外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
26.戦場の革命
「引け!みんな引くんだ!」
グランの合図でみんな一斉に退却を開始した。
俺も暴れるフラムを小脇に抱えてひたすら後ろに引き下がった。
「なんだあ?あいつら逃げやがったのか?」
バルバルザは呆気に取られていたがやがて口元を歪ませた。
「は、いつも通り隠れてネチネチ攻めようってんだな。だったらこっちは容赦なく奪わせてもらうだけだぜ」
予想通りそのまま前に進んできた。
昨日の話を聞く限りグランの部隊と言えどもケンタウロスの攻撃を防ぐ術は持たず、隠れて各個撃破を狙うゲリラ戦しか有効打がなかったらしい。
ケンタウロスはそれを見越して多少の犠牲は気にせず素早く奪えるだけ奪って退却するという方法を取るのが常だったようだ。
戦力は圧倒的に自分たちの方が大きい、そういう自負があるからこそ先ほどもあえて立ち止まってみせたのだろう。
そして今回も話通りに力任せに突っ込んできた。
それが俺の狙いだ。
まずは敵が分散する寸前まで奥に引き込む!
「すげえな、この道なんだよ!とんでもなく平らで走りやすいぜ!」
「こいつはとんでもねえ進歩を遂げたじゃねえか!よっぽどお宝を持ってるみてえだな!」
ケンタウロスは初めて見るであろうアスファルト道路に驚愕している。
走りやすいところがあればついついそこを通ってしまうのは生き物の性だけにケンタウロスも律儀にアスファルト道路を走って追いかけてきている。
「今だ!」
俺の叫び声と共に道路わきに偽装してあった小屋が弾け飛んだ。
そこから飛び出してきたのは…無数の鉄条網だった。
巨大な鉄条網の束がまるで大蛇のようにのたうちながらケンタウロスの周りを幾重にも囲んだ。
「な、なんだこいつは!?」
バルバルザ一行は驚愕の表情を浮かべて足を止めた。
今やケンタウロスたちを囲む鉄条網の壁は高さ二メートルを超えている。
健脚で知られるケンタウロスでも容易には跳びこせない高さだ。
「しゃらくせえ、こんな細っちい鉄線ごときにこのケンタウロス様が怯むとでも…うおっ痛え!」
「棘だ!この針金は無数の棘がついてやがる!」
「クソ、足にまとわりついてきやがるぞ!」
ケンタウロスは初めて見る鉄条網に戸惑いを隠せないでいた。
鎧を着こんでいるとはいえ足や関節部分はむき出しになっているので、無理して押し通ろうとするとそこに鉄条網の棘が容赦なく食い込んでいく。
だが本番はこれからだ。
「野郎ども、攻撃だ!」
グランの合図でみんなが一斉に攻撃に転じた。
こちらの武器は巨大なクロスボウ、投石器など全て遠距離から攻撃できるものばかりだ。
どれもケンタウロスの持つ弓矢に狙われないように遮蔽物から放つようにしている。
「ぐあっ!」
「ば、馬鹿な!俺たちの鎧を貫通しやがるぞ!」
重厚な鎧を着こんで盾を装備しているケンタウロスだったが、俺たちの攻撃はその全てを打ち砕いだ。
それも当然で、こっちの矢じりは俺の力で全て高速度工具鋼の硬度に引き上げている。
対して向こうの鎧は高くても炭素鋼程度、硬度には数倍の開きがある。
俺たちの攻撃にケンタウロスは次々に倒れていった。
「畜生!このクソ針金、全然切れやしねえ!」
「上にも張られてるせいで逃げられねえぞ!」
「駄目だ!このままじゃやられちまう!」
ケンタウロスたちの叫び声はやがて恐怖へと変わっていった。
