外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
14.ここから先
「いやいやいや、何を言ってるんすか!?早いところ帰らないと今頃大騒ぎですよ!みんなだって心配してますよ!」
「構わん、心配したい奴にはさせておけ。余は帰らんぞ」
何言ってんの、この人?王様が行方不明になったらどれだけの影響が出るのか分かってるのか?
「…帰らないって…本気で言ってるんですか?」
「余はここでやることがあるのでな。なに、帰らぬとは言っても一時的にだ。そうだな、一か月ほどなら大きな影響はあるまい。」
なんだ、帰るのかよ。
ベルトラン十五世の言葉に俺は胸をなでおろした。
あれだな、ファンタジー小説に出てくる王様によくありがちな奴ね。
しばらく王様の身分を隠して漫遊したいとか、そういう。
「そうならそうと言ってくださいよ。で、とりあえずどうするつもりなんですか」
この手の人間は一度言い出したら聞かないだろうからとりあえず話を合わせることにしよう。
そのうち現実を知って自分の方から帰りたいと言い出すに決まっている。
「そうだな…まずは人里に降りることにしよう。その後のことはそれからだ」
「…ツヤ…テ…ツヤ…」
その時突然耳に声が響いてきた。
リンネ姫の声だ!
それで魔晶を使った通信用の魔具を耳に付けていたことを思い出した。
姿が消えたことを心配したリンネ姫が通信してきてるんだ。
「もしもし、リンネ姫か?そっちは大丈夫か?」
「テツヤ…テツヤなのか!?良かった…無事なのだな…?」
「ああ、こっちは無事だ!陛下もいる!そっちは大丈夫なのか?」
「こっちは…みな…無事だった。しかしお主ら二人が消えて大騒ぎだ…お主が陛下をかどわかしたなどという人も出てきている…」
リンネ姫の言葉に愕然とした。
だが確かにそう捉える人がいてもおかしくない。
これはマジで早く帰らないとベルトラン帝国だけの問題じゃなくなるぞ。
「なるべく早く陛下を連れて戻る!だからそっちはそっちでなんとか頑張っててくれ!」
「頼ん…だ…ぞ」
そこで通信が切れた。
魔晶の中の魔素を全て使い切ってしまったのだ。
「クソ、こうしちゃいられない!早く帰りますよ!」
「いや、それは駄目だ」
しかしベルトラン十五世は俺の言葉をあっさり拒否した。
「…なんで!」
「言ったであろう、余はここでやることがあると。もし主が無理にでも余を連れて帰るのであれば余は主が余を攫ったと宣言するぞ。それでも良いのか?」
「……ッ!」
俺は二の句が続けられなかった。
この男はやると言ったら間違いなくやるだろう。
無理やり連れて帰ったら確実に俺が首謀者にされてしまう。
それだけは避けなくてはいけない。
「じゃあ、どうするつもりなんですか……」
「決まってるであろう」
そう言ってベルトラン十五世は踵を返した。
「まずは人里へ降りるぞ。早く案内せよ。主の力なら人里を見つけることなど容易なのであろう?」
そう言ってさっさと山を下りていく。
クソ!なんて傲慢な奴だ!
俺は憤慨しながらも拒絶することもできずに後をついていった。
どうにかしてさっさと帰るように仕向けないと。
◆
「ここを降りていけばいずれ小さな村に着くみたいです」
「うむ、日が暮れる前に辿り着くとしよう」
意外にもベルトラン十五世は健脚で疲れた様子も見せずに険しい山道をひょいひょいと下っていた。
「…しかしこんな所にどんな用事があるってんですか。みたところ何もないような田舎ですけど」
「それはおいおい話してやろう…」
その時背後から蹄の音が聞こえてきた。
まずい、俺たちが逃げ出したことに気付いて追手が来たのか!
