おさかなのおどり

しいな

プールのごちそう

そーっと、ふーっと、やわーっと!
今日のディナーに忍び込むっ!

僕はきみに食べられることを期待しながら、ざらざらのこの命たちを抱きしめるよ

ずーっと、ずーっと、待ってるよ!
今日のきみに美味しく食べられるのをっ!

いただきますの声が、始まりの合図
かちゃかちゃきらきらするフォークを握って僕を見るきみ。
ハンバーグにトマト、ポテト、ピザ、サラダ越えて
たまねぎスープにパスタ、ピーマン越えて
ああずんずん近づくきみのフォーク!
もうすぐすぐ食べられる僕の体!

きみの赤いものとか、とろとろの脂肪とか、そのふわふわな髪とか、まあるいおめめになりたいんだ
きみのなかで踊って泳いで溶けて満たしたいんだ
ずーっとずーっと夢みてたんだ…

まぁくらくらな中で目を開いた
ずきずき頭が痛くて
どうしてだろう
きみは大事そうに手のひらにいるものを見ていた
僕だった


さようなら!
ぎーっと、ぐーっと、壊れるよ!
きみの体はもうばらばら!

いただきますが、終わりの合図
ぐちょぐちょに手を入れて掻き回した
赤いものとか、とろとろの脂肪、ふわふわな髪、まあるいおめめが溢れて溢れてプールになったんだ
ありがとう、ありがとう、さよならっ!
僕は泳いで溶けてディナーを見つめた

コメント

  • ハギノ

    世界観がとても好きです!
    思わず音読したくなるような素敵な詩たちでした。

    0
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