外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
17.やる時は徹底的に
「助かったよ、とお礼を言いたいところだけど、そうもいかないだろうね。あいつらを完全に怒らせちゃったよ」
礼を言いつつもイネスは複雑な表情だ。
「あいつらはなんなんだ?なんで徴税官がイネスに嫌がらせをしてるんだ?」
「このせいだよ。これがあいつらには気に食わないんだ」
そう言ってイネスは後ろの畑を手で示した。
「さっきも言ってたけどなんで作物がたくさん採れたら駄目なんだ?あいつらにとっても良いことなんじゃないのか?」
「税を納められたら困る、ということなのだな」
ゼファーの言葉にイネスが頷いた。
??どういうことだ?なんで税を納めるのが駄目なんだ?
「この辺はベルトランに吸収された併合国領だ。そういう地域では税が治められない場合は奴隷としてその身を売ることが許されている」
「そんな馬鹿な!人を奴隷として売るだって!?」
「だが採れた作物を全て税として納めたら家族の食い扶持をどうする?換税奴隷の期限は一年、奴隷としてそれだけ働けば再び家に帰れるのだ。家族全員が飢えるのとどちらがマシだと思う?」
「…クッ!」
俺には言葉が出なかった。
ベルトランにはベルトランの事情がある、今の俺にはそれを正面切って否定するだけの知識も覚悟もない。
「問題はだ、それを悪用している者がいるということだ」
「そう、ウルカンシアの地区総督は奴隷を強制労働させて暴利をむさぼってる。収量が上がって換税奴隷が減ったら困るってことなんだ。あいつらはその手駒って訳」
なんて話だ。
ベルトランじゃ奴隷制がまだあるって話だったけど、こんなことがまかり通っているのかよ。
睨みつけるとゼファーは困ったように肩をすくめた。
帝王といえども昔から続く制度を簡単に変えられないことはわかってるけどやるせない気持ちがこみあげてくる。
「あんたたち、今すぐ逃げた方がいいよ。あいつらは蛇みたいに執念深いんだ。ここにいたら絶対に報復されるよ」
イネスが立ち上がった。
「でもそれじゃあんたが!」
「あたしのことなら大丈夫。これは自分が蒔いた種なんだから自分でなんとかするさ。さあ早く行った行った!」
「そうだな。これ以上あなたと一緒にいると我々とあなたが仲間だと思われてしまうな」
ゼファーが泥をはたきながら立ち上がった。
「おい!」
「いいからさっさと行くぞ。これ以上迷惑はかけられん」
抗議の声を無視してゼファーはすたすたと去っていった。
「あの野郎…!」
「いいんだ。あんたたちも気を付けてね」
振り返るとイネスが気丈に微笑み返してきた。
大丈夫な訳がない。あいつらは絶対にイネスに報復してくるはずだ。
次は無事で済むとは思えない。
「おいゼファー、ふざけてる場合じゃないぞ!このまま逃げ出していい訳ないだろ!」
「当然だ」
非難の声をあげながら追いかけるとゼファーは馬に乗り込みながら答えてきた。
「これを戦に例えるなら戦況はこちらが押しているのだ。なぜ逃げる必要がある?」
ようやくそこでゼファーの意図が分かった。
「なんだよ、そっちもやる気だったのかよ」
「やる時は徹底的に、それが余の信条だ」
俺たちは馬にまたがると徴税官の住む家へと向かった。
「主の言いたいことはわかる。だがこの制度は何百年と続いているのだ。いわばこの国の根幹と結びついていると言っていい」
馬上で揺られながらゼファーが独り言のように呟いた。
「別に何も言うつもりはねえよ。意見を挟めるくらいこの国の事情に詳しい訳じゃないしな」
俺も振り向くことなく空に向かって言葉を返す。
「でもそれで俺や仲間に火の粉が降りかかるようなら遠慮なく振り払わせてもらうけどな」
「はん、イネスもその一人という訳か?」
「袖振り合うも他生の縁って言葉があってな」
「何を言ってるのかわからんが俺はただの行商人ゼファーだ。好きにすると良いさ」
「どうでもいいけどなんか今のあんたって暴れん坊将軍みたいだな。いや水戸黄門か?」
「アバレンボー将軍?ミトコーモン?フィルド王国にそういう者がいるのか?」
「何でもない、忘れてくれ」
俺たちは夜の闇の中を並んで馬を走らせていった。
徴税官の宿舎は村外れにあった。
スキャンしてみると家の中には先ほどの二人を含めて五人の人間がいるみたいだ。
「しかしなんで徴税官が村に住んでるんだ?収穫の時くらいしか仕事はないんじゃないのか?」
「地方では徴税官と衛兵を兼任していることが多いのだ。いくぞ」
ドアを開けるとそこは傷の手当てをしている真っ最中だった。
「て、てめえ!」
俺たちの姿を見るなり先ほどの二人の顔が青ざめた。
「あんたらのことだからいずれイネスに仕返しをするつもりなんだろ?そんな気も起こさなくなるくらい徹底的にやっておこうと思ってな」
「このクソ野郎!」
「手前らの方こそぶっ殺してやる!」
男たちが怒りの形相で武器を構えた。
「じゃあ後は任せたぞ」
ゼファーはそう言うと宿舎から出ていった。
「あのなあ…」
「そういう荒事は向かんのだ」
「一人でいいたあ舐めてくれるじゃねえか!」
「俺たちに歯向かったことを地獄で後悔させてやる!」
男たちが襲い掛かってきた。
「はあ…まったく」
俺はため息をついた。
礼を言いつつもイネスは複雑な表情だ。
「あいつらはなんなんだ?なんで徴税官がイネスに嫌がらせをしてるんだ?」
「このせいだよ。これがあいつらには気に食わないんだ」
そう言ってイネスは後ろの畑を手で示した。
「さっきも言ってたけどなんで作物がたくさん採れたら駄目なんだ?あいつらにとっても良いことなんじゃないのか?」
「税を納められたら困る、ということなのだな」
ゼファーの言葉にイネスが頷いた。
??どういうことだ?なんで税を納めるのが駄目なんだ?