周囲は木も碌に生えていないような荒れた山道だ、隠れる場所もない。
「陛下、俺が穴を開けるので隠れてください!」
「いや、そんなことをしても追手は諦めぬだろう。ならばここで迎え撃った方が良い。任せたぞ」
「任せたぞって…」
「主の力があれば余裕であろう?」
そう言ってベルトラン十五世は岩の上に寝ころんだ。
完全に俺の力をあてにしてやがる。
とは言えこんな所で追手に襲われるのは俺だってごめんだ。
「とりあえずこいつらはどうしますか?」
俺たちを追ってきた男どもは既に昏倒している。
「……そうだな、まあ放っておいてもそのうちこやつらの仲間が見つけるだろう。それよりも先を急ぐとしよう」
「それだったら」
そう言って俺は男たちが着ているものを剥いだ。
「こいつを着てください」
「何故余がそのような汚いものを着ねばならんのだ」
「その恰好じゃ目立ちすぎますって。それじゃ俺は王様だと叫びながら歩いてるようなもんですよ」
「む、それもそうか」
意外にもベルトラン十五世は素直に従った。
俺も別の男から奪った服を着こんだ。
ベルトラン十五世の目立つ銀髪は布をターバンのように巻いて隠すことにした。
「そいつも何とかした方が良いですね」
俺はベルトラン十五世の身につけている豪華なアクセサリを指差した。
首から腕から指まで純金と宝石、魔晶で出来たアクセサリをジャラジャラとつけているのだ、服を変える程度じゃ全く意味がない。
「仕方があるまいな」
ベルトラン十五世はそう言って惜しげもなくアクセサリを外した。
俺はそれを全て集めて一本の金のベルトに変えた。
宝石類も全てそのベルトに付けてある。
「こいつを服の裏側にでも巻いといてください。いざという時に何かに使えるかもしれないし」
「大したものよのう。これ一つ一つが我が国きっての魔法加工師が作り上げた魔道具なのだぞ。並の魔法使いであれば傷一つ付けることができぬのだがな」
う、ひょっとして滅茶苦茶高価なんじゃ……
「大したことはない。指輪一つで家一軒と交換できるくらいだ」
大したことありまくりじゃん!
良いのかな…そんなものをベルト一本にまとめてしまって。
「なに、背に腹は代えられぬ。それよりも身分を隠すのであれば余の呼び名も変えた方が良いだろうな」
「それはまあ、陛下とかベルトラン十五世とお呼びしていたら速攻でばれるでしょうね」
「そうだな、それでは余のことはゼファーと呼ぶがよい」
「ゼファー…バイクですか?」
「バイク…なんのことだ?余は幼名をゼファーニアというからそこから取ったのだ」
「なるほど」
「よし、ここからは敬語もなしだ!余、いや俺は一介の旅人ゼファーでお主はその連れのテツヤ、それでいくぞ!」
「はあ、まあそれでいいんならそれで」
やけにノリノリのベルトラン十五世、いやゼファーと共に俺は人里を目指すことになったのだった。
「構わん、心配したい奴にはさせておけ。余は帰らんぞ」
何言ってんの、この人?王様が行方不明になったらどれだけの影響が出るのか分かってるのか?
「…帰らないって…本気で言ってるんですか?」
「余はここでやることがあるのでな。なに、帰らぬとは言っても一時的にだ。そうだな、一か月ほどなら大きな影響はあるまい。」
なんだ、帰るのかよ。
ベルトラン十五世の言葉に俺は胸をなでおろした。
あれだな、ファンタジー小説に出てくる王様によくありがちな奴ね。
しばらく王様の身分を隠して漫遊したいとか、そういう。
「そうならそうと言ってくださいよ。で、とりあえずどうするつもりなんですか」
この手の人間は一度言い出したら聞かないだろうからとりあえず話を合わせることにしよう。
そのうち現実を知って自分の方から帰りたいと言い出すに決まっている。
「そうだな…まずは人里に降りることにしよう。その後のことはそれからだ」
「…ツヤ…テ…ツヤ…」
その時突然耳に声が響いてきた。
リンネ姫の声だ!
それで魔晶を使った通信用の魔具を耳に付けていたことを思い出した。
姿が消えたことを心配したリンネ姫が通信してきてるんだ。
「もしもし、リンネ姫か?そっちは大丈夫か?」
「テツヤ…テツヤなのか!?良かった…無事なのだな…?」
「ああ、こっちは無事だ!陛下もいる!そっちは大丈夫なのか?」
「こっちは…みな…無事だった。しかしお主ら二人が消えて大騒ぎだ…お主が陛下をかどわかしたなどという人も出てきている…」
リンネ姫の言葉に愕然とした。
だが確かにそう捉える人がいてもおかしくない。
これはマジで早く帰らないとベルトラン帝国だけの問題じゃなくなるぞ。
「なるべく早く陛下を連れて戻る!だからそっちはそっちでなんとか頑張っててくれ!」
「頼ん…だ…ぞ」
そこで通信が切れた。
魔晶の中の魔素を全て使い切ってしまったのだ。
「クソ、こうしちゃいられない!早く帰りますよ!」
「いや、それは駄目だ」
しかしベルトラン十五世は俺の言葉をあっさり拒否した。
「…なんで!」
「言ったであろう、余はここでやることがあると。もし主が無理にでも余を連れて帰るのであれば余は主が余を攫ったと宣言するぞ。それでも良いのか?」
「……ッ!」
俺は二の句が続けられなかった。
この男はやると言ったら間違いなくやるだろう。
無理やり連れて帰ったら確実に俺が首謀者にされてしまう。
それだけは避けなくてはいけない。
「じゃあ、どうするつもりなんですか……」
「決まってるであろう」
そう言ってベルトラン十五世は踵を返した。
「まずは人里へ降りるぞ。早く案内せよ。主の力なら人里を見つけることなど容易なのであろう?」
そう言ってさっさと山を下りていく。
クソ!なんて傲慢な奴だ!
