外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道 一人

4.魔獣討伐と道路敷設

「二時の方向からオーガウルフが一体、九時の方向からデビルキャットが三体、そちらに向かっています!」


 ソラノの声が響いた。


「任せろ!」


 アマーリアの振るう龍牙刀が襲い掛かってくるオーガウルフを両断する。


 山猫を一回り程大きくしたデビルキャットはキリとフラムによって倒された。


 俺たちはここ一週間ほどトロブとボーハルトの間の森で魔獣討伐をしていた。


 基本的にはソラノが空中から魔獣の位置を確認して残りの三人が狩るというシステムだ。


「このあたりの魔獣は全て狩りつくしたようです」


 ソラノが空から降りてきた。


「それにしてもカーリンさんの作った見魔眼鏡けんまがんきょうは凄いものですね。これがあれば魔獣がどこにいるか一目瞭然ですよ」


「この通信用イヤリングも凄いものだ。これがあれば上空にいるソラノといつでも会話できるのだからな」


 アマーリアも感心したように耳に下がっているイヤリングをつついた。


 見魔眼鏡けんまがんきょうをかけたソラノが魔獣を発見してその位置を通信用イヤリングを通じて地上の三人に知らせるという作戦は大当たりで、俺たちはこの一週間のうちに一帯の魔獣をあらかた狩りつくしていた。


 今回は修行ということでキリも同行しているけどなかなかどうして大した働きぶりだ。


 一方俺はと言うと……道路を作っていた。


 トロブとボーハルトを含めた一帯が俺の新たな領土となっていたのだけど、この二つの町を結ぶまともな道が一本もなかったから折角なのでこの機会に道を敷くことにしたのだ。


 残念ながらトロブの山から産出するアスファルトは大した量ではなかったので未舗装路だけど、この道が完成したら行き来がかなり楽になるはずだ。




「しかしワンドは何故魔獣を森に放ったのだろうな」


 アマーリアが首を傾げた。


「リンネはもし国王の軍勢が来た時の障害にするためだろうと言っていたな」






 現在旧カドモイン領には俺たち以外にも多数の軍隊が魔獣討伐に入っているという。


 そちらもリンネ姫が見魔眼鏡けんまがんきょうや通信用イヤリングを作って渡しているという話なのでおそらく魔獣討伐はすぐに終了するだろう。


 幸運だったのは屍人グールが森に放たれていないことだった。


 おそらくワンドが展開していた魔力障壁は魔法攻撃を防ぐ以外に屍人グールを町から出さない役目もあったのだろう。


 あの魔力障壁のお陰でカーリンが全ての屍人グールを倒すことができたのだ。


 もし屍人グールが森の中に放たれていたら今以上に厄介なことになっていただろう。


 ワンド亡き今は魔力障壁もなくなり、自由に空を飛んでボーハルトまで行けるようになっている。




「今日はこの辺でおしまいにするか」


 日は既に傾き、辺りは朱に染まっている。


 その時、突然空が暗くなった。


 同時に凄まじい羽ばたき音が辺りを埋め尽くす。


「うわっ」


「な、なんだ!?」


 見上げると空を埋め尽くさんばかりの黒い影が上空を横切っていた。


「おそらく蝙蝠だな。近くに洞窟の入り口が見えたからあそこから出入りしているのだろう」


 ソラノが説明してくれた。


 しかし結構びびる量だったぞ。一体何万匹いるんだ?




「洞窟か~、魔獣の住処になってそうだよな」


「明日はその辺を重点的に探索してみるか」


 そんなことを言いながら俺たちは帰路についたのだった。
















 翌日、俺たちは魔獣を討伐しながらボーハルトに到着した。


 昨日ソラノが発見した洞窟は案の定魔獣の住処になっていて、オーガウルフが十体、グレートサーベルタイガー七体、ゴブリンボア十二体という大討伐になった。


 結構大変だったけど狩った魔獣の体内にある魔晶は全て貰っていいことになっているからそれだけの価値があった。


 魔晶を持っていけばカーリンに魔具を作ってもらえることになっているし、売れば余裕で一財産になる。


 今のところトロブでは税金を徴収していないからこういう収入は非常に大事だ。








 ボーハルトは相変わらず静まり返っていた。


 住民が全て屍人グールに変えられてしまったからそれも当然なのだけど。




「なんか怖い」


 キリが俺にしがみついてきた。


 屍人グールは全て灰に帰り、町だけがその形を留めている様子は文字通りのゴーストタウンだった。


「ここを治めると言っても、人がいない町を治めてどうするんだ?」


「そうは言ってもここは国境沿いの要の町だから、なんらかの手を講じねばいつ何時ワンドのような輩が侵入してくるともわからないからな」




 そうなのだ、ボーハルトが国境沿いに位置していたせいで俺は西から南にのびる国境沿いの地域を治めることになってしまったのだ。


 あの国王、絶対に分かってて俺に押しつけやがったな。




「まあまあ、国王陛下もテツヤだからこそ任せたのだろう」


 アマーリアがなだめてくれたけどやはり釈然としないぞ。






「今日はこの町で野営することになるかもな」


「え~、ここなんか怖いよ。帰りたい」


「しっ、静かに!」


 雑談を交わしながら隣を歩いていたソラノとキリを俺は手で制した。


「誰かいるぞ」



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