外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
19.朝を待つ二人
目を覚ますとまだ辺りは暗かった。
中途半端な時間に寝たせいか変な時間に目が覚めてしまった。
「駄目だ、眠れない」
何度か寝返りを打った後で諦めてベッドから身を起こした。
「散歩でもするかな」
屋敷を静かに抜け出して外に出るとあたりはまだ闇に包まれていた。
空は微かに白み始めているけど森の中はまだ暗く、屋敷の周囲は闇に覆われている。
温暖なワールフィアといっても夜明け前の空気はひんやりとしていた。
ちょっと森の中でもぶらつくか、と思っていると不意に目の前が塞がれた。
「うわっ!」
「しっ!声が大きい!」
思わず声をあげると口も塞がれた。
「リ、リンネ姫?」
後ろから忍び寄って俺の眼を塞いだのはリンネ姫だった。
ゆったりとした寝巻姿のままだ。
「な、なんでここに?」
「なんだか妙な時間に起きてしまってな。水でも飲もうと思って降りてきたらテツヤの姿が見えたのだ」
リンネ姫はそう言うとポーチの段差に腰を下ろした。
そして自分の横をポンポンと叩く。
俺が隣に座るとリンネ姫は肩に頭を乗せてきた。
「ここに連れてきてくれたことをテツヤに一言礼を言いたかったのだ」
こちらを見ずに独り言ちるようにリンネ姫が呟いた。
「来たのはリンネ姫の意思じゃないか。俺はただ一緒に来ただけだよ」
「そんなことはない」
リンネ姫が首を横に振った。
「実を言うと怖かったのだ。祖母がどういう経緯で我が国に来たのかも聞かされていたからな。祖母は結局生きて母国の地を踏むことは叶わなかった。そのことで恨み言を言う人ではなかったけど、そのこと思うとやるせなさと同時に恐れがでてきてな」
そう言ってリンネ姫は闇に包まれた森を見た。
「エルフ族の地、私の祖先の地に行っても受け入れてもらえぬのではないかと、お爺様も私が来ることを望んでいないのではないかと、そういう邪念がどうしても頭から離れなかったのだ」
俺はリンネ姫の肩を抱いた。
「でもルスドールさんは受け入れてくれた、そうだろ?あれは心から歓迎している顔だったよ。俺が保証する」
「ああ、本当に嬉しかったよ。私の身体に流れるエルフの血は招かれざるものではなかったと心から思えた瞬間だった」
リンネ姫がこちらを向いた。
その顔を朝日が照らしていた。
「私がここに来られたのはテツヤ、お主がいたからだ。不安な時にテツヤが横にいてくれた。牢で助けに来てくれた時にどれほど救われたことか」
「いや、俺は別にそん…」
続けようとした言葉が口に被さってきたリンネ姫の唇で阻まれた。
口をこじ開け、さぐるように舌が伸びてくる。
俺たちは朝日が差し掛かるテラスで長いキスを交わした。
「謙遜など聞く気はない。テツヤ、あなたは私の支えだ。テツヤがいてくれれば私は何だってできる。私をそうさせたのはテツヤ、お主なのだ。それを否定するのはお主と言えども許さぬよ」
そう言ってリンネ姫が再び唇を重ねてきた。
「こんな事を言っては王族失格かもしれない」
長い長いキスの後で熱い吐息を吐きながらリンネ姫が呟いてきた。
「正直言うと亜晶がなんなのかわからなくても良いとさえ思っているのだ。エルフの国、私のもう一つの故郷にテツヤと一緒に来られた、それだけで私は満ち足りているのだから」
そう言って俺の肩に頭を持たせかける。
「それじゃあ駄目だよ」
俺はリンネ姫の頭を手で抱えて正面から見つめた。
「亜晶の謎だって解く、なんなら亜晶をフィルド王国に持って帰る。それが俺の知ってるリンネ姫だ。そうだろ?」
きょとんとしていたリンネ姫だったけど、やがてぷっと吹き出した。
「そうだな!その通りだ!亜晶のことだって調べてみせるとも!」
俺たちは声をあげて笑い、抱き合った。
そうしてひとしきり笑った後でリンネ姫が立ち上がり、こちらに手を伸ばしてきた。
その背中越しに登ってこようとしている太陽が後光のように輝いている。
「テツヤ、まだまだ先は長いかもしれぬがこれからもよろしく頼んだぞ」
「ああ、もちろんだ…」
その手を取ろうとして俺はがばっと顔をそむけた。
「ん?どうしたのだ?」
リンネ姫が不思議そうな顔で見てくる。
その…リンネ姫の寝間着が朝日に透けているもんで…体のラインが…
理由に気付いたリンネ姫の顔が真っ赤に染まった。
「すけべ」
胸を手で隠しながらジト目でこちらを見てくる。
いや、しょうがないってこれは
「…で、でも…テツヤが見たいというのなら…別に構わないぞ。アマーリアやソラノの裸は何度も見ているのだろう?」
いやいやいや、あれはどれも不可抗力だから!
「おはようございます」
その時ドアが開いてメイドが出てきた。
俺たちは慌てて距離を置く。
「今から朝食の準備をいたしますのでもうしばらくお待ちください」
メイドは顔色一つ変えることなく礼をしてきた。
「あ、ああ、わかった。ありがとう」
用事は済んだはずなのにそのメイドはじっとこちらを見続けていた。
な、なんだ?まさかルスドールさんに報告するのか?