「この辺はベルトランに吸収された併合国領だ。そういう地域では税が治められない場合は奴隷としてその身を売ることが許されている」
「そんな馬鹿な!人を奴隷として売るだって!?」
「だが採れた作物を全て税として納めたら家族の食い扶持をどうする?換税奴隷の期限は一年、奴隷としてそれだけ働けば再び家に帰れるのだ。家族全員が飢えるのとどちらがマシだと思う?」
「…クッ!」
俺には言葉が出なかった。
ベルトランにはベルトランの事情がある、今の俺にはそれを正面切って否定するだけの知識も覚悟もない。
「問題はだ、それを悪用している者がいるということだ」
「そう、ウルカンシアの地区総督は奴隷を強制労働させて暴利をむさぼってる。収量が上がって換税奴隷が減ったら困るってことなんだ。あいつらはその手駒って訳」
なんて話だ。
ベルトランじゃ奴隷制がまだあるって話だったけど、こんなことがまかり通っているのかよ。
睨みつけるとゼファーは困ったように肩をすくめた。
帝王といえども昔から続く制度を簡単に変えられないことはわかってるけどやるせない気持ちがこみあげてくる。
「あんたたち、今すぐ逃げた方がいいよ。あいつらは蛇みたいに執念深いんだ。ここにいたら絶対に報復されるよ」
イネスが立ち上がった。
「でもそれじゃあんたが!」
「あたしのことなら大丈夫。これは自分が蒔いた種なんだから自分でなんとかするさ。さあ早く行った行った!」
「そうだな。これ以上あなたと一緒にいると我々とあなたが仲間だと思われてしまうな」
ゼファーが泥をはたきながら立ち上がった。
「おい!」
「いいからさっさと行くぞ。これ以上迷惑はかけられん」
抗議の声を無視してゼファーはすたすたと去っていった。
「あの野郎…!」
「いいんだ。あんたたちも気を付けてね」
振り返るとイネスが気丈に微笑み返してきた。
大丈夫な訳がない。あいつらは絶対にイネスに報復してくるはずだ。
次は無事で済むとは思えない。
「おいゼファー、ふざけてる場合じゃないぞ!このまま逃げ出していい訳ないだろ!」
「当然だ」
非難の声をあげながら追いかけるとゼファーは馬に乗り込みながら答えてきた。
「これを戦に例えるなら戦況はこちらが押しているのだ。なぜ逃げる必要がある?」
ようやくそこでゼファーの意図が分かった。
「なんだよ、そっちもやる気だったのかよ」
「やる時は徹底的に、それが余の信条だ」
俺たちは馬にまたがると徴税官の住む家へと向かった。
「主の言いたいことはわかる。だがこの制度は何百年と続いているのだ。いわばこの国の根幹と結びついていると言っていい」
馬上で揺られながらゼファーが独り言のように呟いた。
「別に何も言うつもりはねえよ。意見を挟めるくらいこの国の事情に詳しい訳じゃないしな」
俺も振り向くことなく空に向かって言葉を返す。
「でもそれで俺や仲間に火の粉が降りかかるようなら遠慮なく振り払わせてもらうけどな」
「はん、イネスもその一人という訳か?」
「袖振り合うも他生の縁って言葉があってな」
「何を言ってるのかわからんが俺はただの行商人ゼファーだ。好きにすると良いさ」
「どうでもいいけどなんか今のあんたって暴れん坊将軍みたいだな。いや水戸黄門か?」
「アバレンボー将軍?ミトコーモン?フィルド王国にそういう者がいるのか?」
「何でもない、忘れてくれ」
俺たちは夜の闇の中を並んで馬を走らせていった。
徴税官の宿舎は村外れにあった。
スキャンしてみると家の中には先ほどの二人を含めて五人の人間がいるみたいだ。
「しかしなんで徴税官が村に住んでるんだ?収穫の時くらいしか仕事はないんじゃないのか?」
「地方では徴税官と衛兵を兼任していることが多いのだ。いくぞ」
ドアを開けるとそこは傷の手当てをしている真っ最中だった。
「て、てめえ!」
俺たちの姿を見るなり先ほどの二人の顔が青ざめた。
「あんたらのことだからいずれイネスに仕返しをするつもりなんだろ?そんな気も起こさなくなるくらい徹底的にやっておこうと思ってな」
「このクソ野郎!」
「手前らの方こそぶっ殺してやる!」
男たちが怒りの形相で武器を構えた。
「じゃあ後は任せたぞ」
ゼファーはそう言うと宿舎から出ていった。
「あのなあ…」
「そういう荒事は向かんのだ」
「一人でいいたあ舐めてくれるじゃねえか!」
「俺たちに歯向かったことを地獄で後悔させてやる!」
男たちが襲い掛かってきた。
「はあ…まったく」
俺はため息をついた。
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