俺は憤慨しながらも拒絶することもできずに後をついていった。
どうにかしてさっさと帰るように仕向けないと。
◆
「ここを降りていけばいずれ小さな村に着くみたいです」
「うむ、日が暮れる前に辿り着くとしよう」
意外にもベルトラン十五世は健脚で疲れた様子も見せずに険しい山道をひょいひょいと下っていた。
「…しかしこんな所にどんな用事があるってんですか。みたところ何もないような田舎ですけど」
「それはおいおい話してやろう…」
その時背後から蹄の音が聞こえてきた。
まずい、俺たちが逃げ出したことに気付いて追手が来たのか!
周囲は木も碌に生えていないような荒れた山道だ、隠れる場所もない。
「陛下、俺が穴を開けるので隠れてください!」
「いや、そんなことをしても追手は諦めぬだろう。ならばここで迎え撃った方が良い。任せたぞ」
「任せたぞって…」
「主の力があれば余裕であろう?」
そう言ってベルトラン十五世は岩の上に寝ころんだ。
完全に俺の力をあてにしてやがる。
とは言えこんな所で追手に襲われるのは俺だってごめんだ。
「とりあえずこいつらはどうしますか?」
俺たちを追ってきた男どもは既に昏倒している。
「……そうだな、まあ放っておいてもそのうちこやつらの仲間が見つけるだろう。それよりも先を急ぐとしよう」
「それだったら」
そう言って俺は男たちが着ているものを剥いだ。
「こいつを着てください」
「何故余がそのような汚いものを着ねばならんのだ」
「その恰好じゃ目立ちすぎますって。それじゃ俺は王様だと叫びながら歩いてるようなもんですよ」
「む、それもそうか」
意外にもベルトラン十五世は素直に従った。
俺も別の男から奪った服を着こんだ。
ベルトラン十五世の目立つ銀髪は布をターバンのように巻いて隠すことにした。
「そいつも何とかした方が良いですね」
俺はベルトラン十五世の身につけている豪華なアクセサリを指差した。
首から腕から指まで純金と宝石、魔晶で出来たアクセサリをジャラジャラとつけているのだ、服を変える程度じゃ全く意味がない。
「仕方があるまいな」
ベルトラン十五世はそう言って惜しげもなくアクセサリを外した。
俺はそれを全て集めて一本の金のベルトに変えた。
宝石類も全てそのベルトに付けてある。
「こいつを服の裏側にでも巻いといてください。いざという時に何かに使えるかもしれないし」
「大したものよのう。これ一つ一つが我が国きっての魔法加工師が作り上げた魔道具なのだぞ。並の魔法使いであれば傷一つ付けることができぬのだがな」
う、ひょっとして滅茶苦茶高価なんじゃ……
「大したことはない。指輪一つで家一軒と交換できるくらいだ」
大したことありまくりじゃん!
良いのかな…そんなものをベルト一本にまとめてしまって。
「なに、背に腹は代えられぬ。それよりも身分を隠すのであれば余の呼び名も変えた方が良いだろうな」
「それはまあ、陛下とかベルトラン十五世とお呼びしていたら速攻でばれるでしょうね」
「そうだな、それでは余のことはゼファーと呼ぶがよい」
「ゼファー…バイクですか?」
「バイク…なんのことだ?余は幼名をゼファーニアというからそこから取ったのだ」
「なるほど」
「よし、ここからは敬語もなしだ!余、いや俺は一介の旅人ゼファーでお主はその連れのテツヤ、それでいくぞ!」
「はあ、まあそれでいいんならそれで」
やけにノリノリのベルトラン十五世、いやゼファーと共に俺は人里を目指すことになったのだった。
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