Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第46話 混乱

楓と公園で話した後、楓が「もう帰ろっか」と言いだしたため、結婚しても良いと言われて困惑していた俺は楓とあまり話すことなく帰宅した。

家に到着してからも俺は楓の、あの一言の事ばかりを思い浮かべている。

『祐となら結婚しても良いかなーって思うよ』

この言葉が頭の中でヘビロテしているのだ。

なにしろその言葉は俺が大好きな日菜の声で再生されたのだから、脳裏に焼き付くのも無理はない。

楓は俺と2人でいる時は以前より明るく話すようになった。
俺には自分が日菜だと知られているから楓という地味な女の子を演じる必要がないのだろう。

俺が予想するに本当の楓は、楓の性格と日菜の性格を足して2で割った感じなのだと思う。

日菜のように明るく、ファンに元気を振りまくほどの明るさを持ち合わせていながらも、広い視野を持ち周りに合わせて行動が出来る女の子。

しかし、今回の件に限ってはあまりにも不可解すぎる。

頭の中が混乱しており、一旦全てを忘れ去ろうとしてもその事だけは頭から離れてくれなかった。
唯一そのことを忘れられたのは、今朝登校してくるときに電車の中で祐奈とBluetoothを繋いでいた時間だけ。

今日は祐奈がゆいにゃんの曲を流してくれたから日菜のことを忘れることが出来た。
俺も日菜のことを考えないようにするため、ゆいにゃんの曲を流した。

学校に登校するとすでに楓が到着しており、いつも通り挨拶をする。

「お、おはよう」

あれ、いつも通りに挨拶するはずがスムーズに挨拶が出来ない。自分の席に座り、両手で2回パンパンッと頬を叩いた。
どうした俺。いつも通りに会話するだけじゃないか。何も緊張する事は無い。
いや、緊張する事は無いって言ったって楓は日菜なんだぞ? そもそも緊張しないって事自体が無理難題なのではないか……。

結局俺は学校に到着してからも楓のことが頭から離れることはなかった。

1限目開始のチャイムが鳴ると同時に、クラス委員長の田中さんが教壇に立ち、唐突に話し出した。

「はい、それでは修学旅行の班分けを行います」

修学旅行? あーそういえばもうすぐだったな。楓のことを考えていたらすっかり忘れていた。

神田高校では3年生の夏頃に修学旅行で京都に行く。定番中の定番であまり楽しみでもないのだが、アニメキャラクターが修学旅行で京都に行っている場面をよく見かけるため、俺にとっては観光地というより聖地のような場所だった。

楽しみなことといえばアニメキャラクターが写真を撮っていた場所で同じように写真を撮ることくらいだろうか。

「班分けの方法は各クラスのクラス委員長が勝手に決めて良いとの事なので、うちのクラスでは自由にみんなで班を組んでください。各班は4人の構成でお願いしまーす」

それじゃあ班分けを始めてください、という委員長の言葉でみんなは一斉に席を立ち、班を決めていく。まあ俺と風磨と楓は確定だろうな。

「とりあえずこの3人は確定だな」
「そだね。後1人。誰にしようか」
「祐奈ちゃんでいいんじゃねぇか? アニメ好きだし、可愛いし」
「お前の場合は可愛いだけで判断してるだろ」

風磨は間違いなく可愛いという理由で祐奈を班員にしようと言っているが、祐奈がこの班に入ってくれるのは俺にとっても好都合だ。

楓と話すのが若干きまづいこの状況で祐奈が入ってくれればもう少し気楽に話が出来そうだ。

俺は祐奈を誘いに祐奈のところへと歩いていく。

「祐奈、俺たちと同じ班にならないか?」
「お誘いは嬉しいんですがもう別の人と班を組んでしまって……」
「そうか……。なら仕方ないな」

勢いよく祐奈に話しかけたがそのパターンもあるよな。ちょっと恥ずかしい。

でもおかげで楓のことは忘れられたかも。

「なーんて、冗談ですよ。私も実は祐くんの班に入れて欲しいなって思ってて。鈴木くんと楓さんと祐くんの3人で、1枠余ってるだろうなって思ってたんです」

……してやられた。くそっ。でもその小悪魔的に笑う祐奈もめちゃかわだからオッケーだ。

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