驚くのも無理はない、鉄条網は地球で戦場を変えた兵器とも呼ばれているのだ。
切れず、ちぎれず、戦車ですら苦戦するものをケンタウロスがどうこうできるわけがない。
ソラノが弓を引き絞った。
放たれた矢はソラノの風魔法によって通常ではありえない動きをしながら的確にケンタウロスの急所を貫いていく。
「凄いな!」
「ふ、本当は剣よりもこっちの方が得意なのだ」
驚く俺にソラノは得意げに笑った。
アマーリアはというと遠距離からケンタウロスの顔を水で包みこんで窒息させていた。
え、えぐいな……
「おらぁっ!」
グランの投げた槍がケンタウロスをまとめて貫いていく。
戦況は圧倒的だった。
俺たちは遠方から攻撃するだけだったが、その中に鉄条網の中へ単身突進していく影があった。
フラムだ。
「危ないぞ!」
叫んだ俺をグランが制した。
「あいつのやりたいようにやらせてやれ。この位の戦いでやられるような奴じゃねえよ」
ククリナイフのように湾曲した山刀を両手に持ち、鉄条網をかいくぐるとフラムは飛び交う矢を交わしながらケンタウロスの兵へ飛び掛かっていった。
まるで山猫のような俊敏さだ。
火炎球をケンタウロスの顔に放ち、生み出した隙で兜の隙間から喉元へナイフを突き立てるとすぐに飛び退って次の攻撃目標へと向かっていく。
火炎球自体はケンタウロスにほとんどダメージを与えていないけど視力を奪うことでナイフでの攻撃を確実なものにしている。
おそろしく実践的で手慣れた攻撃だった。
時には鉄条網の中に飛び込んでケンタウロスの攻撃を交わしてすらいる。
流石に全ての攻撃や鉄条網は防ぎきれないのか体のあちこちに傷を負い、服もずたずたになっているけど全く攻撃を止める様子がない。
無謀とも思えるフラムの攻撃にケンタウロスの兵たちは更に恐慌し、俺たちの攻撃に無防備な姿を晒しては次々と倒れていった。
「バルバルザ様、このままじゃ全滅しちまいます!」
「降参だ!降参するから止めてくれえ!」
戦いが始まって一時間、既にケンタウロスは総崩れの様相を呈していた。
「死ね」
フラムがナイフを構えてバルバルザに迫った。
「クソ、誰か何とかしやがれ!」
バルバルザが絶叫した。
「はーい♥」
その時声がしたと思うと上空から降ってくる影があった。
その影は巨大なハンマーで鉄条網の防御を一瞬で破壊した。
「やほやほ、元気にしてた?テツヤ♥」
その声は聞き覚えがあった。
「リュース!」
土煙が晴れたそこに立っていたのはリュースだった。
グランの合図でみんな一斉に退却を開始した。
俺も暴れるフラムを小脇に抱えてひたすら後ろに引き下がった。
「なんだあ?あいつら逃げやがったのか?」
バルバルザは呆気に取られていたがやがて口元を歪ませた。
「は、いつも通り隠れてネチネチ攻めようってんだな。だったらこっちは容赦なく奪わせてもらうだけだぜ」
予想通りそのまま前に進んできた。
昨日の話を聞く限りグランの部隊と言えどもケンタウロスの攻撃を防ぐ術は持たず、隠れて各個撃破を狙うゲリラ戦しか有効打がなかったらしい。
ケンタウロスはそれを見越して多少の犠牲は気にせず素早く奪えるだけ奪って退却するという方法を取るのが常だったようだ。
戦力は圧倒的に自分たちの方が大きい、そういう自負があるからこそ先ほどもあえて立ち止まってみせたのだろう。
そして今回も話通りに力任せに突っ込んできた。
それが俺の狙いだ。
まずは敵が分散する寸前まで奥に引き込む!
