話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ブラック企業戦士、異世界で救国の勇者になる

海道 一人

新生活

 ミッドネアで始まった俺の新生活は日本にいた頃に比べるとまるで天国だった。
 朝起きて食事をし、午前中はこの世界についての講義を受ける。
 講義はルノアがする事もあれば王国付きの学者が行う事もある。
 そして俺がまず学んだのはこの世界にも時間の概念があるという事だった。


 一日は日本と同じように二十四時間刻みなのだが、これにはちょっと理由があるらしかった。
 俺がこの世界に召喚される際、俺の体は魔のレベルで分解され再構築されたらしいのだが、その際に感覚や物に対する認識もこの世界に合わせて変換されたらしい。


 つまり、実際にはこの世界の時間の概念は俺が元々持っていた時間の概念とは違うのだが俺は元の世界の概念として入力し、言葉などで出力する時に自分で意識せずにこの世界の時間の概念に合わせたものを発しているのだとか。


 これは数字、言語、文法も同じで俺は全く意識せずにこの国の言葉を読み聞き出来るし、文字に書く時も日本語を書いてるのと同じように書ける、というか日本語で書いてるつもりなのだがこの国の言語で書いてしまっている。


 似たような現象が食事など生活一般的にも起こっていて、例えば食材の豚肉に対して俺は豚肉として認識しているし、食べた時の味もこれが豚肉だと認識している。
 しかし、おそらくは元の世界の豚肉とは全然違うのだろう。


 つまり、俺の中の豚肉という知識はそのままにこの世界の豚肉に相当するものに認識が置き換えられているのだ。
 ルノアが言うには元の世界とあまりにかけ離れたもの、そもそも存在していない物にそういう認識変換は起こらないだろうと言っていた。


 これはある意味凄く恐ろしい事でもある。
 その事を聞かされた時、まるで自分が自分でなくなったかのような感じを覚えた。
 だがその事については悩むのはやめた。


 結局のところそこを恐れていても何も変わらず、俺の目の前の皿にはどこからどう見ても豚肉としか思えない料理が乗っているからだ。


 話を戻すと、俺の一日の生活はこんな感じだ。


 朝六時に起床、食事をして八時から昼までこの世界についての勉強。
 認識はこの世界に合わせてあるが知識は元の世界のままだからだ。


 昼ご飯を食べて少し休んだ後、午後は自由。
 夕食の後も自由。


 ゲームもスマホもテレビも漫画もないので夜は特にする事がなく、十時頃には就寝してしまう。
 要するに、元の世界では考えられない位健康的な生活を送っていた。


 比較として元の世界での生活を紹介しよう。
 朝の六時に起床は同じだが、すぐに家を出てコンビニで朝食と昼食を購入、電車に乗り込んで会社最寄りの駅に着くのが七時半、八時前には出社して朝食を食べながらメールのチェック。
 八時半に会社全体のミーティングがあり(業務は九時開始なのだが何故かその前に全社ミーティングがある)、それから業務開始。
 基本は外回りで取引先との打ち合わせが午前中のメインの業務になる。
 午後も大抵は打ち合わせで、会社に帰ってくるのは午後六時から七時、それから部門ミーティングをして事務仕事をし、会社を出るのは早くて九時から十時、納期前は終電を逃すこともざらでその時は会社近くの満喫に泊まる事になる。(当然費用は自分持ち)
 なので最後の方は寝袋を持ち込んでいた。


 それに比べてなんと人間的な生活な事か!


 この世界についての勉強は自然から文化、生活風習、宗教、政治に至るまで多岐に渡っていて、ルノアが時間が取れなかったり専門的な事は王宮お抱えの学者が教えてくれる。
 勉強自体は新しい事ばかりで非常に興味深いのだが筆記具が羊皮紙とインクに付けペンしかないのには参った。
 一応石板と白墨もあるのだが書きにくいうえにちょっとしか書けないからすぐに止めてしまった。


 紙はないのかと聞いてみたところ、サウザンにそれに近いものがあるらしい。
 しかし高級品であり製造方法は最高機密扱いになっているのだとか。
 紙を作ればそれで食っていけるかもしれないが、はっきり言って紙の製造方法なんて碌に知らない。
 とりあえず原料になる楮やミツマタを煮てそれを薄く延ばして乾かしたらいいのだろうけど、とてもすぐにできるとは思えない。
 という事でとりあえずは羊皮紙にペンで頑張る事にした。

「ブラック企業戦士、異世界で救国の勇者になる」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く