そんな事を考えているとメイドがついと森の方を指差した。
「あちらに下がちょっとした空間になっている巨岩があります。そこでしたら誰にも見とがめられずに心ゆくまで楽しめるかと」
いやいやいや、その気づかいは無用ですから!
中途半端な時間に寝たせいか変な時間に目が覚めてしまった。
「駄目だ、眠れない」
何度か寝返りを打った後で諦めてベッドから身を起こした。
「散歩でもするかな」
屋敷を静かに抜け出して外に出るとあたりはまだ闇に包まれていた。
空は微かに白み始めているけど森の中はまだ暗く、屋敷の周囲は闇に覆われている。
温暖なワールフィアといっても夜明け前の空気はひんやりとしていた。
ちょっと森の中でもぶらつくか、と思っていると不意に目の前が塞がれた。
「うわっ!」
「しっ!声が大きい!」
思わず声をあげると口も塞がれた。
「リ、リンネ姫?」
後ろから忍び寄って俺の眼を塞いだのはリンネ姫だった。
ゆったりとした寝巻姿のままだ。
「な、なんでここに?」
「なんだか妙な時間に起きてしまってな。水でも飲もうと思って降りてきたらテツヤの姿が見えたのだ」
リンネ姫はそう言うとポーチの段差に腰を下ろした。
そして自分の横をポンポンと叩く。
俺が隣に座るとリンネ姫は肩に頭を乗せてきた。
「ここに連れてきてくれたことをテツヤに一言礼を言いたかったのだ」
こちらを見ずに独り言ちるようにリンネ姫が呟いた。
「来たのはリンネ姫の意思じゃないか。俺はただ一緒に来ただけだよ」
「そんなことはない」
リンネ姫が首を横に振った。
「実を言うと怖かったのだ。祖母がどういう経緯で我が国に来たのかも聞かされていたからな。祖母は結局生きて母国の地を踏むことは叶わなかった。そのことで恨み言を言う人ではなかったけど、そのこと思うとやるせなさと同時に恐れがでてきてな」
そう言ってリンネ姫は闇に包まれた森を見た。
「エルフ族の地、私の祖先の地に行っても受け入れてもらえぬのではないかと、お爺様も私が来ることを望んでいないのではないかと、そういう邪念がどうしても頭から離れなかったのだ」
俺はリンネ姫の肩を抱いた。
「でもルスドールさんは受け入れてくれた、そうだろ?あれは心から歓迎している顔だったよ。俺が保証する」
「ああ、本当に嬉しかったよ。私の身体に流れるエルフの血は招かれざるものではなかったと心から思えた瞬間だった」
リンネ姫がこちらを向いた。
その顔を朝日が照らしていた。
「私がここに来られたのはテツヤ、お主がいたからだ。不安な時にテツヤが横にいてくれた。牢で助けに来てくれた時にどれほど救われたことか」
「いや、俺は別にそん…」
続けようとした言葉が口に被さってきたリンネ姫の唇で阻まれた。
口をこじ開け、さぐるように舌が伸びてくる。
俺たちは朝日が差し掛かるテラスで長いキスを交わした。
「謙遜など聞く気はない。テツヤ、あなたは私の支えだ。テツヤがいてくれれば私は何だってできる。私をそうさせたのはテツヤ、お主なのだ。それを否定するのはお主と言えども許さぬよ」
そう言ってリンネ姫が再び唇を重ねてきた。
「こんな事を言っては王族失格かもしれない」
長い長いキスの後で熱い吐息を吐きながらリンネ姫が呟いてきた。
「正直言うと亜晶がなんなのかわからなくても良いとさえ思っているのだ。エルフの国、私のもう一つの故郷にテツヤと一緒に来られた、それだけで私は満ち足りているのだから」
そう言って俺の肩に頭を持たせかける。
「それじゃあ駄目だよ」
俺はリンネ姫の頭を手で抱えて正面から見つめた。
「亜晶の謎だって解く、なんなら亜晶をフィルド王国に持って帰る。それが俺の知ってるリンネ姫だ。そうだろ?」
きょとんとしていたリンネ姫だったけど、やがてぷっと吹き出した。
「そうだな!その通りだ!亜晶のことだって調べてみせるとも!」
俺たちは声をあげて笑い、抱き合った。
そうしてひとしきり笑った後でリンネ姫が立ち上がり、こちらに手を伸ばしてきた。
その背中越しに登ってこようとしている太陽が後光のように輝いている。
「テツヤ、まだまだ先は長いかもしれぬがこれからもよろしく頼んだぞ」
「ああ、もちろんだ…」
その手を取ろうとして俺はがばっと顔をそむけた。
「ん?どうしたのだ?」
リンネ姫が不思議そうな顔で見てくる。
その…リンネ姫の寝間着が朝日に透けているもんで…体のラインが…
理由に気付いたリンネ姫の顔が真っ赤に染まった。
「すけべ」
胸を手で隠しながらジト目でこちらを見てくる。
いや、しょうがないってこれは
「…で、でも…テツヤが見たいというのなら…別に構わないぞ。アマーリアやソラノの裸は何度も見ているのだろう?」
いやいやいや、あれはどれも不可抗力だから!
「おはようございます」
その時ドアが開いてメイドが出てきた。
俺たちは慌てて距離を置く。
「今から朝食の準備をいたしますのでもうしばらくお待ちください」
メイドは顔色一つ変えることなく礼をしてきた。
「あ、ああ、わかった。ありがとう」
用事は済んだはずなのにそのメイドはじっとこちらを見続けていた。
な、なんだ?まさかルスドールさんに報告するのか?
そんな事を考えているとメイドがついと森の方を指差した。
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