Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第75話 妹が可愛い

モカが急に祐奈と楓を連れて俺の部屋にやって来た。

頭の回転は割と早い方だと思うが、この状況はすぐに理解するのは流石に無理があった。

「お兄ちゃんちょっと来て」

祐奈と楓に部屋で待っててくれと一言伝えて、モカに腕を引かれて部屋の外に連れ出された。

「――なんなのあの可愛くて美人な人達は⁉︎」
「いや、普通に友達だけど」
「普通にってどゆこと⁉︎ 全然普通じゃないけど⁉︎ 普通にあんな可愛い女友達がいてたまるかだよ‼︎」

モカは鬼気迫る表情で祐奈と楓のことについて尋ねてくる。

俺の事を一番よく知っているモカだからこそ驚きは大きいだろう。

今まで女友達は愚か普通に友達だってほとんど連れて来た事はない。

たまに風磨が来るくらいだ。

「楓さんってあの髪で目が隠れてる人だよね?」
「まあそうだな」
「あの人もめちゃくちゃスペック高くない? 祐奈さん方はもうあからさまに可愛いけど、楓さんもちゃんとメイクして髪型も可愛くしたら絶対可愛いよ」
「当たり前だろ」
「え、当たり前?」

おっと、思わず口が滑りそうになった。楓が可愛いのは当たり前だ。なにせ大人気声優の日菜なのだから。

「いやぁーまさかお兄ちゃんがあんな人に告白されてるとはねぇ」
「俺が一番驚いてる」
「まだ返事してないんでしょ? なんでオッケーしないの?」
「いや、それは……」
「わかった、祐奈さんの事が好きなんでしょ」

ぐっ。鋭い。我が妹ながらさすがの洞察力だ。

「図星といえば図星なんだけど、好きと言うかなんというか……」
「どっちが好きかで悩んでるって事?」
「……その通りだ」

なんでモカには全て気付かれるんだ?兄妹って心と心が繋がってるのか?

繋がるのはBluetoothだけでいいって……。

「まあ妹としては嬉しいかぎりだよ。あんなに可愛い女の子がお兄ちゃんの友達だなんて」
「なんで親目線なんだよ」
「とりあえず事情は理解したから、もう部屋に戻って‼︎ 私もお兄ちゃんに告白した楓さんの事が見れて良かった」
「そりゃよかったな」

楓は鼻歌を歌いながら飛び跳ねるようにして階段を降りて行った。

可愛い妹の喜ぶ姿が見れた事だし良しとしよう。

よし、じゃあ俺は部屋に戻るか。祐奈と楓が俺の家に来た理由を考えつつ部屋の扉を開けた。

すると祐奈と楓が凄い勢いで詰め寄って来てた。

「な、なんなんですかあのちんちくりんな可愛らし妹さんは‼︎」
「あれはずるい。祐は全然かっこ良くないのになんで妹ちゃんはあんなに可愛いのかな、祐は川で拾われたのかな」

おいお前ら。俺の可愛い妹をちんちくりんだとか俺の事全然かっこ良くないとかそこそこ酷いこと言ってるの分かってるか?それに川で拾われたわけでもない。ちゃんと母さんのお腹から生まれてるから。多分。

「妹さん呼んできて。お話したい」
「私も妹さんとお話したいです!」
「今降りて行ったばっかだしまた今度でも……」
「「早く‼︎」」
「はいわかりました呼んできます」

なんだあいつら。そんなに俺の妹と話したいのか?

まあ確かに俺の妹は兄の俺から見ても可愛いと思うけど。

1階に戻ったモカを呼んでまた2階へと戻った。

「し、失礼しまーす」
「お名前は?」
「モカと言います。渋谷モカです」
「な、名前まで可愛いじゃないですか祐くん」
「確かに名前は可愛いな」
「お兄ちゃん、名前は、って酷くない?」
「そうだよ。モカちゃんはすごく可愛い。本当に祐の妹?」
「だから本当だって」

酷い事を言われている気はするが、妹がこうして褒められるのは嫌なわけがない。

俺は邪魔にならないように部屋の隅で、モカと祐奈と楓が3人で話す姿をしばらくの間微笑ましく見ていた。

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