Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第48話 私の気持ち

私の今日のミッション、それは祐に私を意識させること。

最近の祐の心の中には楠木さんが入りすぎている。このまま状況を何も変えずに普通に過ごしていたら、楠木さんに祐を盗られてしまう。

盗られてしまうというか、元々私の物でもないんだけど。

私はいつからか祐みたいなアニメ好きで地味な男の子が女の子に好かれる訳がないと思い込んでいた。そのせいで何も行動を起こさなかった。

私が余裕をぶっかいている間にいつの間にか女の子と、しかも学校1の美少女、楠木さんと仲良くなっているだなんて思わなかった。

楠木さんに負けないように絶対に祐に私のことを意識させなきゃ。

まずは祐をショッピングに誘い出した。私的にはとても勇気のいる行動だったけど今まで気を抜いていた分、頑張らなければと自分を奮い立たせた。

今日のお出かけにはいつもの楓の格好ではなく声優の日菜の格好で行くことにした。少し卑怯な気もするけどなりふりかまっていられない。

それほどまでに私は手遅れだったと感じている。

日菜の格好をした私に祐はどんな反応を見せるのか、期待してショッピングモールに向かった。

集合場所に着くと祐はすでに到着していた。空を眺め、ぼーっとたたずむ祐の姿に一瞬見とれてしまう。
普通に集合するのでは面白くないと思い、こっそり近づいて祐の背後に回り、目を隠した。

きっと祐は私が楓の格好で来ると思い込んでいるはず。私が目隠しをして、祐が振り返った時に楓ではなく日菜がいたらびっくりするだろう。

そして案の定、祐は日菜の格好をした私に驚きを隠せないでいた。

感想を述べるよりも先に、私が他の客に日菜だとバレないかを心配していたのは癪に触る。
女の子がいつもと違う格好をしていたらその容姿を褒めるのが紳士ってもの。

それでも、日菜の格好でやってきた私を見て明らかに焦っている祐の姿が可愛くもあり嬉しかった。

何故日菜の格好をしているのかと問われても即座に答えられるようにあらかじめ言い訳は考えてきている。というか、今日のショッピングデートがその答えだ。

祐に私を意識させるためには楓の格好をするよりも日菜の格好で会った方が間違いなく意識させられる。
日菜の格好で祐に会うためには、日菜の格好で服を試着したいと言う口実は便利だった。

服を購入するとき、どうやら楠木さんが同じお店にいたようで、2人でいるところを見られてはいけないと祐が私の手を握って走って逃げた。
私的にはそこで逃げずに楠木さんに私が祐と2人で遊んでいるところを見られても良かったのだけれど……。
私が日菜だと知られれば学校を辞めなくてはいけなくなるため、そうもいかない。

結果的には自然な流れで手を繋げて嬉しかった。

逃げてきた先のカフェの横では、陽キャグループの人たちに私と祐が2人でいるところを見られそうになり咄嗟に祐の腕を掴み壁ドンをさせた。
させた形にはなったけど、祐の顔が今までになく近くにきて顔が赤くなった。

祐から「今日はもう帰ろう」と言われたときはアピールでもなんでもなく自然に「まだ帰りたくない」という言葉が出た。普段は本心を隠しているため、こんな言葉を発する事はないが、今日の私は攻めモード。いつもより強気だった。

公園では、最後のアピールと言わんばかりに声優友達から聞いた話をした。

「結婚したい人がいるけど、まだ結婚するのは早い。勿体ないけど今は付き合えない」

この話を聞いた私は、それだ‼︎ と思った。

祐とは恋人同士になりたいけど、結婚はまだ先の話。それでも、非現実的な結婚というワードを出して祐に結婚しても良いと伝え、好きだとは言わない。

これなら非現実的すぎてそれが私の本心だとは思わないだろうけど、祐に私を意識させられると思った。
結果的に、次の日の朝、教室で私と目を合わせた祐の目は激しく左右に泳いでいた。

作戦成功……だよね。

……やった。

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