外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道 一人

4.助けを呼ぶ声

 翌朝、約束通りヘルマは再び屋敷の前にやってきた。


「案内すると言っても小さな村だからそんなに見て回るようなものはないぞ」


「構わんさ。ここで貴様がどういうことをしているのかに興味があるだけだからな」


「興味があると言ってもなあ…」




 とにかく俺はヘルマを案内して村を回ることにした。


 とは言え大通りが一本あるだけの小さな村なので案内は昼頃には終わってしまい、ヘルマは村よりも俺が作ったアスファルト道路の方に興味を示していた。




「ふむ、これはなかなか興味深いものだな。町々をこういう道路で結んだら経済的にも軍事的にもかなりの効果が見込めそうだ」


「アスファルトが産出するならどこでも舗装できるよ。アスファルトを熱して砂利と混ぜて引くだけでいいんだ」


「しかし貴様がこういう知識をどこで身に着けたのか興味があるな」


 ヘルマがそう言って俺を見てきた。


 切れ長の目は全てを見通しているかのようだ。




「そ、それは企業ひみ…じゃなくて機密事項だ」




「ふ、まあいいだろう」


 焦る俺だったがヘルマはそれを軽く流した。


 何を考えているのか分からないだけに逆にプレッシャーを感じるぞ。




「とりあえず休憩しないか?」


 俺はそう言ってヘルマを【バー鳥の巣】へと連れていった。




「ここはこの村唯一のバーなんだ。でも味はなかなかお勧めだぞ」


「いらっしゃい。あらテツヤ、こんな時間に珍しい。そしてこちらの美人さんは初めましてかしら」


 バーに入るとマスターが挨拶してきた。




「ああ、こちらはヘルマさんと言って俺の知り合いでね」


「お、テツヤさんじゃないっすか!って誰っすか、その美女は!?またどっかで引っ掛けてきたんすか?」


 奥のテーブルに座っていたイノシロウが俺に気付いてこっちに寄ってきた。


 こいつ、いつ来てもいるな。ちゃんと仕事してるのか?




「またとはなんだ」


「いやいや、何言ってるんすか!いつもアマーリアさんやソラノさんみたいな美女を引き連れてるくせにまだ足んないすか?俺にもあやからせてくださいよお!」


「いい加減にしな」


 しつこく絡んでくるイノシロウの頭をグランの仲間でオニ族の娘、イツキがエールのジョッキで殴りつけた。




「じゃあテツヤさん、ごゆっくりどうぞ。ほら行くよ!この猪頭!」


 イツキはそう言いながらイノシロウを蹴り上げながら店を出ていった。




「貴様はずいぶんと村の者に好かれているようだな」






 席についてようやく落ち着いたのちにヘルマが口を開いた。


「好かれてるっていうのかな。まあここまで来るのには色々あったよ」


 そう言って俺はマスターが持ってきたそば茶を飲んだ。


 偶然なんだろうけどそば茶は昔からトロブで飲まれていたらしい。




「為政者というのは様々だが貴様のようなタイプは後々苦労しそうだな」


「…それを言われると耳が痛いな。とはいえ他の方法を知らなくてさ」


「…言い過ぎたようだ。私のような戦うことしか知らぬものが口出しすることではなかったな」


 意外にもヘルマは素直に謝ってきた。


 ヘルマは自分のすべきこととそうでないことをきっちり分けるタイプなのかもしれない。




「いや、別に謝るようなことでもないさ。それよりもそっちのことを話してくれないか?好きなものとか嫌いなものとかさ。その方が案内もしやすくなると思うんだ」


「私のことか…」


 ヘルマが口を開いた時、突然バーのドアがけたたましく開かれ、イノシロウが血相を変えて飛び込んできた。


「た、大変だ!ワールフィアから魔族がやってきたぞ!」








    ◆








 イノシロウの報告に俺は大慌てで国境沿いに向かった。


 また魔族が攻めてきたのか?


 到着するとアマーリア、ソラノ、フラム、キリも来ていた。




「こ、これは…」


 国境の光景を見て俺は絶句した。


 そこには数百人はいるだろう魔族が集まっていたからだ。


 ドワーフ、ハーフリング、ノーム、ドライアドなど種族は様々だがみな一様に傷つき、怯えた表情をしている。


 着ている服もボロボロだ。


 誰かに追われてきたのか?




「一体何がどうなっているんだ?」


「わからん、だが今朝からここに集まってきたらしい。しかも続々増えてきている」


 アマーリアも困惑している。




「おーい、誰か話をできる者はいないか?事情を説明してくれ」


 大声で尋ねると集団の中からおずおずと立ち上がる影があった。




 ほっそりとした身なりの男性?で、一見すると女性かと見紛うばかりの美貌だ。




「私はフェリエと申します。勝手なこととはわかっているのですが、どうか我々を保護してもらえないでしょうか?」




 フェリエと名乗る人物はそう言って頭を深々と下げた。


「ほ、保護と言ったって…そもそも何から保護するんだ?」


「奴隷狩りです」


 フェリエはそう言って悔しそうに唇を噛んだ。



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