだ何だでほとんど儲けになってないんだってさ。本当に、本当にガラルド様は立派な方だったよ。」
「王様だってのに贅沢せずに、国民の事を考えていて……ガラルド様が王じゃなかったらこの国はとっくに戦場になってたよ。まだまだお若かったのにあんな事があったばっかりに……」
そういうとメリンダはエプロンで目の端を拭った。
俺の言葉にメリンダさんは堰を切ったようにまくしたててきた。
いや、お喋りなのは最初からか。
「最近はノーザストと戦争をするんじゃないかって話でもちきりだろ?
お蔭でみんな万が一があるんじゃないかと倹約倹約で商売あがったりだよ!
それにね、ここだけの話……」
ここまで言ってメリンダの顔が急に険しくなった。
「あんた、まさか市民が王族をどう思ってるのか嗅ぎまわってるんじゃないだろうね?」
「いやいや、そんな事ないから!
戦争が近いって事は俺も知ってるんだ。
でも城じゃ俺は門外漢なんでその辺の詳しい事がさっぱりわからなくってさ。
だったら街に行って詳しい人に聞いた方が実際の状況を掴めるんじゃないかって思ったんだ。」
「そうかい……だったら良いんだけど……」
メリンダは尚も疑わしそうな顔をしつつ話を続けた。
「ここ一週間位で街に来てたノーザストの行商人が全員国に帰っちまったんだよ!
しかも戻って来やしない!
こんな事は初めてだよ!」
「待った、この国ってノーザストと交易があるのか?
戦争になるかもしれないのに?」
「当り前じゃないか! お隣さんなんだからやり取り位あるよ!大体ノーザストはうちから取れる魔晶がなきゃサウザンと戦えやしないよ!」
「つまり、ノーザストはこの国と貿易するよりも奪った方が早いと判断したって事か?」
「そうに決まってるよ! だいたいノーザストなんか文明国でございと気取っちゃいるけど戦争がしたいだけの野蛮な国だよ!」
「待った、ノーザストは文明国なのか?」
そう言えば講義でもノーザストがどんな国なのかはまだ勉強していなかった。
「はっ!自分達こそ魔術の正統後継者だとうそぶいてるけどね!私に言わせりゃ戦争がしたくてしたくて堪らない、戦争をするための言い訳を探し続けてるような国だよ!まったく、あんな国が隣にあっちゃいつ癇癪起こして攻めてこないか気が気じゃないね!」
「じゃあサウザンは?」
「サウザン!」
メリンダはまるで恐ろしいものを口にしたとでも言わんばかりに天を仰いだ。
「あんな蛮人!同じ人間だとは思えないよ!奴らが何をしてるか知ってるのかい?人間と魔獣の間に子供を作らせて軍隊を作ってるんだよ!国境じゃサウザンに攫われた子供が何人もいるって話だよ!全く、国は何をしてるんだか、さっさと取り戻しに行くのが国を動かすものの仕事なんじゃないのかい!」
「でもミッドネアはサウザンとも危ないんじゃなかったっけ?」
「それなんだけどね、噂じゃノーザストとサウザンは戦争してると見せかけて裏で手を組んでこの国を攻めようとしてるんじゃないかって言われてるのさ!大体変じゃないか、何年も戦争してた国同士がいきなり同時にうちにちょっかい出してくるなんて。」
「なるほどなるほど、ところでサウザンとミッドネアは貿易をしてたりはしないのかな?」
「もちろんしてるさ!砂糖はサウザン産が一番だからね!最近じゃ全然手に入んなくってね。塩だってサウザンの海水塩の方が味がまろやかで良いんだけどさ、高すぎるからしょうがなくミッドネア産の岩塩を使ってるんだけど本当はミッドネア産の海水塩が使いたいんだよねえ。ほんと戦争なんてするもんじゃないよ!」
「じゃあノーザストとはどんなものをやり取りしてるんだ?」
「小麦だの肉だのはノーザストから来てるのが多いね。うちでも採れるんだけどほら、国が狭いし大量に作ってるノーザストの方が安いからねえ。でもこの十年戦争のせいで値上がりしっぱなしでたまんないよ!」
「それなら逆にミッドネアは何を両国に売ってるんだ?」
「そりゃ当然魔晶だよ!」
メリンダは得意げに鼻を鳴らした。
「魔晶はミッドネア産が一番さ!ノーザストでもサウザンでも採れるけど、質が悪くってねえ!
全然魔素が溜まりゃしないしすぐに漏れちまうのさ。それに他の鉱物だってミッドネア産が一番質が良いんだよ。」
魔晶、講義で習った事がある。
魔素を吸着する事ができる鉱物で魔術と組み合わせることで様々な効果を発揮することができる。
城で使っていた照明も魔晶によるもので、ルノアが使っていた魔晶魂縛法も魔晶の性質を利用している。
魔術が社会活動に大きな力を持っているこの世界で魔晶が採れるのはかなりのアドバンテージだろう。
同時に常にその鉱床を狙われるという危険性もある訳だ。
「つまり、やっぱりノーザストとサウザンの目的はミッドネアの魔晶鉱山って事なのか。」
「そうに決まってるよ!あいつら戦争で魔晶を使いまくってるもんだからもう魔晶を買う金がないんだよ。だから力づくで奪おうって腹なのさ!」
「そういやそれなら魔晶を高く売れるミッドネアはかなり儲かってるんじゃないのか?」
「それがねえ~、そうでもないらしいんだよ。」
メリンダは大きく溜息をついた。
「うちは小さな国だろ?あんまり無茶な価格を付けたら怒らせるし、ただでさえうちはノーザストともサウザンとも魔晶の取引をしてるからどちらの国からも良く思われてないしね。」
「でもしょうがないんだよ、そうでもしないとうちみたいに小さな国は生き残れないんだから。前王のガラルド様もそれで相当苦労してたらしくってさ、根回しだ何だでほとんど儲けになってないんだってさ。本当に、本当にガラルド様は立派な方だったよ。」
「王様だってのに贅沢せずに、国民の事を考えていて……ガラルド様が王じゃなかったらこの国はとっくに戦場になってたよ。まだまだお若かったのにあんな事があったばっかりに……」
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