「すげえな、この道なんだよ!とんでもなく平らで走りやすいぜ!」
「こいつはとんでもねえ進歩を遂げたじゃねえか!よっぽどお宝を持ってるみてえだな!」
ケンタウロスは初めて見るであろうアスファルト道路に驚愕している。
走りやすいところがあればついついそこを通ってしまうのは生き物の性だけにケンタウロスも律儀にアスファルト道路を走って追いかけてきている。
「今だ!」
俺の叫び声と共に道路わきに偽装してあった小屋が弾け飛んだ。
そこから飛び出してきたのは…無数の鉄条網だった。
巨大な鉄条網の束がまるで大蛇のようにのたうちながらケンタウロスの周りを幾重にも囲んだ。
「な、なんだこいつは!?」
バルバルザ一行は驚愕の表情を浮かべて足を止めた。
今やケンタウロスたちを囲む鉄条網の壁は高さ二メートルを超えている。
健脚で知られるケンタウロスでも容易には跳びこせない高さだ。
「しゃらくせえ、こんな細っちい鉄線ごときにこのケンタウロス様が怯むとでも…うおっ痛え!」
「棘だ!この針金は無数の棘がついてやがる!」
「クソ、足にまとわりついてきやがるぞ!」
ケンタウロスは初めて見る鉄条網に戸惑いを隠せないでいた。
鎧を着こんでいるとはいえ足や関節部分はむき出しになっているので、無理して押し通ろうとするとそこに鉄条網の棘が容赦なく食い込んでいく。
だが本番はこれからだ。
「野郎ども、攻撃だ!」
グランの合図でみんなが一斉に攻撃に転じた。
こちらの武器は巨大なクロスボウ、投石器など全て遠距離から攻撃できるものばかりだ。
どれもケンタウロスの持つ弓矢に狙われないように遮蔽物から放つようにしている。
「ぐあっ!」
「ば、馬鹿な!俺たちの鎧を貫通しやがるぞ!」
重厚な鎧を着こんで盾を装備しているケンタウロスだったが、俺たちの攻撃はその全てを打ち砕いだ。
それも当然で、こっちの矢じりは俺の力で全て高速度工具鋼の硬度に引き上げている。
対して向こうの鎧は高くても炭素鋼程度、硬度には数倍の開きがある。
俺たちの攻撃にケンタウロスは次々に倒れていった。
「畜生!このクソ針金、全然切れやしねえ!」
「上にも張られてるせいで逃げられねえぞ!」
「駄目だ!このままじゃやられちまう!」
ケンタウロスたちの叫び声はやがて恐怖へと変わっていった。
驚くのも無理はない、鉄条網は地球で戦場を変えた兵器とも呼ばれているのだ。
切れず、ちぎれず、戦車ですら苦戦するものをケンタウロスがどうこうできるわけがない。
ソラノが弓を引き絞った。
放たれた矢はソラノの風魔法によって通常ではありえない動きをしながら的確にケンタウロスの急所を貫いていく。
「凄いな!」
「ふ、本当は剣よりもこっちの方が得意なのだ」
驚く俺にソラノは得意げに笑った。
アマーリアはというと遠距離からケンタウロスの顔を水で包みこんで窒息させていた。
え、えぐいな……
「おらぁっ!」
グランの投げた槍がケンタウロスをまとめて貫いていく。
戦況は圧倒的だった。
俺たちは遠方から攻撃するだけだったが、その中に鉄条網の中へ単身突進していく影があった。
フラムだ。
「危ないぞ!」
叫んだ俺をグランが制した。
「あいつのやりたいようにやらせてやれ。この位の戦いでやられるような奴じゃねえよ」
ククリナイフのように湾曲した山刀を両手に持ち、鉄条網をかいくぐるとフラムは飛び交う矢を交わしながらケンタウロスの兵へ飛び掛かっていった。
まるで山猫のような俊敏さだ。
火炎球をケンタウロスの顔に放ち、生み出した隙で兜の隙間から喉元へナイフを突き立てるとすぐに飛び退って次の攻撃目標へと向かっていく。
火炎球自体はケンタウロスにほとんどダメージを与えていないけど視力を奪うことでナイフでの攻撃を確実なものにしている。
おそろしく実践的で手慣れた攻撃だった。
時には鉄条網の中に飛び込んでケンタウロスの攻撃を交わしてすらいる。
流石に全ての攻撃や鉄条網は防ぎきれないのか体のあちこちに傷を負い、服もずたずたになっているけど全く攻撃を止める様子がない。
無謀とも思えるフラムの攻撃にケンタウロスの兵たちは更に恐慌し、俺たちの攻撃に無防備な姿を晒しては次々と倒れていった。
「バルバルザ様、このままじゃ全滅しちまいます!」
「降参だ!降参するから止めてくれえ!」
戦いが始まって一時間、既にケンタウロスは総崩れの様相を呈していた。
「死ね」
フラムがナイフを構えてバルバルザに迫った。
「クソ、誰か何とかしやがれ!」
バルバルザが絶叫した。
「はーい♥」
その時声がしたと思うと上空から降ってくる影があった。
その影は巨大なハンマーで鉄条網の防御を一瞬で破壊した。
「やほやほ、元気にしてた?テツヤ♥」
その声は聞き覚えがあった。
「リュース!」
土煙が晴れたそこに立っていたのはリュースだった。
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