Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第59話 お手伝い

花宮が風磨と2人きりにして欲しいと依頼してくるということは、花宮は風磨に告白するということなのだろう。

俺の記憶が正しければ、風磨と花宮は同じ中学校に通っていたと話していたはず。長年一緒にいれば好きになることもあるだろう。

「風磨を呼び出すのは一向に構わないけど。今から呼び出したらいいか?」
「いや、それはちょっと待って心の準備が……」

花宮はいつもの強気な表情からは想像も付かないようなしおらしい表情を見せ、体の前で手をもじもじさせている。

「じゃあ後でホテルのロビーに行くように言っておくよ」
「ありがと。あ、あともう一つお願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「私と鈴木が2人で話してるとき、どこかで見ててほしいんだけど」
「は? 俺が? まあ別に見てるだけなら良いけど、俺が見てなきゃいけない理由があるのか?」
「……心細くて」

いや、まじか。見た目と中身のギャップが凄いな。もっとギャルらしく強気でズカズカと踏み込んで行けば良いのに。

「分かったよ。とりあえず今から風呂だから、21時くらいにホテルのロビーに行くように言っておくよ」
「ありがと」

お礼を言って部屋へと戻って行った花宮を見送ってから自分の部屋へと戻る。

気を抜いていたが、部屋に戻るとそこには裕奈と楓がいた。
そういえば祐奈と楓は自分たちの部屋のベッドが壊れて俺たちの部屋にいるんだった。

祐奈と楓はベッドに座り2人で話をしており、風磨はもう片方のベッドで寝転がりながら携帯を弄っている。

「とりあえず風呂入りに行く時間だよな」
「そうだね。そろそろ準備しよっか」

大きな荷物の中から風呂に必要な下着やタオルを取り出す。

祐奈と楓がカバンの中から取り出したあの小袋の中には下着が入っているのだろうか……。
だ、タメだ。下心は捨て去れ。今日一晩同じ部屋で過ごすんだぞ。

温泉に向かう道中、歩きながら風磨に先ほど花宮に依頼された内容を実行する。
もちろん、花宮が風磨を呼んでいるということは言わない。

『先生が21時ごろにホテルのロビーに来てほしいって言ってたぞ』とだけ伝えた。

そういえば風磨って好きな奴はいるのか?

花宮が風磨を好きだということも驚きだが、風磨に好きな奴がいるとは聞いたことがない。

だが、仮に花宮と風磨が付き合うなんて事になれば、将来風磨と花宮と、俺と祐奈とのダブルデートなんてのも夢じゃないな……。

いや、ちょっと待て。ダブルデートをすると考えたとき、なぜ一番最初に祐奈のことを思い浮かべるんだ?

俺はいつの間にか、本当に祐奈の事が好きになっているのかもしれない。

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